宮尾 登美子著 「新装版 天璋院篤姫」(上)(下) 講談社文庫

このところ連続テレビ小説を見ることができないでいた。
毎週同じ時間にテレビの前に座れない。座れたとしてもいつの間にか気を失っている自分がいる(汗)。録画しておいてもいつのまにかたまってしまい、結局見ずじまい。情けないことにそんなことの繰り返しだったこの数年間ー。

しかし。
今年は違う。回を重ねるごとに翌週の予告に胸をときめかせてしまう。
……それがNHK大河ドラマ天璋院篤姫」なのである。


本書はそのテレビドラマの原作本である。

どうも話の順番が逆になってしまったようだが、実際この本を手にとるきっかけとなったのは大河ドラマだったのだ。


なぜ、今回のドラマ(本書)が面白いと思うのか?


それは、まずひとつに主人公が女性だから!という単純な理由(苦笑)

だって、日本の歴史で女性が主人公になることってそうそうないではないか!
だから北条政子もすきだった(←古すぎ!?汗)


そして第二に、その女性の生きる姿がなんともいい。ひとことでいうとかっこよく描かれている!


薩摩の武家(しかも分家!)の娘が養女縁組というステップを踏みながら格をあげ、最後には第十三代将軍家定の御台所となり大奥をとりしきるまでになる。ひとり故郷を離れ徳川家の一員として覚悟をもって生きる姿がなんとも潔い。心のなかでは悲喜こもごもいろんな思いが交錯していると思うが、ぐっとこらえて泣き言は口に出さず、行動を通して自分の思いを回りに伝えていく。気概のある一本筋の通った女性として描かれている。
(個人的には殊に、父と慕っていた斉彬のある種野心ある行動を知るにつれ自分もその駒のひとつだったのかと思える局面では篤姫はつらい思いをかみしめたり、嫁の和宮との関係にもかなり心を砕いたと思える)


そして、そんな篤姫の根本を育てた母(お幸の方)や乳母(菊本)の様子が描かれていること!これが第三の理由!

幼いころ子どもをどう育てどんな言葉をかけてやるかという側面から見るのも興味深いものがある。母親のお幸の方という人はなかなか気丈なひとで、夫の忠剛がお家のことで倒れてしまったときもあわてることなくきっちり支えていくのである。


<「そなたが江戸城大奥に入ることになれば、そなた付きの老女や女中たちも、この邸とは違ってさらにたくさんの数になろう。そして、それらがみな菊本のような忠義一途であるとは限りません。それでも自分付きの侍女たちに、もめごとを起こさず、毎日落ち度なく勤めを果たさせるためには主たるそなたの器量がものを言います。女子は嫁いだ先の長上の者にしっかり仕えることが第一の道ではあれど、同じくらいに奉公人によく目をかけることが大事です。 女子が内助の功をあげるのには、奉公人をうまく治めることがかんじんですぞ。そのためには、いつも気を確かに張っていなくてはならないが、これはいつも一人ぼっち、という感にじっと耐えることでありましょうなあ」>


菊本の死を(自害)という悲しみながらも、新しい環境に入っていく娘に対する言葉である。
それは、公武合体により公家から降嫁(!)する和宮と比較することでより篤姫の覚悟が浮き彫りにされてくる。


また、同著者の篤姫の生涯』(NHK出版)も併せて読むとさらに、歴史的背景がわかり著者の篤姫や薩摩(人)、そのころの大奥などのとらえかたを知ることができ理解が深まると思います。


食事に例えると。。。

大河ドラマ:フルコース……たっぷりその世界を堪能できます。
小説:ランチ……コンパクトにおいしさがつまっています。
エッセイ(「篤姫の生涯」):朝食……時間のない人向き。でも栄養はのがしません。


…というところでしょうか?(関係者のみなさま勝手にすみません 汗)
エッセイや小説のエピソードをこんなふうに膨らませていったのだなあ。。。と思いながらドラマを観るのも個人的には興味があります!


…そうそう。

和宮で思い出したのですが、過去に有吉佐和子著『和宮様御留』(←タイトル不確か)を読んだのですが、これはたしか和宮替え玉説をとっていた記憶があります。有吉氏が篤姫をどうとらえていたのか。。。というのにも興味がわきました。和宮さまって天皇家から将軍家へ嫁いだなかで、唯一の帝の実子だったのですってね!(正確には妹だけれども)