2016年6月4日放送 『新井英一の世界vol.361』

 
 ここ半月ほど無我夢中で仕事をしていました。半月だけ夢中って、いつもはどうなんだと言われそうですね(笑)。確かにこの半月は、まだ自分の中にこんなにパワーがあったんだと驚くほど、まさに熱の塊りでした。よって、私はどこにも出かける余裕がなく、皆様に提供できる楽しいお話がないことを詫びつつ、今日は私の近況をお話ししようと思います。

 去年8月、私は仕事のパートナーを亡くしました。家族であり、ひょんなきっかけで一緒に仕事をして15年余り、激しくぶつかることも多々ありましたが、とても息の合ったコンビでした。独りになった私は、同時に目標もなくなってやめてしまおうかと考えましたが、そこまでしなくても、自分を食べさせられる程度、自由にほどほどにやろうと結論付けました。私を駆り立てる者のいない毎日は、決して居心地悪いものではありませんでした。会社は実質開店休業状態、それでも焦るどころか、ヒマを楽しんでおりました。ずっと闘ってきたような15年でしたから、気楽になれることが嬉しかったんです。ただ、そんな一方で、まるで自分の右手が肥大していくかのように、気になっていきました。最初は気のせいと無視していましたが、どんどん気になり出し、最後は四六時中、脳裏から離れなくなりました。

 意識もほとんどなく、握った手だけで繋がっていたあの夜、時折り、かすかに握り返してくる手が、「あとは頼む」と言っているようで、時間が経つほど、その声なき声は大きく響いてくるようになりました。このままだと、私は一生自分の手から逃げ続けなければならない…、ようやく半年目で、私は新しいパートナーを見つけてやり直そうと決心しました。

 募集を出した翌日に現れた女性は、私より17歳下です。そう言えば、新井英一と、パートナーのギタリスト高橋望も17歳差、音楽の話題以外、話が合わないと笑っていましたが、なるほどこんな感覚かと、今ならわからないでもありません(笑)。新しい子は、気が強く、あっけらかんとしていて、何でもすぐに夢中になる性格です。まだ始まったばかりで先行き不安だらけの私ですが、彼女のカラカラとした笑い声に、なんとかなるか、いや、なんとかするんだ!と自分にハッパをかける毎日を送っています。

 では音楽に参りましょう。今日は先月行った岐阜の瑞浪芸術館のライブからピックアップです。時間の都合で私はここでお別れしますが、皆様は最後まで番組をお楽しみ下さい。それでは、唄・新井英一。『生きてりゃいいさ』。続いて、『君のままで』の2曲をどうぞ。

今週の曲紹介
『生きてりゃいいさ』 (アルバム「ライブイズベストvol.2」より)
『君のままで』 (アルバム「エイジアン・パラム」より)

放送時間17分

『新井英一の世界vol.362』の再放送は、6月6日(終了)、6月7日(火)夕方6時15分〜です。