2016年6月11日放送 『新井英一の世界vol.362』


  梅雨入りしたようですね、すっきりしないお天気が続いています。梅雨といえば、飽きもせず・毎日しとしと降り続く、鬱陶しさの代表でしたが、もう「今は昔」になりました。今じゃ降り方がすっかり変わってしまって天の恵みどころではありません。記憶の中の梅雨は、年々、雨音も情緒を増し、雨粒はセピアの中で輝きを増していきます。

 さて、今週頭、東山三条の、とある画廊が長年の営業にいったん幕を下ろしました。閉店ではありません。より大きくなって移転する、準備のための休業です。先週末、その「さよならパーティ」が開かれ、私も出席致しました。普段の、芸術家を囲んでのオープニングパーティと異なる点は、参加者の年齢層がかなり高かったところでしょうか(笑)。古くは60年代からの付き合いという店主の仲間が、遠くは愛知、東京からも駆けつけてお祝いです。年季の入った人間たちの面白さに感心したり、ちょっとした言葉にハッとしたりと、大人の魅力を存分に味わえたひと時でした。

 この画廊の店主には、去年8月、縁あってある旅行でご一緒して以来、何かと気にかけていただくようになりました。どんな方かと言いますと、珍しいかな、鋭い洞察力に温度がある人です。みんな安心できるんでしょうネ、この方の周りにはいつも沢山の人がいます。慕って若い芸術家が集まってくる、地域の人達が支え応援する、画廊に満ちる空気が温かくて柔らかくて、いつの間にかここは、私にとって聖域になっていました。

 来月オープンする新しいギャラリーは、スタッフも増やして、より強力体制で臨まれるようです。元は研修生でやってきて、期間が終わっても、「そのまま居続けるもんだから社員にせざるを得なかった」と笑う、今は店主の右腕を筆頭に、個性豊かな女性ばかりのスタッフです。画廊の仕事って、アートが好きぐらいじゃ到底つとまらないでしょう、自分を奉仕するぐらいの覚悟でないと、傍で見てても厳しいものです。それでもなお、この仕事が好きと熱意を持てるよう、このベテラン店主がスタッフをどのように教育していくのか、なんてラッキーな子達だろうと、羨ましささえ覚えてくるほどです。梅雨が明け、高い青空を臨む頃には、既にギャラリーはオープンしているでしょう。花束持って駆けつけよう、今はそれを心待ちにしている私です。

では、音楽です。今日は皆様へ、人生の応援歌を私なりに選曲してみました。年齢なんて関係ありません、人生いつでもスタート地点、そんな気持ちで挑みたいものです。お聴き下さい。唄・新井英一。『果てなき航路』。次週もまたお会いしましょう。マサミがお送り致しました。

今週の曲紹介
『ジプシー』
『果てなき航路』 (いずれもアルバム「果てなき航路」より)

放送時間14分

『新井英一の世界vol.362』の再放送は、6月13日(月)午後3時〜、6月14日(火)夕方6時15分〜です。