God & Golem, Inc. このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009.09.04.

[][][]Vampire.Sさんから聞いたRuneWars設計思想メモ

 昨晩の夜23時ごろから3時間ほど、RuneWars*1メカニズムデザイナーであるVampire.Sさんと、Skypeボイスチャットでお話しました。

■RuneWarsWiki(同人RPG『RuneWars』の基本的なテキストがアーカイヴされている)

http://www.dunharrow.org/pukiwiki/runewars/

 先日久しぶりにまりおんさん(id:mallion)の卓でRuneWarsのセッションをしたので、その感想がてら、改めてRuneWarsのデザインコンセプトや、細かいルールの解釈について伺い、沢山メモを取らせていただきました。

 今回提示するのは、私が3時間くらい話を聞いた中での私なりの解釈ですので、Vampire.Sさん自身の考えを捉え損なっている部分もあると思われます(もし実際まずいところがあれば、コメント欄でご本人が指摘してくれるはずなのであまり心配はしていないのですが)。

 それを踏まえた上で、RuneWarsというゲームメカニズムの志向性を、より楽しむにあたっての参考資料になればと思い、UPすることにしました。

 なお、Vampire.Sさんは、基本的に自分の作ったメカニズムやそれにまつわる発言・書き込みについて、「コピーレフト」的な著作権感覚を持っていらっしゃる方のようです。RuneWars関連のテキストも、私が想像していたよりもかなり著作権的に開かれたテキストであると本人は考えているもよう。

 今回はその辺の塩梅も冒頭に書き留めましたので、「RuneWarsを色々解析してみたい」「RuneWarsに手を入れて別の方向性のゲームを作ってみたい」という方は、「そっから面白いモンが出ればどう使ってもどう改造してもオッケー(でも数学的にまずいところは個人的に指摘しに来るかもね!)」という原著者の立場を踏まえて、二次利用されるのがよいのではないかと思います。

自分の記述に誤解があり、変更しました。きっかけとなったやりとりは以下です:

Vampire.S: ところで。ハッカーカルチャーの話で思い出したのですが、よろしければ、ご自分のBlogでR=Wを紹介する際、CreativiComonsに関する議論とR=Wに関する議論について、少し整理しておいていただけるでしょうか。というのも、私自身はR=Wに関してCC的議論は全く無関係だと思っているのです。
私が主張したのは「R=Wなんて同人なんだから、みんなで適当にやればイイでしょ」というだけで、著作関連権利やそれに対する社会的スタンス等の議論は一切関与させていません。“主観的な責任さえ取ってれば、文句言われる筋合いは無い”=同人活動における責任意識 ってなところですかね。

志臣: 了解です。それは私の誤解でした。補足記事と元記事の訂正をします。

Vampire.S: よろしくお願いいたします。現状のBlog記事だと、なんだかRuneWarsのアジェンダの中に“CCライセンスにより同人RPGを開発することの有効性を実証するための試み”ってのが入っているように読める気がします。無論、"R=Wの編集作業において、CCライセンスの方がGPLよりも有効である"といった議論はあってしかるべきとは思いますが。

志臣: はい、了解です。その相談コストを下げる上でCCは有効かも、ということと、R=Wが同人活動としてどういうスタンスを持っているかということは無関係ですね。

Vampire.S :ええ。

(090912_Sat_0400 転載)

 私自身がもしVampire.Sさんのテキストを、「ゲーム批評」ではなく「メカニズムデザイン」のために利用する場合は、私が最近関心をもっているCreative CommonsCC[BY]と同じような感覚で行こうかと思ってます。原著者には敬意を示しつつ、あくまで自分の解釈には全責任を持つことを強調する方向で。といっても、今作っている『MOD』は、メタルールの一部以外はだいぶ異なる設計になりそうですけれども。

 最近では、RQコミュニティのなゆたさんも『呪に交われば――The Powers of Words』というシステムをデザインされており、これはオンラインに適合するよう再設計したRuneWarsヴァリエーションと言えるかもしれません。

 あと、Vampire.Sさんは、硬質で論理的な文体に似合わず、発話の雰囲気それ自体はとても穏やかな方です。声を聞いたことがない人は、適宜脳内変換してお読みください。私は「だ・である」調にまとめたので、全体的に重めになってますが、実際はそういうわけではないこと、あらかじめ付けくわえておきます。

 それでは以下、お読みください。

  • RuneWarsの著作権について(著作者本人の志向)
  • RuneWarsの設計にまつわる背景
  • アトリビュート]についての補足
  • RuneWarsにおける[判定]についての基本的なおさらい
  • [ルーン強度]を解釈するにあたっての重要な論点
  • メタルールの一つ、[クーポン]についての重要な補足
  • 以上をまとめた高橋の感想


RuneWarsの著作権について(著作者本人の志向)

  1. まず、自分の作品のどこを自分が作ったかはよくわかっているつもりなので、たとえ「俺ルーンウォーズ」が出たとしても何も問題はない(むしろどんどんやって欲しい)。
  2. ただし、自分の設計思想から見て数学的にそぐわないところなどは、直接指摘するかもしれない。しかし指摘するだけであって、特にそのヴァリエーションに対して何か申し立てをするというようなことは決してない。
  3. 要するに自分は(いわゆる)ハッカー文化と同じ感覚でいる。他の人が自分をどうRuneWarsに関わらせたいかはさておき、自分だけでRuneWarsWikiを完成させるというのは重荷であり、非現実的だ。だから、Wikiに過去の自分の発言を転載したり、解釈を付け加えたりすることについてはぜひとも勝手にやっていただきたい。
  4. 自分で不足していると理解している部分は、「成長メカニズム」「用語整理」「ルールを変更するようなクーポン生成に挑戦するアクションは+R1として判定することの明記」などである。特に「クーポンのルール」は欲しいのだが、時間が取れていない。
  5. まりおんさんのところでたびたび書いているものも、タグ構造がはてなWikiで基本的に一緒だし、そのまま転載してもらってもまったく問題ない。というか、ぜひやってほしい。

RuneWarsの設計にまつわる背景

  1. RuneWarsのメタルールおよびルールは、「オフライン/オンライン」のどちらにおいても運用可能なようにできるだけフラットにしている。
    1. たとえば、オンラインであればアクションの試行回数を定めることで運用するやり方もあるが、オフラインは裁判員制度のように進めて、初めのうちにやりたい方向を決めた方がスムーズにゆくだろう。
  2. また「PCは、演じている最中のキャラクターとは一致しない」という前提がRuneWarsには強く働いている。これは、そもそもプレーヤーがシナリオという「GMからもたらされる“外部物語”」を知らないことが多いことから考え出された仕組みである(つまり、内部物語/外部物語のぶつかり合いという構造がRuneWarsにはある)。
    1. プレーヤーによって記述された“内部物語”を、RuneWarsは[プロフィール]によって表す。ところがそれに対してRuneWarsのGMは「シナリオ」というかたちで“外部物語”を挿入する。その時、プレーヤーの側から「実はこうだった!」とプレーヤーに新しい設定を追加することは([クーポン]の生成で工夫しない限り)できないようにしてある。プレーヤーは、自分が決めたキャラクターのプロフィール(これはすべて公開された情報であり、隠蔽されたものはない)から導き出せるものすべてをつかって、外部物語=GMのシナリオに応答する。RuneWarsはそのような構造をしている。
      1. なお、RuneWarsはプロフィールに秘匿情報を混ぜないということもあり、HeroWarsやHeroQuestのようには、プロフィール文字数を制限していない。いくらでも書いてよい、ということにしている。
    2. そしてRuneWarsにおいては、キャラクターのプロフィールはセッションを経ることによって成長する、と規定されている。シナリオにおいて経験されたナレーション(ゲーム中に生成されたグローランサ関係の結果を、自然言語によって記述したもの)の一部は、キャラクターのプロフィールの中に内在化される可能性がある。
  3. ルーンウォーズのメカニズムは、物語の手順を決定するが、物語の内容には一切触れない。それは物語が自然言語だからであり、メカニズム形式言語によって作られているからである。
    1. メカニズム形式言語である」というのは、法律家にとっての法律が、日本語で書かれながらも日本語とはべつの形式的論理によってある程度一貫性を保っていることに似ている。RuneWarsのメカニズム、特に[メタルール]と呼ばれる部分は、かなり厳密に形式的に定義されている。ここをいじると、(いじること自体はまったく問題ないが)自分がメカニズムデザインにおいて狙ったものは再現されにくくなるだろうと思われる。
    2. 私(Vampire.S)は、ユーザーに提供されているRuneWarsの核の部分――「[メタルール]およびメタルールに「自然な拡張」として含まれる原始ルール群」のことを「RuneWarsカーネルと呼んでいる。ただし、いわゆる「ルール」と呼ばれている部分、その他の「アプリケーション」の部分はいくらでも変更してよく、カーネルには含まれない。
    3. また、これはWikiに乗せていないが、[アクター層](定義:[テーブル]を構成しているメンバーの事)、という対象を考えた時。RuneWarsの[メタルール]はアクター層に対する指示と言える。[ゲームマスター]と[プレーヤー]は、[アクター]としての役割の差異に過ぎない。
  4. 近代的グローランサは一言で言えば「神話の書き換えごっこ」である。「グレッグが『HeroWars』以降のシステムでエミュレートしたかったのはこれだろ?」というつもりで作っている。「神話の書き換えごっこ」をいかに数学的に綺麗に記述するかに、RuneWarsのねらいはある。

アトリビュート]についての補足

  1. アトリビュート]について。実はキャラクター作成時に[アトリビュート]すべてを振る必要はない。
    1. なぜならRuneWarsというゲームは、グローランサ世界のうち特に「悟法」に近いというか、一つの技能でなんでもやり通してしまうような英雄を再現しようとする方がキャラクターが強くなりやすい、という仕組みになっているからだ。中島敦の小説『名人伝』に出てくる弓の名手のようなもので、沢山のアトリビュートを使って普通の冒険者をやるより、〈剣技〉や〈鍋〉でどこまでの行為を成し遂げるかを考える方が効率がよいシステムになっている。
    2. したがって運用に関しては、オンラインであれオフラインであれ、[アトリビュート]の具体的な数値は決めずに空白のまま始めた方が、プレーヤーもゲームの方向性がわかって良いと考える。キャラクターはそれぞれの[アトリビュート]の名前や述語だけを持っていることがわかれば、それだけでゲームを始められる。
  2. プレーヤーは、キャラクターシートの能力を見て、(コマンド総当り式のアドベンチャーゲームを遊んでいる時のように)「このコマンドはどうか?」と選ぶようにその場で具体的な数値を出し*2、それを[ルーン強度]と関わらせるために20進法に変換する公式である「x山y」((この「山」とは、ほとんど「山」の形をした、グローランサ世界のルーンの形を代替したものである。元の形はこちらhttp://www12.ocn.ne.jp/~piroki/Glorantha/HQintro.htmlが詳しい。))ないし「x w y」(山でもwでも、記号としての意味は変わらない)を書く。これは「キャラクター作成時」でもかまわないし、空白のままにしておいてセッション中に行っても構わないものとする。
  3. また、アトリビュート平均値3d6でとるか4d6で取るかで、ゲームの風景はまったく違ってくる。3d6ならば、『RQ』の低レベルキャラクターが挑むような、比較的常識的な路線もいける。しかし4d6では、ルーン強度0レベルの行為はほとんど成功してしまうのだから、かなり退屈になる。ルーン強度1レベル以上の――つまり、まったくべつの要素を持ち出さないとある状況の常識を覆せないような英雄探索行でないと、4d6下でのRWメカニズムの面白みが出てこない。
    1. これは喩えるならば,裁判で有罪無罪を争うという範囲から、いきなり議会憲法改正という別のレベルにジャンプするというような感じのぶっとび方を必要とする。4d6以上の冒険とはそういう冒険であり、HWやHQの冒険も大体そういうものを志向しているはず。
    2. そういうわけで、3d6アトリビュート平均を取るか4d6以上で取るかで、同じグローランサで遊ぶにしても全然違う、ということは、ことあるごとに説明しているつもりではある。
  4. もう一つ、RuneWarsらしさを指摘しておくための例を示しておく。たとえば、〈弱い〉10w5、というアトリビュートを持っており、なおかつ活躍してしまう物語上のキャラクターを例に挙げよ。これはたとえば、『指輪物語』のフロドが該当する。サウロンの指輪は、ガンダルフアラゴルンなどの強い奴の手に余る。ガラドリエルもそう言っている(笑)。

RuneWarsにおける[判定]についての基本的なおさらい

  1. RuneWarsにおけるダイス判定を[判定]と言う。RuneWarsWikiの定義でば、「PL または GM が、[シーン]を変化させることを目的にサイコロを振ること」である。
    1. ここでメタルールの一つ、[シーン]の意味も重要。[シーン]とは、一回のセッションの中で、同じテーマについて取り扱われ続けていると見なされる[ナレーション]と[ディスカッション]の集合である。
    2. ある[シーン]が「同じテーマについて取り扱われている」とどうやって見なせるかというと、それは[キャラクター][オペレーション][環境][基準ルーン強度]などの情報すべてが「一貫したまま判定を続けていい」と合意できるような状況であることである。
    3. もっと普通のRPGっぽく言えば、キャラクターが取り組んでいる課題が、ある状況からまったく別種の「異界」的状況に遭遇してしまったりすると、もはやそれは同じ[シーン]とは言えない(そうした場合、ふつうは判定のクリティカルファンブル率を大いに引き上げる[基準ルーン強度]が+1以上上昇するだろう)。そうでない限りは同じ[シーン]だと言えるわけだ。
  2. そしてRuneWarsにおいてサイコロを振ることの意味は、「[ナレーション]として提示すべき解釈の強度は、人間同士の話し合いではなくルールに委ねてしまおう、という設計思想から来ている。〈弓 15w3〉と〈鍋 15w3〉のどちらが強いかというのは、RuneWarsのシステムに委ねるべきであって、ゲーム中の議論の対象にはならない。
  3. 通常のRPGでは、こうした自然言語解釈の強弱を、セッション参加者同士の議論(あるいは口プロレス?)によってうまくすりあわせ、合意をつくることが「良いプレイ」と見なされることがあるが、RuneWarsはそうした発想とは距離を置いている。プレーヤーが得ようとするすべての合意は形式的操作すなわち[判定]を通したクーポン生成によってしか得られない。要するに、プレーヤーの自然言語に対する解釈能力がそのままキャラクターの強さと直結するようには(RuneWarsは)出来ていない。ここはほかのゲームと異なるところである。
  4. その代わり、[クーポン]生成のルールとの兼ね合わせで考えると、少なくともRuneWarsにおいてのみ通用するプレーヤーの巧拙というものはありうる。([クーポン]の補足については後述する)
  5. さて、プレーヤーはキャラクターの[アトリビュート]を見てサイコロを振る。RuneWarsにおける判定は、常に「1d20」と「1d6」の2つのサイコロを用いる。これは元のアトリビュートが、十進数だと0から100までの値(つまりd100、パーセンテージダイスと同じ)を取りうるのに対して、[ルーン強度]という独自のスケール変化のメカニズムが組み込まれていることによる。
    1. ふたたび繰り返すと、キャラクターの主要な能力である[アトリビュート]の数値は、「x山y」の20進法で記述される。「xwy」でもよい(RuneWars公式ではwを採用しているようだ)。
    2. 計算式の例を示す。フマクトの剣士が〈剣戦闘〉のアトリビュートを決定して、「37」の数値が得られた。これをRuneWars独自の20進法「x山y」に代入すると「17山1」(=17w1)という記法になる。この変換式を解説する:「37」を20進法で考えるとと、20が1つ、あまりが17。このうち「20」一個分を「1」として、を「山」の右辺yに代入する(y=1)。余った17を「山」の左辺xに代入する(x=17)。こうしてアトリビュート〈剣戦闘 17山1〉が出来上がる。
    3. なお、キャラクター作成時に算出した、20進数に直す前の「37」のような数字は、実際のセッションにおいては一切使うことがない。注意されたし。
    4. その後の詳しい判定については今回書ききれないため、RuneWarsWikiのこちらのリンクを参照のこと。後々高橋が独立した記事にする予定。新たにRuneWarsWiki上に作成したDefinitionsページを参照していただきたい。
    5. RuneWarsWikiにおいて、独立した[ターム]として定義されていない項目は以下の通り。「これはタームでありえない」という点も含めて、メカニズムデザイナーの補足が必要かもしれない。

■(独立した項目としては)未定義の『ルーンウォーズ』関連用語一覧

[ルーン強度]を解釈するにあたっての重要な論点

  1. ルーン強度の定義とは何か。たとえば「国家」のルーン強度はいくつだ、というような規定は、ルーン強度を正しく理解したとはいえない。
  2. 確かに「ルーン強度1(R1)は20人の集団に置き換えられるが、そうしたスケールの変化は必ずしも[ルーン強度]の意味合いのすべてではない。
  3. たとえば、RuneWarsにおける死について考えてみよう。ルーン強度0レベルの平均的なアトリビュートしか持たないキャラクターが死んだとする。その時、「どんなに頑張っても肉体的なアトリビュートが全て使用不能になったキャラクター」に対して、「死」は優越となる。つまり、「キャラクターが死んだ」という事実は、そのキャラクターに対してR1のルーン強度をもつ、ということができる。
  4. またこのような考え方によって、「グローランサ世界における20人(R1強度を持つ集団)の死」は、R1+1=R2と記述することも可能になる。集団戦の相互作用は、基準ルーン強度を操作することで簡単に記述できるようになっている。
  5. このように、ルーン強度とは「あるスケールで比較した場合の、そのスケールの対抗物に対する絶対的優位」を相対的な基準で表すものである。「『R(n)』をまったく抑圧しているものを『R(n+1)』とする」ということなのだ。したがって、人数がこれくらいだから、とか、国家だから、といった、実体的な意味が先行するような規定で考えると、とつぜん運用がむずかしくなるし、異種のヒーロー――たとえば温泉魔人とルナー帝国と、初音ミクの格好をした音楽神ドランダーとが出会う、というようなシチュエーション――におけるルーン強度の配分が計算できなくなる。(というか、初音ミクとか目ピー鼻スパ問題とか出したほうが理解しやすいのがRuneWarsだと私=Vampire.Sは思っている。)
  6. 初音ミクが出てくるグローランサをやってみたいものだが、リプレイを作る時間がない。GMは私がやってもいいので、誰か他の人にリプレイライターを頼みたい。

メタルールの一つ、[クーポン]についての重要な補足

  1. [クーポン]とは、セッション前は[ルール]と[シナリオ]によって規定されたものの一つ一つであり、セッション中はサイコロによる[判定]の結果生成された判定結果のことである。
    1. したがって、RuneWarsにおける[環境](≒[ボード])とは、「手続きによってGMとPLの双方に把握された[クーポン]の全集合」であると言うこともできるだろう。
  2. 判定結果が終わった後、GMは一つから複数の生成されたクーポンに対して解釈を施し、自然言語による[ナレーション]を行う。これは通常、ルーン強度0ぶんの判定一回に対して「一文」程度のボリュームをもつ(が、あくまで目安であり、実のところそれなりの柔軟性をもつ)。形式言語によって生成された[クーポン]を解釈して、自然言語で語られる物語に接続すること、これがGMセッション中に担当する[ナレーション]のうち主要な役割の一つである。
    1. [クーポン]と[ナレーション]の関係を考える時には、「風が吹けば桶屋が儲かる」論を考えるとわかりやすい。「風が吹いた」から「桶屋が儲かった」という帰結を導き出すまでに、どれくらい文節された判定結果(=クーポン)が必要だろうか? 原典によれば6,7段階ほど経ないといけないそうだが、それを自力で生み出すために一段階ずつの判定結果を繋げていくことがプレーヤーの課題である。一方、その判定結果を[クーポン]同士の解釈から吟味して、適切な分量の[ナレーション]に変えていくことがGMの課題となる。
  3. [クーポン]の全集合が[クーポン環境]≒[ボード]という観点からRuneWarsのセッションを眺めた場合、私たちが通常のRPGで言うところの「シナリオ」「ルール」「データ」の区別は、セッションのある時点においてはほとんど区別されない。
    1. RuneWarsにおいては、「一本道シナリオ」や「ハンドアウト」とよばれる、シナリオの構造の枠組みを規定する要素も「クーポン」の一種である、とみなすことも可能である。また、「英雄の探索行をすべきである」というのは、HeroWars以降の後期グローランサにおける極めて強力なクーポンである。
  4. なお、普通のゲームでは、成功回数と成功判定それ自体のあいだに関係式がないけれども、RWにはある。それが「R」と「W」で、RuneWarsの略称である「R=W」の由来にもなっている。
  5. どういうことか。「1R2」というルーン強度は、「ルーン強度2の成功1回分」を意味する。これをルーン強度0(R0)にバラして書き直すと「400r0」になり、つまりR0の成功400回分と等しいことがわかる。*3
  6. もう少し補足しておくと、「岩を持ち上げる:3R0の成功を要求する」というような判定基準は、プレーヤーに対して「ルーン強度0の成功を3回分」要求していることに等しい。(註:この計算は、慣れたら比較的簡単である。Rの直前に「個」がついてると思えば読みやすくなるかも。)

以上をまとめた高橋の感想

 全面的に、聞いていてとても面白かったです。特に[クーポン]の定義は、自分が昔考えた〈イマジナリィ・ボード〉に、徹底した形式言語の発想を含めたものとしてとても参考になりました。

 ほかにも色々あるのですが、Vampire.Sさんが自明と考えられているようで、実のところRuneWarsを各自で受け取る際に、けっこう見過ごされがちなんじゃないか、という点について、自分のプレーヤー経験を踏まえつつ、少しだけ補足させてもらいます。

 RuneWarsというゲームの実施において、

 この2つの相互行為をしっかり区別して設計されていることについては、RuneWarsWikiのルールブック部分に、何度か書かれています。実際、Vampire.Sさんは、形式言語および情報科学を人一倍訓練された方でもあります。

 なのでこれはRuneWarsの文章それ自体には全面的に現れている「設計思想そのもの」なのですが、ほかのTRPGシステム(の、ルールブック)では強く、厳密に意識するほどのものではないため、ここで引っかかってしまうとRuneWarsの遊び方がかなりわかりづらくなってしまうのではないか、と最近思うようになりました。

 少なくとも、GMがそのことを意識してメタルールを捌くことが重要なのではないかと思います。ディスカッションからナレーションに戻るときの手続きが[判定]→[クーポン]の生成→[ナレーション]への落とし込み、となっていて、ここの定義を確認しないとうまく回らない。

 先日まりおんさんのGMのもとでRWをやらせて頂いた時は、[判定]はかなり綺麗に回ったものの、[クーポン]から[ナレーション]の範囲を決定する流れが、あまりよくなかった。これはまりおんさんの責任ではなく、どちらかといえば現行のルールにおいて[クーポン]の重要性を強調する記述がすっぽり抜け落ちていることに原因があるのではないかと思います。(Vampire.Sさんによれば、[クーポン]まわりの記述はリプレイ終了後に改めて追加する予定だったそうですが、わりと重要度が上がった今も強調し切れていないそうです)。

 なお、先月22日のまりおんさんのGMは、ダラハッパ地方の設定資料が網羅された伝説のRQ同人誌『TOME』および、一応公式から出ているシナリオをぶいぶい使った、かなりショッキングなシナリオだったので、非常に面白かったです。ただ、まりおんさん自身は当日まで「オフラインにおけるRuneWarsの運用方針」について情報が不足しており悩みが尽きなかったようで、PLの楽しみとGMの手応えとの間に落差があるようでした。

 自分がもしGMをやる時ダイス判定まわりがさっぱり理解できてなかったこともあって、当日は(オフラインRW経験者であるにもかかわらず)アドバイスができなかったのですが、ようやく今回のレクチャを受けて提案ができるようになったかなと思っています。

 あと、改めて収集してみましたが、RWの判定に使う際のターム(大カッコ[]で示される専門用語)が多いですね。さらに一つ一つの判定基準も、個々の判定をみればわりとスッキリ書かれているのですが、相互の関係を覚えるまでがかなり複雑ですね。

 実はRuneWarsWikiでは、これらのタームは検索しないと出てこないので、ハイパーリンクで一生懸命手繰らないと、何がどれだけあるのか見えてこない構造になっています(2009年09月04日金曜日現在)。これはさすがに、RuneWarsWikiに、判定関連用語の一覧ページを設けたほうがいいかもしれないと思いました。さらには、冊子レベルのサマリー(PDF化して、オフラインで配布できるものでもいい)を作ってもいいんじゃないかと。

 そのほかの感想はまた今度。一日のうち、ブログに割ける時間がそれほど多くないのでした。ものっそい高速で書きました。

追伸

 その後、RuneWarsの定義をWikiの検索コマンドで抽出し、定義項目と未定義項目を調査しました。Definitionページに、R=Wの“むきだしの仕様”がほぼ一ページに収まっています。ご本人としては不本意かもしれませんが、これで「仕様としてのRuneWars」は、Wiki上でもかなり閲覧しやすくなったのではないかと考えています。

*1TRPGシステム『ルーンクエスト』『ヒーローウォーズ』『ヒーロークエスト』などに共通する世界観、グローランサの「英雄探索行」的な側面をTRPGシステムデザインによって記述するために設計された、同人TRPGシステム。主なデザイナーはVampire.S氏。

*2:普通、冒険のスケールに合わせて3d6か4d6で振り、必要な修正を掛ける

*3:註:このような仕組みにより、RuneWarsというメカニズムは、芝村裕吏Aの魔法陣』における判定単位のスケール変動と難易度の関係を、さらにスマートなかたちでメカニズムに内在化させることに成功している。A魔においては〈判定単位〉と〈成功要素〉に厳密な対応関係は作りにくく、GMが独自に関連性を模索しなくてはならないが、RuneWarsでは最初から[アトリビュート]の判定1回分の価値と[ルーン強度]の価値とが相互に整備されており、互換性がかなりの精度で担保されている。ここにRuneWarsのシステムデザイン上の強みがあると言ってよいかもしれない。