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2010.02.23.

[][][]RPToolsSurfacescapes――「デジタルTRPGの未来」について、二つの覚書

 高橋です。今回は、オンラインTRPGをサポートする二つのインターフェース事情について紹介します。

 一つは、これまでも何度か紹介してきたRPツールズ(RPTools) のマクロ翻訳記事について。

 もう一つは、Microsoftカーネギー大学と共同開発しているサーフェスケープス(Surfacescapes)についてです。

RPToolsマクロについて

 11月以降、RPToolsの翻訳がうまくいってません。

 修士論文の執筆の前後にスケジュールが狂ってしまい、せっかくid:thalionさんやFourwoodsさんに協力して頂いたのに頓挫しているところです。また、開発者の方に翻訳ファイルを渡す作業もできていません。すみません。

 三月になったら色々と楽になるので、昨年からの宿題は一つずつ解消していこうと思います。

 それでも、さりおんさんのお陰で、RPToolsのもっとも高度な機能である「マクロ」の初歩の部分が、日本語で読めるようになっています。

RPToolsドキュメンテーションWiki「はじめてのマクロ作成」

http://lmwcs.com/rptools/wiki/Introduction_to_Macro_Writing/ja

 これで、PC上でのゲームデザインとしては、『CardWirth』のようなシナリオエディットを自前でやりつつ、自分の望むシチュエーションに関連する計算はマクロで揃えるという、ハウスルール好きのゲームマスターにとってはかなり自由度の高いゲームデザイン環境が整ってきたということになりそうです。

 まだマニュアルは完全ではありませんが、RPToolsに類するプログラムへのアクセスが今よりもっと容易になれば、90年代にフリーのRPGにはまっていたようなゲームユーザも、現行のTRPG製品(国産/海外問わず)に近づきやすくなるかもしれません。

 こういう方向性での“日曜ゲームデザインが、技術の進展によってよりかんたんになることを、心から期待しています。

Surfacescapesと、「タッチパネルでやるボードゲーム」の可能性

 先日、Apple社がiPadを発表したことが記憶に新しいですね。

 しかし一方、ライバル社であるMicrosoftも、べつの方向で製品開発を進めています。

 Microsoft社は、Apple社に先駆けて2007年には既にBtoBの製品として提供しています。タッチパネル式の“筐体型”インタフェース、『マイクロソフトサーフェス』(Microsoft Surface)です。これは当初は100万円前後するほどの高額製品だったのですが、今はもう少し安くなっているようです。

 実際のブツは、次のリンク先の写真でご確認下さい。

■What is Microsoft Surface?

http://www.microsoft.com/surface/Pages/Product/WhatIs.aspx

 さて、このMS Surfaceに関わるプロジェクトの中で、アナログゲーマーならきっと面白がりそうな技術があります。『サーフェスケープス』(Surfacescapes, or SurfaceScapes)です。MS Surfaceの上で動く、TRPG用マップ再現アプリケーションなのだそうです。

カーネギー大学『サーフェスケープス(Surfacescapes)』公式サイト

http://www.etc.cmu.edu/projects/surfacescapes/index.html

Microsoft SurfaceのSurfaceSpaces紹介記事

http://blogs.msdn.com/surface/archive/2009/10/19/dungeons-dragons-done-right-on-microsoft-surface.aspx

 公式サイトの紹介文を引用しておきます。(適宜強調表示)

What is Surfacescapes About This Project

The objective of the SurfaceScapes project is to create a proof-of-concept for playing tabletop role-playing games on the Microsoft Surface Table. We will be using Dungeons and Dragons as a basis for our prototype, with the option for future expansion to other role-playing games. SurfaceScapes will provide Game Masters and players with a set of features to enhance the combat and role-playing aspects of tabletop games. This will include the ability to interact with the digital environment using real objects such as miniatures and provide automated calculations and visual and audio feedback for actions performed by the player and non-player characters. We are taking traditional tabletop role-playing games to the next level, adding a new layer of immersive and intuitive gaming to the Microsoft Surface Table and assisting both GMs and players in enjoying exciting and engaging adventures.

SurfaceScapes… what lies beneath.

 適当に意訳してみました。

サーフェスケープス』は、タッチパネル式で卓上型RPGをサポートするツールです。MS社のMicrosoftSurfaceの上で動きます。D&Dとかその辺のTRPGをとりあえず念頭において開発しました。TRPGにおける戦闘やその他の状況を再現できるデジタル環境を提供します。ミニチュアを置いたり、計算を自動化したり、映像や音をPCやNPCの行動処理にあわせて出したりする仕組みが盛り込まれています。これで伝統的なTPRGは次のレベルへ――つまり、GMとPLとが、どっぷりとその世界に浸かれるくらい直観的なインタフェースによって、TRPGの冒険を遊べるようになるわけですね。

 という感じでしょうか。

 なぜ「サーフェスケープス」という名称なのかについては、こう考えてみました。ひとつの表面(surfaceサーフェス)から、現実と異なるゲームの状況へと脱出(escape/エスケープ)する時、表面からいくつもの柱身(scapes/スケープス)が立ち上がる……ということで、造語 "surface+escape+scapes; surfacescapes" ということなのかもしれません……たぶん。

 二次元から異世界、あるいは二次元から三次元。どっちとも取れて、面白いですね。

 では、実際の動画を見てみましょう。

Surfacescapes Demo Walkthrough from Surfacescapes on Vimeo.

 

 こんな感じです。

 今やiPhoneでサイコロも振れる時代ですものね。今後、こうした機器がどんどん発達して、TRPGでもデジタルとアナログの区別を立てる意味は、徐々に薄れていくのかもしれません。

 ところで、このSurfaceScapesを知ったのは、デジタルゲームの人工知能について研究されている三宅陽一郎さんのブログがきっかけです。三宅さんは、このSurfaceScapesの登場から、次のようにゲームの未来を予見しています。

近い将来、家庭のタッチ型ディスプレイのうち少なくとも一つは平行に置かれるようになり、

何百というボードゲームインストールベースで遊べるようになるだろう。

もちろん、手札を持つタイプのゲームはどうするのか、という問題もあるが、

モバイルディスプレイか、一方向に透明な遮蔽版(プレイヤーからは向こうが見えるが向こうからは見えない)があれば可能だろう。

ボードゲームは大型でかさばるという難点があり、それがまたいいところとは言え、

何百というボードゲームの置き場所に困っている方は大勢いる。

もし、ボードゲームダウンロードインストールでプレイされるようになれば、

何千というボードゲームをPCに入れて遊べる時代が来るだろう。

そういった時代には、ボードゲームデザイナーは、今よりもっと脚光を浴び、

新しいタイプのボードゲームも産まれて来るだろう。

三宅陽一郎,2009,「MS Surface がもたらすボードゲームの革命」『y_miyakeのゲームAI千夜一夜』(http://blogai.igda.jp/article/34277316.html, 2009.12.19).

 それでも将来TPRGが、なお「アナログ」という要素を残すのだとすれば、それは「ゲームマスターがリアルタイムでシナリオを運用し、その調整を行なう」ということと、深く関わってくるのではないかと思いますね。

■高橋志臣,2007,「ロールプレイング・ゲームの批評用語〈セッションハンドリング能力〉

http://www.scoopsrpg.com/contents/hakkadoh/hakkadoh_20070927.html#ability_sh

というわけで

 「デジタルTRPG」の未来を予見させる、二つのインタフェースについてお伝えしました。

すみません

 目が腐ってたのか、ScapesをSpacesと見間違えていました。ごめんなさい。

 また、MS Surfacesについての記述も増やしました。iPadより先行していること、また筐体である高価な製品であることから、BtoBメインの製品であったことは前提として重要です。

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