Iron Maiden ★★★★★

Iron Maiden

Iron Maiden / Iron Maiden

::★★★★★::1980::EMI::pop::rock::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

名作でっす。アイアン・メイデンのデビュー作は間違いなくハード・ロックの傑作の一つであります。このアルバムが後のアイアン・メイデンのアルバムと違うところはやっぱりワイルドさですね。ギター、ドラム、ベース、すべての音が生々しく、ストレートに鳴っているし、楽曲もとにかく勢いがある。特にクライブ・バーのドラムの軽さと疾走感がパンクとメタルの中間ぐらいで良い。そして、このアルバムをメタル・ファン以外にもアピールすることに貢献しているのがポール・ディアノのボーカル。後のブルース・ディッキンソンが正統派のメタル・ボーカリストらしく、声の伸びを重視した「歌い上げビブラート」系ボーカリストだったのに対し、ディアノはパンキッシュでストリート臭がプンプン。歌い上げ型でなく、言葉を投げ出すタイプなんですね。だから、ギターのユニゾン・プレイといったアイアン・メイデンらしいヘヴィーメタルの様式が随所にみられるとは言え、全般としては非常にパンキッシュなアルバムとなっています。特に、冒頭の「Prowler」は名曲。メタルかパンクかなんてどうでもよくなる勢いとパンチがこの曲にはある。ちょっとプログレっぽい「オペラ座の怪人」なんかも、ディアノの塩っからいボーカルだとワイルドに聴こえるから不思議。他も捨て曲一切なしの名盤。後のアイアン・メイデンの「音楽的成熟」なんてクソくらえ! メイデンならこれを聴け! (3/16/03)

Jagged Little Pill ★★★

Jagged Little Pill

Alanis Morissette / Jagged Little Pill

::★★★::1995::Maverick::pop::rock::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

これは同居人ちゃんのCD。ぼく、ブレーンであるグレン・バラードのサウンドと曲があまり好きになれないんだよねぃ。別に悪くはないんだけど、なんというか、穏健でつまらない。もっとも、アラニス・モリセットのボーカルが猛烈にエキセントリックなので、音はこれぐらい凡庸なぐらいでバランスが取れているのかもしれない。モリセットのボーカルって、エキセントリックだけれど、聴いていて心地良いんだよね。声の伸びが良いからかな。モリセットはキャリアの初期は歌って踊れるダンス・ポップ・アイドルとして地元カナダで成功していたのは良く知られていますが、アメリカに出てきて良くここまで変身したものだと妙に感心してしまいます。それぐらいモリセットのボーカルは突き抜けてる。アルバムとして、完成度は次作の方が高い気もするけど、このアルバムはラジオでも頻繁にかかっていたなじみのある曲が多くて、まあ、金字塔的作品ですな。 (3/16/03)

Jordan: The Comeback ★★★★★

Jordan: The Comeback

Prefab Sprout / Jordan: The Comeback

::★★★★★::1990::Epic::pop::rock::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

プリファブ・スプラウトの頂点といえる大作。全19曲。相変わらず、アメリカなど非ブリティッシュなノスタルジックな文化へのオマージュを非常にブリティッシュなセンシビリティーをもって表現しています。わりにシンプルなポップスに徹していた前々作「From Langley Park To Memphis」に対し、こちらはよりロック・ポップスの様式から離脱し、ふつうのロックバンド編成なのにまるでフルバンド/オーケストラの演奏であるかのような、めくるめくような音の風景が広がります。と、こう書くと構えて聴かねばならない気になるかもしれませんが、実際は重厚さは少しも感じられずあくまで軽やかなのがこのアルバムのすごいところ。これもひとえにリーダーのパディ・マカルーンの作曲の才能ゆえ。無理して大作を構築したという気負いよりも、とにかく曲が次から次へとあふれだしてしまったという自然さがあるんですよね。プリファブ・スプラウトはこのあと7年間の沈黙に入り、その後、「Andromeda Heights」という本作と似た感触のアルバムを製作しますが、やはり「Jordan: The Comeback」には比べられないというか、本作の重厚さと軽やかさの絶妙のバランスは決して超えることはできないんだろうなと改めて思ったりします。 (3/16/03)

It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back ★★★★★

It Takes a Nation of Millions

Public Enemy / It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back

::★★★★★::1988::Def Jam::hip hop::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

言わずとしれた、革命的一枚。ヒップホップ史上に置いて革命的であるのと同じくらい、ヒップホップ以外の世界(特にオルタナティブ・ロック、そしてクラブ音楽)にとっても革命的な一枚であったと言えるでしょう。英語がすっと耳に入ってこない日本人としては、プロデューサー・チームのボム・スクワッド(ハンク・ショックリー&エリック・サドラー)のサウンドがとにかく耳を惹きます。特に、イントロの曲の次の2曲目から5曲目までの4連発(「Bring The Noise」、「Don't Believe The Hype」、「Dold Lampin' With Flaver」、「Terminator X To The Edge Of Panic」)のインパクトがすごすぎる。ヒップホップ史上だけでなくポピュラー音楽史上さんぜんと輝く名曲「Bring The Noise」は、サックスのフレーズのループがまるでスラッシュメタルのギターのように重い。チャックDの冒頭の「Bass! How low can you go?」というフレーズがあまりに有名。続く「Don't Believe The Hype」は、タイトルを連呼するフレイヴァー・フレイヴの声のサンプリング・ループがこれまた激有名。続く「Cold Lampin' With Flavor」はそのフレイヴァー・フレイヴのソロ曲。冷静で知的なチャックDのバリトン声と対照的に、教育があまりなさそうな道化的ドキュソ、フレイヴァー・フレイヴのひきずるようなチンピラっぽいラップの、崩れそうで崩れない絶妙の与太ったリズムは本当に最高。バックトラックはボム・スクワッドの最高傑作かも。緻密につくりこまれたサンプリング・ビートはほとんど現代芸術。そして、DJのターミネーターXをテーマにした「Terminator X To The Edge Of Panic」。イントロの無理矢理な「フラッシュ・ゴードンのテーマ」(by Queen)のカットアップが笑えます。しかしその後は腰のある重いビートと高周波ノイズの組み合わせによるハードコアな音。音数の少なさが逆に不気味なカッコ良さにつながっています。他の曲も良いのですが、最後まで聴くと疲れるというのが正直な感想。それほど濃い一枚です。 (3/16/03)

[追記]iTS USのは1曲欠け…しかもベストトラックの一つ「Terminator X To The Edge Of Panic」が。たぶんイントロの「フラッシュ・ゴードンのテーマ」の馬鹿馬鹿しいベタなサンプリングが権利関係をクリアしなかったんだろうな…。iTS JPのは全曲揃っていてしかも1050円という安さ!(6/22/06)