フィッシュボーンについて

Fishbone

フィッシュボーン (1979結成、1985年にデビュー)
genre: pop/rock

【概観】

フィッシュボーンはミクスチャーロックおよび、ブラックロックのパイオニアの一つであり、スカパンク先駆者でもあります。

リーダーはボーカルのアンジェロ・ムーア。全盛期の中心メンバーは、ケンドール・ジョーンズ(g)、ジョン・ノーウッド・フィッシャー(b)、フィリップ・フィッシュ・フィッシャー(dr)、クリス・ダウド(key)。

超テンションの高いライブパフォーマンス、確かな演奏テクニック、スカ、レゲエ、ファンク、パンクからヘビーメタルまで、広範囲のジャンルを自由自在にかけめぐるその音楽性などから、カルト的な人気を集め、評論家の受けも良いバンドだったのですが、80年代後半のミクスチャーロック・ブームの際に、フェイス・ノー・モアやレッド・ホット・チリ・ペッパーズジェーンズ・アディクションがセールス的にブレイクするのを尻目に、なぜかフィッシュボーンはブレイクすることがありませんでした。黒人だから? 濃すぎるから? ラジオ向けじゃないから?

1988年に、カーティス・メイフィールドの「フレディーズ・デッド」のカバーを含む「Truth And Soul」、1991年に最高傑作となる「The Reality Of My Surroundings」を発表し、評論家からは高い評価を受けますが、前者がビルボード153位、後者でもようやく49位と、ブレイクせず、その後はポロポロとメンバーが抜けていったこともあり、失速してしまいます。

ロック史上、重要なグループであると同時に、非常に不運なバンドです。

(1/29/07)

Fishbone ★★★★

Fishbone

Fishbone / Fishbone

::★★★★::1985::Columbia::pop::rock::
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■ これぞ原点 痛快なスカ・パンク

これはEP扱いなのかな? フィッシュボーンのデビュー作です。内容はスカ・パンクです。スペシャルズよりももっとロックっぽいというかパンクっぽいというか。ノーダウトの祖先というか。とにかくすごいパワーで押しまくります。曲も粒ぞろい。ただ、EPだから?しょうがないのかもしれないけど、短いですね。あっと言う間に駆け抜けていってしまう。

ジャケがいいね。(1/29/07)

Truth And Soul ★★★★

Truth & Soul

Fishbone / Truth And Soul

::★★★★::1988::Columbia::pop::rock::
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■ 転機となった初期の代表作

この作品はフィッシュボーンの転機となった作品であり、代表作でもあります。

冒頭のカーティス・メイフィールドの「フレディーズ・デッド」の斬新なカバーからインパクトありますね。なんと、メタルなのです。これまでのパンク色に加えて、本格的にヘビーメタルを導入したのがこのアルバムです。ただ、後のアルバムに比べるとちょっと音が軽いと言えるかもしれません。もっとも、後のアルバムのヘビーな音よりこれぐらいの軽さがフィッシュボーンらしいと感じる人もいるかもしれません。

このアルバムのもう一つのハイライトはtr7「Bonin' in the Boneyard」ですね。その後コンサート・アンセムになった曲で、メタル+ファンクです。とにかくノーウッド・フィッシャーのベキベキのベースがかっこ良すぎる。はっきり言ってレッチリなど、他のファンクメタル・バンドなんて目じゃないと思うんですけどねえ。このカオス的な感じが受けないのかなあ。(1/29/07)

The Reality Of My Surroundings ★★★★★

The Reality of My Surroundings

Fishbone / The Reality Of My Surroundings

::★★★★★::1991::Columbia::pop::rock::
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ブラックロック史上燦然と輝く名作

デビュー当時はひたすらパンク色が強かったフィッシュボーンですが、前作の「Truth And Soul」の「Freddie's Dead」「Bonin' In The Boneyard」といった曲でハードロック色を押しだし、さらにこのアルバムではハードロック・サウンドを完成させています。それは冒頭のtr1「Fight The Youth」のかっこええヘヴィーメタルなイントロからして明らか。しかもボーカルがアクの強いアンジェロでなく、素直なボーカルスタイルのギターのケンドール・ジョーンズなのね(たぶん)([追記 1/29/07]ボーカルはキーボードのクリス・ダウドでした。訂正します)。だから、すごくまっとうなハードロックに聴こえる。

ケンドール・ジョーンズの作曲の貢献はこの曲とアルバムラストの「Sunless Saturday」の二曲に顕著というか。この「Sunless Saturday」も実にハードロックなのですが、非常に単純で良い曲で、即フィッシュボーンのコンサートの定番曲となった曲です。イントロがアコギをかきならしで、ライブではこの間にボーカルのアンジェロが「ツナミ! ツナミ!!」と絶叫し、雷鳴のようなドラムとともにハードロックギターリフが炸裂するところで客席にダイブ! するんですねぃ。超カッコいいです。

その他にも、このアルバムにはtr5「Housework」という名曲が収録されています。この曲はスカでかつファンクな曲で、フィッシュとノーウッド・フィッシャーのリズム隊がファンキーすぎます。tr9「Pressure」はコンサートの定番ですね。すごーくポップなスカ、tr11「Pray To The Junkiemaker」、スライ的tr12「Everyday Sunshine」も良いですねー。

他にも聴きどころが満載。なんといっても全18曲ですからね。息つく暇もない。あまりに濃すぎて、内容的に最高なのに商業的ブレイクにはいたらず、一方ではフィシュボーンを薄めたようなレッチリがブレイクしてしまった。なんてこったい。 (2/16/04)

Give A Monkey A Brain ★★★

Give a Monkey a Brain & He'll

Fishbone / Give A Monkey A Brain And He'll Swear He's The Center Of The Universe

::★★★::1993::Columbia::pop::rock::
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■ 迷走のはじまり

このアルバムからフィッシュボーンは低迷を始めます。フィッシュボーンと言えば、パンクでスカでファンクで、それにヘビーメタル・フレーバーがふりかかっているのが持ち味なんですが、このアルバムではぐっとメタル寄りになっています。しかし、おそらく失敗だったのは、フットワークが重くなってしまったことでしょうね。悪くないんだけど、「あれ、いつもの明るく痛快なフィッシュボーンは?」という感じで。

前作で「これで売れなきゃ嘘でしょ」というほどのクォリティーを達成したのに売れなかったことで迷いが生じたのか、あるいは状況に対していらだちを感じたのか。

このアルバムの失敗でレコード会社から首を切られ、また、オリジナル・メンバーのケンドール・ジョーンズ(g)とクリス・ダウド(key)が脱退してしまいます。二人とも重要メンバーだったのに…。(1/29/07)

Chim Chim's Bad Ass Revenge ★★★

Chim Chim's Badass Reven

Fishbone / Chim Chim's Bad Ass Revenge

::★★★::1996::Rowdy::pop::rock::
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■ メタル色そのままにタイトになったのはいいが…

捨てる神あれば拾う神あり。R&Bの仕事で有名なプロデューサーのダラス・オースティンに拾われ、オースティンのレーベルであるラウディからアルバムを出すことになります。プロデュースもオースティン。

てゆうかなんでダラス・オースティン? …という気がしないでもないですが。きっとオースティンも個人的にフィッシュボーンが過小評価されていることに歯がゆい思いをしていたんだと思います。

しかし、本作もコケました。前作よりもスカ色が戻っていますが、やはり全体にはメタル色が強いかな。別にメタル色が強くても構わないんですが(「The Reality Of My Surroundings」はかなりメタルだったし)、曲が良くないんですよね。特に、アルバム前半が良くない。何回聴いても全然頭に残らないんだよねえ。メロディがすごく分かりにくい。

ただ、中盤のtr7「Alcoholic」、tr8「Love...Hate」といった、スカ・レゲエ色のある曲でちょっと持ち直すかな。やっぱりスカやレゲエが持ち味なんだよ、このバンドは。また、ハイテンション・ハードコアパンクなtr13「Rock Star」もかなり良い。ロック・ビジネスでの白人偏重を批判した歌詞は後ろ向きでどうかと思うけど、魂の叫びとばかりにシャウトしています。

しかし、最後の10分に及ぶ「Nutmeg」がまた魅力のない曲で…。駄目じゃん。(1/29/07)

The Psychotic Friends Nuttwerx ★★★★

Psychotic Friends Nuttwerk

Fishbone / The Psychotic Friends Nuttwerx

::★★★★::2000::Hollywood::pop::rock::
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■ 肩の力が抜けた「復帰作」

ミクスチャ・ロックおよびブラック・ロックのパイオニアでありスカコアの第一世代、フィッシュボーンの久々の新作(フィッシュボーン&ファミリーフッド・ネクトペリエンス名義)。

ここ2作ほど低迷していたフィッシュボーン、絶頂時にさえ商業的にすばらしく成功していたとはいいがたいだけに、やはりというかこのアルバムではインディー落ちしてしまいましたが、しかしこれがけっこう良いんですよね。インディー落ちしてふっきれたのか、以前の明るさとユーモア精神が復活しているのが良いです。Pファンクテイスト満載のtr1「Shakey Ground」(70年代テンプテーションズのカバー)からしてナイス。続くtr2「The Suffering」もスカテイストながら、腰のすわったファンク。ということで、全体的にパンク色やヘヴィーメタル色は後退し、どちらかというとレイドバックした横のりで攻めています。この成熟のしかたが良いですねぃ。スライのカバーtr4「Everybody Is A Star」の余裕も良い。しかもこの曲、フィッシュボーンの妹分とでも言うべきノー・ダウトのグウェン・ステファニ、フィッシュボーンの父とでも言うべきジョージ・クリントンやリック・ジェイムズなどが友情参加していて、泣けますね。しかも最後にいきなりスラッシュ・メタルになるフザケた展開(しかもフィドルのソロが乗る)もフィッシュボーンらしい茶目っけで良いな〜。こんなフザけたことやるから売れないんだろうけど。全体に曲も良いです。

決め手となるキラーソングがあればもっと良かったけど、でも捨て曲が一曲もないから良いでしょう。あんまり時流どうのこうのという音ではないんですが、無理に時代に合わせる必要もないということ。これからも頑張ってほしいです。スカとファンクをこんなに自然に融合できるのはこいつらしかいない! (2/16/04)

(Live concert @Harper's Ferry, Allston, Massachusetts, 6/11/2001) ★★★

Fishbone / (Live concert @Harper's Ferry, Allston, Massachusetts, 6/11/2001)

::★★★::2001::--::pop::rock::

■ パワー健在 PAの調子なのか音のバランスが悪いのが気になった

えらい昔のライブですが、思いだしたのでここに記録。Allstonという街は、まあ、ボストンの一部ですね。ちょっと中心からはずれてますが。このHarper's Ferryというライブハウスに行くのははじめてだったんですが、けっこうデカいところなんでびくーり。良いぐあいにボロくてワイルドで、かつデカい。ステージの裏手に安っぽいビリヤード台が数台ある設計はいかがなものか。で、客もいっぱいでしたね。よって疲れました。音があまりよくなくて、これってライブハウスの構造の問題かも。ちょっと音の分離が悪くて、あとベースが低音鳴りすぎでメリハリがなく、そして、ギターが良く聴こえないという感じでありました。メンバーがけっこう変わってしまったのも残念。特にキーボードがいなくなったのはイタい。その変わりと言ってはなんですが、ボーカルのアンジェロ君がテルミンを演奏してましたが。新ギタリストはなんかメタルおたくっぽい人で、ぼくはメタルおたくっぽいギタリストはけっこう好きなんですが、いかんせんギターの音が良く聴こえない。もうちょっとちゃんとした音響設備で聴きたかったですねぃ。でもフィッシュボーンいつもこんなもんなんのかな。とりあえず元気いっぱいなみなさんでありました。アンジェロ君は当然客席にダイブしまくり。あとベースのノーウッド・フィッシャーの腹がすごかった。 (2/16/04)