DYNA VERITAS & PANHARD DYNA X


Panhard 744cc flat-twin.


 VERITASは、第2次大戦後に元 BMWのエンジニアであり、モーター・サイクルのレーサーであった Ernst Loofが1946年に西ドイツの Badenにて BMW328をベースとしたレーサーを制作したのが始まり。その後 BMWを元に様々なレーサーを世に送り出し、主に2リッター・クラスのスポーツカーとF2で活躍。50年代末まで西ドイツの国内レースにその名を残しております。

 DYNA VERITASは、その VERITAS社がフランスの PANHARDと提携して、PANHARD DYNA Xの鋼管フレーム・シャシーにモディファイした独自のボディを架装したもの。ボディを担当したのは Stuttgarter Karl Baurで、今日でも BMWカブリオレを担当。所詮は大衆車であった PANHARD DYNAがベースであったにもかかわらず、Volkswagenよりもすこぶる高価だったので商業的には大失敗で1953年の生産中止までに僅か176台が造られたにすぎない。その希少な DYNA VERITASにルマン・クラシックの駐車場で遭遇するとは奇跡に近いことでありました。




 ところで、ベースとなった PANHARD DYNA X(1948‐1954)はこんなクルマ。

 設計したのは前回紹介した Hotchkiss Grégoireの設計者 Jean-Albert Grégoire。Renault 4CV同様に、第2次大戦中から戦後を睨んで小型大衆車の設計をしていたのであります。戦後、それに目をつけていたのが6気筒の高級車メーカーであった Panhardで、その販売権利を買取ました。それは革新的な技術がこれでもかと投入された画期的な小型大衆車であります。スカットルと一体化されたツイン・チューブ風のフレームから、ボディまですべてアルミニウム製! そのため Renault 4CVよりも1回り大きかったのに、車重は550kgと 4CVよりも20kgも小さかったのでした。
 駆動方式はFFの先駆者である Grégoireの設計ですから勿論前輪駆動。その前輪を駆動するエンジンは空冷水平対向OHV2気筒 610cc 24hp/4000rpm。 1949年には 28ps/5000rpmまでパワーアップされております。軽いアルミのボディが良好なパワー・ウェイト・レシオを達成。その当時で最高速度 110km/hとは立派なものです。40年代後半のツーリングカー・レースで活躍しました。最終的に、851cc 38馬力で最高速度 130km/hのエンジンが搭載されています。
 このように高性能な PANHARD DYNA Xでしたが、ライバルである Renault 4CVの価格45万フランを考慮して、44万フランという戦略的な価格設定は、少なからず PANHARDの経営に影響したと言わざるを得ません。なんせ製造過程で電気を食う高価なオール・アルミニウムでしたから。