Musée automobile de la Sarthe  1952 SOCEMA Gregoire Prototype Turbine

 1952年10月に開催されたパリ・サロン。会場を訪れた人々を、あっと驚かせたのが未来からやってきたシェイプのこのクルマであった。しかもエンジンはガスタービンであったのである。
 当時の航空機産業はターボジェットターボプロップ・エンジンの開発を推し進めていた。 SOCEMAは航空機と関連部品のメーカーであり、1949年のパリ航空ショーでは複数のジェットエンジンを展示していた。タービンの開発技術者は、これをクルマのエンジンとして利用することに興味を持っていた。とてもコンパクトなタービンを開発すると、クルマに搭載するというアイデアが生まれた。このアイデアを実現するにあたり、前輪駆動の等速Uジョイント発明で有名な技術者 Jean Albert Gregoireにその設計は委ねられることとなる。


 ボディはアルミニウム製である。製造は今はなき自動車メーカーの Hotchkiss社が担当した。ミッションは Cotal製電磁式ギアボックスを採用している。搭載されたタービン・エンジンは 130kgで、理論上は車重 1300kgのこのプロトタイプを最高速度 200km/hまで加速できるようになっていた。最終的な生産決定はテスト終了後となったが、技術的な問題が山積していた。すなわち、高熱の温度、劣悪な燃費などが、自動車搭載用タービンエンジンを設計するに当たり克服しなければならなかったのだ。そしてその開発には莫大な費用がかかることが懸念された。そしてもう一つの問題が、この高度な加速性能に耐えうる高性能ブレーキの開発である。
 まもなく、公式なテストがジャーナリストを招待して行われたが、すぐに SOCEMA Gregoireの開発は中止が決定された。