動手帳天上臨

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■0.あらすじ
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 時は流れ、年の変わり目の季節となった日陰の地。
 各地全域で雪が積もり、神明神社も例外なく白銀に染め上げられた。

 人里には、はしゃいで外に飛び出す者、家で丸くなっている者さまざまで
 あるが、此処はというとやはり参拝客など来ない。ある意味で此処には季
 節感が無いと言える。

 「やっぱり来ないなあ、お賽銭箱へのルートにある雪だけは掻いておいた
  のに」

 「暇そうだな、巫女」

 「お菓子食べます?」

 「いらないわよ、と言うよりいつまで居るのよあんた達。居座るんだった
  らお賽銭でも入れておきなさい」

 縁側で足を振りながら暇そうな素振りを見せる神巫。
 先の死亡異変を解決した神巫だったが、それで信仰が回復する事は無く、
 代わりに異変に関わった妖怪やらなんやらに好かれてしまったのだ。

 特に、人里の人の数に未だ慣れていないお菓子妖怪、八童蝦煎と、それに
 付き添っている形の同じくお菓子妖怪、一基満足はかなりの頻度で神社を
 訪れる。
 神巫にとっては参拝客でもなんでも無いため、ただの迷惑なモノである。

 「妖怪に賽銭求めるとか、世も末だな」

 神巫がその声の方へと視線を向けると、そこには神社の領内に佇む一人の
 少女の姿があった。鳴神黒奈、詐欺師である。

 「それならあんたが入れなさいよ、こっち今ジリ貧なんだから」

 「私はケチでは無いからな、五円位は入れておいてやる」

 「それをケチって言うんじゃないの?」

 「ああ、そうだ、お前こんな話知ってるか?」

 「勝手に話を逸らさないで」

 「まあ聞けって、何か最近妙に地響きが多くてな、山の方じゃ雪崩も起き
  てるらしいぜ」

 「・・・それで?」 

 「この話じゃダメか、ならお前この間隕石が落ちたって知ってるか?」

 「・・・・・それは知ってるわよ、里中大騒ぎだったもの」

 一昨日程、空から森に目掛けて謎の飛行物体が落下してきたのである、里
 の者はたちまち大慌てで、噂が流れに流れた挙句、何の根拠も無く隕石が
 落下したという事になっていたのだ。
 神巫と黒奈も、この里の騒ぎを嗅ぎ付けて噂自体は把握している。

 「それが今になってどうしたのよ」

 「何でも落下地点に向かった物好きがいたらしい、そいつらが言うには、
  その落下地点には隕石なんて無くて、代わりに教会があったみたいだ」

 「教会!?」

 驚いたように立ち上がる神巫。

 「そう、教会だ!あくまでこれは私の可能性論だが・・・年末も近いこの神
  社に参拝客が一人も来ないのは、その教会が信仰を独占してるんじゃない
  かと睨んでいる・・・。念を押すがあくまで私の憶測だ、どう出るかはお
  前に任せるが・・・」

 「・・・そこまで言われて調査しない手は無いでしょう?」

 そう言って神巫は雪の降る空へと飛び出していった。

 「やれやれ、信仰が絡むとあいつもちょろいな、この神社元から人来ないの
  に」

 「かなり手馴れているな、詐欺師」

 「まあな、これで面白くなったぜ。お前らはどうする?私は神巫とは別の調
  査をするつもりだが?」

 「付いてって大丈夫なのか?」

 「大丈夫だろう、たぶん」

 「それなら私は巫女の方へ行くよ、楽しそうだし」

 「じゃあ満足、お前は私と来い、私のサポートをしたまえ」

 「え?神社の留守はどうするんですか?」

 「ああ大丈夫だ、ねぼすけ神とざしきわらしがいるからな」

 「んん?」

 「なんだ知らないのか、まあいいや、機会があれば説明してやる」

 こうして、蝦煎は神巫の後を追い、黒奈と満足は別の目的で調査に向かっ
 た。



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■1.キャラ設定
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◇プレイヤーキャラサイド

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 ○伊沙弥の巫女
  伊沙弥 神巫(いざなみ いちこ)
  izanami itiko

  種族:人間
  能力:霊力を操る程度の能力

 賽銭箱に続く雪だけ除ける地味に几帳面な巫女さん。
 相変わらず信仰は回復しないがめげない巫女さん。

 話に信仰が絡むと周りが見えなくなるのか、黒奈の口車にまんまと乗せら
 れ、隕石が落下したと噂されていた箇所にあったという教会の調査に向か
 う。

 今回はただの調査であり、異変じゃない・・・・?


 ○興味本位の河童
  八童 蝦煎(やわらべ かいり)
  yawarabe kairi

  種族:河童
  能力:依存させる程度の能力

 依存の能力を操るお菓子妖怪。
 病み付きになりそうなスナック菓子を常備している。

 ただ神社に居るだけではあまりに暇だったため、神巫に同行する事に。

 
 異変以降、人間は怖くないものと認識したため、人間の言動に進んで興味を
 示すようになる。何故神巫に同行したのかは、黒奈に比べてとっつきやすい
 からである。黒奈の事はどうも苦手らしい。

 ○天性の詐欺師
  鳴神 黒奈(なるかみ くろな
  narukami kurona

  種族:人間
  能力:電気を操る程度の能力

 まんまと神巫を調査に乗り出させた性悪天才詐欺師。
 人里を活動拠点とするため、人里で流れた噂や情報などにはかなり詳しい。
 
 面白い情報が手に入ったため、神巫にその情報を伝えると案の定面白そう
 な事になった。が、今回は同行しない。
 
 一基満足をつれて神巫とは別に『地響きの調査』に出る。が、
 連れて来た理由は腹が減った際の食料供給である。

 
 ○半ば強制の妖怪
  一基 満足(ひともと まんぞく)
  hitomoto manzoku

  種族:妖怪
  能力:心を満たす程度の能力 

 人里など、日陰の地の各地で軽快なステップを刻みながらお菓子を配って
 回る妖怪。蝦煎とは仲が良い。


 黒奈によって強制的に同行させられる事となった哀れな犠牲者。
 何のために同行させられているのか、黒奈の調査内容などがまるで分かっ
 ていない(というか説明されてない)が、それでも黒奈に一応付いていき
 、所々で満足バーを食べる事を勧める。如何なる状況でも全くブレない。

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◇敵キャラサイド

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 ○1面ボス 愉快な合体戦死
  武九旅 ヨミ(むくろ よみ)
  mukuro yomi

  種族:妖怪(がしゃどくろ)
  能力:合体する程度の能力

 手ごろな白骨や怨霊を求めてうろうろする妖怪。
 怨霊や屍と合体して力をつけるが、その分体も大きくなり、合体元に応じ
 た鎧や刀と言った妙なオプションもついてくる。
 あまり合体しすぎると、自分の体重を支えきれず動けなくなる。
 そのため、使い終われば合体は解除する。
 
 ちなみに中身はほぼスカスカである他、頭脳もほぼスカスカで、
 あまりあたまはよろしくない。


 屍や怨霊を求めてその場をうろついていた所で人間と遭遇してしまった不
 幸な通りすがり妖怪。

 遭遇した人間を戦死させて、自分の一部にしようとと意気込むが、まあア
 レです相手が悪すぎました。残念。


 ○2面ボス 修道吸血樹
  十慕 木子(じゅうぼ ここ)
  zyuubo koko

  種族:妖怪(ジュボッコ)
  能力:血を啜る程度の能力

 大きな戦いのあった場所に生える木が大量の血を吸って妖怪化した。
 「母」と呼ぶ存在によって、自由に動く事のできる肉体を授けられ、
 その者の元で修道女として修行している。
 争いは嫌いだが、人間ではない者の血を吸ったのが原因で時折好戦的に
 なる。

 修行中の身だが、血が欲しくなる時があるらしく、
 その度に頭突きで邪念を払おうとする。

 ちなみに彼女はスモモの木であり、時期が来るとしっかり実が生る。

  
 「母」の頼みでとある物を探しに外に出ていた所で人間達と遭遇する。
 情報の提示を求める人間達に最初は逃げの姿勢だったが、突如豹変して
 木子が勝てば情報提示、負ければ血をもらうという条件で弾幕ごっこ
 持ち掛けて来る。

  
 彼女が妖怪となる前、一つの樹木だった頃、地上で繰り広げられた白い
 翼と黒い翼を持った天上の者達の戦いがあった。

 天上の者達は激しく争い、やがて白い翼を持った者が勝利を収めた。

 屍となり、多くの血を流した黒い翼の者達。木子はその者達の血を吸い
 妖怪となった。天上の者達の血は人間のものより強大な力を彼女に与え
 、時折自我さえも崩壊させてしまう。

 暴走した木子は、その場に居た天上、地上のあらゆる生命の血を見境無
 く吸い尽くした。慌てふためく者達を他所に、白い翼を持つ者の長が前
 へと歩み、木子の傍で立ち止まる。

 木子は言う。自我は保っているようだった。

 「逃げてください、このままでは貴方も殺してしまいます」

 だが長は引く事無く、木子にこう言った。

 「構いません、貴方を聖戦に巻き込んでしまった、私はその報いを甘ん
  じて受け、悪魔の血による呪縛から貴方を解放します」

 容赦無く襲い掛かる木子の無数の枝は長の体を捕らえ、確実に血を抜き
 去っていく。
 苦痛に耐える長だが、呼吸を整え、力を振り絞り、手に持つ秤を天に掲
 げ高らかにこう言い放った。

 「我が名はミカエル!今こそ神の御名を借り、力を代行せん!この者の
  血の呪縛を解き放ち、生命としての形を与え給え!!」

 長の言葉と共に秤からとてつもなく眩しい極光があふれ出す、その光を
 浴びた木子は激しく苦しみだし、体がゆっくりと崩れていった。

 次に目が覚めると、木子は大きな建物の中に居た。
 地上の生命と同じ姿となっており、体は自らの意志の通りに動く。
 目を覚ました事に気がついた長は、木子の元に駆け寄り、好きなように
 生きて良いと言った。だが木子は答えた。

 「好きなようにして良いのならば、お願いがあります。私を貴方様の傍
  に置いて下さい、私には今、行くべき所も成すべき事もありません、
  血の呪縛から解き放ってくれた貴方様の元に居る事が、今の私にとっ
  て最大の本望なのです」

 天上へと帰還しようとしていた長は少し困ってしまう。彼女が取り込ん
 だ悪魔の血は、呪縛から開放されただけであり、それそのものは彼女の
 中に未だ存在する。天上の者にとって穢れでしかない悪魔の血を宿す木
 子を天上へ連れて行くのは、彼女自身が危険に晒されてしまうのだ。

 そこで長は提案した。

 その内容は『次に私や天上の者が地上に降り立つまで、この教会を守り
 続けて欲しい』というものである。次いつ降り立つのか分からないため
 、『嫌になった場合は構わず放棄しても良い』という条件もつけた。

 この提案に木子は承諾し、天上の者達は天へと昇って行った。

 そして数百年が経ち、天上から舞い降りた二人の天使を迎えたのは。


 嫌気を射す事無く教会を守り続けた木子であった。
  
  
 ○3面ボス 圧し折りお菓子妖怪
  壱拾壱 御門(とおひと みかど)
  toohito mikado

  種族:妖怪
  能力:あらゆるものを圧し折る程度の能力

 満足、蝦煎に続く新手のお菓子妖怪。彼女は細い棒状のお菓子を常時携
 帯している。能力により、いかなるものも折る事ができるが、最も折る
 事が多いのは「話の腰」。
 お菓子を束で瞬時に食べる特技を持ち、良く自慢してくる。ウザい。


 突如現れ、人間に同行しているお菓子妖怪に突っ掛かって来る。

 お菓子妖怪からは、すぐ話の腰を折るためにまるで会話にならないから
 と相手にされていない。

 だが彼女は嫌になるほどしつこかった。ウザい。


 ○4面ボス 聖夜の来訪者
  サンタ・ディーサムベル
  santa deli-samuberu

  種族:サンタクロース
  能力:プレゼントを届ける程度の能力

 真夜中に人の家に上がり込んでは置き土産を仕掛ける赤服一族の一人。
 決まった名前は無いため、族称である「サンタ」と名乗っている。
 最近は小さい子さえも自分の存在を信用してくれないため、少々悩んで
 いる。

 普段は教会にその身を置いてもらっている。クリスマスでなかろうと
 年中赤い装束のままである。

 実はサーフィンができる。しかもかなりうまい部類。 

 
 クリスマスの時期だからか、各地を右往左往している伝承の通りの格好
 をしたサンタクロース。ぼんやりしていると衝突しかねない。

 教会への道を聞く人間達だが、サンタの勝手な提案で息抜きとして弾幕
 をプレゼントされる。
 
 迷惑な話だが、いつもサンタにお願いを聞いてもらってるのでたまには
 サンタのお願いも聞いてあげましょう。


 ○5面ボス 予言と啓示の聖者
  天使 リエ(あまつか リエ)
  amatuka rie

  種族:天使
  能力:神の声を代弁する程度の能力

 「母」と呼ばれる存在と共にこの地に降り立った天使と呼ばれる種族。
 天上にいるという神の声を聞き、代弁する力を持つ。
 名前は「天使」と「自らの名」を捩った仮名。
 落ち着いた物腰で、彼女にも「母」のような包容力がある。
 
 悩みなどを相談すると、嫌な顔一つせず話を全て聞いてくれて、
 さらに能力を駆使して的確な答えを導きだしてくれる。


 儀式の準備を執り行う「母」の邪魔をさせない為に教会への侵入者を
 追い払おうとする。

 噂の中の隕石の正体は彼女と「母」の事、あくまでも『舞い降りた』
 なのだが、舞い降りたと言うには人間の物差しだとあまりに速すぎた。
 (着陸寸前で一度空中で静止してからゆっくり降下しているため、
  一応舞い降りるであっているのかもしれない。)

 
 ○6面ボス 翼をもがれた天上の長
  御前神 ルエ(みまえがみ るえ)
  mimaegami rue

  種族:人間
  能力:神の摂理を代行する程度の能力

 「母」と呼ばれ慕われている聖職者。
 木子が間違えて「母」と呼び、そのまま母と呼ばれる事になった。
 彼女自身も結構気に入っているらしい。
 神に成り代わって神の力を行使する力を持つ。
 
 本来は天使なのだが、今回大地に降り立つ際に翼を失い、天使としての
 力が大幅に低下しているが、それでも並外れたパワーを秘めている。
 リエ同様、名前は仮名である。


 天上の者にとって、あるいは地上の者達にも災厄と成り得る者の封印の
 ために地上に降り立ち、封印の儀の準備を行っていた。

 仮に復活してしまった時のために、木子に過去の戦いで使用した剣と盾
 の捜索を依頼していたのだが、未だ発見できていない。


 侵入者達が現れた事で、儀式が間に合わなくなり、災厄の象徴を復活さ
 せてしまう事になる。


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■2.エキストラストーリー
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 神明神社
 調査を終えた神巫と黒奈が話している。

  神巫 「終わってから気が付いたんだけどさ」
  黒奈 「何さ」
  神巫 「噂でようやく存在が知れ渡った程度の教会に信仰が奪われる筈
      無いわよね」
  黒奈 「もしかして今に至るまでずっと気が付いてなかったのか?」
  神巫 「まんまとしてやられたわ・・・!!」

 「そもそも奪われる程の信仰が無い」というセリフを押し殺し、
 黒奈は神巫を嘲笑った。
 そこにお菓子妖怪の二人もやってくる。

  蝦煎 「まあ別に面白かったからいいんじゃない?」
  神巫 「あんたは随分暢気なものねぇ・・・」
  蝦煎 「巫女が信仰に依存しすぎなだけじゃないのか」
  満足 「私は振り回されていただけだった気がしますけど・・・」 
  黒奈 「何言ってんだ、お前は私の腹が減った時に役にたってくれただ
      ろ?」
  満足 「うーん?」
  神巫 「あ、あれは・・・」 

 神巫が真っ先にとあるものに気が付く、それに反応して全員が神巫と同じ
 方を向いた。
 そこには天使 リエと御前神 ルエの姿があった。

 だがその姿は既に満身創痍のようだった。

  神巫 「どうしたんですかその姿!?何かあったのですか!?」
  リエ 「・・・・・木子にやられました」
  黒奈 「は?木子って、あの修道女の事か?どう考えてもお前等を倒せ
      るような器じゃないだろう、あいつ」
  ルエ 「・・・・・」
  リエ 「母様・・・こうなれば、この者達に任せるしか無いのでは、
      そもそも災厄が目覚んとしている原因ははこの者達の・・・」
  ルエ 「人の責任にしてはなりませんよリエ、これは私が注意を怠り、
      判断を誤った故の結果なのです」
  リエ 「申し訳ありません・・・」
  黒奈 「いいからとっとと話せ、モタモタしてるのは嫌いなんだ」
  
 リエとルエは互いに目で会話し、
 考えが纏まったのか、ルエの口がゆっくり開く。

  ルエ 「本来なら巻き込む訳にはいかないのですが、已むを得ません
      あなた方にお願いがあります、どうか教会へ向かってほしい
      のです、このままでは災厄が目覚めてしまう・・・」
  神巫 「・・・さっきから災厄ってなんなの?」
  リエ 「厚かましいとは思いますが今は説明してる猶予も無いのです
      とにかく、それ程に危険なものだと認識していただければ」
  黒奈 「ようはもっかい教会に飛んでいけばいい訳だな、よっし、
      行くぞ満足!付いて来い!!」
  満足 「あ、やっぱり私も行くんですか」

 さっさと飛んでいってしまった黒奈と満足を他所に、神巫と蝦煎は天使
 達を縁側まで運び込む。
 
  神巫 「全く黒奈ったら・・・怪我人労わるくらいできないのかしら」
  蝦煎 「諦めろ、詐欺師はそういう人間だ」
  神巫 「まあ、そうなんだけどね。あんたはどうする?私も教会に向か
      うつもりだけど」
  蝦煎 「私も行くよ、とりあえず巫女に付いて行けば面白いのがわかっ
      たから」
  神巫 「それはどうも」

 こうして神巫と蝦煎も教会へと向かう。神巫はいつに無く戦慄していた。
 今まで感じた事の無いような邪悪な気を感じるからである。

 「ただの調査」は、「異変」へと成り代わろうとしている・・・。
 
 気がする・・・。

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◇敵キャラサイド

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 ○エキストラ中ボス  妖怪吸血樹
  十慕 木子(じゅうぼ ここ)
  zyuubo koko

  種族:妖怪(ジュボッコ)
  能力:血を啜る程度の能力

 「災厄」の復活が近い事により、肉体に宿った悪魔の血が共鳴。
 青白い肌と黒い翼を持つ姿となった木子。
 ルエに依頼されていた筈の剣と盾を身に着けている。

 共鳴によりあふれ出る力を制御できておらず、自我も失っているため、
 教会へと入ってきた人間達に対して問答無用で襲ってくる。


 ○エキストラボス  神に抗った災厄
  忌数 反理(いみかず はんり)
  imikazu hanri

  種族:悪魔(サタン)
  能力:摂理に反する程度の能力

 神の理念を否定し、天上を襲撃した元天使。
 悪魔の王の証である「サタン」の名を持つ。

 大昔に天使により施された封印を破り、復活した。
 天上、あるいは地上に対しても災厄となり得る存在。

 ・・・なのだが、永きに渡る封印によるものか、それともルエに一度負け
 て懲りたのか、かなり毒気が抜けている。フリとかではない。

 本気で争う事に対して全く気力が起きないため、「遊び」である弾幕ごっ
 こを非常に気に入っており、復活して早々、人間達に勝負を持ちかけて来
 る。


 天上に一人、神の言葉に理解を示さない天使がいた。
 無論、他の天使は皆、神のお膝元である。
 故に彼女を蔑む者も多かった。
 だが、それでも彼女は神の思想に対して、「はいそうですね」などと言う
 事は全く無かった。

 そしてある日、彼女と、彼女に賛同する者達が、神への見せしめとするた
 めに天上を襲撃した。

 反理と賛同者達の猛攻により崩れ行く天上。

 天使達はどうにか防ごうと試みるが、反理の指揮術により不意を付かれて
 しまい、あっというまに劣勢となる。

 反理は勝利を確信した、そしてこれならば神にさえも勝ててしまうのでは
 無いかという少々行き過ぎた希望を持ち始めた。

 だがその希望は一瞬で絶望へと変わる。

 反理の前に対峙した大天使ミカエル、そして大天使ガブリエル。
 その奥には圧倒的な威圧感を放つ「とてつもなく巨大な存在」があった。

 反理は思わず身震いしてしまう、実物を見た事など今まで一度も無い、
 だが、目の前にいるその巨大な存在が神だという事は一目見るだけでわか
 った。

 先ほどの希望は一瞬で崩れ去り、反理にひとつの思想がよぎる。


 勝てない。


 反理はようやく自分が敵に回した存在の大きさに気が付き、咄嗟に地上へ
 と逃げていった。


 苦し紛れとはいえ、地上へと降り立った反理とその賛同者達、
 だが、降り立った彼女らは既に悪魔としての存在に成り代わっていた。 
 地上に逃げんとする反理達に、神が罰を与え、天使として存在する事を許
 さなかったのである。
 
 遅れて現れたのは大天使ミカエルと天使兵達。

 もう逃げ場など無い。

 反理は賛同者達に巻き込んだ事を謝り、悪あがきとも言わんばかりに無数
 の天使の軍団へと突っ込んで行く。

 だが賛同者達は、反理を蔑む事無く、最後まで「賛同者」として反理と共
 に戦った―――



 結果、他の賛同者達は戦死し、あろう事か、反理はいくらトドメを刺して
 も死ぬ事が無かったため、封印される事となった。

 こうして、天上と地上に渡る天使と悪魔の聖戦は、幕を閉じた。


 と思われたのだが・・・



 数百年が経ち、神により「反理の封印が薄れている事」を告げられたリエ
 は、ルエと共に、地上に降り立つ事となる。


 それこそが今回の全ての始まり。


 

 人間達と弾幕ごっこを堪能した反理。
 災厄と呼ぶのが難しい程に毒気が無くなっている事をリエとルエに伝える
 と、少々困った様子だった。

 神にその説を伝えると、神も少し困惑した様子で、「教会に置き、監視す
 るように」との事。「即刻再封印しろ」などと言わないあたり、一応話の
 分かる神ではあるらしい。

 木子はというと、反理によって制御しきれない力を抜き取られ、見事正気
 に戻ったのだが、自分の過ちをしっかり覚えてるらしく、リエとルエに対
 して死ぬ気で謝っていた。しかしどうやらあの悪魔形態にはいつでもなれ
 るようになったらしく、彼女は若干得をした事になる。


 こんな感じで、今回の騒動と、ついでに永きに渡る聖戦に幕が降ろされた
 のである。