多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

偶然のカワセミ

秋の気配とまではいいませんが、あたりは湿度の低い空気に入れ替わり、この広い公園では厳しかった夏の終わりを告げるかのようにツクツクボウシが沢山鳴いています。

天気が良く少しでも時間があるとカメラを持って散歩や自転車でポタリングに出かけるのが休日の過ごし方です。
去年、ネオ一眼と呼ばれる高倍率レンズのコンパクトデジタルカメラを買い、今年になってクロスバイクからロードバイクに乗り換えて行動範囲と機動力が高まり、僅かな毎週末を楽しみに過ごしています。

ということでロードバイクでほんの少しだけ遠出をすることにしました。あちこち走り回ってある公園に行き着きました。まだ、下の娘がベビーカーに乗っているぐらい幼かった頃、家族四人で地下鉄で出かけた公園に十数年ぶりに寄ってみようと思ったのです。

傾きかけた日差しの中、広い芝生の中を子供たちと走り回った。あれ以来、何度も何度も思い出したあの淡い記憶の光景に、ようやくたどり着いた。懐かしかった。とても多くの時が流れて今ここにまた至っているのだと思いました。

そんな思い出にふけりながらあたりを見渡すと広場の奥に花の終わったハスの葉が生い茂る池が見えます。娘達がまだ幼かったので遊具で遊ばせ、芝生でお弁当を食べたので当時はここまで足を運ばなかったのでしょう。すると蓮の葉の少し高いところをカワセミが横切りました。いるな。せっかくだったら撮影することができれば幸運。何処に飛んでいったか探すことにしました。

自転車といううこともあり機動力があるぶんあちこちを探しまわりました。林道を抜けようとすると望遠レンズに三脚の人々が5,6人集まっている。どうやらいるようです。5メートルぐらい先の岩場に浅い小さい小川を見つめるカワセミ。集団に混じらせてもらい撮影タイム開始。

皆さん大型の超望遠レンズを装着したデジタル一眼レフカメラにしっかりとした三脚。装備が違いすぎる。極めていくということはそういうことなのです。いい写真を取るためにはいいカメラとレンズが必要なのです。私は手持ちで安価なネオ一眼。飛び立つ瞬間、一眼レフの連射のシャッター音を聞くと、きっと羽根がブレずにピッタっと静止した画像が高速で記録されていることでしょう。いいな。

何度も小魚を捉えて岩場や近くの枝などに留まる。時折陽が差して青かった羽根が極彩色のエメラルドグリーンに輝く。とても美しい。そして首を上下にコクリ、コクリと動かす仕草が愛らしい。人気モデルのベストショットを狙って皆チャンスを逃さないように緊張感が張り詰める中でも、それでもあの青い可愛い小鳥の仕草をファインダー越しに楽しんでいる雰囲気を感じました。

週末にロードバイクにまたがり汗だくでツーリング。そして行き着いた自然の中に身を置き、息をこらして目の前にある自然を一枚の写真に切り取る。そして夕方には自宅に帰りよく冷えたビールで喉に潤いを与え、こうやってiMacのディスプレイに映し出される今日の写真を眺めるのが楽しい。