多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

大阪南港野鳥園

ここは大阪南港野鳥園。大阪市埋立地である南港にあり、人工干潟や林などに訪れる野鳥を観察できる施設です。春の渡りのシーズン到来ということで多くの渡り鳥が観察できそうです。


北観察所から遠くを望むとチュウシャクシギが5〜6匹いるのが見えます。目を凝らすと更にその奥に小型のシギやチドリが百匹近くでしょうか、干潟をつついて採餌しているようです。


突然なにかの拍子に一斉に飛び立つ小さな水鳥が大きな塊となり、きらきらと銀色の翼を白色にひるがえし、低空での旋回を左右に繰り返してまた干潟に降り立つ。うごめく群れの同調した動きは壮観で実に美しい光景です。



大型のチュウシャクシギやアカアシシギはのっそのっそと長い脚で浅瀬を渡り歩いている。長いくちばしを上手に使って穴の中に潜んでいた蟹をつまみ出しました。飲み込むのになにかお気に入りの方向でもあるのでしょうか、何度も何度も蟹をくわえなおした後、ぱっくとひと飲み。


大阪湾上には南半球から繁殖のため飛来してきたコアジサシが舞い飛び、その先の遠景には霞がたなびくポートアイランドのガントリークレーンや神戸六甲の山並みも展望できました。シルエットがどことなく首をもたげたブラキオサウルスを思わせます。


野鳥観察に訪れる方が多いので展望塔での席にありつくのが思ったより難しかったですが、そこは譲り合いの精神。珍しい鳥がいると皆でその場所を教え合ったり、和んだ空気がそこにはありました。スタッフの方でしょうかカウンターで個体数の調査もされていました。


大都市の傍らに隣接する人工的なこの湿地環境において、多くの渡り鳥が羽を休め、それを育めるだけの多様な生物たちの織りなす生態系がある。それをこうやって観察したり、情報交換や市民の集う憩いの場として楽しむことが出来るのです。

しかし、この野鳥園、過去には存続を危ぶまれる時期があった。管理者であった大阪市が「公共の関与する必要性が低い事業」とし存廃を検討し、行政改革プラン沿って見直すとの見解。当然、存続を求め立ち上がる人々がありました。施設や干潟と湿地の重要性を訴えるべくして「存続をさせる会」が発足し、様々な活動や討論が行われたとあります。

現在、管理スタッフやボランティア、市民の理解と協力で今もこうして施設が存続し無料で提供されている現状に至るまで、関係者の方々の様々な苦難があったのだろうと思うのです。

「干潟・湿地の環境を保全と、野鳥の観察ができる貴重な環境学習の場」ということで今後も残すべき環境だと思えますし、確実に私たちの自然や生物対する認識や視点も変わってきたと感じています。また、自分には何が出来るんだろうかと考えるいい機会にもなりました。