こっちも国際招待競走だよ!日韓交流競走:インタラクションカップ


12.8-11.4-12.8-12.8-12.6-12.8-12.8-12.4-11.6-11.1-11.1-11.9(2:26.1)
 海外からの遠征馬、そして迎え撃つ日本勢どちらもイマイチ層が薄く、ルドルフを押し出したCMの出来のよさ以外は戦前から盛り上がりに欠けた今年のジャパンカップ。結果として入場者数・売上額どちらも前年比で大きく落ち込むという、残念な結果に終わってしまった。まあ肝心のレースの内容は時計こそ遅かったけれど、昨年オルフェーヴルに完勝したジェンティルドンナがしっかりと強さを見せつけての押し切り勝ち。単純に府中でのGⅠレースとしてみれば、決して見応えがなかったわけではない。だが、二強の片割れたるゴールドシップパドックからやる気のなさが素人目にも明らかで、さっぱり動かないままドベ3で入線。もともと府中向きの馬ではないとはいえども、ほんとに迷惑な気まぐれ野郎である。これで対決としての興味は台無しとなってしまい、海外馬もドゥーナデンが日本適性を見せながらようやく5着まで。これなら、「ジャパンカップ」とという舞台を使わなくともよかったとは感じるな。たしかに、秋の府中開催に2400の古馬GⅠがある、というのはレース体系からすると悪い話ではない。けれども、曲がりなりにも本邦における最高額・1着賞金2億5000万円を出すような競走なのか、というともはやかなり微妙なところである。

 もっとも、日本馬のレベルが上がれば高額賞金に釣られるような招待馬たちも来なくなる、などというのは当然の帰結であるのだから、ことさらその点を問題にするのも不毛だろう。むしろ国際化を推し進めようとした当時のJRA幹部らとしては、現在の状態は万々歳なのではないですかね。別にドバイと違って、まさしく字義通りの「競馬のワールドカップ」のようなものを目指していたわけでもないことだし。ただ、ジャパンカップがまだまだ「ぴっかぴっかの日本近代競馬のショーケース」だった時代。馬の強さでは大いに引け目を感じていた当時の日本競馬関係者が、海外へ向けて胸を張って誇ることができたのが、毎週末競馬場に集う「世界一熱心なファン」のなす大観衆であったことがふっと思い起こされる。すると、馬が強くなればなるほど興行としてのおもしろさが削がれていくまま、というのは少々寂しい関係ではある。生産者や厩舎関係者らは「とにかく強い馬を作る」ことに専心するしかないのだから、その辺の興行性とのバランス感覚は胴元たるJRA――といっても、彼らとて原理的には準国営の一競馬主催者に過ぎない、という点にこの国の競馬のねじれがあるのだが――のお仕事のはず。ジャパンカップダート側の招待競走中止をみてもそろそろなにか手をつけ始めることだと思うが、さてさていったいどういう方向に向かうことやら。

92年、第12回ジャパンカップトウカイテイオーが5番人気からの復活制覇、2着は豪州から参戦のナチュラリズム。1番人気に押されたこの年のカルティエ賞年度代表馬・ユーザーフレンドリーは6着。
 とまあ、「国際対決」がさっぱり面白くなくなってしまったとお嘆きのみなさん。こっちの国際招待は、なかなかに面白い構成ですぜ。なんてったって、目下絶賛地盤沈下中(ぉぃ)の南関東大井競馬場と、莫大な売上による収益を元手に近年ぐいぐい力をつけている韓国競馬・ソウル競馬場所属馬との一戦である。相手関係としては、じつにちょうどい塩梅、お似合いのカップルじゃありませんか。また実際に9月にソウルで行われた交流競走では適当なロートル馬を送り込んだら、文男さんの一発がなければ完封されていてもおかしくなかったレース内容。国内で韓国競馬弱し、の楽勝ムードが漂っていたのを考えるとすでに一発ガツンと先制攻撃を喰らっているようなモンであり、こちらがホームとなるここでは絶対に楽勝してやらにゃいかん、というのが大井側の大井たる意地。一方で韓国からしてみれば、いくらPARTⅠ国とはいってもJRAならいざ知らず「地方競馬」なんぞにいつまでも負けてはいられない、というくらいの意気込みは当然で。最低でも次に繋がる形くらいはつくって帰り、その自尊心の糧としたいところだろう。

SBS Korea Japan Goodwill Cup。ワッツヴィレッジは茶帽7番。
12.9-10.9-11.6-12.-12.5-12.3-13.5(1:25.7)

 さて、すでに数周前から那須地方競馬教養センターで検疫を済ませ、大井入りを果たした韓国馬は全部で3頭。先の交流戦で2着したワッツヴィレッジも出てきているが、総大将はここまで4戦4勝のフライトップクインの方か。前走の終い坂を登り切ったところで2着馬に再度迫られたが、それでも叩き出したラップは立派なモノ。韓国の1F目はどうも遅く出る――実際、グッドウィルカップで日本馬あの入りで逃げられていないでしょ――から判断を保留しておくとして、2F目で10.7(前々走10.5!)とダッシュ力は南関東の重賞級に入ってもそれなりに計算できそうな数字。右回りさえ克服できれば、直線どこまで粘れるかなかなか面白い存在となりそうだ。ここのところブレイク気味なHenny Hughes産駒だけに日本のダートは走る裏付けもあり、また牝系に目を向ければ5代母Arachneからのラインはご存じアドラーブルを輩出している。Storm CatとMythomaniaのNorthern Dancr×Secretariat半血相似クロスに、Raise a Nativeを1本ずつ。なかなかに筋の通った配合ですよこりゃ。馬格や走りっぷりも立派なもので、日本の中央で走っていてもまったくおかしくなかったような馬であろう。

2013年8月11日ソウル公園競馬場第7R SNTカップ(外国産馬class3)。フライトップクイーンは白帽12番。
13.2-10.5 -11.5-12.4-11.9-14.1(1:13.6)

2013年10月12日ソウル公園競馬場11R 外国産馬Class2戦。フライトップクイーンは黒帽4番。
13.3-10.7-11.9-12.6-11.6-12.8(1:12.9)

 では、残る2頭はどうだろう。ワッツヴィレッジグッドウィルカップ後1200の外国産馬Class1戦を勝ってここに臨んでいるが、ラストの1Fで13.6掛かっているのはやや不安。展開的に一瞬の脚で抜け出して、というレースにはなりそうにないここでは買いにくいタイプの馬だ。グッドウィルカップでは日本馬の中で一番人気薄だったトーセンアーチャーが勝ったことだし、唯一の韓国産馬フルムーンパーティーも無視はいかんか?だが意気込みだけは買いたいところにしろ、どうしても上記の2頭とは時計・レースぶりともに見劣りしてしまう。せめて、ここは無事に完走して帰国してもらいたい。

2013年10月6日ソウル公園競馬場第13R 外国産馬class1戦。ワッツヴィレッジは青帽5番。
13.0-10.8 -11.4-11.9-12.0-13.6(1:12.7)

2013年8月11日ソウル公園競馬場第9R TJK競走(国産馬class1)。フルムーンパーティーは白青染め分け帽11番。
13.1-10.7 -11.2-11.7-12.5-12.7-14.0(1:25.9)

 そして対する大井側だが、回避が多く出たことで登録馬発表時よりはやや手薄なメンバーとなってしまった。一応の中心となるのが、セントマーチとミヤサンキューティの5歳両頭。どちらもじっくり長く脚を使えるタイプだけに、内回りの方がよいのだけれど……まあ、一応1200も守備範囲には入っているが。ミヤサンキューティは前々走ゆりかもめOPでは3コーナーの加速どころで置いていかれてドタバタし、前走アフターファイブスター賞は柏木騎乗のコウギョウダグラスにまでいいようにあしらわれての5着まで。厳しい流れになった場合に不安はどうしても残る。セントマーチは戦ってきた相手からすればミヤサンキューティより上手と感じるも、前々走は中間あれだけ緩めば楽勝は当然。それよりも、前走で絶好の展開かと思いきや脚が上がっての2着だったのをどう考えるか。まあ、これについてはあの週は差し有利のタフな馬場状態だったので、及第点ぐらいはつけられると思うが。

11年優駿スプリント(SⅢ)。この二頭のワンツー決着だった。
12.2-10.7-11.4-12.5-12.0-12.8(1:11.6)

13年アフター5スター賞(SⅢ)。
12.2-10.7-11.8-12.6-11.8-12.4(1:11.5)

渋谷区の妖精あいりっすん賞(A2以下)
12.7-11.0-11.7-12.5-13.4-12.4-12.9(1:26.6)

 それよりは、狙ってみたい馬がいる。前走渋谷区の妖精あいりっすん賞で10ヶ月ぶりのレース復帰を果たしたブリーズフレイバーである。もともと条件馬時代から快足ぶりで鳴らし、勢いに任せて準重賞シーサイドカップでヤサカファインらを下したあたりでは重賞のひとつやふたつすぐに取るのだろうと思われた素質馬。それが1400での脆さやスタートの失敗から、ついに無冠のママでここまで来てしまうとはなるほど競馬は難しい。休む前はもう出足からしてつかなくなっていたのだが、前走は久々にこの馬らしいダッシュが復活していた。結果的に最後馬群の後方に沈みはしたが、1400戦で最初の3Fが12.7 - 11.0 - 11.7とは不良場場を加味してもじつに気持ちのいい逃げっぷり。まだまだ6歳と老け込むような馬齢ではなく、なによりここまで理由もなく負けたレースはじつはそれほど多くない。こういった馬が得意な条件に戻ったならば、絶対に軽視をするわけにはいかぬ。あとは馬体さえふっくらさせて来ればいうことなしだな。

10年シーサイドカップ(準重賞)
12.4-10.7-11.4-12.2-12.1-13.0(1:11.8)

展開的にはブリーズフレイバーとオーセロワ、フライトップクインがハナを主張し、そこでフライトップクインが控える競馬ができるかがひとつの焦点となる。3頭が突っ張りあう展開ならさすがに潰れるが、ここで番手に納まるようならアタマまで絶好。だが、果たしてそこまでの器用さはあるかな。むしろ控えるのならブリーズフレイバーか。そして前が飛ばして逃げる分後続も早め早めで追い上げていって、スパートの長さで迫るセイントマーチが前の2頭を交わせるか、という流れを期待する。そのほか、コウギョウダグラスが大外一気で差し切るくらいに上がりが掛かるかというと微妙で、かといってマルカンパンサーが通用するにはいささかここは厳しすぎる。

 なにはともあれ、せっかくの大井による新たな試み。当日は白熱したいいレースになって欲しいものだ。

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<まとめ>
◎5番ブリーズフレイバー
○4番フライトップクイン
▲3番セントマーチ