ニュー・オーダー/ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール

ギャースッ!ニュー・オーダーの新譜が出ちまったよ!オレはこのバンドの前身・ジョイ・ディビジョンの頃から聴いてるオールド・ファンなんですよ。12インチもCDシングルもコンプリートっすよ。(自慢)…あ、今アマゾン見たらまだ持ってないシングルが…品切れ…(泣)。
このアルバムは巷では「軽い」とか「明るすぎる」とか言われているようだが、逆に曲全体のトーンが一致しているからアルバムとして通して聴くのが楽なんだよ。そもそもこいつらのアルバムって昔からどっちかというと散漫で、捨て曲多いし、アルバム全部聴くのは退屈だったりしたもんな。メンバーの連中はシングルの打ち込みの多い曲がニュー・オーダーだと思われるのは理不尽だ、とインタビューで言っていたけど、こいつらのリミックス曲のヤバさはアルバムの青臭いロック・フィーリングを超越していると思うよ。ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントが、ニュー・オーダーのビデオ「ニュー・オーダー・ストーリー」*1で言っていたけれど、ニュー・オーダーの曲にはどこかに一筋の狂気が宿っているんだよ。だから普通によく出来たロック・ミュージックだと思って聴いていると、フッとどこかにもって行かれそうな危ない音に出くわしてしまう瞬間が彼等の音にはあるんだよ。特にこのニュー・アルバムでは後半がヤバかった。
なお日本盤にはボーナス・トラックが収められているが、このうちの1曲は日本語で歌っている!訳詩が馬鹿なのとあまりに下手な日本語で(クイーンだってもっと上手かったぞ!)聴き辛いのだが、「夜が来ると 宙に星が舞い 月の歌が響きだす ただ 遠い昔なら笑って 笑っていたんだ 何時だって」というリリシズムはやはりニュー・オーダーならではだな。この奇妙な喪失感。
オレは彼等の曲で一番好きなのは「リグレット(=後悔)」という曲だ。「多分 忘れてしまったのだろう 君の 名前も 住所も」という歌い出しで始まるこの曲は、美しいギターフレーズと相まって切なさ大爆発の曲だ。この曲もそうなのだが、ニュー・オーダーの音の基調になっているのはこの喪失感なのだと思う。彼等は失くしてしまったコトを、失くしてしまったヒトを、穴埋めも詠嘆する事もなく、ただ空っぽになった心としてそのまま呈示しているのである。それはかの名曲「ブルー・マンデー」で、友=イアン・カーチスの死を「僕はどうしたらいい?僕はどう感じたらいい?」とただただ困惑そのものとして歌にしていた頃から変わらないスタンスなのだ。だからこそ彼等の曲は切ないし、泣きたくなるぐらい美しい。

*1:アルバム「リパブリック」発売時頃、イギリスのTV番組で特集された映像を編集したもの。版権の問題でDVD化出来ないらしい。しかしその内容は圧巻!ジョイ・ディビジョンの超レアなPV、ライブ映像も含めた21本のビデオクリップ、ライブ映像、メンバーのオフの様子、メンバーや関係者のインタビュー等貴重映像が140分にわたり収められています。そして本文で触れたニール・テナントの他に、U2のボノがインタビューでニューオーダーについて述べるのだけれど、突然ジョイ・ディビジョンの「ラブ・ウィル・ティア・アス・アパート」を歌い始めるんですよ!このシーンは鳥肌物だった。