X-MEN:ファイナル・ディシジョン (監督:ブレット・ラトナー 2006年 アメリカ映画)

原題は《X-MEN THE LAST STAND》、ここはレッド・ゼッペリンの名曲《ACHILLES LAST STAND》の邦題に引っ掛けて《X-MEN最後の戦い》と訳しちゃおう。おおそういえばゼップのレーベル《SWANSONG》のイメージで使われているのが天使の絵ぢゃないか!今回のX-MEN新キャラ『エンゼルくん』とシンクロニシティ!DVDが出た暁にはクライマックスのラストバトルではゼップの『アキレス最後の戦い』を流して鑑賞してみる事にしよう。(知った口きいてますがツェッペリンの熱心なファンというわけでもないので、ファンの方あんまり突っ込まないで下さい…。)


という訳で《X-MEN最後の戦い》なのだが、『X-MEN』については以前『スーパーマンリターンズ』のレビューで『アウシュビッツから始まる虐殺の重い歴史と多民族国家アメリカの戯画』と書いたし、1,2作目の監督ブライアン・シンガーは原作について「原作が生まれたのがアメリカの激動の60年代だったから、 X-MENの設定やストーリーには、実際の当時のアメリカの社会性が反映・投影されている」と語っているように、当時のアメリカのマジョリティとマイノリティとの軋轢としてドラマを観る事も可能だろう。映画パンフレットではポップカルチャー評論家のみのわあつお氏がプロフェッサーXをキング牧師に、マグニートマルコムXに例えて評しているくだりさえある。


なるほど、ブライアン・シンガー版『X-MEN』の奇妙な暗さや冷ややかさはその辺から来ているのだろう。ではブレット・ラトナー版の今作ではどうかというと、ミュータント能力を消し去り、X-MENを普通の人間に戻す事が出来る《キュア》という薬品が今回キーとなっている。こじつけるならば人々のユニークさや主張を均一化画一化し、挙国一致へとより支配しやすいよう骨抜きにする現代の軍拡路線アメリカ権力への恐怖をそこに読み取る事が出来るかもしれない。またアメリカのグローバル資本主義の悪弊への憂慮もそこに重ね合わせる事が出来るだろう。


…なーーんて思い付きで書いたが、もっともらしく読めちゃうから不思議だよな!ってかさあ、『X-MEN』って、そんなにたいした映画だったっけ?というのがオレのホンネだ!エンターティメントとして見ると、オレはそれほど嫌いじゃないんだがそこそこな程度の作品なんじゃないか?なにしろビジュアルがイマイチな気がするんだよなあ。なんたってプロフェッサーXは単にハゲチャビンのオジサンだし、マグニートに到っては妙なメットでコスプレしてるジイサンだ!今作では敵キャラにジャガーノートというヤツが出て来るがこいつもマグニートと一緒のメット被ってて、お前らコンビ漫才かよ!などと思ってしまったのはオレだけか!?ミスティークはなんだかキモいし2作目の名前忘れたトカゲみたいなヤツも善玉のルックスじゃないし、どことなくセンスが無いんじゃないか?もともとの原作コミックスが古いものだからビジュアル自体がアメコミアメコミしてて、今映画化するとなると野暮ったいんだよなあ。だいたい原作ではウルヴァリンなんて黄色いスーツに青いパンツ履いてて、そのまま映画にしちゃあまずいだろってことで黒ずくめで体裁保てたぐらいだからなあ。


で、思ったんだが、マイノリティがどうとか多民族国家がこうとかいう能書きは忘れて、X-MENとは”もおにんぐムスメ”系のスター・トレーディング・システムとして観たほうが正しいのではないか。ピンでもスター性がある子もいるが、イマイチな子もいて、でも”もおにんぐムスメ”としての括りで見れば何とか見られないことは無い、鮮度が落ちてきたらメンバー交代してテコ入れし、”もおにんぐムスメ”ブランド自体のクオリティは保てる、というスター資本主義、ヒーロー資本主義がX-MENなのではないか。これはこの3作目がシリーズ最後と言いつつ、それぞれのキャラのスピンオフものは製作してゆくという発表からも明らかなんではないか。


映画として観ると、ブレット・ラトナー版はブライアン・シンガー版より活劇が派手になっているように感じた。超能力者でなければ無理なような物理法則も力学も無視したヴィジュアルはX-MEN映画の醍醐味だろう。いや、クライマックスのアルカトラズ島への侵入方法はマジ度肝を抜かれました。ただ冒頭の20年前のプロフェッサーXとマグニートが全然20年前に見えないジイサンだったというのはいくら最新VFXを駆使しても無理だったということらしい!それとラストということであんなキャラやこんなキャラが惜しげもなくあんなことやこんなことになる!思い切ったよなあ。ラストはちょっと納得できなかったな。”あれ”使えばなんとかなったんじゃないのか?後今回の主役はオレにとってはハル・ベリーたんだ!相変わらずお美しゅう御座いました…。一時は降板の噂もあったが出演してくれてヨカッタヨカッタ。