亥年だけど猪突は猛進するだなんていうのは妄信だったのさ

猪突(ちょとつ)猛進−−。今年の干支(えと)・猪(いのしし)(亥)の形容だが、実際に猪が走ることはめったにない
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070105k0000e040014000c.html

こういうのは年越す前に言ってくれなきゃだわ!多分この年末年始日本では何万人もの方が年賀状に「今年は猪突猛進で頑張ります!」などと日常生活で殆ど使うことの無いであろう四字熟語を折角使用して新年の抱負を書き綴っただろうに、それを年が明けてから「すいません。あのー、猪は猪突猛進しない事が判りました。以後よろしく。」などと謝罪されたとしてももう取り返しが付かないではないか。
「え?どうなってるんですか?あんなに頑張るといっておきながら、言ってる事とやってる事が全然違うじゃないですか?え?え?」などと詰め寄られても返す言葉がないのである。「いや、だからですね。よく聴いてください。猪はね。猪突猛進しないんですよ。臆病な動物なの。いいですか。」などと言い含めようとしたところで相手は既に聞く耳など持っていないのだ。その上「何言ってるの!あなたって!いつもつも!屁理屈と言い訳ばっかり!なんでもっとちゃんと出来ないのよ!」などとオレの生き方の根幹まで問い詰める態度に出てこられたらどうしたらいいというのか。
あまつさえ「あの時だってそうだった!あなたってすぐ後ろ向きに考えるのよ!もっと前を見て生きてよ!」などと遠い昔にあったちょっとした過ちまで穿り返される始末である。(ってかこのキャラ誰だ?)こうなってはもう何を言っても駄目である。ましてや相手に「あと言っとくけど猪の牙は本当は後ろ向きなんですよ。そこんトコお間違え無く。」なんて場違いな正論で返そうものなら血を見るのは明らかだ。あなたの近くに凶器になるものが無いかどうか急いで確認する必要がある。この時相手が要求しているのは正論ではない。あなたの誠意なのである。人は思考する生き物であるが、同時に感情をもつ生き物でもあるのだ。
本来であればこの熟語を作った人間の責任を追求したいところではあるが多分大昔に亡くなられているであろうし、既成事実を容易く覆すのは難しいことだろう。そこでオレは考えた。全国の猪さんを調教し、猪突猛進する芸を仕込めばいいのである。これにより現実との整合感を生むことが出来るではないか。日本全国の猪さんが「猪突猛進センター」に集められ猪突猛進するために日々額に汗しながら(猪の額は狭そうだが)刻苦勉励する姿を思い浮かべると涙の出る思いである。
「猪突猛進センター」では今日も「リポビタンD」の「ふぁいとーっ!いっぱつーっ!」のコール&レスポンスに倣って調教師のお兄ちゃんと猪さんとの丁々発止のやり取りが木霊するのである。猪調教のお兄さんが叫ぶ。「ちょとつーっ!」。そして猪が応える。「ぶひぶひーっ!(もーしんーっ!)」。東京ドーム程もある巨大な「猪突猛進センター」は、そんな何千人もの調教師と何千匹もの猪の熱気でムンムン、吐き出す呼気に窓ガラスさえ曇る勢いである。そして生まれる友情、愛、信頼。ここから人間と猪との新時代が始まるのだ。そしてそのような血の滲むような特訓のお陰で我々も明日から心置きなく猪突猛進出来るという訳なのである。全国の猪さんありがとう!調教師の皆さんご苦労様!あ、オレ?オレはいつも通りグダグダ生きてますから。猪突猛進なんて疲れるよな!(おい)