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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20121112(Mon)

[]一人の女性患者を巡るフロイトユングの物語〜映画『危険なメソッド一人の女性患者を巡るフロイトとユングの物語〜映画『危険なメソッド』を含むブックマーク 一人の女性患者を巡るフロイトとユングの物語〜映画『危険なメソッド』のブックマークコメント

危険なメソッド (監督:デヴィッド・クローネンバーグ 2012年

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  • 映画『危険なメソッド』は有名な精神分析学者フロイトとその弟子ユング、そしてユングの前に現れた総合失調症の女性患者ザビーナを巡る人間ドラマなんですね。
  • 監督はかつて『スキャナーズ』や『ヴィデオドローム』でグジャドロの観念ホラー映画を撮りまくっていたデヴィッド・クローネンバーグです。だからこの映画も精神分析学を下敷きに人間の無意識と妄念が気色悪いクリーチャーの形を取って現れ人間の精神を貪り食い死と狂気が全編を覆う一大グヂャドロ観念ホラーとして完成しホラー・ファンにやんやんやの拍手でもって迎えられた…というお話では全くありません。だいたいクローネンバーグは1999年作の『イグジステンズ』あたりからホラーらしいホラーは撮ってませんし、だからいまだにホラー監督呼ばわりするのも何かといえば何か、ではありますが、それでもクローネンバーグと聞くと自分なんかは今でもいろいろ期待しちゃいますね!
  • 物語はフロイトの弟子であり自らも有名な精神分析学者であるユングマイケル・ファスベンダー)と、彼のもとに患者として現れたザビーナ(キーラ・ナイトレイ)を中心にして語られます。ユングは患者であるザビーナに次第に惹かれてゆき、二人は関係を持ってしまいますが、妻帯者のユングはその関係を続ける事が出来ず、彼女との仲を終らせます。一方ザビーナは精神分析学に興味を持ち、フロイトのもとへ学問の師事を仰ぐために近づきます。そしてこの3人のドラマが展開する、という物語なんですね。
  • まず第一次大戦前の空気感を再現したセットや衣装がとても美しく制作されているんですね。そして頑固者で権威主義的なフロイトを演じるヴィゴ・モーテンセン、優しげではあるがどこか煮え切らず、その直観的な思考の在り方からフロイトと対立するユングを演じるマイケル・ファスベンダー、総合失調症患者として奇態な行動を繰り返しながら次第に学問に目覚め、ユングとの不倫に悩むザビーナを演じるキーラ・ナイトレイといった俳優陣の存在感や演技が非常に素晴らしく、観る側が物語にすっと入っていけるんです。それにしてもキーラ・ナイトレイ、微乳ではありますが綺麗だったわあ。
  • 物語はこの3人の対話劇として成り立ち、ちょっとの台詞も聞き逃せない緊張感が全編を覆っています。この辺の構成の在り方は、もともとがノンフィクション本の舞台劇を原作している為なのでしょう。
  • 精神分析学者フロイトとその弟子ユング、その名こそ知っているにせよ、(物語とはいえ)現実ではこのような生々しいやり取りが存在していたのか、ということを知ることができる部分が面白かったですね。また、二人の間に現れたザビーナという女性もその後ロシアで有能な精神分析医として活躍し、精神分析学に多大なる貢献をすることになったのだそうです。
  • まあしかしね。そういった史実をもとにした有名学者たちの物語であることは置いといて、この作品はクローネンバーグ的に考えるならいったいなんなんだろう?ということなんですけどね。
  • 精神分析学者が主人公、という部分などは実にクローネンバーグ好みであるだろうことは想像できます。映画監督クローネンバーグの持つテーマというのは、一貫して「肉体と精神の相克」であり、「観念が現実を凌駕する瞬間の恐怖」であり、総じて「双極の狭間で引き裂かれる自我」ということなんですね。それをホラー作品として視覚化していったのがクローネンバーグ映画だったんですね。そして非ホラー作品であるクローネンバーグの近作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は、それを「一般人として暮らす人間の皮膚の一枚下にある制御不能な凶暴な怪物=暴力」という形で描き、それをさらに一歩推し進めたのが「社会という皮膚の一枚下にある犯罪組織という名の暴力」を描いた『イースタン・プロミス』だったんですね。
  • さらに、医師二人とその間にいる女性とのメロドラマ、ということであればこれはもう『戦慄の絆』以外考えられないでしょう。双子の医師と知らずに関係を持った女性と、その双子の医師の破滅の物語である『戦慄の絆』は、「双極の狭間で引き裂かれる自我」といった意味でやはりクローネンバーグ的なテーマであるんですよね。
  • この『危険なメソッド』は、『戦慄の絆』のように医師二人が一人の女性を奪い合う、といった物語では全くありませんが、ユングが医師でありながら患者との不倫関係に引き裂かれるといった部分、そしてフロイトユングという双極の狭間で自らを見出す女性登場人物、といった部分にクローネンバーグ的なモチーフが見え隠れします。クローネンバーグがこの作品の映画化になぜ興味を持ったのかは、作品自体に自らの持つモチーフと非常に似通ったものを見出したからだ、とはいえないでしょうか。だからこそ、この『危険なメソッド』も、実にクローネンバーグらしい作品の一つだ、と観る事が出来るんですよね。

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