Hatena::ブログ(Diary)

メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20130830(Fri)

[]オランダ発・5人の大バカ大暴走!?〜映画『暴走!ターボ・バスターズ』『暴走!ニトロ・バスターズ』 オランダ発・5人の大バカ大暴走!?〜映画『暴走!ターボ・バスターズ』『暴走!ニトロ・バスターズ』を含むブックマーク オランダ発・5人の大バカ大暴走!?〜映画『暴走!ターボ・バスターズ』『暴走!ニトロ・バスターズ』のブックマークコメント

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■オランダにバカがいた!

オランダに、バカがいるという。それも5人組の、いずれ劣らぬ札付きのバカ集団がいるのだという。そしてそのバカ集団の映画があるという。映画の名は『暴走!ターボ・バスターズ』、その続編『暴走!ニトロ・バスターズ』。ターボなバカがニトロで暴走する。素晴らしい。素晴らしいではないか。これこそがオレの待ち望んでいたバカではないか!というわけでバカ好きであり自らも天に恥じることなきバカであるこのオレ様は早速ディーブイディーを借りてみたのであった。そして…そこで展開するバカとバカのしょーもない応酬に、オジサンすっかりメロメロのまいっちんぐ!な状態なのであった!

さてそんな晴れあるバカ5人の名をここで紹介しよう。

◎これがボンクラ集団バスターズだッ!?

寝取られ男リッカート!…兎並みに発情しやすくいつも股間にテント!おまけに人前でもセンズリをこく!

おっとりバカのロビー!…妙に地味であまり印象は無いんだが、地道なバカこそが最も力のあるバカなのである!

お調子者のゲリー!…調子こいてやらなくてもいい事をやってしまい仲間をいつも窮地に陥れる!

ブチキレ男バリー!…凶暴!チーム一の暴れん坊将軍!でもトレーラーハウスに住む母親思いなんだ!

親分肌のリチャード!…滅茶苦茶な仲間をまとめてさらに滅茶苦茶になる!ってかそれまとめてないじゃん!

そしてこのいたいけなバカ5人はこんな連中である。

◎バスターズどもの基本原則ッ!?

・常につるんでいる!

・世界一ナニなセンスのマレットヘア(後ろ髪だけが長いアレ)をしている!

・とことん安そうなトレーニングウェア愛用!

・いつも聴いてる音楽はユーロビート

・全員失業中!

・失業保険も打ち切られました!

・四六時中ビールをラッパ飲み!

・四六時中唾ぺっぺ!

・好きな食い物は揚げ物系!

・酔っ払っているせいだけではなく呂律が回らない!

・とりあえず暴力を振るう!

・とりあえずわめく!

・相手を罵る時の言葉は「ホモ!」一点張り!

・誰の子かわからない妊娠中の彼女がいる!

まあつまりヤンキーですね、わかります。

もうこの5人、見るからに粒揃い、まさに珠玉の大バカ連中である。しかしバカのくせにロビー役の奴とバリー役の奴はこの映画の監督・脚本を担当している、というまことしやかな情報があるのだが、おおかた現職の監督やら脚本家を鼻くそのついたちり紙で脅してやらせたのに違いない。

さてそんなカツアゲまがいのことをして製作された*1バカ映画2本とはこんな映画である。

■暴走!ターボ・バスターズ (監督:ステフェン・ハールス,フリップ・ファン・デル・カイル 2010年オランダ映画)

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そこはオランダの小さな町。そこに5人のバカがつるんでいた。バカすぎて失業中の彼らは「オゼゼがねーんなら払わなきゃいいんだっぺ!」という天才的なこと思いつき、強奪、食い逃げの遣りたい放題。もちろん借金取りはぶちのめし、警察ですら撃退だ!そんな5人を「不況と政策失敗の被害者」とか勘違い報道したTV番組のせいでオランダは「俺もやってやる!」と暴動状態!事態を収拾する為なんと政府は5人のいる町に空爆指令(オイオイ)!さらにバスターズ5人を抹殺するため特殊部隊までが送られるのだったッ!?

ひたすらバカなバカどもがバカゆえにやらかす困ったバカ行為が仕舞いに国家をも巻き込む大混乱へと発展してゆくのである。その脅威は戦略核並みの破壊力を秘め、テロリズム並みの恐怖を兼ね備えているのである。つまり核弾頭バカでありバカテロリズムということができるのである。たかだかバカだと侮っていると大変な目に遭う、ということなんである。そんなバカにノセられるTVメディア、そんなバカをも収拾できない国のお偉いさんはもっとバカ、という鋭い政治メッセージもこの作品には込められているのである。込められてんのか?

後半にはバカ映画とは思えない激しい銃撃戦が待ち構え、「バカにもこんなことができるのか!」と驚嘆すること必至、それにしても終始、バカ面下げたバカ5人が、めくるめくような頭の悪い行為と下品な行動を繰り返すさまは、観る者に静かな感動すら与えること間違いないだろう。いや、間違いだ。


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■暴走!ニトロ・バスターズ (監督:ステフェン・ハールス 2011年オランダ映画)

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前作から1年。国家を混乱に陥れたバカ集団バスターズが今度は地球の危機に直面だ!?という続編である。バスターズたちは今日も隣町のバカ集団とバカを争って熾烈な抗争に明け暮れていた。バカはバカを呼び、バカに交わればバカになるの例え通り、世にバカの種は尽きまじ、ということである。そんなある日、町の外れに落下した隕石の影響で人々がゾンビ化、町は大パニックに!「あそこには俺の母ちゃんがいるっぺ!」慄然とするバスターズ!しかしそのバスターズに「んだらいっしょに助けにいぐっぺ!」と隣町のバカ集団が助っ人に名乗り出た!バカの家族愛、バカの友情、そしてバカの劣情を描きながら、物語は凄惨なクライマックスへとひた走る!

バカどもがユーロビートで踊り狂い、バカどもがゼロヨンで競い合い、バカどもがバカ女を巡って争う前半はバカの余裕綽々、バカの貫禄、バカの風格さえ漂う素晴らしいバカ振りだ。この映画を愛し続けて(2日ぐらいだけど)本当に良かった、としみじみ思える瞬間である。そして後半は一転、バカ軍団VSゾンビ軍団の血で血を洗う凄まじい展開を迎えるのである。まあ両方とも地球上からいなくなっても全く一切誰も困らないので相打ちになってもらいたいぐらいだが、下手にバカがゾンビになられるのも困るので一応暫定的にバカの応援をするのである。しかしその戦い方までバカすぎて、奈落の底まで脱力しそうなオレがいたのである。一個だけネタバレするけど、バカとゾンビのゼロヨン・レースって…なんでゾンビ車運転してんねん?

…というわけでオランダのバカ軍団映画2作であったが、いやーこの後も続けて欲しいなあ!オレはすっかり気にいったぞ!とりあえず今年のベスト映画はこの2本でキマリだな!(割とマジ)


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*1:実際はオランダの人気TV番組「New Kids」を元に製作された映画なのらしい

20130829(Thu)

[]非情なる殺し屋の死闘を描く傑作『パーフェクト・ハンター』 非情なる殺し屋の死闘を描く傑作『パーフェクト・ハンター』を含むブックマーク 非情なる殺し屋の死闘を描く傑作『パーフェクト・ハンター』のブックマークコメント

■パーフェクト・ハンター(上)(下) / トム・ウッド

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プロの暗殺者ヴィクターは、依頼どおりに標的の男を射殺し、男が持っていたフラッシュメモリーを奪った。だが、その時から彼は殺し屋に襲われ始める。彼は知らなかったが、フラッシュメモリーにはロシアの軍事機密が記録されており、CIAがそれを受け取るはずだった。ヴィクターは殺し屋を次々と倒し、自分の命を狙う者が誰なのか突き止めようとする。やがて彼は、暗殺の仕事を仲介する人物に会い、意外な事実を知る。

仲介者の話では、ヴィクターの殺害に失敗した首謀者が、今回の暗殺計画の関係者全員を抹殺しようとしているという。ヴィクターは仲介者に協力し、首謀者の正体とフラッシュメモリーの中身を解明しようとする。だが敵は凄腕の殺し屋を差し向けていた。しかも、ある事情でヴィクターを追うロシアの情報機関が軍事機密の流出を阻むべく動き始めた。壮絶きわまりない戦闘の行方は?期待の大型新人が放つ冒険アクション巨篇。

殺し屋の物語が好きだ。それもできるだけ冷酷無比な殺し屋がいい。

殺し屋といえばオレが真っ先に思い浮かべるのはフレドリック・フォーサイス原作でフレッド・ジンネマン監督で映画化もされた『ジャッカルの日』だ(ブルース・ウィリス主演の『ジャッカル』はリメイクと謳っているがまるで別物の作品だ)。ここで登場する殺し屋ジャッカルの、徹頭徹尾、感情など一かけらも存在しないマシーンと化した殺し屋ぶりには痺れた。もう一つ、シドニー・ポラック監督のスリラー映画『コンドル』の殺し屋も忘れ難い。ここでも冷酷無比な殺し屋が描かれるが、マックス・フォン・シドー演じるその殺し屋は、ロバート・レッドフォード演じる主人公を執拗に追い回しながら、指令が変わった途端、全く感慨も無く追撃を止める。ただ単に機械のスイッチが切られただけのように。

殺し屋にとって、殺しは単なる仕事だ。彼らは、私怨や狂気で人を殺しているのではない。正義や教条によって人を殺しているのでもない。殺すことにも、殺す相手にも、一切の感慨も感情も、当然ながら共感も介入しない。そして彼らは基本的に一匹狼であり、誰一人として信用せず、素性を持たず、世界から簡単に身を隠す。彼らが信用するのは多分金だけだ。究極まで鍛え上げられた体と知性とスキルを持つ彼らは、要するに殺す機械であり、即ち人間ではない。この徹底した非人間性、それも、狂気ではなく透徹した理性でもって形作られた非人間性こそが、殺し屋という存在の面白さだ(あくまで物語の話をしているんだけどね。あと『ゴルゴ13』は好みではありません、あしからず)。

トム・ウッド描く『パーフェクト・ハンター』はこの殺し屋の物語である。主人公であるプロの殺し屋ヴィクターは依頼の殺しを完了させた後、戻ったホテルで何者かが仕向けた暗殺集団に襲撃される。この冒頭から凄まじい銃撃戦が展開され、そして襲撃者たちを一人また一人と確実に屠ってゆくヴィクターの、殺し屋としての優れたスキルと冷酷さをたっぷり見せつけられる。その後もヴィクターは執拗に命を狙われ、彼は遂に彼を付け狙うものに報復すべく、証拠を追ってヨーロッパ各地を渡り歩くのだ。

まあ結局背後にはアメリカやロシアのあんな組織こんな組織が絡んでいて、そんな中、主人公は同じ粛清の憂き目に遭った女諜報員と出会い、協力しあいながら敵へと肉薄してゆくんだが、なにしろ主人公は感情を持たない殺戮機械、相手がたとえ女でもまるで興味を持たず、さらには協力者にもかかわらずこの女を最後にどう殺すのか考えている始末だ。この非人間ぶりがとにかく痺れる。しかしロボット野郎だと思っていた主人公がほんのちょっとだけこの女に心を動かす、その描写がまたいい。

そしてクライマックスでは、主人公とアメリカ・ロシアの特殊部隊、さらには主人公に差し向けられた最凶の殺し屋という、なんと四つ巴となった激しい戦闘が、これでもかとばかりに展開してゆく。飛び交う銃弾、振り上げられる拳、飛び散る血飛沫、次々と死体と化してゆく男たち!繰り広げられる息を呑むようなアクションの連打に、映画好きのオレとしては様々な名作アクション映画の一光景を次々と想起してしまい、この小説それ自体が優れた映画を観ているかのような醍醐味を味わうことが出来た。非情の世界で生きる殺し屋の透徹した殺しの腕前を堪能させながら、物語は世界を股に掛けながら刻々と舞台を変え、陰謀と裏切りが背後では進行し、要所要所で緊迫感あふれるアクションがスピーディーに描かれる。この『パーフェクト・ハンター』は非常に優れた娯楽小説として楽しむことが出来た。

パーフェクト・ハンター (下) (ハヤカワ文庫NV)

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ジャッカルの日 [DVD]

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コンドル [Blu-ray]

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20130828(Wed)

[]最近聴いたエレクトロニック・ミュージック~Walton,Room With A View,Carl Craig,Marcel Fengler,Iron Galaxy,Francis Bebey 最近聴いたエレクトロニック・ミュージック~Walton,Room With A View,Carl Craig,Marcel Fengler,Iron Galaxy,Francis Bebeyを含むブックマーク 最近聴いたエレクトロニック・ミュージック~Walton,Room With A View,Carl Craig,Marcel Fengler,Iron Galaxy,Francis Bebeyのブックマークコメント

■Beyond / Walton

Beyond [輸入盤CD] (HDBCD017)

Beyond [輸入盤CD] (HDBCD017)

Hyperdubよりリリースされたマンチェスターの新鋭、Waltonによるインダストリアル・ベースミュージック。 《試聴》

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■The Luck of My Curse / Various Artists

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ベルリンのディープハウス・レーベルRoom With A Viewのショウケイス・ミニアルバム。 《試聴》

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■Masterpiece / Carl Craig

Ministry Of SoundのDJ-Mixシリーズ『Masterpiece』の最新作を手掛けるのはデトロイトテクノDJCarl Craig。3枚組で1枚目はDJ-Mix、2枚目は自身が影響を受けたトラックのNon-Mix、3枚目は"Meditation"と名付けられた新作アンビエント集。 《試聴》

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■Fokus / Marcel Fengler

Fokus (import)

Fokus (import)

ベルリンBerghainのレジデントDJ、Marcel Fenglerの1st。 《試聴》

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■Things We Lost Along The Way EP / Iron Galaxy

Things We Lost Along The Way EP

Things We Lost Along The Way EP

カナダの新鋭プロデューサーIron Galaxyによるヴィンテージ機材を使用したレトロテイストなエレクトリック・サウンド。なにしろジャケットが可愛い。 《試聴》

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■Francis Bebey / Francis Bebey

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カメルーン出身であり、チープな電子楽器を使って独自のエレクトロニックサウンドを展開していたシンガソングライターFrancis Bebey。2001年に没した彼のトラックをフランスのDJたちがRemixしたミニアルバム。 《試聴》

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kk 2013/09/11 00:39 こんばんわんこ。お元気ですか?
カールクレイグのアルバムさんざん迷って、買うのをやめてしまった。。
輸入盤安くなったら購入を考えてます。

週末はwire13すね。
行こうと思ったのだが、奥多摩登山の予定とかぶり、今年もお流れです。

今年はハシエンダしかいってないなー

globalheadglobalhead 2013/09/11 01:08 おお、おひさしぶり大根!
カール・クレイグのは2枚目のNon-Mixと3枚目のアンビエントがそんなに面白くなかったから買わなくてもいいかも。最近のではイアン・オブライアンがよかった。
今度のWIRE13たった一人で行ってきます!前回も一人で行ったんだわ。
そろそろまたどこかみつくろって行ってみますか?
相方ともたまにkちゃんの話が出てくるよ。この間『フィッシャー・キング』って映画観てたらヒロインの様子がkちゃんぽいとか言ってた。

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20130827(Tue)

[] 最近読んだコミックなどなど  最近読んだコミックなどなどを含むブックマーク  最近読んだコミックなどなどのブックマークコメント

■聖☆おにいさん(9) / 中村光

聖☆おにいさん(9) (モーニング KC)

聖☆おにいさん(9) (モーニング KC)

いやーネタ尽きないなあ。誰でもわかるシャカやイエス自身のエピソードを元にしたネタはさすがに減ったけど、サブキャラをからめた笑いが増えて、どんどん『聖☆おにいさん』ワールドが広がっているなあ。毎度ネタ探し本当にお疲れさんです、と言いたくなるぐらいいろんな手を使ってきて相変わらず楽しかったです。

GANTZ (34) / 奥浩哉

GANTZ 34 (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ 34 (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ完結!GANTZの面白さは、理由不明の不条理な戦いを延々強いられることの無情さ、残酷さだった。しかしそろそろラストということで、戦いの理由が明かされたのはいいんだけど、そのせいで不条理感は薄れ、敵味方インフレ起こしまくった戦いは最高に派手だったが緊張感を欠き、手広くやりすぎた物語はグダグダ展開だったのでちょっと飽きてきてたんだけど、そのクライマックス、世界中が見守る中、最強の敵とタイマン対決張って〆るところは、ジャンプ漫画らしい潔さを感じた。これはこれでいいんではないでしょうか。長期連載お疲れ様でした。

ヒストリエ(8) / 岩明均

ヒストリエ(8) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(8) (アフタヌーンKC)

今回は大規模・中規模・小規模と合戦が繰り返され充実の巻であった。作者の淡白さからか淡々と物語が進行していくきらいがあったこのお話、最近地味に感じていて若干飽きてきていたんですが、これで盛り返しました。また盛り上げてください。でも久々の新刊だったので物語ちょっと忘れかけているんだが…。

ヴィンランド・サガ(13) / 幸村誠

ヴィンランド・サガ(13) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(13) (アフタヌーンKC)

そしてこっちも合戦です。まあこっちは毎回合戦ですが。しかし古代北欧を舞台にしながら登場人物たちが妙に和式な情緒性で描かれており、その辺がちょっとちぐはぐに感じていたんですが、そろそろというかやっと幻の大地「ヴィンランド」を目指すことに決めたようで、早くそっちで展開するお話お願いします。

■公園兄弟 / ルノアール兄弟

公園兄弟 (ビッグコミックス)

公園兄弟 (ビッグコミックス)

ヒモ男の主人公とキャバ嬢の彼女が突然ホームレスになり、現職(?)のホームレスの皆さんと混じって今日も楽しくサイテー生活、という設定だけ拾うと相当キッツイお話なんですが、そこはルノアール兄弟、相変わらず激しいボケツッコミの応酬が全編を覆い尽くすシュールなスラップスティック・ギャグになっているんですな。いやしかし今回の主人公のサイテーさと情けなさ、わかってやってるだけにこれまでのルノアール兄弟漫画の中でも群を抜くダメ人間ぶりです。実に香ばしい。こういう人間のダメさ加減に敏感に気づいちゃうギャグ漫画家って、えてしてつまらないリアリズム漫画に転向しちゃったりするんですが、そこはルノアール兄弟、筋の一本通ったバカに徹していて偉大です。ホント、ルノアール兄弟は今一番偉大なギャグ漫画家だと思います。

■抱かれたい道場 / 中川 ホメオパシー

抱かれたい道場 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

抱かれたい道場 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

くどい顔したくどい性格のくどい登場人物たちが「どうしたらモテるか!?」と頓珍漢なことをやらかすのを描いたくどい絵の漫画です。しかしあまりにバカな顔・バカなキャラ過ぎて登場人物全員人間に見えません。これは読んでて疲れた…。

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20130826(Mon)

[]今が旬のカンバーバッチがたっぷり観られます〜映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 今が旬のカンバーバッチがたっぷり観られます〜映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』を含むブックマーク 今が旬のカンバーバッチがたっぷり観られます〜映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のブックマークコメント

スター・トレック イントゥ・ダークネス (監督:J・J・エイブラムス 2013年アメリカ映画)

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時は西暦2259年、ロンドンを突然の爆破テロが襲う。その事件の首謀者と目されるジョン・ハリソン中佐を追って、カーク船長以下お馴染みのクルーが乗り込む惑星連邦宇宙艦隊所属船U.S.S.エンタープライズがクリンゴン帝国本星クロノスへ飛び立つ。しかしそれはある巨大な陰謀の幕開けに過ぎなかった…新生シリーズ第2弾『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の始まり始まり、というわけです。

映画冒頭から「艦隊の誓い」なる規律を犯してまで大活躍しちゃう熱血無鉄砲男カーク船長、前作から若気の至りは全く正されていないようです。なんか『バトルシップ』の主人公と被っているような気がするのは気のせいでしょうか。その相方ミスター・スポックは相変わらず論理論理と小うるさく、安定のウザさを突き進みます。でもなんだかスポックちょっと太ったような気がしますが、ウフーラとデキちゃったので幸せ太りというやつでしょうか。スコット機関主任を演じるサイモン・ペグ、コミックリリーフ役の彼は今回も従来的な『スター・トレック』のテイストを破壊し物語を「オレ色」に染めようとしています。ペグが出てくるとどんな宇宙の彼方であろうとイギリスのパブが近所にあるような気がしてきてなりません。

そしてやっぱりカンバーバッチですな。低い声、酷薄な表情、冷徹な思考と、目いっぱい悪役を演じておりましたが、「おーカンバーバッチやっぱええ男やあ」と見惚れてしまって、地球を破滅に導こうとする悪い奴の筈なんだけどあんまり憎々しく感じません。カンバーバッチ演じるハリソン中佐も悪逆非道というよりも、ある止むに止まれぬ事情から破壊行為に手を出していたりするんです。まあ結局は「人類なんか滅びてしまえ!」とやっちゃうんですが、どこか同情できる部分もある。んー、その辺がちょっと物語の悪役としては煮え切らない中途半端なものを感じたなあ。だいたいこのハリソン中佐、あたかも映画『セブン』のサイコパス犯人みたいな、完璧なシナリオに基づく計算づくの行動をするような男に仕立てたかったのかもしれないけど、観ていると意外とこいつその場しのぎなんじゃないのかと思えてくるんだが…。

一番不憫なのはスタトレ世界における因縁の敵役クリンゴン人の皆さんで、領土勝手に侵犯されて「なんだコラ」とやったら返り討ちに遭い全滅した挙句物語後半では忘れ去られているという…。残虐無比で知られるクリンゴンもこの物語ではショッカー戦闘員並みの雑魚キャラ扱い…。

そもそも大宇宙を股に掛けて冒険する筈の『スター・トレック』が、地球のテロ事件を発端として物語を展開していくって、まあテロも大変なことではありますが、ちょっと肩透かしと言いましょうか。なんかこうもっと気宇壮大で奇想天外で大風呂敷でハッタリかましまくったセンスオブワンダーな物語に出来なかったんでしょうか。そしてこの物語の鍵となる「訳あり光子魚雷」ですが、なんか随分強引な「訳あり」なんだよなあ。なんかやってることがややこしくて無理矢理な感じがするんだよなあ。そういえばJ・J・エイブラムスって考えてみると意外と強引で無理矢理な展開の作品製作してねえか…。大丈夫か『EP7』…。

ただし【覚醒ビースト・モードのスポックvs象が踏んでも壊れないハリソン中佐のガチンコバトル】は観ていて燃えたね。「気宇壮大で奇想天外なお話を…」とか知った顔でブツクサ言ってたオレも結局殴りあいで興奮して溜飲を下げた、と。やっぱりどんなに宇宙が広大だろうが神秘だろうが男同士の決着は拳で決める、そういう物語でありましたよ『イントゥ・ダークネス』。(そうなのか?)

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kenken 2013/08/26 12:17 無理矢理な展開といえばスポックのチート行為もすごかったですね
カンバーバッチを応援する側にまわってしまいました(笑

globalheadglobalhead 2013/08/26 12:33 基本的にカンバーバッチ応援でしたね。だって他の連中ひよっこばっかりなんだもん。しかしあれこれ書きましたが実は結構好きなシリーズなんですよ。前作も自分の日記読み返したら結構ケチつけてるんですが、やっぱりBlu-rayとか買ってるんですよね。この作品も実際嫌いじゃなかったですよ。

kenken 2013/08/26 12:45 なんだかんだ言っても面白いんですよね
久々にロボコップの中の人を見られたのも嬉しかったです

globalheadglobalhead 2013/08/26 13:05 そうそう、自分もピーター・ウェラー出てきたときは得した気分でした!

20130823(Fri)

[]ダーク・ファンタジー系海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』を観た ダーク・ファンタジー系海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』を観たを含むブックマーク ダーク・ファンタジー系海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』を観たのブックマークコメント

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■ベストセラー・ファンタジーのドラマ化

海外ドラマ『スパルタカス』の興奮が冷めやらず、「何か他にオレ好みの海外ドラマは無いのか?」と探していたところ見つけたのがこれ、『ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記』(以下『GoT』)。海外ドラマ好きの方の間では相当評価が高いようです。しかしダーク・ファンタジー系のドラマということなんですが、かの名作ファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』3部作あたりと比べると、予告編を観る限りではずっと人間ドラマ寄りみたいで、モンスターや魔法がばんばん出てくる物語とはちょっと違うようなんですね。異世界における権力闘争の物語らしいということは判るんですが、このドラマがなぜこんなに人気を博しているのか、いったいどんな所が面白いのか体験してみたくて、早速Blu-rayで全10話を一気観してしまいました!

この『GoT』、もともとはジョージ・R・R・マーティンによるベストセラー・ファンタジー小説氷と炎の歌』シリーズが原作となっています。全世界で1,500万部を売り上げたというこのシリーズは、現在第5部まで執筆され、最終的には7部作になる予定だという長大な作品なんですね。そしてこの『GoT』は原作の第1部、『七王国の玉座』をドラマ化したものなんです。既に本国ではシーズン3が放送されており、さらに第4シーズンまでの撮影が決定しているようですから、その人気のほどがうかがわれるというものでしょう。このままの人気で盛り上がっていけば原作全ての映像化も有り得そうですね。ただし、自分は原作は読んでいないんですが!

■2つの大陸、3つのドラマ

物語は架空の世界の架空の大陸ウェスタロス、そして海を隔てたもうひとつの大陸エッソスを舞台にしています。『GoT』は大まかにいうと、ここで同時進行する3つのドラマが中心となります。

【その1】大陸ウェスタロスには7つの王国が存在し、その7つの王国をさらに一人の王が総べていました。その玉座を物語では《鉄の玉座》と呼びます。しかしこの王の死去により、《鉄の玉座》を巡って大陸ウェスタロスに戦乱の足音が近づきます。

【その2】隣の大陸エッソスにはかつてウェスタロス全土を支配しながら叛乱によりここを追われた《ドラゴンの血が流れる一族》の後継者が亡命しています。彼らはエッソスを支配する蛮族を取り込み、ウェスタロス奪還を虎視眈々と狙います。

【その3】古代よりウェスタロス北部には《異形》と呼ばれる超自然的脅威が存在し、歴代の王はそれを巨大かつ長大な雪山《壁》によって防ぎ続けていました。そしてその《壁》の向こうで《異形》が再び目を覚まし、今まさに7王国に襲いかかろうとしています。

これら3つのドラマが同時進行しながら、ここに登場する様々な人々の視点で描かれる群像劇、それがこの『GoT』というわけなんですね。3つの舞台による3つのドラマは、それぞれが極寒の雪山、暗い森や厳めしい城郭、そして南国の海辺といったロケーションで分けられ、それらが交互に現われ物語を紡ぐさまは何かこの世界の大陸を俯瞰しているかのような気分にさえなります。そしてここで物語られるドラマの背後には膨大な歴史的遍歴があったことがきちんと設定されており、重厚な世界観を作り上げているんです。物語世界は中世イギリスとその周辺諸国、そして当時の政治状況から着想を得ているようですが、それを換骨奪胎することにより独特の異世界を作り上げているというわけです。

■驚くべきリアリティ

3つのドラマにはそれぞれ中心となる一族・登場人物が存在しますが、それをとりまく人々の数は膨大です。そしてそれぞれが一族の絆、忠誠心、自らのエゴ、王座への渇望、過去の遺恨などの理由により共闘・反目しあい、さらに陰謀と裏切りによる複雑な人間関係が形成されてゆきます。まさに蛇の巣と化した2つの大陸で、誰が敵で誰が味方なのか分からないまま、緊張感を孕みつつ物語は進んでゆくのです。この辺確かに複雑で、自分などは観ていて時々「この人とこの人の関係って?あれこの人誰?この人はいったいどこの一族の所属?」などと分からなくなったりしてしまいましたが、一緒に観ていた相方さんは全て把握していて、いちいち教えてもらっていました(面目無い)。まあ公式HPなどのチャートなどを調べると分かりますので、オレのように記憶に自信の無い方は小まめにチェックされるとよいでしょう。ただし非常にダイナミックに進んでゆく物語なので、逆に細かな部分を取りこぼしてもそのエグイ人間関係に恐怖しながらきちんと面白く観られます。

こういった複雑で予断を許さない人間関係、それにより生み出される波乱万丈の展開だけがこの『GoT』の面白さではありません。このドラマが真に魅力に溢れたものに仕上がっているのは、細微に渡り周到に構築された世界観と、それを驚くべき見事な美術で再現したリアリティ溢れるビジュアルなのです。この『GoT』は、同じファンタジーという以外『ロード・オブ・ザ・リング』とは関係ありませんが、しかし『LOTR』が、徹底的に作りこまれたビジュアルにより圧倒的な世界を創出したのと同じぐらいの情熱とイマジネーションによって、この『GoT』が作り上げられたであろうことは間違いありません。あたかも異世界に投げ込まれ、その異世界を旅し、自らもそのドラマの中の住人のようにさえ感じさせる臨場感、これが『GoT』というドラマの魅力となるのです。

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tod765tod765 2013/08/23 12:26 ご覧になりましたか!。シーズン2も年内に日本版出るみたいです。シーズン3は日本以外版が来年だったかな。物語は第4部までしか読んでませんが、どんどんごっついことに。ドラゴンも居たりする世界なのにリアリティを失わない、そして人多すぎなのと髯面の若い人たちの見分けがつきづらい作品ではあります(ティリオンとジョンを除く)w

globalheadglobalhead 2013/08/23 13:23 『ギャラクティカ』や『スパルタカス』もそうでしたが毎話ラストが酷くて暗くてねー観ていてドンヨリ・観終わってグッタリしてくるんですよねー。そこがまた止められない理由なんですが。次章早く観たいですね!

20130822(Thu)

[]メビウス&ホドロフスキーのタッグで送る超絶ポルノグラフィ〜『天使の爪』 メビウス&ホドロフスキーのタッグで送る超絶ポルノグラフィ〜『天使の爪』を含むブックマーク メビウス&ホドロフスキーのタッグで送る超絶ポルノグラフィ〜『天使の爪』のブックマークコメント

■天使の爪 / メビウス(画)、アレハンドロ・ホドロフスキー(原作)

天使の爪

つい先ごろ『猫の目』が国内出版されたばかりのメビウス&ホドロフスキーによるタッグ作品がまたもやリリースされた。タイトルは『天使の爪』、そしてこれがなんとメビウス描く淫猥極まりないグラフィックが躍る超絶ポルノグラフィだったのである。

この『天使の爪』はコミック形式の作品ではなく、『猫の目』と同じくメビウス描く大判のグラフィックにホドロフスキーの散文が添えられ、ある種のストーリーめいたものを形作る構成となっているのだが、このグラフィックがことごとく、あからさまにインモラルな性的イメージに満ち溢れたものなのだ。そしてそれにインスパイアされて書かれたホドロフスキーの文章は、この物語の"主人公"とされる"女"の倒錯した性の遍歴を、それが密教の秘儀の如くであるように魔術的に描写するのである。

この『天使の爪』に奔出する性的イメージのインモラルさは、甚だしく多岐に渡る。それは近親相姦と精液と経血に始まり、オーラル・セックスとスカトロジー、緊縛とボディピアス、サディズムとマゾヒズム、同性愛と両性具有、去勢と涜神、隷属と支配、凡そ並べられるであろうあらゆるタブーを犯しながら、これでもかとばかりに背徳のイメージを重ねてゆくのだ。そしてそこでメビウスは、男性器も女性器も性交シーンも、臆すことなく奔放に描画しつくしているのだ。

しかしもちろんこの作品はありきたりなポルノグラフィの枠に留まる物ではない。剥き出しの性と汚辱とを描きながら、そのグラフィックはメビウスの手によって一級の芸術作品としての完成度を持ち、危険な甘美さと暗い愉悦に満ちた秀麗な作品として仕上がっているのである。

この作品が創作されたそもそもの発端は、メビウスが自らの抱えるサディスティックな性的衝動に困惑し、それをホドロフスキーに吐露したところ、ホドロフスキーがそれをあえて作品化してみてはどうか、と持ち掛けたことから始まったのらしい。即ち、コントロール困難な自らのリビドーとあえて正面から向き合い、作品として対象化することで、精神療法的な【昇華】をメビウスにもたらそうとホドロフスキーは考えたのだ。

だからこそありとあらゆる性的倒錯の旅路の果てに、この物語の"女"は【解放】と【変容】を獲得し、法悦ともいえる【浄化】へと飛翔するのである。そしてそれは、メビウス自体の精神的【浄化】であることに他ならない。それにしても一見するならポルノグラフィでしかないものにさえ、形而上的な魂の遍歴を映し出すメビウスとホドロフスキーの、その類稀なる技に感服した作品であった。

天使の爪

天使の爪

20130821(Wed)

[]最近聴いたエレクトロニック・ミュージック~Floorplan, Orlando Voorn, Gary Beck, Zomby, Steffi, Ital, Pet Shop Boys 最近聴いたエレクトロニック・ミュージック~Floorplan, Orlando Voorn, Gary Beck, Zomby, Steffi, Ital, Pet Shop Boysを含むブックマーク 最近聴いたエレクトロニック・ミュージック~Floorplan, Orlando Voorn, Gary Beck, Zomby, Steffi, Ital, Pet Shop Boysのブックマークコメント

■Paradise / Floorplan (Robert Hood)

Paradise

Paradise

デトロイト・ミニマルテクノの重鎮Robert HoodがFloorplan名義でリリースした1stは黒く重いリズムが踊るストロング・スタイルの快作テクノ・アルバム。これは買い! 《試聴》

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■Divine Intervention / Orlando Voorn

Divine Intervention

Divine Intervention

デトロイトテクノをアムステルダムに紹介し橋渡しとなったベテランDJ、Orlando Voornが14年ぶりにリリースしたオリジナル・アルバム。 デトロイト・テクノを知り尽くした黒く骨太のビートが踊る傑作! 《試聴》

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■Soma Compilation 21 - Mixed By Gary Beck

Soma Compilation 21

Soma Compilation 21

ミニマルテクノプロデューサーGary Beckが地元グラスゴーのSOMA Recordingsの音源を使いリリースDJ-Mixアルバム。 《試聴》

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■With Love / Zomby

With Love

With Love

ベース・ミュージック・プロデューサーのZombyが4ADレーベルからリリースした2枚組、全33曲の大作アルバム。 《試聴》

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■Panorama Bar 05 / Steffi

Panorama Bar 05

Panorama Bar 05

Panorama Barのオフィシャル・ミックス新作はここのレジデントDJを務めるオランダ人DJ/プロデューサーのSteffi。Ostgut Tonよりリリース。 《試聴》

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■Dream On / Ital

Dream On

Dream On

90年代ハウス・リヴァイバルなサウンドを展開していたインディー・ダンス・プロデューサーItalの2012年リリース作品。前作よりシンフォニックなドラマチック展開を見せている。 《試聴》

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■Electric / Pet Shop Boys

ELECTRIC

ELECTRIC

Pet Shop Boysが自身のレーベル「x2」より初めてリリースした通算12枚目のアルバム。彼らの語る所によると「バンギンなアルバム」だということ。B・スプリングスティーンのカヴァー「The Last To Die」がいい。 《試聴》

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20130820(Tue)

[][]『デヴィッド・ボウイ・イズ』はデヴィッド・ボウイ博物館だった 『デヴィッド・ボウイ・イズ』はデヴィッド・ボウイ博物館だったを含むブックマーク 『デヴィッド・ボウイ・イズ』はデヴィッド・ボウイ博物館だったのブックマークコメント

デヴィッド・ボウイ・イズ

書店で偶然見つけたその大判の写真集は『アラディン・セイン』の時のボウイのジャケ写真を使ったオレンジ色のカヴァーをしていた。タイトルは『David Bowie is』。ついこの間10年振りのニューアルバム『ザ・ネクスト・デイ』を出したばかりだから、またもやボウイ旋風が巻き起こっているのか!?などと思いつついそいそと本の中を確かめてみると、おお!おお!未だ観たことの無いボウイ様のあんな写真やこんな写真がこんなに沢山!おお!おお!とすっかり錯乱状態になり、書店で「レッツダンス」をフルコーラスで歌った後警備員に取り押さえられたっぷり絞られたオレである(注:後半冗談です)。

調べてみるとこの本、ついこの間までイギリス・ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で開催されていたデヴィッド・ボウイの大回顧展『David Bowie is』のカタログで、翻訳版もでているのらしい。大回顧展をやってる事自体ちっとも知らなかったとは、いちボウイファンとしての名折れではあるが、知っていても見に行けるわけでもないので、知ってしまった事のほうが逆に悔やまれるほどである。ああ…日本に来ねえかなあ…。下に「デヴィッド・ボウイ回顧展ヴァーチャル・ツアー」というYouTube映像をリンクしておいたから見に行けなかったファンの人はオレと一緒にハンカチ噛み締め悔しがるといいのである。

そしてその内容はというと、大回顧展のカタログだけあって、これまでの長きにわたるボウイの活動を余すところなく収めており、「レコードジャケットの原画や写真、ステージ衣装、直筆歌詞、世界初公開となった私物などが展示された同展の内容を凝縮した内容」となっている。これまで見たことの無いボウイの写真はもとより、見たことのある写真でも大判の綺麗な印刷で見られるのは実に嬉しい。特にこのカタログで注目したいのは、初期の頃からつい最近までの様々なツアー写真と、そのツアーやアルバムのイメージとして着用した衣装が、マネキンに着せられて展示されている写真が掲載されていることだ。もちろんそれらのステージ衣装はファンにはお馴染みのものではあるが、こうしてカタログという形で一堂に眺められるのはとても興奮させられる。それにしても山本寛斎製作の衣装は何回見てもやっぱり変過ぎる。あとボウイ自筆の歌詞原稿とかね、もう目を見張っちゃいますよ。

さてこの『David Bowie is』、日本版はボウイのアルバム『ダイアモンドの犬』収録の「1984年」にちなんで1984部の限定出版、価格はロックにちなんだ6900円となっている。…こういうセンスはやはり突っ込まないでそっとしておくべきなんだろうな…。自分はこの「1984部限定6900円」の日本版を購入したが、基本的に写真目当てではあるし、確かに洋書のほうが若干安いとは言え、少々高くても日本語翻訳版のほうが安心して見ることができたよ。

○デヴィッド・ボウイ50年の軌跡、英ロンドンで大回顧展

○David Bowie Is... / Style Bubble (回顧展の写真が多数)

デヴィッド・ボウイ回顧展ヴァーチャル・ツアー

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ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

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20130819(Mon)

[]壊せ壊せみんな壊してしまえ!〜映画『ホワイトハウス・ダウン壊せ壊せみんな壊してしまえ!〜映画『ホワイトハウス・ダウン』を含むブックマーク 壊せ壊せみんな壊してしまえ!〜映画『ホワイトハウス・ダウン』のブックマークコメント

ホワイトハウス・ダウン (監督:ローランド・エメリッヒ 2013年アメリカ映画)

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アメリカ合衆国議会議事堂がテロリストに占拠され、上を下への大騒ぎさ!というアクション映画です。主人公はシークレット・サービス試験に落ちこぼれた議会警察官のジョン・ケイルチャニング・テイタム)。彼はホワイトハウスオタクの娘とここに見学ツアーに来て事件に巻き込まれ、「落ちこぼれだってやる時ゃあやるんだ!」とばかりにテロリストを追撃、ついでに囚われの大統領(ジェイミー・フォックス)まで助け、テロリストたちの陰謀を暴こうとするんですね。

議事堂ドームの大爆破から始まり、さらにあちこちでもドッカンドッカン爆破が起こり、中ではドンパチ銃撃戦、政府要人は次々とぶっ殺され、議事堂に向けての戦車砲撃、調子に乗って議事堂の庭でのカーチェイス、その庭には蚊トンボみたいに戦闘ヘリが次々と墜落します!しかも破壊の舞台は議事堂ばかりに留まりません。なんとxxが発射されxxが打ち落とされちゃう、という大パニックまで起こってしまいます。大風呂敷はさらに広がり、遂には第3次世界大戦勃発か!?な〜んて所までいっちゃうんですね。このやりたい放題のムチャクチャ振りが楽しい映画となっているんですよ。

監督は『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA』『デイ・アフター・トゥモロー『2012』と、モノをぶっ壊し世界を滅茶苦茶にすることにかけては他の追従を許さないローランド・エメリッヒ、この映画でもアメリカ合衆国議会議事堂といういわばアメリカの中心をこれでもかこれでもかとぶっ壊しまくります。いやー楽しんで作ったんだろうなー。監督の「壊せ壊せみんな壊してしまえ!」という心の叫びが聞こえるような映画でしたよ。

プロット的には『ダイハード』の第1作とよく似ているなーと思いました。落ちこぼれ警察官が主人公、テロリストによる建物占拠、建物の構造を巧く生かした逃走劇、屋上でのヘリとの攻防、人質に肉親が存在、そして肉親だとバレて主人公をおびき出すエサにされたりとか、枚挙に暇がありません。一番似ているのが主人公が白いタンクトップ一枚で頑張っちゃう所でしょう。というかこのシナリオのままブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンを主人公にして「『ダイハード』の新作です」とか言ってもみんな普通に納得しちゃうでしょう!

あとこの映画、シリアスな場面ばかりではなく、主人公と彼に助け出された大統領の掛け合いが妙に楽しかったりします。ってかある意味これ、アクション映画でも珍しい、大統領と警官を主人公にしたバディムービーと言えるかも!?そしてこの大統領がなんと言ってもお茶目!逃走時にスニーカーを履いて敵に「俺のエアジョーダンに触るな!」と怒って見せたりとか、大統領専用車ではなぜかゾンビ映画が流れてたりとか、挙句の果てにはロケットランチャーまで撃ってみせます!

この大統領のヤンチャ振りも含め、映画全体にはヨーロッパ人監督エメリッヒ独特の「アメリカ的なもの」への皮肉がこもっているようにも見えました。クライマックスの「アレ」ってさー、感動するところなのかもしれないけど、オレなんだか「プッ」って笑っちゃったよ。その辺、同じヨーロッパ人監督であるポール・バーホーベンの『スターシップ・トゥルーパーズ』にも通じる、「マッチョなアメリカ」への諷刺をどことなく感じましたね。

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Ost: White House Down

Ost: White House Down

kenken 2013/08/19 12:24 エメリッヒの面白いところはドイツ人のくせに当のアメリカ人よりも愛国的な映画をつくるところだと思うんですが、今回も外しませんでしたね。
クライマックスのアレなんかもうあまりにもアレで感動を飛び越えて笑うつもりがさらに飛び越えて感動してしまいました(笑

globalheadglobalhead 2013/08/19 12:36 実は自分、エメリッヒ大好きなんですよ。今回の映画もたいして興味無かったんですがエメリッヒと聞いてこれは観に行かなきゃマズイだろ!と思ったわけです。いやあ期待は裏切られませんでしたねえ。満足しました。

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20130816(Fri)

[]夏休み手抜き企画・昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』(後編) 夏休み手抜き企画・昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』(後編)を含むブックマーク 夏休み手抜き企画・昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』(後編)のブックマークコメント

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手抜き企画『昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』の後編である。

天の川

(前回までのあらすじ)そうやって2時間あまり。午後9時近く。バスに揺られていたオレが最後に辿り着いたのは、街路灯一つ無く、まばらな民家にさえ家の灯りが点いてない、真っ暗な山の中のバス・ターミナルなんであった。そして、そこで、この鈍い男はやっと気付いた。「此処、何処なんだ?」

取り合えずオレはバスが来た道を逆に歩くことにした。5つぐらい前の停留所に町があった(それ以外は単に何も無い道端に停留所があるだけ)のと、そこにタクシーの営業所を見ていたからだ。荷物は重かったが、急ぐわけでもないし、知らない土地を歩くのは気持ちがいい。だがもう一つの方法として既に親戚の家に到着している弟に救出を頼むという手がある。という訳で携帯電話を掛ける。(それにしても、この携帯電話、つい最近買ったばかりなんである。これが今回活躍しまくりで、偶然のようだがあながちそうでもない、人生の不思議な符号を感じた。というか今回の帰郷自体、今年突然あれこれ変化し始めたオレを取り巻く状況の、その一つって感じなんだよな)「海岸線を北に向かって歩いてるよ。目印になりそうなものはなにもないぞ。」弟に告げると取り合えず車で向かってるので目印見つけたらまた電話くれとの事。

人気の無い海岸沿いの道をとぼとぼと歩く。夜空には半月に近い八日月。雲の流れが速くて時々月明かりが遮られる。水平線の向こうには小さな光があちこちに点在している。たぶんイカ釣り漁船だろう。街の明かりが無いこんな場所の夜空なら、水平線から上る天の川が見えるはずだ、と思って夜空に目を凝らしたが見えはしない。子供の頃はよく見えたんだけどな、と思って気付く。ああ、オレ、あの頃の半分以下の視力なんだ。

小さな住宅の集落とこうこうと明かりの点いた自動販売機を見つけ、此処を目印にしてくれ、と弟に告げる。CDウォークマンジミ・ヘンドリクスを聴いていたら、ほどなく妹の旦那の運転する車がやってくる。「お前、本当はこういうシチュエーション楽しんでるだろ?」車に同乗していた弟に笑われる。久しぶりに会うけれど、オレの性格はしっかり読まれている。

“世間知らずのガキ”

喪主のいる家へと到着する。此処の家族とは本当に30年ぶりぐらいだ。子供の頃しか知らない2人の従姉弟の顔を見てもそれと判らない。叔母、叔父夫婦とも20年ぶりぐらい。そして5年ぶりに会う妹。「何道に迷ってんるんだよ」からかわれながら、皆で久々の顔を懐かしがる。

親戚達と酒を飲みながら話す。オレが話をしだすと皆が面食らっている。「お前、性格変わったなあ。昔はろくに口も聞かない子供だったぞ。」叔父夫婦に言わせると、学生の頃のオレは冗談にさえニコリともしない気難しく理屈っぽいガキだったと言う。あの頃は何処に行っても人と顔を合わせず本ばかり読んでいた。今みたいに、どこかのお笑いタレントよろしくおどけた調子でべらべら喋ることなんて無かったんだそうだ。「そりゃ人も変わるさ。東京でいろいろあったんだよ」という訳で東京でいろいろあったとされることをあれこれ面白おかしくでっち上げてさらに笑いを取る。

10代の頃の“本ばかり読んでいる気難しく理屈っぽい生意気なガキ”は不幸な奴だった。自分の事を人とは違う賢い人間だと思っている不愉快な馬鹿野郎だった。ガキは世間知らずだったんだ。こんな人間は社会とそりが悪い。そして簡単にドロップアウト。そこから生活能力のある普通の社会人みたいなものになるまではしんどかった。あちこちで滑りまくりコケまくって、ようやく手にしたのがこのお馬鹿さんのキャラクターさ。此処までは長い道のりだったぜ。

霊前で手を合わせる。今日は通夜だったんだが、此処の風習で、既に火葬は済んでるという。今晩は線香の火を絶やしてはいけないということになっているらしく、オレが線香番をすることになる。皆が寝静まる中、深夜3時まで起きていた。東京のあれやこれやの人にケータイでメールを打ってたので退屈しなかった。

告別式その他

翌日土曜日は告別式と納骨。いろんな人と会う。オレが子供の頃にナニのソレのオジサンだのオバサンだの。何しろ今回は全て未経験のことを一通りやらなきゃいけないので、いろいろ勉強になる。此処の田舎の風習なのか、告別式では壇上に向かって10円玉を投げ銭する。また、納骨では骨壷からお骨を出して直接墓の中に入れてしまう。代々の遺骨を一つ墓の中にまとめるということなんだろうか。ふと見ると墓地の後ろの山の中で鴉が蛇を捕らえようとしている。長く触れたことのない、もはや自分には関係のないことだと思っていた土俗や血縁に突然晒されて、少しだけ腹の奥に重いものが溜まる。これら全てはオレの血の中にあるのだろうか。そういえば式場でも「君はF家の顔をしているね。すぐにわかったよ。」と故人の知り合いの方に声を掛けられた。これらの事は俺の中ではまだ整理がついていない。いつかまたどこかでこの感覚は蘇るんだろう。

お別れ

一通り終わり、妹夫婦と近所の露天風呂に行くことにする。今回、妹の旦那と初めて三言以上会話をする。とても無口な男なのだ。ずっとオレ等家族の運転手役をやってくれていた。露天風呂は気持ちがよかった。「北海道は掘れば結構何処でも温泉って出るんですよ」と彼。あまり会話したことのない男だったが、話してみると思った通り朴訥でいい男だった。

夕方、叔父と叔母が帰るのでお別れを言う。

ところで明日の交通路を確認しなければいけない。来た時と一緒な行き当たりばったりというわけにも行くまい。従妹が一緒に車で早朝の函館行きバスの停留所を確認してくれる。「今回会えてよかった。今何やってるんだろうなあ、ってずっと思ってたんですよ」と従妹。20年ぶりだから、彼女の子供の頃の面影しか知らないオレは少し神妙な気分になる。彼女は随分と泣き虫で甘えん坊な子供だったのを覚えている。今は素敵な女性へと成長して結婚もされている。「でも最近仕事がうまく行ってなくて」。そしてそれなりに人生の重みを背負ったりしている。

歳月のことはオレは考えないことにしている。オレはいつも今現在の事しか興味の無い刹那主義者で、自分が歳を取っている事はあまり意識しないし、常に目新しいものばかり追っかけていた。しかし何十年かぶりで逢う人たちは客観的な時間の中で歳をとっており、老いてそしていつか滅びてゆく肉体の中にいる。そしてそれは、本当は、オレも彼らと変わらないんだ、ということでもある。今回は親戚の死にも触れたし、ちょっとだけ真面目に考えたオレだった。すぐ忘れるかもしれないけど。

今回旅してきたこの場所は、実はオレの生まれた場所なんだよ。育ったのは別だけどね。だから、オレ自身のルーツ探しをついついしてしまう。

函館、東京。

日曜日。家族へのお別れの挨拶もそこそこに朝7時半のバスに飛び乗る。本当に今回は飛び乗ってばかりいる。10時頃函館駅へ到着、そこからまたバスで函館空港へ。東京への飛行機の出発は12時半。会社のあいつやあいつの顔を思い浮かべながらお土産を買う。そして会社のあの連中がオレにとっての東京での家族なのかな、とふと思う。

今回の旅ではジミ・ヘンドリクスウッドストック・ライブをずっと聴いていた。帰りはIVYというギター・バンドの諸作を聴いた。得にApartment Lifeが気分だった。

本はウィリアム・ギブソンの新作を読んでたよ。飛行機で移動のシーンを飛行機で読むと軽いデジャビュに襲われたな。

東京へは3時ごろ着いた。片付けと洗濯をする。現実感覚が戻ってくる。

そして、これが、オレの、先週の出来事の全てです。

(了)

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20130815(Thu)

[]夏休み手抜き企画・昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』(前編) 夏休み手抜き企画・昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』(前編)を含むブックマーク 夏休み手抜き企画・昔の日記の再録だ!〜『北海道に行っていた(2004年6月27日〜7月4日)』(前編)のブックマークコメント

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夏である。夏といえば夏休みである。この日記も休みたい。そもそも書く事なぞ何も無い。何も無ければ書かねばいいではないか。真っ当な思考能力を持っている方なら通常そう考えられるであろう。しかしだ。週5日日記を更新することを日課として早9年、このしょうもない頭と身体に染み付いた習慣は早々消えないのである。休みたい。でも日記も更新したい。そのような一般社会人にはどうでもいいような葛藤を経てオレは名案を思いついたのである。「昔の日記を再録しよう!」

という訳で今回、2004年6月27日から7月4日まで飛び飛びで更新した『北海道へ行っていた』という記事を再録することにした。実はこれ、旅行に行っていたわけではなくて、亡くなった伯父の葬式に突然出かけなければならなくなったオレのドタバタ道中を日記にしたためたものである。9年前、ブログというものを書き始めの頃の記事なので、今読むと相当青臭く、つまらないことで粋がっている内容なのだが、だいたいそのまま再録することにした。まあ今でも相当青臭い上につまらないことで粋がっている人間なんだが…。なお結構な長文なので2日に渡ってお送りすることになる。夏休みでお暇な方はどうぞお付き合いください〜。

(以下から日記再録分になります)

実家から連絡

木曜の夜、北海道の実家から電話があり、親戚に不幸が出たとの事。母親の兄、オレの伯父が事故死したらしい。オレの伯父は沿岸漁業をやっていたのだが、早朝つぶ貝採りに出かける途中、誤って車ごと海に転落したと言う。享年69歳。金曜日に通夜、土曜日に告別式との事なので出席できるか、ということだった。

オレは親戚付き合いというものが嫌で、というより親戚の存在そのものが嫌いで、こういうものとは殆ど係わる事が無く歳を経てきたが、なんだかこの日、「もうこういうの嫌だとか言ってるの止めようかなあ」と突然思った。それで、出席することにした。結婚してから実家を離れて、5年ほど会ってない妹とも会いたかったし、何しろ、取り合えず、オレの親戚って、今どうなってんの?という単純な興味が沸いたんである。

いや、「理由がどうとかではなく、親戚の冠婚葬祭に出るのは社会人の常識」ではあるのだが、オレという人間は、どうもちゃんとした常識が身についていないのだ。という訳で、自分なりに一つ“常識”を取り戻したオレは、金曜日の早朝、親戚の家がある北海道の函館へと向かうことにした。

北海道

ところで、「函館に向かうことにした」はいいのだが、オレが住んでるのは東京都内。交通はやはり飛行機になるだろう。で、ネットで羽田=函館の空席を調べたが、これが、殆ど無い。これが木曜の夜。しかし、「どうにかなるだろう」と金曜日は特に何も考えず朝から空港へ行く。で、当たり前だが、本当に空席が無い。結局PM2時ごろの飛行機を見つけるが、この段階で、AM9時。チケットは買えたが、時間が余りすぎる。

で、何をしたかというと、アパートにもう一回戻って荷造りをし直す。さらに有楽町に行って白シャツと黒ネクタイを調達する。白シャツはクリーニングに出しててこの時点で無かったんである。で、もう一度空港へ。もうこの時点で、オレがいかに無駄の多い生き方をしているか察した人も多いだろう(…)。

PM4時ごろ、函館到着、空港〜JR函館駅へバスで行く。実は親戚の家はここからさらにバスのローカル線に乗って長旅しなければならないのだ。

それにしても函館の駅は20年ぶりぐらいじゃないか?と思う。オレの実家自体は北海道の、というか日本の一番北、最北端の地稚内というところにある。函館は北海道の南端。にもかかわらず、街並みのスカスカした寂れた様子、空一面にアルミ板を打ち付けたような鈍色の空、バスの移動中見かける原野の植生など、どこまでもが妙に実家に似通っていて、偏頭痛のようなデジャ・ビュに悩まされた。ああ、北海道は何処までも北海道だ。

函館には路面電車が走っていた。此処だけなんだかレトロな風情があって、オレは少し函館が好きになった。今や何処の地方都市も風景が一緒な気がするけど、やっぱり地方都市はこういう“独特さ”が必要なんじゃないかな、とかガラにも無く真面目に思うオレであった。

取り合えず食事

函館駅ロータリーから目的地へのローカルバスの時間はPM6時40分。時間が空いてるので取り合えず食事。「北海道ならラーメンだろ」というその辺の観光客と同じ紋切り型の理由でラーメン屋を探し、見つけた店で味噌ラーメンを注文。北海道は味噌ラーメンですよ皆さん。もやしたっぷりが基本なんですよ。東京の人間と以前話したとき、「味噌ラーメンって味噌汁にラーメン入れてるみたいで薄気味悪い」とか言われたことがあるが、オレにとっては味噌ラーメンこそが北海道的ソウル・フードなのである。

まあ味はたいしたことなかったけど。というか、北海道のラーメンの麺の基本は縮れ麺だろ!普通の柳麺使ってる味噌ラーメンはペケだ!

ところでこの店で、オレも知らない名前の北海道メニュー(?)を発見。ちょっと書き出してみるね。

「ザリジ」:豚肉のから揚げ。(鶏肉のから揚げを「ザンギ」っていうのは北海道では一般的)「クローヨー」:酢豚。「フヨーハイ」:かに玉。いったい何語だ?

あと駅ビルにはTVドラマ「新撰組」にあやかってか「土方歳三ラーメン」というのがあった。食わなかったが。どういうラーメンなのか気になる。で、ググッたら単なるタンメンだった!

現実感

そもそもこの度の旅の趣旨は「お葬式」なのであって、こんな浮かれた調子で文章なんか書いてていいのであろうか、とか思うんですが、なにしろ会社休んで飛行機飛び乗る、って段取りを組んだ段階で既に現実感を喪失しちゃってるんですよ。もう非現実の世界に入ってるんですよ。昨日の今日、自分が北海道にいるなんて想像すらしなかったもの。これから待っているであろう事も、お葬式にしろ親戚達に会うことにしろ、自分の生まれた土地に30年ぶりぐらいで足を踏み入れることも、なにもかもへらへら生きてた現実からすっぱり切れてる未体験ゾーンなわけなんです。よく、不祥事を起こした会社の責任者が、記者会見のときウヘヘ、と笑っちゃったりして、善良で朴訥で勤勉実直でセックスは月一回正上位のみっていう小市民の皆さんから「けしからん」とか「不謹慎だ」とか「通報してやる」とかお叱りの言葉を受けるじゃないですか。でもオレあのウヘヘッって判るんですよ。あれ、連中は、現実感を喪失しちゃってるんですよ。

バスに乗る

「函館駅ロータリーから目的地へのローカルバスの時間はPM6時40分。」って所から続けよう。

実を言うと函館から目的地への交通手段って良くわかんなかったんですよ。調べる暇も無かったし。このローカルバスって奴も、「多分これだろう」というオレの希望的憶測によって成り立つ何の根拠の無い選択だった訳なんですよ。

普通、人間は、こういうとき、せめてそれが正しいのかどうか、人に訊くなりして確認とりますよね。ところが、オレ、 人に物訊くのが大嫌いなんですよね。「多分大丈夫だろう」と思ったら、それは既に大丈夫なんですよ。

賢明な読者(って読者いるのかよこの日記)の皆さんならこの後の展開を既に予想されているでしょう。そう、このバス、目的地に行かなかったんですよ。

いやー、途中で、なんかおかしいな、と思ったんですけどね。普通、人間は、こういうとき、おかしいなと思ったら、バス運転手に訊くなりバス降りるなりしますよね。しかし、オレは、「ま、なんとかなるだろう」 と、自分で手を下さないくせに事態が都合の良い方向に勝手に行ってくれるだろう、行けばいいな、行くんじゃないかな、と手をこまねいて夢の世界に旅立っちゃうんですね。

そもそも、オレという人間の行動の規範は、

「思いつき」

「行き当たりばったり」

「気分次第」

なのだ。さらにその行動全てを統べるオレ自身のセントラルドグマは

「学習能力が皆無」

という血の十字架を背負っているのである。

よく、友人なり付き合ってる異性の本当の性格を知りたかったら一緒に旅行をしてみるといい、なんて言われるが、オレという人間は、多分、一緒に旅行をさせたらサイテーの人間だと思うね。今回の旅でも自分で思ったもの。もし今回誰かと一緒にいたら、一緒にいた人間は絶対キレるだろうね。

そうやって2時間あまり。午後9時近く。バスに揺られていたオレが最後に辿り着いたのは、街路灯一つ無く、まばらな民家にさえ家の灯りが点いてない、真っ暗な山の中のバス・ターミナルなんであった。そして、そこで、この鈍い男はやっと気付いた。

「此処、何処なんだ?」

遅いよ。あまりに気付くのが遅いよオレ…。

(明日に続く)

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20130814(Wed)

[]ヘンゼルとグレーテルがバイオレンス・アクションになって帰ってきた!?〜映画『ヘンゼル&グレーテル』 ヘンゼルとグレーテルがバイオレンス・アクションになって帰ってきた!?〜映画『ヘンゼル&グレーテル』を含むブックマーク ヘンゼルとグレーテルがバイオレンス・アクションになって帰ってきた!?〜映画『ヘンゼル&グレーテル』のブックマークコメント

■ヘンゼル&グレーテル (監督:トミー・ウィルコラ 2013年アメリカ/ドイツ映画)

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親に捨てられお菓子の家で魔女に拉致監禁されたあのヘンゼル&グレーテルが、賞金稼ぎの魔女ハンターになって帰ってきた!?というアクション・ホラー映画です。

しかしハリウッドもネタ切れなのかなんだか最近お伽噺系の映画が多いですね。白雪姫だけでも『スノー・ホワイト』と『白雪姫と鏡の女王』で映画化されてますし、『赤ずきん』の映画化もありましたし、『ジャックと天空の巨人』みたいな今更誰得?な映画もありましたね。これらは御伽噺の持つダークサイドの部分をクローズアップさせたり、単純にファンタジー・アクションとして製作されているようなんですが、この『ヘングレ』はといいますとバイオレンス・アクション映画なんですね!

なにしろお話が魔女ハンター、御伽噺というよりは映画『ヴァン・ヘルシング』(これ意外と嫌いじゃないんです)に近いモンスターVS人間の戦いが描かれているんですよ。ユーモラスな掛け合いなんかもあるにせよ、基本ヘングレvs魔女のバイオレンス対決です。しかしそれだけではなくヘングレの出生の秘密が絡んできて物語を膨らませているんですね。さらにこの映画、監督がトミー・ウィルコラ、あのハラワタぶちまけ系ゾンビ映画『処刑山』の監督なんですよ。このヘングレでも若干ではありますがハラワタ!切り株!肉体破損!といったヤンチャ振りを見せてその手のものが好きなファン(オレ)の目を楽しませてくれちゃったりしています。

ただしバイオレンスとグロを主軸としているので、これまで映画化されてきたようなお伽噺/ファンタジー系の映画と比べると、ファンタスティックな美術が楽しめる、ということはありません。それよりもヘングレの使う変な武器がスチーム・パンク風味で楽しかったりします。ヘンゼルを演じたジェレミー・レナーは旬なだけあって魅力的だったし、グレーテルを演じたイギリス女優ジェマ・アータートンは奥ゆかしい美しさでこれもなかなか魅力的でありましたよ。ただお話自体はそのまんまといっちゃあそのまんまの展開なので、スカッと観てスカッ忘れちゃうようなレベルの作品であることは否めないでしょう。

さてこの『ヘンゼル&グレーテル』、日本ではDVDスルー作品になっちゃってるんですよ。海外じゃヒットしたようなんですが、なにしろグロ入ってるんで、その辺で年齢規制入っちゃうから観客動員見込めないだろ、とでも判断したのでしょうかな。でもハラワタも切り株も見慣れているような穢れきったオッサンであるオレとしては逆に大人しいほうだと思いましたけどねェ。


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20130813(Tue)

[]超高速で動くゾンビ軍団が世界を襲うディザスター・ムービー『ワールド・ウォーZ超高速で動くゾンビ軍団が世界を襲うディザスター・ムービー『ワールド・ウォーZ』を含むブックマーク 超高速で動くゾンビ軍団が世界を襲うディザスター・ムービー『ワールド・ウォーZ』のブックマークコメント

ワールド・ウォーZ (監督:マーク・フォースター 2013年アメリカ・イギリス映画)

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ホラーやサスペンス映画のジャンルでオレが一番苛立ち興醒めするパターンは以下の3つである。

1.鬱陶しい女がいる。

2.鬱陶しいガキがいる。

3.一握りのバカのせいで全体が危機に陥る。

シナリオにこの3つを使えば容易く心情に訴えられ、容易く危機を作り出すことができる。だが安易なので苛立つし興醒めする。あと題材にもよるがこれもうんざりさせられる。

テーマは家族愛。

大事なのは親兄弟!大事なのは嫁とガキ!…まあ判りやすいんだが、これも心情に訴えるのには容易いやりかたなので、あんまりあからさまだと嫌気が差す。

…というわけでこれら全部の要素を兼ね備えたのがついこの間公開されたブラッド・ピット主演のゾンビ映画、『ワールド・ウォーZ』なのであるが、あにはからんや、これだけイヤ要素が詰め込まれているにも関わらず、大変面白く観ることができました。

さらにこの映画、ゾンビ・ホラーとして観ると否定的になりそうな部分も幾つかある。

・血があんまり出ない。

・肉体破損が描かれない。

・当然ハラワタや切り株描写もない。

・ゾンビなのにあんまり腐ってない。

等々である。つまりホラーとして観ると「不快」「不潔」「不気味」の3つの「不」が描かれてはいないのである。しかし実際のところ、この映画はホラーに拘った映画でもなんでもなくて、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』というよりはローランド・エメリッヒ『2012』のようなディザスター・ムービーであり、そして作品の感触としてはスティーヴン・ソダーバーグの『コンティジョン』が一番近いだろう。

高い致死率を持つ感染症のパンデミックを描いた『コンティジョン』は、感染症の発生とパニック、国際的な危機と各国政府の対応、病理解明と収束までをジャーナリスティックに描いた佳作だが、これの感染症をゾンビに代え、派手なVFXではったりと娯楽要素を高め、さらに中心に一個の家族を持ってくることでベタなケレン味を加えたのがこの『ワールド・ウォーZ』ということが出来るだろう。そしてその出来はというと、先に挙げた幾つかの否定的要素はあるものの、全体的には巨視的な視点でゾンビ禍を描いた、なかなかに楽しめるアポカリプス映画であった。

まずなによりもゾンビ映画史上最速で動き回りしまいには宙まで舞ってしまうゾンビ集団の描写が非常に素晴らしい。予告編で観て一番ヤラレタのがこの辺の描写で、ある意味ゾンビというよりは無数のアリンコの群れ、ないし蜂の群れのを思わせ、「魂の無い一つの膨大な集合」という意味で確かに虫の集団行動のように見える。そしてこれはポール・バーホーベンの傑作SF映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の昆虫型宇宙生物軍団そのものではないか。倒しても倒しても後から後からわらわらわらわらと湧いて出る敵との気の遠くなるような戦い。その恐怖感と徒労感をこの『ワールド・ウォーZ』でも巧みに表現されているのだ。

作品の見所はやはりイスラエル崩壊シーンだろう。周囲を壁で覆い文字通り鉄壁の守りを備えたイスラエルが一部のバカのせいで堤防が決壊するが如くあっという間に崩壊する。この崩壊の恐るべきスピード感が堪らない。主人公演じるブラッド・ピットはここで一人の女イスラエル兵士を助け、そしてこの女性がこの物語の鍵ともなるのだが、この女性を演じるダニエラ・ケルテス、兵士ということで丸刈りのヘアスタイルなのにも関わらず実に魅力的だった。ブラピも鬱陶しくて不細工な嫁の事なんか忘れて彼女と新世界への逃避行をしたほうがよかったのではないか、物語とは全く関係ないのだがオレはなぜかずっとそんなことを考えていたのであった。

それにしてもこの『ワールドウォーZ』、3Dで観たのだが、隣の方の口臭が酷く、死臭のようなその臭いは3D以上にゾンビ映画の臨場感を高めてくれたのであった。

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WORLD WAR Z 上 (文春文庫)

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WORLD WAR Z 下 (文春文庫)

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ゾンビ ディレクターズカット版 HDリマスター・バージョン [DVD]

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2012 [Blu-ray]

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20130812(Mon)

[]ロボット怪獣映画『パシフィック・リム』は「オレ的に・ムリ」でした ロボット怪獣映画『パシフィック・リム』は「オレ的に・ムリ」でしたを含むブックマーク ロボット怪獣映画『パシフィック・リム』は「オレ的に・ムリ」でしたのブックマークコメント

パシフィック・リム (監督:ギレルモ・デル・トロ 2013年アメリカ映画)

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  • 子供の頃TVでよく見ていた特撮ヒーロー番組がDVDのBOX-SETになって売っていたりする。ちょっと欲しかったりするけど、買ったりはしない。値段が高いこともあるけど、子供の頃はあんなに楽しんでいたあれらヒーローたちのドラマを今見ても、実は全然楽しめなかったりするんだろうな、と思うからだ。結局、それは単なるノスタルジーだからだと判ってしまうからだ。
  • ギレルモ・デル・トロのロボット対怪獣の戦いを描く映画『パシフィック・リム』、オレの好きそうな題材を描いているのに、何故だかあんまりノレなかったのは、「昔はこういうの好きだったんだよなあ」ではあっても、「今も現在進行形で好きかといわれるとどうかなあ」だったからかもしれない。
  • パシフィック・リム』は要するに怪獣相撲、ロボットプロレスのお話だ。それは少しも悪いことではない。自分も昔はこういうのが好きだったし、多分今でも嫌いじゃない。しかし『パシフィック・リム』は「昔こういうのが好きだった」ようなロボットと怪獣の戦いの物語ではあっても、今現在それを描くなら、もうちょっと物語をアップトゥデイトに描いて欲しかったなあ、と思えてしまったのだ。
  • 例えば怪獣というのなら、マット・リーヴス監督の『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、本多猪四郎の『ゴジラ』にオマージュを捧げつつ、POVでもってモンスターとしての怪獣の存在を実に恐怖たっぷりに、そして現代的に描いていた。
  • ロボット、というよりも機械生命体ではあるが、マイケル・ベイの『トランスフォーマー』(これだって結局ロボットプロレスだ)だって、車両からロボットへ高速に変身する姿を最新VFXでもって巧みに描き、目を見張らせた。
  • これらの怪獣とロボットは、現代的でスマートだったのだ。だが『パシフィック・リム』のロボットは圧倒的な重量感で描かれつつも鈍重にしか見えず、その怪獣は醜く禍々しい姿だが、少しも恐怖心を感じさせなかった。
  • 要するに監督ギレルモ・デル・トロの「昔から好きだったロボットと怪獣」を、その愛ゆえに「昔のまま今に」再現しちゃった、という部分で、オレはなんだかつまらなく思えてしまったのだ。
  • そんな「昔から好きだったロボットと怪獣」の戦いを、その"オタク"力で現代的に進化させ再現したのは、庵野秀明のエヴァンゲリオンだったのではないかと思うが、『パシフィック・リム』はエヴァ的な要素まで近づきつつ、しかしエヴァと比べるならまだまだアナクロな部分が多かったように感じた。
  • 一番大きな問題は、登場人物にまるで魅力を感じなかったということだ。主人公と目されるイェーガーパイロット、ローリーは、戦いで兄を失ったという痛ましい経緯があるにもかかわらず、単なるステレオタイプなマッチョ以上のものを感じない。その他のパイロットも個性的ではあるが人間味が伝わってこず、司令官もまた同様に薄っぺらで存在感が無い。博士二人は単なる道化で、闇商人ハンニバル・チャウは面白いキャラだがなんだか浮いている。
  • まあこの映画はロボットと怪獣を愛でるためにあるのだろうから登場人物のキャラクターは二の次になったのかもしれない。だがあまりドラマ性が無いのには少々キツかったのだ。このへんもうちょっと掘り下げて欲しかったなあ。
  • そんな中で菊地凛子扮する森マコは、芦田愛菜演じる森マコの少女時代も含めその情念の在り処が説明されていて、人間としての存在感があった。確かにあの程度の説明でしかないが、逆にあの程度でさえ充分なのだ。実は正直なところ、この森マコが主人公であったなら、この物語はより悲壮感が増したと思うし、そしてオレはもうちょっとこの映画を気に入ったような気がするのだが。

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20130809(Fri)

[]『アイアムアヒーロー』は数多のゾンビ物語に引導を渡し終焉をもたらす予感がする 『アイアムアヒーロー』は数多のゾンビ物語に引導を渡し終焉をもたらす予感がするを含むブックマーク 『アイアムアヒーロー』は数多のゾンビ物語に引導を渡し終焉をもたらす予感がするのブックマークコメント

アイアムアヒーロー(12) / 花沢健吾

アイアムアヒーロー 12 (ビッグコミックス)

■ゾンビ・ジャンルってどうよ?

ゾンビゾンビで半年暮らし、あとの半年ゃあ寝て暮らす。そんなゾンビライフ華やかしき時代も今は昔である。えーっと、なんとなくゾンビには飽きてきた。いや、近々公開されるゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』は必ず見に行くけど。あれ原作が大傑作なんですよ。でもさあ、秋に公開されるというゾンビ映画『ウォーム・ボディーズ』って、"ゾンビ版ロミオとジュリエット"だって?"キュートなゾンビ男子が人間にひと目ぼれ"ってどゆこと?まあ観てもいない映画に苦言を呈してもしょうがないが、いよいよゾンビ・ジャンルも末期だよな、という気がしないでもない。ゾンビ映画もあれこれやりつくしてもはや変化球投げる事しか思いつかないのかもしれない。

だいたい"ゾンビ"って言わないで"感染者"とか言い始めたころから雲行きが怪しくなってきたのである。感染者。しゃらくせえ。しかしいくら名前を変えたってゾンビはゾンビ、それはあくまでゾンビ・ジャンルなのであり、決して感染者ジャンルなどと呼ぶ人間などいないのである。パンティーのことをショーツとか言い換えたってパンティーはパンティーなのと一緒なのである。むしろ意地でもショーツなんぞと呼んでやるものか、例え世界を敵に回してもパンティーと呼び続けてやるとさえオレなんかは思うわけである。

まあパンティーのことはどうでもいい。ゾンビの話である。ついこの間もPS3のゲーム『THE LAST OF US』っちゅう感染者、もといゾンビゲームやったんだけどなー、とてもよく出てきてたし意外なクライマックスを迎えてそこそこ楽しめたんだけれども、やっぱりさー「あ゛〜」とか「う゛〜」とか言ってのそのそ動いているゾンビの皆さんにもうあんまり新鮮味を感じなかったんだよな。それとかやっぱり秀作ゾンビゲーム『デッドアイランド』というがあって、それはとっても楽しくプレイしていたんだけれど、その続編の『デッドアイランド: リップタイド』ってェのがついこの間出たんだけど、こっちは全然食指が動かなくてさ、「あーまたあのゲロゲロ小汚いゾンビの皆さんとうじゃうじゃまみえるのかー」とか思ったら、もういいや、って思っちゃったのね。じゃあゾンビよりも気色悪いバケモノばっかり出てくるようになった『バイオハザード』シリーズはどうかというとやっぱりもうやる気しないんですよ。なんかそのぐらいゾンビに飽きてきてるのよ。

それとかこの間レヴュー書いたアメコミの『ウォーキング・デッド』、あれもしっかりどっしり作られた大河ゾンビコミックで、ゾンビそのものよりも人間同士が対立するドロドロのドラマが面白かったりするんだが、ちょっといただけなかったのはゾンビ出現で世界が破滅してずいぶん経つだろうに未だに草叢から出てきたゾンビに齧られちゃう迂闊な奴が描かれているって所なんだよな。あんだけ大変な目に遭ってるはずなのに学習してないの?バカなの?死ぬの?っていうか死んでんじゃん?でも逆に学習したらゾンビとの力関係が拮抗しちゃって、今度はゾンビが脅威じゃなくなってしまうから、物語が成り立たなくなってしまうのよ。だからゾンビのドラマはいつまでも人間がバカみたいに齧られ続ける以外になかったりするのよ。その辺、ゾンビとの徹底対決を世界規模の視点から描いた(小説のほうの)『ワールド・ウォーZ』はいっこ頭が突き抜けてたのね。

■そこで『アイアムアヒーロー』なんだが

そんな訳でやっと『アイアムアヒーロー』の話になるんだが、この物語、これまでのゾンビ・ストーリーに感じていた不満があれこれクリアされていて、そういった点がとても新鮮に感じるのだ。ゾンビが発生した時のパニック描写にも独自の物を感じたが、その後生き残った人々が「どうゾンビと対峙してゆくか、どうゾンビを警戒し、どう身を守り、どう倒してゆくか」というサバイバルのノウハウがきちんと考察されているのだ。アメリカのように豊富に銃がない状況で、日用品だけを使いゾンビと相対するにはどういすればいいのかがきちんとリアルに描かれている。そしてそんな人々の日常が非常に生活感に溢れている。これらの描写力が素晴らしい。

さらにゾンビ(この物語ではZQNと呼ばれるがその呼び名も堅苦しくなく無理が無くていい)の生態の描かれ方もこの物語ならではの味付けが成されている。ゾンビたちはゾンビ化前のその人間が持っていた最も強迫観念的な事柄を片言で呟く。無意味な片言を呟くゾンビはやはり不気味だ。そしてゾンビ化前の身体能力がゾンビ化した後に存続され、それによりゾンビそれぞれの攻撃方法に個性が出てくる。併せて、ゾンビの思考にまで踏み込みその心象風景を描こうとする。その歪んだ光景もまた恐ろしい。さらに画期的なのは、半人間半ゾンビな個体の存在だ。この12巻ではそれがクローズアップされ、新たな展開を迎えることになる。これは今後、なぜゾンビは発生したのかにまで肉薄するのかもしれない。

要するにこの『アイアムアヒーロー』は、これまでのゾンビ・ストーリーで安易にやり過ごされてきた事柄にきちんと考察を加え、数多のゾンビ・ストーリーそのものに落とし前をつけようとしているのだ。これはもうこれまで最強のゾンビ・ストーリーということはできないだろうか。この辺の違いというのは、例えばアメリカのゾンビ・ストーリーというものが、基本的にキリスト教的な神無き終末世界を描くことに腐心しているのに対し、花沢健吾が描くそれは、あくまで日常の延長としての壊滅的な災厄を描くところに主眼が置かれているからなのではないか。だからこそのリアリティなのではないだろうか。そういった意味でこの物語は非常に考え抜かれたゾンビ・ストーリーであり、考え抜かれているからこそ、これまでのゾンビ・ストーリーを過去のものに変え引導を渡すほどの完成度を誇っているのではないか。即ちこの『アイアムアヒーロー』は、これまで描かれてきた全てのゾンビ・ストーリーの中でも最高のものだということができるのだ。

まあしかし、オレは毎度思うんだが、ゾンビってなんで腐って無くなっちゃわないの?やっつけるにしたって、ガソリンぶん撒いてまとめて燃やしたりブルドーザーで踏み潰したほうが早いんじゃないの?その辺どこかでやってくんないかなあ。

アイアムアヒーロー 12 (ビッグコミックス)

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WORLD WAR Z 上 (文春文庫)

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WORLD WAR Z 下 (文春文庫)

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DEAD ISLAND 【CEROレーティング「Z」】 - Xbox360

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ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド

masamasamasamasa 2013/08/24 17:29 「アイアムアヒーロー」はいまや「早く新刊でないかな」と待ち望んでいる、数少ないコミックです。
謎は多いのですが、謎が謎を呼び「いい加減さっさとオチつけてくれないかなあ」という物語と違い、謎は順次解決していき、一つのジグゾーパズルのピースが出来上がっていく様子を見ているようなので納得して読んでいけます。「来栖編」のラストはびっくりでした。大人の鑑賞に堪えうる漫画ですね。

globalheadglobalhead 2013/08/25 10:15 ゾンビ映画やゾンビ物の歴史について勉強を非常によくしてから作品を描いていますよね。読むに堪える作品ですね。ゾンビというものに批評があるんですよ。長編漫画はそういったものをきちんと生かして作品化できるので利がありますね。「来栖編」はなんでこっちに行っちゃったのかなあ?とずっと思わせといてラストであれでしょ。で、新展開しながらきちんと繋がるんでしょう。非常に考えられた構成ですよね。今後も楽しみです。

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20130808(Thu)

[]映画好きの方にこそお勧めしたいクライム・ノヴェル『黄金の街』(リチャード・プライス著) 映画好きの方にこそお勧めしたいクライム・ノヴェル『黄金の街』(リチャード・プライス著)を含むブックマーク 映画好きの方にこそお勧めしたいクライム・ノヴェル『黄金の街』(リチャード・プライス著)のブックマークコメント

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ニューヨーク、ロウアー・イースト・サイド―かつて黄金の未来を夢見た移民たちが最初に住み着いた街。さまざまな人種の人々が暮らすこの街に、カフェ・バークマンはあった。雇われたばかりの若いバーテンダーが路上で射殺され、犯行時に一緒にいたマネージャーのエリックが警察に連行されるが―。

カフェ・バークマンに勤めながら脚本を書いているユダヤ人のエリック。継父と団地に住むヒスパニックの少年トリスタン。妻と別れ息子たちをもてあますアイルランド系の刑事マッティ。一人の青年の死が人々の哀しみに光を当て、それぞれの人生を静かにつないでいく。米読書界絶賛の傑作長編。

ニューヨークの街で深夜、一人の青年が射殺される。彼の死をきっかけに、様々な人間たちの人生に波紋が投げかけられてゆく…。リチャード・プライスの描くクライム・ノヴェル『黄金の街』で描かれるのは、チンケなチンピラによる、単純な物取りの殺人だけだ。異様な連続殺人や巨大な陰謀がそこで描かれるわけでは決してない。しかしたった一人の死は、それはありふれたちっぽけな死にすぎないのだろうか。たった一人だろうが何だろうが、死というものは、しかもそれが殺人であるならば、決して軽いものである筈が無い。この物語は、決して奇を衒うことなく、一つの殺人事件が、その被害者や加害者に関わる大勢の人間たちのその後の人生を、どのように変え、そして彼らがどのように動いてゆくのか、を丹念な筆致で描いた作品だ。

確かに、派手でびっくりするような展開は無いにせよ、この「丹念な筆致」がこの物語を第一級の作品にしていることは間違いない。この丹念さは、実は作者が実際にニューヨークの街を歩き、様々な人や警官にリサーチしながら、その生の声や実際にあった出来事を積み重ね、それをフィクションの中に丁寧に生かした結果なのだそうだ。だから、この物語では一つの物事に対する人間の反応や対応の仕方が一筋縄ではなくて非常に面白い。一筋縄ではない、というのは、時として予想を裏切り、普通ならしないであろうと思われるような行動や言動をついついしてしまう、といった部分だ。

例えば主人公の一人、犯罪現場に居合わせ、同じくチンピラに恐喝を受けた青年エリックだ。素直に犯人の情報を警察に与えればそれで済むものを、警官の態度が強硬すぎたために彼は頑なに協力を拒む。そして協力を拒んだばかりに彼は犯人と目されてしまう。殺された青年の父ウィリアムは、悲しみの為に常軌を逸した行動に出るが、常軌を逸し過ぎて、本来なら被害者でもあるのに非常に不快な印象をみせてしまう。事件を追う警官のマッティを苛立たせる警察の官僚主義は信じられないほど対応が鈍重すぎて、その有り得なさが逆にリアルに感じさせる。殺人を犯した少年トリスタンは、初めての殺人に委縮しない。むしろ人として自信が付いてしまう。そして彼は極悪人でもなんでなく、血の繋がらない兄弟をこまめに世話するといった面を見せる。それぞれの登場人物のバックストーリーの書き込みは膨大で、肉付けも非常に充実していて、生きているように生々しい。これがこの物語の魅力だ。

そういった作品の魅力と併せ、作者であるリチャード・プライスがハリウッドでも名うてのシナリオライターであることも特筆すべきだろう。特にマーティン・スコセッシとの親和性が高い。スコセッシの「ハスラー2」、オムニバス「ニューヨーク・ストーリー」のスコセッシのパート、スコセッシ製作の「恋に落ちたら…」の脚本、スコセッシが監督したマイケル・ジャクソンのPV「BAD」の脚本、ロバート・デ・ニーロ主演「ナイト・アンド・ザ・シティ」の脚本も手掛けているのだ。さらに自身の著作もほとんど映画化されており、「ワンダラーズ(フィリップ・カウフマン監督)」「ブラッドブラザーズ(ロバート・マリガン監督)」「シー・オブ・ラブ(ハロルド・ベッカー監督)」「クロッカーズスパイク・リー監督)」「フリーダムランド(ジョー・ロス監督)」とそうそうたるものである。リチャード・プライスの書くものが映画的であるのと同時に、映画化したくなるような魅力ある作品であるということなのだろう。そういった部分で、この『黄金の街』も映画的であるということもでき、映画好きの方にお勧めしてみたいとちょっと思ってしまった。

20130807(Wed)

[]BD界の神メビウスとカルトムービーの鬼才ホドロフスキーの初タッグ作品〜『猫の目』 BD界の神メビウスとカルトムービーの鬼才ホドロフスキーの初タッグ作品〜『猫の目』を含むブックマーク BD界の神メビウスとカルトムービーの鬼才ホドロフスキーの初タッグ作品〜『猫の目』のブックマークコメント

■猫の目 / メビウス(画)、アレハンドロ・ホドロフスキー(原作)

猫の目

BD界の神メビウスと、カルトムービーの鬼才ホドロフスキーのタッグ作品は、個人的にはこれまで『アンカル』を読んだことがあるだけだったが、それはメビウスの唯一無二の描線と、ホドロフスキーの神秘主義が合体した稀有壮大なファンタジック・スペースオペラ作品だった。そして今回紹介するこの『猫の目』は、そんな異才二人の初共作なのだという。

メビウスとホドロフスキーの出会いは、ホドロフスキーがかつて手を染め、そして頓挫した伝説のSF映画作品『デューン』の企画からだった(『デューン』はその後デヴィッド・リンチにより映画化されている)。『デューン』企画失敗により、同様にかかわっていたダン・オバノンとH・R・ギーガーはかの傑作『エイリアン』を生み出すこととなったが、メビウスとホドロフスキーは失敗した『デューン』の残り火を、BD『アンカル』を作り出すことで再び燃え立たせようとしていた。その前段階として製作されたのがこの『猫の目』なのだ。

『猫の目』の構成はシンプルかつ独特である。ページ見開きの左に大きな窓から街を見下ろす少年の後姿とその独白を細長いコマで描き、そして右側に少年が見ている街の情景とそこで起こっている「何か」が大きな一枚絵で描かれ、それが最後まで交互に続けられていくのだ。そこで起こっている「何か」についてはここでは触れないが、奇妙な味わいを持つ残酷なファンタジーとだけ述べておこう。

しかしここで描かれる「物語」を把握するだけならページをぺらぺらとめくればものの1分もあれば事足りてしまう。ある意味ホドロフスキーによる序文と訳者あとがきを読むほうが時間が掛かるぐらいだ。しかしこれはそういった「物語」を読むだけの作品ではなく、そこに一枚絵で描かれるメビウスのグラフィックの、卓越した描写力、その緊張感と優美さに満ちた描線の一つ一つ、展開する静と動のドラマ、描き分けられる近景と遠景、そのパースペクティヴ、それら全てを堪能することにより、初めてその真価を理解することが出来る作品なのだ。なぜならそれぞれの一枚絵は、それ自体が非常に高い完成度を持つ独立したグラフィック作品として見ることが出来るからだ。

だからある意味これは「物語もある画集」といった位置付けの作品であり、そういった心積もりで手にすればきっと読むものに素晴らしい体験を与えることだろう。

L'INCAL アンカル (ShoPro Books)

L'INCAL アンカル (ShoPro Books)

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20130806(Tue)

[]山本周五郎原作で綴られる望月ミネタロウの新作漫画『ちいさこべえ』 山本周五郎原作で綴られる望月ミネタロウの新作漫画『ちいさこべえ』を含むブックマーク 山本周五郎原作で綴られる望月ミネタロウの新作漫画『ちいさこべえ』のブックマークコメント

■ちいさこべえ(1) / 原作:山本周五郎 画:望月ミネタロウ

ちいさこべえ 1 (ビッグコミックススペシャル)

望月ミネタロウはとても好きな漫画家なのだが、3月に出ていたこの『ちいさこべえ(1)』のことはすっかり失念していた(望月先生スイマセン)。書店で見かけて慌てて購入、より純度を増したその作品構成を堪能することができた。

それにしても今回の作品は文学小説家・山本周五郎の中篇が原作だ。原作のタイトルは『ちいさこべ』となっているのだが、読んだことはない。そもそも山本周五郎自体、若い頃からいつか読もう読もうと思いつつ未だに読めていない。だから今作は(原作とはいえ)山本周五郎初体験ということにもなる。

物語の主人公は大工の若棟梁・茂次。彼は物語冒頭で大火事により両親を亡くす。自らの工務店を建て直すため奔走する茂次は、店の手伝いに幼馴染だった若い娘・りつを雇う。そしてこのりつが、先の大火事でやはり焼けてしまった福祉施設の孤児たち5人を、茂次の家で養いたいと言い出すところから物語が始まる。

茂次とりつ、二人の性格設定がいい。意地っ張りの茂次、強情なりつ。自分を曲げないという部分で二人は似たもの同士だが、だからこそ二人はなかなか相容れない(まあ大体茂次が折れるのだが)。将来的にはロマンス要素もあるのだろうけれども、この巻ではそういった甘さはない。この二人のきちっと立ち上がった性格描写が読んでいてとても心地よいのだ。

そして二人を取り巻く人々もどれも個性的だ。なによりも養うことになった5人の子供たちは皆一筋縄ではいかないバラエティを持った性格をしており、なにより全然可愛げがないというのがいい。

こういった人々が織り成すこのドラマのテーマは、義理と人情なのだという。一見古臭いが、望月ミネタロウが山本周五郎のフィルターを通して描く義理と人情というものが、どのような形で描かれてゆくのかがポイントになるのだろう。山本周五郎の原作は時代小説なのらしいが、それをこの現代に移し替えて描いてゆくのも望月の腕の見せ所だろう。

なによりこの物語は、大工の工務店という舞台もあり、古き善き日本映画を観ているような和風な感触が堪らなくいい。これまでアメリカ文化と日本文化が折衷されたような作品を多く生み出し、前作『東京怪童』ではアメリカのインディーズ映画を日本を舞台に再現したような物語を展開していた望月だが、ここで望月は日本に立ち返って物語を描こうとする。それもまた望月の狙いなのだろうが、それが今後どう発展してゆくのかがとても楽しみだ。

ちいさこべ (新潮文庫)

ちいさこべ (新潮文庫)

20130805(Mon)

[]俺の両腕は鋼で出来てるぜ!〜タランティーノ・プレゼンツ:カンフー映画『アイアンフィスト』 俺の両腕は鋼で出来てるぜ!〜タランティーノ・プレゼンツ:カンフー映画『アイアンフィスト』を含むブックマーク 俺の両腕は鋼で出来てるぜ!〜タランティーノ・プレゼンツ:カンフー映画『アイアンフィスト』のブックマークコメント

■アイアンフィスト (監督:RZA 2012年アメリカ映画)

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ヒップホップ・グループ「ウータンクラン」のリーダーで、ヒップホップ界でもカンフー映画好きで知られるThe RZAさんという方が「俺のカンフー映画愛が炸裂だッ!」とばかりに本場中国まで行って撮ったカンフー映画『アイアンフィスト』でございます。カンフー映画では知る人ぞ知るといった俳優たちが随所に配役され、さらに『レ・ミゼラブル』のラッセル・クロウと『キルビル』のルーシー・リューも共演!脚本・製作がイーライ・ロス!さらにクエンティン・タランティーノ・プレゼンツ!映画の内容はカンフー映画とヒップホップの融合!それがこの『アイアンフィスト』なんですよ!…ってあんまりヒップホップの必然性は感じなかったけど、まあいいや!

舞台は19世紀の中国のある町、ここに武器専門の鍛冶屋を営むブラックスミスという黒人男がおったのですな。ある日この町で皇帝の金塊輸送を巡り武装集団の内部抗争が勃発、それに巻き込まれたブラックスミスは両腕を切断されてしまいます!しかーし!彼はその失われた両腕に鋼鉄のアタッチメントを付け、悪者軍団と戦うことを決意するのですな!

「両腕の無い男が鉄の腕を付けて敵と戦う」という設定には元ネタとしてチャン・チェ監督のカンフー映画『残酷復讐拳』というのがございまして(拙レヴューはこちら)、両腕の無い男だけではなく、両足の無い男、めくら、唖、つんぼ、クルクルパーの人たちまで出てきてバトルを繰り広げる、という凄まじくカオスなカンフー映画だったんですよ。ハンディキャップを扱ったカンフー映画には片腕を失った男が主人公の『片腕ドラゴン』が有名でしょうが、他にも両腕の無い男と足の不自由な男が合体して戦っちゃうという『ミラクルカンフー 阿修羅』なんてェ映画があるそうで、このジャンルの懐の深さというかなんでもアリなテイストが伺われるというものであります。

さてこの映画『アイアンフィスト』、鉄の腕を持つ主人公だけではなく、癖のあるギミックを持った人物たちが他にも登場します。一人は全身から刃が飛び出すアーマーを着込んだ男Xブレード、さらには全身を金属に変える特殊能力を持つブラス・ボディです。しかしどっちも卑怯なギミックだよな!カンフー映画って極限まで高めた体技と剣技で戦う様を楽しむ映画じゃなかったのか!?まあジミー・ウォング先生のカンフー映画なら主人公のくせに汚い手もあこぎな罠も普通に使うんだが…。そもそも刀アーマーはまあ許すとして、全身金属化男って、お前はどこのX-MENだ!?

そんな連中の他にも、フィギュアスケートの男女ペアみたいな振りで敵を殺戮するジェミニ夫妻とか、銃身の先にグルグル回るナイフが付いた銃を持つラッセル・クロウ、トゲトゲの付いた扇子を振り回すルーシー・リュー、その彼女のもとには刃の付いた新体操のリボンみたいなのをひらひらさせる女暗殺団がついていたりして、こいつらみんながワイヤーワークで宙を舞いつつ戦う様は漫画チックな派手さを醸し出しているという訳です。そんな感じでとにかくなんでもアリ感の漂う映画であります。しかしそもそもカンフー映画というジャンル自体が面白ければなんでもアリのごった煮的なカオス振りが楽しい映画でもありますし、時代考証も含め全体的に「こまけえ事はいいんだよッ!」という世界なんですな。

「しかしなんで中国が舞台のカンフー映画の主演が黒人なんだ!?」とは思いましたが、どうせ何でもありの映画ということになっているので説明がなくてもいいやあ、と最初は思ってたんですが、中盤主人公が実はアメリカに住んでいた元奴隷で…という説明が出てくるんですね。ここのシーンがタランティーノの『ジャンゴ』と繋がってて面白かった。しかしさあ、逃げて乗った船が難破して中国に辿り着いたって、主人公いったいどこの航路の船に乗ってたんだよ!?あと悪玉の皆様の衣装やヘアスタイルが、どこぞのロックンローラーが山賊のルックスを誤解して作ったステージ衣装みたいで、「なんか『北斗の拳』徹夜で全巻読破した中学生がねぼけながら大学ノートにスケッチした「悪モンの格好」みたいだなあ」と思ってたんですが、パンフレット読んだら監督が『北斗の拳』の大ファンらしくて、腑に落ちました。

ただし映画としてみると、冒頭から駆け足で物語背景を説明しようとするんですがこれがバタバタし過ぎで、その後の展開もやっぱりバタバタしたまま続いてゆくんです。省略するとか暗に匂わすとか映像だけで語るとか緩急付けるとか、そういう映画的なことをやってなくて、それは監督の力量もあるのでしょうけれども、好意的に解釈するなら描きたいことがいっぱいあってせっかちになってしまったというのもあるのかもしれないですな。まあそういった惜しい部分はありますけれども、嫌いじゃない映画でありましたよ。

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アイアン・フィスト オリジナル・サウンドトラック

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残酷復讐拳 [DVD]

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ミラクル・カンフー 阿修羅 [VHS]

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20130802(Fri)

[]部族化した人間社会の果てで〜『ウォーキング・デッド4』 部族化した人間社会の果てで〜『ウォーキング・デッド4』を含むブックマーク 部族化した人間社会の果てで〜『ウォーキング・デッド4』のブックマークコメント

■ウォーキング・デッド4 / ロバート・カークマン

ウォーキング・デッド4

大河ゾンビコミック『ウォーキング・デッド』の第4巻である。4巻程度で大河?と思われるかもしれないが、コミック1冊1冊のボリュームと共にその内容が重量級の濃さであり、1冊読み通すだけでも相当しんどいのだ。

物語はゾンビ発生による文明の崩壊と、そのカタストロフから辛うじて生き残った人々の終わりなき逃避行を描いたものだが、これが現在4巻分の長さに渡って流浪に次ぐ流浪、漂泊に次ぐ漂泊を繰り返し、この物語とそして登場人物たちががどこに辿り着こうとしているのか洋として定かではない。むしろこれは起承転結の物語を備えたドラマというよりも、主人公を含む生き残りたちが絶滅した世界をただたださ迷い歩く、その地獄巡りの様を克明に描くことがテーマとなっているということなのだろう。

だからこの4巻でも何か新展開だとか特別なアクシデントが勃発するというわけではない。いや、ゾンビという名の「死」に追いつめられながら、薄氷を踏むような日々を生き続けなければならない者たちにとって、全ての日々は異常であり、アクシデントの連続でしかなく、そしてそれが「日常」となってしまっているのだ。異常も日々続くと日常になる、という言葉があるが、これは異常さが日常化した世界で生き、そして死んでゆく人々の物語なのだ。

そういった物語のせいで、実は3巻目を迎えるぐらいでこのコミックに若干飽きてきたのが正直なところではあった。絶望的な世界で過酷な生を生きその中でなんとか希望の兆しを見つけながらその希望はやすやすと費える。コミュニティに新たなメンバーが加入したかと思うと別のメンバーが悲劇的な死を迎える。これがもうただひたすらだらだらと繰り返されるだけの物語のように思えてしまったのだ。

しかしその繰り返しから見えてくるものは、過酷なサバイバルの中で疲弊し絶望し、人間性をじわじわと剥ぎ取られてゆく主人公の姿だ。その主人公の変節の様に注目するなら、この物語の辿り着く先も予想がついてくる。以前『ウォーキング・デッド』のレビューでも書いたが、この物語は文明社会崩壊後に原始的な部族社会へと逆戻りした人々の部族同士の対立を描いたものと見ることが出来るが、この物語の終局に待つのは誰一人信じることも出来ず小集団部族すらもズタズタに切り裂かれもはや一人獣のように生きるしかない主人公の姿なのかもしれない。それをじわじわと描くこの物語は相当マゾヒスティックな作品だと言うことも出来るだろう。特にこの4巻のラストはある意味今までで一番心胆寒からしめる終わり方と言えるかもしれない。

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド2

ウォーキング・デッド2

ウォーキング・デッド3

ウォーキング・デッド3

20130801(Thu)

[]刑務所ブックカバー買った 刑務所ブックカバー買ったを含むブックマーク 刑務所ブックカバー買ったのブックマークコメント

刑務所の懲役受刑者による「刑務作業製品」即売会というのを駅前でやっていたので何の気なしに見ていたらえらく面白いデザインのブックカバーを発見、丁度手頃なブックカバーを探していたところだったので早速購入してしまった。レタリングされた書体で「はこだて(まる)獄 PRISON」とプリントされているのだが、要するに函館の刑務所製ということなのだろう。後で調べたら正確には「函館少年刑務所」という呼称なのらしい。これは少年のみの刑務所という意味ではなく、少年受刑者も含めて懲役する刑務所ということらしい。

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刑務作業製品であることを隠さないばかりか、それを大々的にアピールしてしまうというデザインにびっくり、さらにそのデザインも決して悪くない。知らない人が見たら刑務所とは何の関係もないジョークグッズだと思われるかもしれないけどれっきとした刑務所製だ。

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さらにブックカバーの内側は和柄になっており、これはこれで十分洒落ているのと同時に、「ああ…確かに刑務所的な柄センス」とあれこれ妄想してしまうことも必至、逆にわざとそれを狙ってるのだろう。眉をひそめる人もいるとは思うが、刑務作業製品をひっそり売るのではなくこのような形で職業訓練を受け更正しているということをきちんと世に知らしめ、さらに製品自体も決して悪くないと認知させるというアイディアは面白い。

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↑は函館少年刑務所の庁舎正面写真。もちろん犯罪は決して正しいことではないが、刑に服役しそれを全うした人は前科があろうともそれは一般人であり、その後の人生がある。そういった人たちに社会復帰の機会を与えることも犯罪を減らすことのひとつの要素のはずだ。オレの敬愛する俳優ダニー・トレホだってもともとは犯罪常習者で長い間刑務所出たり入ったりしていたが、きっちり更正して今や素晴らしい名脇役、『マチェーテ』じゃあ主役まで張っていて、怖カッコイイ雄姿を披露しているではないか。というかオレだって何かのはずみで入っちゃうかもしれないしな!顔が変態っぽいからという理由だけで痴漢の冤罪とか有り得るからなオレの場合!

○函館少年刑務所-Wikipedia

○マル獄 大人気!! 函館少年刑務所ブランド

○マル獄シリーズ 商品一覧

刑務所の中 (講談社漫画文庫)

刑務所の中 (講談社漫画文庫)

HeadacheHeadache 2013/08/01 22:18 凝ってるし丁寧だしセンスいい!うちには網走刑務所って焼印された丸太の輪切りがあるよ(鍋敷きとして使ってる。鍋敷きでいいらしい)。「製作物」としてギリギリですよね。これ以上もう何も引き算できない。
数年前に関東の刑務所で作られた家具の展示即売会(於幕張メッセ)に行ったんだけど、すごいお値段のわりにデザインに魅力がなく、あまり売れてなかった。売れても売れなくても作業は作業なのかもしれないけど、売れたほうがいいよねえやっぱり。

globalheadglobalhead 2013/08/01 23:55 そうそう、「服役して真面目に作ってます(作らせてます)」アピールばかり目立って面白くもなんともないもの作って結局売れなかったらなんだか無駄な気もするもんね。それでしかも高いってなんじゃそりゃ。実際の所、服役者じゃなくて作らせてる作業指導協会のセンスなんだろうね。だから他の製品とか見てもお役所指導の仕事らしい古臭い意匠のものばかりなんだろうなあ。

HeadacheHeadache 2013/08/02 13:12 いや、あまり高くはなかったかも。段々思い出してきた。なんかこう、製品から指導者の古いセンスとお役所意識が透けて見えるようなシロモノで、こんなの作らされて受刑者の精神衛生は大丈夫なのかと心配になったんだっけ。

HeadacheHeadache 2013/08/02 13:22 思い出してきた。あの時も買う気で行ったんだけど、買わなかったんだった。指導者の古いセンスと役所意識が透けて見えて、あんなの作らされて受刑者の精神衛生は大丈夫なのかと心配になったんだっけ。
機会があればもう一度くらい行ってみたいかもしれない。

globalheadglobalhead 2013/08/02 16:06 CAPIC(矯正協会刑務作業協力事業)のHP見ると作業はあくまで「職業的な技能を付与すること」の為だからクオリティがどうとかは重視されていないんだろうね。熟練度に応じてカリキュラムがあってその通り作っているだけで、それが売れるのは副次的なものととらえているのかも。あと設備自体古いとか予算的に設備投資できないとかいうのもあるのかもしれない。そういった部分が製品に反映されているんではないかな。ただ「約6万1千人の受刑者が、全国77の刑事施設(刑務所等)で就業」しているんだから、勿体ない気はするね。