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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20130910(Tue)

[]ジョンの肉体とトントの精神〜映画『ローン・レンジャージョンの肉体とトントの精神〜映画『ローン・レンジャー』を含むブックマーク ジョンの肉体とトントの精神〜映画『ローン・レンジャー』のブックマークコメント

ローン・レンジャー (監督:ゴア・ヴァービンスキー 2013年アメリカ映画)

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ゴア・ヴァービンスキーのスピリチュアル体質

パイレーツ・オブ・カリビアン』というブロック・バスター映画シリーズをヒットさせ、ディズニー映画の功労者ともいえる監督なのにも関わらず、ゴア・ヴァービンスキーは妙な癖がある人だ。最初に「あれ?」と思ったのは『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』の冒頭だ。"世界の果て"に囚われたジャック・スパロウの精神世界の描写が大作映画らしからぬ奇天烈さだったのだ。派手な冒険活劇を期待して観に行ったオレは、「なんでこんなことしちゃうの?」と思えてしまったのである。ところが、続いて監督したアニメーション『ランゴ』では、その精神世界の描写が秀逸だった。今度は逆に、「よくあるような夢と冒険のお気楽アニメ」といった予想を大きく覆した傑作だった。ゴア・ヴァービンスキー、意外とスピリチュアル体質なのだな、と思えた作品だ。

さてこの『ローン・レンジャー』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのスタッフが再結集ということで、「またあのセンでいくんだろうなあ、嫌いじゃないけど」程度に思って観に行ったら、これがまたもや、いい意味で予想を裏切る快作に仕上がっていたのである。予告編で観る限りでは、単細胞的なマッチョ・キャラ"ローン・レンジャー"と、コミックリリーフ的な役回りのインディアン"トント"が絡む、冒険!アクション!爆発!湯水のように金の掛かったCGI!そしてブラッカイマー印の大雑把さ!が画面に踊る映画だと思っていた。まあそれはだいたい間違いはなかったのだけれども、ファミリームービー的なマイルドさはあるにせよ、アメリカ建国史の暗部であるアメリカ先住民大量虐殺にも、やんわりと目配せしていたのだ。

■アメリカ先住民

まあそれは当然のことかもしれない。原典となるラジオ・ドラマやコミックのことはまるで知らないのだが、オリジナルが1933年作ということを考えると、そこで登場するインディアンキャラ・トントは、当時のアメリカ白人が無思慮に造形したステレオタイプなインディアン像であったであろう事は想像に難くない。しかしそれを今現在そのままの形で登場させるのは、まあ、なにかとアレだろう。

この『ローン・レンジャー』で登場するアメリカ先住民が正確な描写であるかどうかを判断できる知識は自分には無いし、また、それのみを描く映画ではないから、そこだけを突っ込む必要も感じない。ただ、この映画では、トントの悲劇的な生い立ち、そしてアメリカ白人たちの先住民への搾取の在り方が、エンターティメント映画なりに、きちんと描写されていると感じた。当然、そこを避けて通ったら現代的な映画としても成り立たなかっただろう。もちろん、社会的背景があるからこの映画は正しいと言いたい訳ではない。それよりも、その部分をきちんと描くことで、作品に奥行きと陰影を与えていることが、映画それ自体を面白くしていることが素晴らしいと思ったのだ。要は作品を面白くするために何を盛り込もうとしたかだ。

■肉体と精神

さて物語は、最初から正義のヒーロー、ローン・レンジャーが大活躍!といったものではない。ある意味この作品は「ローン・レンジャーはいかにしてローン・レンジャーになったのか」という、アメリカのヒーロー映画ではよくあるコンセプトの上で作られている。だから中盤までは、弱弱しくて紋切り型の正義しか唱えない主人公に若干じれったい思いをさせられるのは否めない。だがその軟弱なヒーロー未満をサポートするのがトントなのだ。この中盤までは「単なる役立たずのデカブツ」でしかないローン・レンジャー/ジョン・リードを牽引し、「戦いとはなんなのか?なぜ戦うのか?」をジョンに理解させるのがトントの役目なのだ。いわば、図体だけのジョンに心を宿させたのがトントというわけだ。ローン・レンジャーとは、ジョンの肉体とトントの精神が合致することによって初めて出現できたヒーローだったのだ。

そしてクライマックス、いよいよローン・レンジャーが活躍する時がきた!白馬に乗ったローン・レンジャーが登場し、ウィリアム・テル序曲」が高らかに鳴り響いたとき、オレは歓喜で鳥肌が立ちました。

ここからは一気呵成、細かいことは書かないけど、疾風怒濤の血湧き肉踊るアクションの連打連打に、思わず拍手喝采であります!いやあ、ええもん見せて頂きました!

アメリカ先住民=スピリチュアルいうのも単にステレオタイプなのかもしれないけれども、しかしこの『ローン・レンジャー』では少なくとも敬意、は感じた。そしてこれだけアクションで盛り上がる作品なのに、観終わった後になぜか物悲しさを感じるのは、その後のアメリカ先住民たちの運命を誰もが知っているからなのだろう。映画は年老いたトントが語る、という形式をとられているのも、これが実は失われた自らの種族を語る物語である、ということだからなのだろう。そしてそんなアメリカ先住民に寄り添う形で物語を紡いだのは、監督ゴア・ヴァービンスキーがそもそも持つ、スピリチュアルなものに対する憧憬があったからなのではないだろうか。

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ローン・レンジャー オリジナル・サウンドトラック

ローン・レンジャー オリジナル・サウンドトラック

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