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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20130912(Thu)

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■バーダー・マインホフ 理想の果てに (監督:ウーリ・エーデル 2008年ドイツ・フランス・チェコ映画)

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「バーダー・マインホフ・グルッペ」、通称「ドイツ赤軍」。それは1970年代から90年代にかけて、ドイツのみならず世界を震撼させた極左テロ組織の名称である。西側資本主義の打倒とマルクス主義による世界革命を標榜しながら、誘拐・謀殺・破壊活動など数々の過激で冷酷なテロ行為を繰り返し、1977年10月にはパレスチナ解放戦線と共にルフトハンザ機ハイジャック事件をも引き起こしている。

映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』は、このドイツ赤軍の結成と、彼らの次第に激化するテロ活動、司法当局との息詰まる攻防、そして主要メンバーの逮捕と、その終焉までを描くドキュメンタリータッチの作品だ。

そもそもの始まりは政府の政治的偏向、暴力的な警察国家体質への憤りだった。間違ったことは決して許せない、正しさの為に声を上げたい、そういった”真っ当さ”を貫き行使しようとする彼らの言動や行動は、最初ひどく青臭いものにしか見えなかったりする。メンバーのそれぞれは成人し家庭を持った者までいるのに、まるで学生のようだ。

しかしこれは当時の時代の趨勢だったのかもしれない。70年代初頭といえばベトナム戦争が泥沼化し、それと併せアメリカ帝国主義とそれに与する体制への疑問が噴出した時期であった。さらに共産主義の理想に未だ甘い夢を見ることが出来た時期でもあったのだ。それはアメリカでは反戦運動、日本では安保闘争となり、そしてテロの舞台となったドイツでも同じような機運が高まっていたのだということができるかもしれない。

ドイツ赤軍の活動は次第に先鋭化・過激化し、暴力的な無政府主義の道を辿ることになる。かつて正義と公正さを標榜した青年たちの理念は硬直化した妄執へと変質し、制御不能な怒りと憎しみが破壊と死を撒き散らすだけのものとなってしまう。彼らは怪物と化してしまったのだ。それに対し司法も追撃の手を緩めない。遂に主要メンバー全員逮捕となるがしかし、それでもドイツ赤軍へのシンパは増加し、新たなテロを繰り返し始めるのだ。一方投獄された主要メンバーたちは焦燥と不安から次第に狂気の虜となってゆく。

映画はこれらを、中立的かつ非常に冷徹な視点で描いてゆく。ドイツ赤軍は確かに破壊と死と混乱を呼んだが、当時の西ドイツ政府もまた強権的な政策(ドイツ大連立)により国民に多大なる不満と反発を招いていた。これら国民の不満を弾圧と暴力という形で押しとどめようとした国家に、ドイツ赤軍はやはり暴力という形で対抗しようとした。これは善悪という問題ではなく、暴力に対して暴力で応えるどこまでも不毛な力の応酬があるだけなのだ。それは譲歩無き殲滅戦だ。

だがもちろん国家とテロ集団の力が拮抗することはありえない。テロ集団は追いつめられ次第に自棄的で絶望的な戦いへとなだれ込む。映画後半での冷徹極まりない凄まじい闘争は、息を呑むような非情さを持って観る者に迫り、その非情さが、異様な映画的興奮を生み出しているのだ。思いっきり不遜な言い方をするなら、実録マフィア映画やクライムサスペンスを見せられているような興奮だ。政治的テーマの作品ではあるが、そういった部分でも密かな面白さのある作品だった。

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バーダー・マインホフ 理想の果てに [DVD]

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kechidakechida 2013/10/13 13:35 こんにちは。ドイツ赤軍と言うとこの絵の事を真っ先に思い浮かべます。ぜひとも映画見てみます。
http://tokyo75.exblog.jp/12347291/

globalheadglobalhead 2013/10/13 19:00 実はこの映画を観ようと思ったきっかけがこの絵だったんですよ。正確にはドン・デリーロという作家の『天使エスメラルダ: 9つの物語』という短編集があり、その中の一篇『バーダー・マインホフ』で、この絵を観に来た男女が描かれており、「そもそもバーダー・マインホフとはなんなのだろう?」という興味からこの映画を観たわけなんです。ただ、その時検索してもこの絵自体は発見できなかったので、紹介していただいて嬉しかったです。

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