最近観たインド・コメディあれこれ〜『Singh is Kinng』『Tere Bin Laden』『Bheja Fry』

■Singh is Kinng (監督:アニース・バーズミー 2008年インド映画)


アクシャイ・クマールカトリーナ・カイフが主演、『Ready』のアニーズ・バズミーが監督した"ターバン・コメディ"『Singh is Kinng』でございます。物語はド田舎に住むターバン野郎、ハッピー・スィン(アクシャイ・クマール)がある事情から、同郷出身で現在オーストラリアでギャングのドンをやってるラッキーの元を訪れ、そしてひょんな事情から自分がギャングのドンになってしまう、というもの。それにしてもハッピーだのラッキーだの物凄い適当なネーミングが悲しいです。

なにしろ主人公演じるアクシャイ・クマール、お前は注意欠損多動性障害か!?っつうぐらい何かやるたびに物を倒したり壊したりしまくる、というしょーもない人物で、それがこの映画の笑いの基調となっております。実の所そんなに面白くないんですが、あまりにもしつこくやるので笑わなきゃいけないのか、という気にさせられます。

そもそもハッピー・スィンがラッキーに成り代わってギャングのドンになったのは、敵に襲われたラッキーを助けたのはいいんだけど、ハッピーの注意欠損多動性障害が災いしてラッキーをかえってボコボコにしてしまい、ラッキーが植物状態になったから!というのが涙を誘います。ラッキーは持てる力を振り絞り「こ、こいつを殺せ〜!」とハッピーを指差すのですが、部下たちは「おお!ハッピーさんを代わりのボスにしろってことですね旦那!」などと勘違いしまくり、ハッピーはハッピーで「お、俺でいいのかなあエヘヘ」とかやってるもんですからラッキーさんが浮かばれません。

さてギャングのドンになった主人公、現地で世話になった花売りのおばちゃんが、「娘にはお金持ちになったって嘘ついたんだけど、その子が帰ってきちゃうの、どうしよう…」という悩みを聞き、ギャングの豪邸を貸して配下に召使の振りをさせ、娘を向かい入れます。そしてその娘ソニアを演じているのがカトリーナ・カイフ。しかしソニアと一緒に来たボーイフレンドというのが横柄な野郎で、ギャングと知らずに召使に罵声を浴びせまくり、ギャングたちが「ヌヌヌ…」となる部分が実に可笑しかった。

そんな迷惑千万の勘違いターバン野郎のくせに、最後はなんだか丸く収まりみんなハッピーというのが許せない!いや楽しかったから許す!それにしてもアクシャイ・クマール、ターバン&ヒゲの格好なので最初アクシャイが演じていると気付かず、しばらく「ターバンとヒゲだからアジャイ・デーヴガンなんじゃねえの?」と思って観ていました。オレも相当適当な人間です。

■Tere Bin Laden (監督:アビシェーク・シャルマー 2010年インド映画)


今更ながらではありますがビン・ラーディンを題材にしたコメディであります。
アメリカにとっても行きたいけれど、ある勘違いから7年間もビザが下りない三流TVリポーターが、裏ルートの渡航費を稼ぐために思いついたのが偽ビン・ラーディンの声明ビデオ作成だった!?というお話。主演のアリー・ザファルはイムラーン・カーン、カトリーナ・カイフ主演のコメディ『Mere Brother Ki Dulhan』にも出演しております。
偽ビン・ラーディンを養鶏場で「俺の鶏サイコー!」とか言ってるとっぽいあんちゃんを騙してやらせるんですが、このあんちゃんが撮影終わるまで自分がテロの親玉やらせられているなんて全く気付かないというくだりからして不憫でおかしい。
しかもアメリカ諜報部がこのビデオをホンモノと認定、ビデオを作製した主人公と知り合いたちに迫ってくるんですな。で、このアメリカ情報部がまたアホアホで、そもそも偽物と本物の区別がつかないこと自体既にアホですが、あー多分これアメリカ人をすっかり虚仮にしているってことっすよねえとウヒヒと笑っちゃうという。
低予算で制作された作品のようですが、そこここで映画らしいお金は掛けてあって(ちゃんと歌と踊りがある!)、おまけにちょっとしたSFXまで使ってあるし、なかなかに気概に溢れた作品でしたよ。

■Bheja Fry (監督:サーガル・バラリー 2007年インド映画)


ぎっくり腰で動けなくなった男が部屋に訪れたおかしな客に振り回されて発狂寸前!?というコメディです。
主人公ランジート(ラジャト・カプール)は売れっ子の音楽プロデューサーなんですが、パーティーの余興に歌の下手糞なヤツを集めて陰で笑おうと計画していました。白羽の矢が当たったバーラト(ヴィネイ・パータク)は自分がプロになれると思い込みご機嫌でランジートの元を訪れます。しかしこのバーラト、一言も二言も多くなんでも余計な事をしたがる困ったオッサンで、突然のぎっくり腰で動けないランジートの電話に勝手に出てはあることないことくっちゃべり、ランジートはどんどん追い込まれてゆくのです。
困ったオッサンことバーラトは『Mrビーン』のローワン・アトキンソンをふやけさせたようなルックスで、さらに頭の中もより一層ふやけさせたようなキャラなんですね。このバーラトが次から次に余計なことをしでかして笑いを生む、といった展開なんですが、実際の所、イラッとはさせられるもののそんなに極端におかしい人間じゃないし悪い人間でもない。とんちんかんではあるけどクレイジーじゃないんですね。そういった部分で、笑いの中心に持ってこようとするなら少々キャラが弱いし煮詰め方も甘いような気がしました。きっと監督は優しい人なんだろうなあ。