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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20170807(Mon)

[][]シャー・ルク・カーン主演の新作インド映画『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』を観た シャー・ルク・カーン主演の新作インド映画『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』を観た - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク シャー・ルク・カーン主演の新作インド映画『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』を観た - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■ジャブ・ハリー・メット・セジャル (監督:イムティヤーズ・アリー 2017年インド映画)

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久しぶりにSpaceBoxさんのところで主宰しているインド映画上映会に行ってきた。タイトルは『ジャブ・ハリー・メット・セジャル(Jab Harry Met Sejal)』、シャー・ルク・カーン主演のロマンチック・コメディである。原題は「ハリーとセジャルが出会う時」といったような意味だろう。

シャールクの純粋なロマンス映画は久しぶりかもしれない。シャールクはやはりロマンス映画が似合う。最近のクライム風味の作品が自分にはどうも今ひとつだったので今回は期待大だ。そしてヒロインとなるアヌシュカー・シャルマー、彼女がまたいい。日本では『命ある限り』(2012)、『pk』(2014)の公開作がある。人気実力ともにとても優れたインド女優なのでインド映画ファン以外の方も名前を覚えておくといいだろう。彼女はシャールクとの共演作に先程紹介した『命ある限り』の他にも『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)があり、これも非常に名作で、観ておいて損はない。

監督はイムティヤーズ・アリー。これまで『Jab We Met』(2007)、『Rockstar』(2011)、『Highway』(2014)、『Tamasha』(2015)といった作品を観たことがあるがどれも表現力に優れた秀作を作り上げてきた監督だ。特に『Jab We Met』は最も重要なインド映画10作のうちのひとつに数え上げている評者もいるほどだ。個人的にもどれも思い出深い作品ばかりだが、ランビール・カプールディーピカー・パードゥコーン主演による『Tamasha』は特に好きな作品だ。

さて物語はヨーロッパでツアーコンダクターを生業としているハリー(シャールク)が、ツアー中に婚約指輪を失くしたという女セジャル(アヌシュカー)に絡まれる所から始まる。セジャルは大事な指輪を失くし婚約者にも家族からも激怒を買い、一人ヨーロッパに残ってどうしても見つけなければならないので同行しろという。ハリーとしてはそんなものオプション外だからやる義務はないと突っぱねるが、結局は嫌々ながらセジャルに付き添うことになる。だがオランダのアムステルダムで済む筈だった指輪探しは二転三転し、遂にはプラハ、ウィーン、リスボン、ブダペストを巡るヨーロッパ大探索の旅へと発展してしまうのだ。そしてその旅の間に、二人の間に仄かな恋心が目覚め始めるが、片や婚約者のいる女性、その恋は決して成就する筈は無かったのだ。

感想を先に書くと、心を揺さぶられるとても優れたロマンス作品だった。やはりシャールクのロマンス作は鉄板と言わざるを得ない。もちろんヒロインを演じるアヌシュカーの表情豊かな演技にも心ときめかされた。最初は嫌々付き合っていたシャールクと相手の迷惑なんて完璧無視なアヌシュカーとのギクシャクしたやりとりは、前半のコメディ要素となり、大いに笑わせながら観る者の心をほぐしてゆく。しかし旅を通じて心寄せ合うようになってゆく二人の、そのあまりに危うい「道ならぬ恋」の行く末を気になりだした時に、物語は辛く心切ないものへと様変わりしてゆくのだ。

最初は相性の悪そうな男女が旅の中で次第に心を通い合わせてゆく、といった物語はインド・ロマンス映画の十八番なのかもしれない。シャールク映画ではあの『Dilwale Dulhania Le Jayenge』(1995)がそうだし、ディーピカー・パードゥコーンとの共演作『チェンナイ・エクスプレス〜愛と勇気のヒーロー参上〜』(2013)もそんな物語だった。しかしそもそも監督であるイムティヤーズ・アリーの作品というのが、【旅とロマンス】を重要なファクターとするものが多く見られるのだ。先に紹介したイムティヤーズ・アリー監督作品4作はどれも【旅とロマンス】に関わる作品だ。その中で特に『Jab We Met』は、「本来ロマンスが生まれるべきではない二人の男女にロマンスが生まれてしまう」といった物語構成から、この『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』と大きな共通項を持っていると言えるだろう。

そしてこの作品のもう一つの魅力は、「有り得ない出会いの要素を力技でロマンスとして成立させてしまう」といった点だろう。それは「現実的である」事から大きく飛躍してしまうことを全く意に介さない冒険的な演出である事を意味している。まず失くした指輪をツアコンの男と同伴して、あまつさえヨーロッパ中探し回る女性、といった展開はあまりに有り得ない。飛躍し過ぎだ。そしてそんな同伴を強要しながら「でも恋愛はありえないし!」と言ってのけ、にもかかわらず終始ベタベタしてくるセジャルのメンタリティは、あまりに有り得ない。そんな女性など多分いないか、いてもとんでもない少数派だろう。

ではこの物語というのはひたすら飛躍し過ぎで現実味が無くて有り得ない、ご都合主義のシナリオによって書かれた陳腐なものなのかというとそれが全く違うのだ。ここで描かれるシチュエーションそれ自体は確かに非現実的なものかもしれない。しかしこのシチュエーションから導き出される心情の在り方は、全く有り得ないものではないばかりか、どこか酷く心動かすものを含んでいるのだ。逆に「現実的であること」の拘泥から解放され、「有り得ない事」の可笑し味へと飛躍させることで、想像力豊かに物語を膨らませ、同時に普遍的な心情の物語へと帰結さているのである。そんな自由さに富んだシナリオが面白いのだ。

そしてそれこそが、【物語】というものの、現実を軽く蹴り飛ばす楽しみなのだ。多くの人は、なにも別に、「道ならぬ恋」をしたいわけではない。しかし人は時として、「不可能な恋」に出会ってしまうことがある。そして、どこまでも遣る瀬無い悲しみに堕ちてしまうことがある。『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』は、そんな物語なのだ。

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20161005(Wed)

[][]開催直前!インド映画祭IFFJ上映作品には見目麗しい女優さんが勢揃いだ! 開催直前!インド映画祭IFFJ上映作品には見目麗しい女優さんが勢揃いだ! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク 開催直前!インド映画祭IFFJ上映作品には見目麗しい女優さんが勢揃いだ! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

インド女優はインド映画の華。というわけで昨日に引き続きお送りする「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン2016」記事は、IFFJ上映作品に出演なさっている華々しいインド女優の皆様を紹介してみたいと思います。なお、殆どの写真は出演作品のものではありませんのでご注意を。

■ソーナム・カプール / 出演作『プレーム兄貴、お城へ行く』『ニールジャー』

『プレーム兄貴、お城へ行く』『ニールジャー』の2作品に出演されているのは「インドの薔薇」ことソーナム・カプール様。ああ、なんとお美しい!

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ソーナム・カプール(Sonam Kapoor)1985年7月9日ムンバイ生まれ (31歳)。『Saawariya』(2008)でデビュー。
主な出演作:『Delhi-6』(2010)、『Raanjhanaa』(2014)、『Khoobsurat』(2015)、『Dolly Ki Doli』(2016)

■サヤーニー・グプター / 出演作『ファン』

映画『ファン』にはこれといったヒロインは登場しないんですが、ここでは秘書役だったサヤーニー・グプター様を紹介。

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サヤーニー・グプター(Sayani Gupta)1985年コルカタ生まれ(31歳)。『Second Marriage Dot Com』(2012)でデビュー。
主な出演作『マルガリータで乾杯を!』(2015)、『Parched』(2015)、『Baar Baar Dekho』(2016)

アヌシュカー・シャルマー / 出演作『ボンベイ・ベルベット』

ボンベイ・ベルベット』主演女優は映画『pk』の日本上映が待たれるアヌシュカー・シャルマー様です!

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アヌシュカー・シャルマー(Anushka Sharma)1988年5月1日アヨーディヤー生まれ (28歳)。『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)でデビュー。
主な出演作『Band Baaja Baaraat』(2010)、『命ある限り』(2012)、『NH10』(2015)、『Sultan』(2016)

■アーリヤー・バット / 出演作『カプール家の家族写真』

カプール家の家族写真』には今回最年少のとっても初々しいアーリヤー・バット様が出演なされております!

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アーリヤー・バット(Alia Bhatt)1993年3月15日イギリス生まれ(23歳)。『Sangharsh』(1999)でデビュー。
主な出演作『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』(2012)、『Highway』(2014)、『2 States』(2014)、『Humpty Sharma Ki Dulhania』(2014)

■リサ・ヘイドン、ジャクリーン・フェルナンデス、ナルギス・ファクリー / 出演作『ハウスフル 3』 

『ハウスフル 3』にはなんと3人ものヒロインが!?写真は向かって右からリサ・ヘイドン様、ジャクリーン・フェルナンデス様、ナルギス・ファクリー様!いずれ劣らぬ美女揃いで目移りしてしまいますね!

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リサ・ヘイドン(Lisa Haydon)1986年6月17日チェンナイ生まれ (30歳)。『Aisha』(2010)でデビュー。
主な出演作『Rascals』(2011)、『Queen』(2014)、『The Shaukeens』(2014)

ジャクリーン・フェルナンデス(Jacqueline Fernandez)1985年8月11日バーレーン王国生まれ (31歳)。『アラジン 不思議なランプと魔人リングマスター』(2009)でデビュー。主な出演作『Race 2』(2013)、『Kick』(2014)、『Brothers』(2015)、『A Flying Jatt』(2016)

ナルギス・ファクリー(Nargis Fakhri)1979年10月20日生まれ (36歳)。『Rockstar』(2011)でデビュー。
主な出演作『Madras Cafe』(2013)、『Main Tera Hero』(2014)、『Kick』(2014)、『Azhar』(2016)

■ニムラト・カウル / 出演作『エアリフト 〜緊急空輸〜』

『エアリフト 〜緊急空輸〜』には主人公の妻役ということで落ち着いた雰囲気のニムラト・カウル様が出演!

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ニムラト・カウル(Nimrat Kaur)1984年3月13日ピラニ生まれ(32歳)。『One Night with the King』(2006)でデビュー。
主な出演作『Peddlers』(2012)、『めぐり逢わせのお弁当』(2013)

■カリーナー・カプール / 出演作『キ&カ 〜彼女と彼〜』

『キ&カ 〜彼女と彼〜』主演はインド映画界ベテラン中のベテラン女優カリーナー・カプール様。日本公開された作品が最も多いインド女優の一人かもしれません。

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カリーナー・カプール(Kareena Kapoor)1980年9月21日ムンバイ生まれ (36歳)。『Refugee』(2000)でデビュー。
主な出演作『家族の四季 愛すれど遠く離れて』(2001)、『DON(ドン)過去を消された男』(2006)、『きっと、うまくいく』(2009)、『ラ・ワン』(2011)、『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』(2012)

■ラーディカー・アープテー / 出演作『恐怖症』

ホラー映画『恐怖症』に出演なさっているのはアンニュイな雰囲気がたまらないラーディカー・アープテー様。

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ラーディカー・アープテー(Radhika Apte)1985年9月7日プネー生まれ(31歳)。『Vaah! Life Ho Toh Aisi!』(2005)でデビュー。
主な出演作『Dhoni』(2012)、『Lai Bhaari』(2014)、『Badlapur』(2015)、『Manjhi - The Mountain Man』(2015)

■シュルティ・ハーサン / 出演作『ガッバル再び』

『ガッバル再び』の主演女優は主に南インド映画界で活躍し、歌手としても活動しているシュルティ・ハーサン様。

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シュルティ・ハーサン(Shruti Haasan)1986年1月28日チェンナイ生まれ(30歳)。『Luck』(2009)でデビュー。
主な出演作『Gabbar Singh』(2013)、『Race Gurram』(2015)、『Welcome Back』(2015)、『Srimanthudu』(2016)

■ライマ・セーン / 出演作『私が恋した泥棒』

映画『私が恋した泥棒』のヒロインはベンガル語映画で活躍するミステリアスな魅力のライマ・セーン様。

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ライマ・セーン(Raima Sen)1979年11月7日コルカタ生まれ(36歳)。『Godmother』(1999)でデビュー。
主な出演作『Parineeta』(2005)、『Manorama Six Feet Under』(2007)、『Maach Mishti & More』(2013)、『Bollywood Diaries』(2016)

■ラージクマール・ラーオ / 出演作『アリーガルの夜明け』

映画『アリーガルの夜明け』にはヒロイン枠が存在しません。その為とりあえず助演男優のラージクマール・ラーオを載っけておきます。まあいわば、"オチ"ってことで!

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ラージクマール・ラーオ(Rajkummar Rao)グルガーオン生まれ。『Love Sex Aur Dhokha』(2010)でデビュー。
主な出演作『Gangs of Wasseypur - Part 2』(2012)、『Kai Po Che!』(2013)、『Queen』(2014)、『Dolly Ki Doli』(2015)

20161004(Tue)

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■インド映画の祭典なんだ!

今年も「IFFJ / インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」の季節がやってまいりました。このIFFJ、日本未公開のホットでスパイシーなインド映画最新作をお腹いっぱい観られる!という映画祭なんですな。もちろん日本語字幕付きだよ!

まず会期・会場・チケット情報・スケジュールなどはこちらをどうぞ。

・2016年10月7日(金)〜10月21日(金) 東京@ヒューマントラストシネマ渋谷

・2016年10月8日(土)〜10月21日(金) 大阪@シネ・リーブル梅田

・チケット情報 (リンク)

・スケジュール(リンク

また、作品情報はこちらであれこれまとめられておりますので是非ご参考までに。

「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン IFFJ2016」オフィシャル・ホームページ

インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン Facebook

インディアン・フィルム・フェスティバル Twitter

オモシロさ保証つき!インド映画の祭典【IFFJ】観賞ガイド | FILMAGA(フィルマガ)

最新インド映画の沼に落ちる2週間!「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン2016」:naverまとめ

インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)2016:インド映画通信

IFFJ2016上映作品まとめ【第5回 インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン】:インド映画でちょっと休憩

数字でIFFJ 2016を分析してみた:インド映画でちょっと休憩

このIFFJ2016では12本の最新インド映画と短編1作の上映が予定されております。オレはこのうち11作を既にDVD視聴しブログでレヴューを書いておりましたので、今回はこのレビューを踏まえながらそれぞれの作品をごくザックリと紹介してみたいと思います。これから映画を観に行く方の何かの参考にされてください!

■プレーム兄貴、お城へ行く (原題:PREM RATAN DHAN PAYO) /  監督:スーラジ・バルジャーティヤ 

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●テーマ:気のいい兄貴はインド貴族のそっくりさんだった!?

《物語》戴冠式の近づくプリータムプルの王子ビジェイは暗殺犯に襲われ、命こそ助かったが意識不明となる。大臣であるジワンは秘密裏にアジャイを古城で看護するが、戴冠式は4日後に迫っていた。 一方気のいい舞台俳優のプレムは憧れの王女を一目見たくてプリータムプルに訪れていた。そんなプレムをたまたま見かけた王室警護長官は驚きに大きく目を見開く。なんとプレムは王子と瓜二つだったのだ。サンジェイとジワンはプレムを説得し、プレムを王子の替え玉として戴冠式に挑ませようとする。

贅を尽くした絢爛豪華なインドの宮殿、そこに暮らす煌びやかな衣装のインド貴族たちの物語。映画『PRDP』はこんな、古式ゆかしいトラディショナルなインド家族ドラマを予想させます。そしてその物語は「そっくりさん登場!」といったボディ・ダブルネタでもあるんです。大衆的な娯楽作品としての側面も十分優れています。ロケーションと衣装、歌と踊りも十二分に美しく、目を楽しませます。主演のサルマーン・カーンは優れた演技とキャラクターを見せ、ヒロインのソーナムはひたすら美しく、そしてサルマーンとアヌパム・ケールの掛け合いがこれまた心憎いほどに楽しく、物語をより温かく豊かなものにしています。

そしてなによりこの物語を盛り上げるのはプレムとマイティリー王女とのロマンスでしょう。最初結婚に乗り気ではなかったマイティリー王女はプレムの真心に触れることで彼への想いを強くします。しかしそれは王子ビジェイに成りすましたプレムなのです。一方プレムもマイティリー王女を愛しながら、自分が別人を偽っているという明かすことのできない嘘をついていることに苦悶します。この映画はこうして胸締め付けられる鮮やかなクライマックスへとひた走ってゆくのです。クライマックスはアクションもたっぷり、「これぞインドの娯楽映画!」と拍手喝采したくなるような名作です!

インド貴族の屋敷を舞台にしたボディダブル・ストーリー〜映画『Prem Ratan Dhan Payo』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:サルマーン・カーン、ソーナム・カプール、ニール・ニティン・ムケーシュ、アヌパム・ケール (2015/ ヒンディー語/164分))

☆この作品のそっくりさん度:12000点

■ファン (原題:FAN) / 監督:マニーシュ・シャルマー

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●テーマ:スターへの憧れが憎しみに変わるとき。

《物語》デリーに住む青年ゴウラヴにとって大スター、アーリヤン・カンナーは世界の全てだ。夜も日も明けずアーリヤン漬けの生活を送る彼はアーリヤンの住む夢の街、ムンバイへとやってくる。だが一般人が大スターと容易く会えるわけがない。アーリヤンの気を引くため脅迫事件を起こし投獄されるゴウラヴ。そこにアーリヤンが面会に来て彼に言う。「君のような男はファンなんかじゃない」。憧れが憎しみへと変わり、ゴウラヴの狂気がゆっくりと頭をもたげ始める。

御大シャー・ルク・カーンの主演映画であり、そのシャー・ルクが一人二役を演じ分けるのが今作の見所。本人そのものの大スターを演じるシャー・ルクだが、しかし彼はあからさまな営業スマイルを浮かべ時に疲れた顔をしスタッフに当り散らす等身大の人間だ。大観衆を前にポーズをとる様はいかにも決まって見えるが、それも「そういう営業中」であることがうっすらと透けて見えてしまう……というメタな演技は流石だなと思わされた。

一方ストーカー青年ゴウラヴ、これがスゴイ。シャー・ルクの演じ分けも素晴らしかったが、一人二役とはいえ大スター・アーリヤンとゴウラヴの顏が微妙に違うのだ。これはゴウラヴの顏を特殊メイクとさらにCGでもって製作しているからであり、さらに体型すらもCG加工されている。こうして出来上がった特殊メイク+CGのゴウラヴはシャー・ルクに似て非なるいわば「不気味の谷」ともいえる薄気味悪い造形をしており、この気持ち悪さを眺めているだけでも面白い作品だった。

憧れが憎しみに変わるとき〜映画『Fan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:シャールク・カーン、ワルーシャー・デスーザ、シュリヤー・ピルガオーンカル、サヤーニー・グプター (2016/ ヒンディー語/ 2時間18分))

☆この作品のストーカー度:800点

ボンベイ・ベルベット (原題:BOMBAY VELVET) / 監督:アヌラーグ・カシュヤプ

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●テーマ:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落。

《物語》60年代ボンベイ。ケチなチンピラだったジョニーと相棒のチマンは、ある日怪しげな資本家カイザードに雇われる。それは殺人、誘拐、脅迫といった薄汚い裏稼業だった。一方、安酒場の歌姫だったロージーは、クラブ「ボンベイ・ベルベット」のオーナーとなったジョニーと出会い恋に落ちる。しかしそれは、政界大物の脅迫写真を取り戻すためにロージーの愛人が差し向けた罠だったのだ。

ボンベイ・ベルベット』に感嘆させられたのは、まずその徹底的に作り込まれた美術だ。60年代ボンベイの街並みを完璧に再現したというセットは、逆に夢のような非現実感を伴う。西洋風にあつらわれた屋敷やホテルの内装は徹底的にインド臭を排除され、クラブ「ボンベイ・ベルベット」は豪華であり頽廃的だ。男たちは誰もが小粋でパリッとしたスーツに身を包み、洒落者ならではの黒いあくどさを醸し出す。そうして現出するボンベイの姿は、もはや、インドですらない。これには震撼させられた。

この作品の魅力のもう一つは徹底的に説明を廃したその演出だ。台詞やモノローグに頼ることなく、幾つかのカットの連なりと、更に故意に描かれないシーンによって、カシュヤプは物語の状況を描き出そうとする。そこから現れる効果は、情緒を否定し目の前の実存だけがごろりと転がる寒々とした非情さだ。

そして通俗だからこそ銃撃戦は『ランボー』でも観ているかのようにどこまでも派手であり、痛快だ。インド映画的な歌と踊りはないにしても、クラブ「ボンベイ・ベルベット」で披露されるハイレベルなレヴューがどこまでも楽しませてくれる仕組みになっている。こうしてみると、映画『ボンベイ・ベルベット』は、カシュヤプ監督なりの大衆的な娯楽作を作りだそうとしたその結果であると思えるのだ。

この作品の真の主役は作り込まれた"ボンベイ世界"にある。この"ボンベイ世界"で、登場人物たちの命は陽炎のように現れては消えてゆく。彼らの運命に思いを馳せ、今は無き幻影の"ボンベイ世界"を夢想する、これは、そんな物語だと思うのだ。

IFFJ先行レビュー:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落〜映画『ボンベイ・ベルベット』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:ランビール・カプールアヌシュカー・シャルマー、ケイ・ケイ・メーノーン、カラン・ジョーハル、マニーシュ・チョウドゥリー (2015/ヒンディー語/150分))

☆この作品のノワール度:1000点

■ニールジャー (原題:NEERJA) / 監督:ラーム・マドゥワーニー

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●テーマ:ハイジャック犯に立ち向かった一人の女性を描く実話物語。

《物語》ムンバイ発ニューヨーク行きパンナム航空73便は突如過激派によるハイジャックを受ける。パイロットらはいち早くコックピット内より脱出、飛び立つことの出来ない旅客機の中には乗客乗員377名が残された。窮地に立たされた4名のハイジャック犯はパイロットの搭乗を要求、受け入れられない場合は乗客を一人ずつ殺してゆくと宣言した。そんな中、客室乗務員の一人ニールジャーは乗客の命を救う為、決死の覚悟で力を尽くす。その時、彼女はまだ22歳だった。

1986年に起こったハイジャック事件を描く実話ドラマ。ハイジャックを描いたものとしてこの作品がまずユニークなのは、「飛び立つことの出来ない航空機の中の立て籠もり」であるという部分だ。さっさとコックピット・クルーに逃げられてしまうというのはある意味滑稽ではあるが、現実だからこそこんな滑稽な状況が生まれ、それがまたドラマになってしまうというのも確かなのだ。

そしてこの物語の主人公が、たった22歳の女性客室乗務員である、ということだ。マッチョな警官や軍人という訳ではないのだ。確かにハイジャックを含む航空機サスペンスでは客室乗務員が重要な役割を充てられるが、この作品ではか細くか弱い若い女性が、孤軍奮闘して乗客たちを守ろうとし、ハイジャック犯と交渉するのである。時には不安に怯え、恐怖に泣き出すこともありながら、彼女は命懸けでそれをやり通そうとするのである。

物語はいたってシンプルでストレートであり、上演時間も122分とインド映画にしては十分にタイトなものだ。サスペンスは直球であり、描写に情け容赦なく、そしてこれらが殆ど現実にあったことだという重さが胸にのしかかる。娯楽映画としてもドキュメンタリーとしても非常に秀逸な作品であるのは間違いない。

ハイジャック犯に立ち向かった一人の女性を描く実話物語〜映画『Neerja』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

出演:ソーナム・カプール、シャバーナー・アーズミー、シェーカル・ラヴジヤーニー (2016/ ヒンディー語/ 122分))

☆この作品のサスペンス度:999点

カプール家の家族写真 (原題:KAPOOR & SONS (SINCE 1921)) / 監督:シャクン・バトラ

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●テーマ:家族の再会が引き起こした大きな波紋。

《物語》インドのクーヌール住むカプール家のお爺ちゃんが心臓発作を起こす。お爺ちゃんと同居していたカプール夫妻は急遽海外で生活していた二人の息子を呼び戻した。お爺ちゃんは一命を取り戻し、なんとか安心に見えたのだが、実はカプール家の面々はそれぞれに問題を抱えていて、彼らが一堂に会したことによってその問題が大きく吹き上がってしまうのだ。

一見して非常に巧みなシナリオを持つ作品だと感じた。この物語では家族の多くが秘密を抱えている。その秘密は冒頭から様々な伏線を張りながら交錯しあい緊張感を高めてゆきながら、ある日嵐の中のダムのように決壊を起こす。この破局のポイントまでの構成が恐ろしいくらいに巧みなのだ。よくもまあここでここまで繋げたなあ、と思う。そしてこうした破局を経ながらもどうやってもう一度家族の輪を取り戻してゆくのかがこの作品の大きなテーマとなる。彼らの秘密は秘密のままであったほうがよかったものなのかもしれない。だがその秘密が発露したその先でさえも、あくまで誠実な家族同志であろうとするのがこの物語なのだ。

家族の再会が引き起こした大きな波紋〜映画『Kapoor & Sons (since 1921)』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:リシ・カプール、シッダールト・マルホートラ、ファワード・カーン、アーリヤー・バット、ラトナー・パータク、ラジャト・カプール (2016/ヒンディー語/132分))

☆この作品の家族崩壊度:1000点

■ハウスフル 3 (原題:HOUSEFULL 3) / 監督:サージド-ファルハド

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●テーマ:3人の娘に惚れた3人の男の大騒動!?

《物語》ロンドンの大邸宅に住む富豪バトゥックには愛しい3人の娘がおりました。そしてお年頃の3人にはそれぞれ交際している男性が。しかし娘を嫁にやりたくないバトゥックはインチキ占星術師をでっち上げ、「もしも〇〇な男を連れて来たら父親は心臓発作で死ぬ!」と嘘の予言をします。それは「家に足を踏み入れた男」、「父を見た男」、「父に声を掛けた男」です。黙っていられないのは3人の男、彼らはそれぞれ「下半身不随」、「盲目」、「聾唖」のふりをしてまんまと父親の前に姿を現します!しかしそんな嘘もだんだんほころび始めて!?

大笑いして観ることができました。ギャグのネタはどれも大変下らないし、身障者ネタはかな〜りヤヴァさが満載ですが、気軽に観れるバカ映画としては十分なセンスではないでしょうか。まずなにしろアクシャイの二重人格演技。このジキルとハイドみたいなアクシャイ、メッチャ怖い顔をして暴れるんですが、この「危なさ」が作品の面白さに寄与していました。それと、アビシェークの徹底的な楽屋落ちネタ!何が登場するかは書きませんが、インド映画の好きな人ほど笑い転げること必至でしょう!歌と踊りもいい湯加減で登場し、「あーボリウッド娯楽作観たなー」と良い気分で観終りました。

3人の娘に惚れた3人の男の大騒動!?〜映画『Housefull 3』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:アクシャイ・クマール、リテーシュ・デーシュムク、アビシェーク・バッチャン、ジャクリーン・フェルナンデス、リサ・ヘイドン、ナルギス・ファクリー、ボーマン・イラーニー (2016/ヒンディー語/145分))

☆この作品のドタバタ度:777点

■エアリフト 〜緊急空輸〜 (原題:AIRLIFT) / 監督:ラージャー・クリシュナ・メーノーン

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●テーマ:クウェート侵攻により置き去りにされた17万人のインド人を救え!

《物語》実業家のランジートは家族と共にクウェートに住み、順風満帆な生活を送っていたが、イラク軍のクウェート侵攻によりその生活は一変する。ランジートは国外脱出を考えるが、脱出もままならず右往左往するインド人同胞の姿を見て、彼らを救うことを決意する。実業家のコネを活かし、様々な政府機関に掛け合うランジートだったが返答は色よくない。さらに国連の経済制裁による海上封鎖のため海路での脱出も望みが絶たれた。食料も底を突きかけ不安だけが広がってゆくインド人同胞たちの為にランジートは打つ手があるのか。

イラク首相サダム・フセインによるクウェート侵攻はその後の湾岸戦争へと広がるきっかけともなった侵略行為だった。アメリカのブッシュ大統領多国籍軍を編成してサウジアラビアに派兵、さらにペルシャ湾の海上封鎖を敢行する。それに対しイラクは欧米人を一斉に拘束、出国を禁止した上に軍事施設に収容するという人質作戦を展開する。双方睨み合いのまま人質は徐々に解放されてゆくが、経済封鎖の影響は次第にイラクに影響を与えてゆく。そこでは17万人の在クウェート・インド人たちも孤立無援となっていた。

そんな中、一人の男が同胞を救う為に立ち上がる。映画『Airlift』は湾岸戦争の初期、実際に起こった脱出計画を描くスリラー作品である。戦時下の街で恐怖に怯える人々を描き「その時クウェートのインド人はどうしたのか」を描いたのがこの作品となる。避難所に集められたインド人たちの憔悴しきった様子、膨らんでゆく不満、やっと脱出手段が見つけられたと思ったらそれが次々に不可能になってしまうことの絶望感、「もしも自分もそこにいたら」と考えるとやはり恐ろしい。

クウェート侵攻により置き去りにされた17万人のインド人を救え!〜映画『Airlift』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:アクシャイ・クマール、ニムラト・カウル、プーラブ・コーホリー、フェリーナ・ワズィール (2016/ヒンディー語/126分))

☆この作品の危機一髪度:880点

■キ&カ 〜彼女と彼〜 (原題:KI & KA) / 監督:R.バールキー 

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●テーマ:「俺、主夫になりたいっす!」

《物語》「私、仕事に人生賭けてるの!将来の夢はCEO!」というキャリアウーマンと、「俺、主夫になりたいっす!家事のことなら俺に任せろ!」という男性とが知り合って、これで結婚しちゃえばWin-Winじゃね?ということで目出度くゴールイン!しかし二人の結婚生活は夫が「カリスマ主夫」として注目を浴びてしまったばかりに思わぬ方向へ!?というロマンチック・コメディ。

夫であるカビールには「亡くした母のような"主婦"になりたい」という動機がありました。主婦/主夫を極めたい彼の向上心は並大抵のものではなく、掃除洗濯料理をこなすのは当たり前、インテリア・コーディネートしてみたり、妻キアとそのお母さんの健康管理まで始めちゃいます。

当然こんな主夫が成り立つためには、女性でも能力があるなら性別関係なく安定した収入を得られる、そういう社会である、という大前提も必要です。例え女性であってもCEOを目指せるし、例え男性であっても最高の主夫を目指せる。目指すものがCEOや主夫じゃなくても、性別に関係なく自己実現を達成できる。そんな社会を夢見た物語であるとも言えるんですよね。

とはいえ、キャリアウーマンと主夫が結婚してメデタシメデタシ、ではお話が終わってしまいます。お話を転がすのにいったいどんな波乱を持ち込むのかな?と思いながら観ていたら、おやおやそっちの方向に!?というのが楽しいドラマでした。

「俺、主夫になりたいっす!」〜映画『Ki & Ka』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(主演:カリーナー・カプール、アルジュン・カプール (2016/ ヒンディー語/ 126分))

☆この作品の主夫度:1000点満点

■アリーガルの夜明け (原題:ALIGARH) / 監督:ハンサル・メータ 

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●テーマ:インドにおけるセクシャル・マイノリティ差別。

《物語》大学で教鞭をとる教授がゲイであることを理由に退職に追い込まれ、裁判となった事件を元に描かれた実話作品。教授の名はラーマチャンドラ、彼は男性と自宅で愛し合っているところを見知らぬ男たちに乗り込まれ、暴行を受けた上にビデオに撮られるという辱めを受ける。この事件は同性愛者を判じる裁判へと発展し、新聞記者のディープーはその取材としてラーマチャンドラの元を訪れるのだ。

インドは法律により同性愛が禁止されている国である。2009年にニューデリー高等裁判所により同性愛行為の合法判断が示されたにもかかわらず、2013年、最高裁判所によって最高禁固10年という違法行為へと判断が覆されたのだ。物語はラーマチャンドラ、彼を取材するディープーを中心としながら、裁判の様子と、事件当日の真実が明らかにされてゆく。とはいえこの物語は、ことさら大声で同性愛者の人権やそれを裁く法律の違法性を説く作品ではない。むしろ、ラーマチャンドラの内面を掘り下げ、それに寄り添う形で、彼の生き方を詳らかにしてゆく。

ここでラーマチャンドラは、自分の裁判にすら興味を持たない。愛とは法律で裁くことのできるものではない、それを彼は知っていたのだろう。そんな彼は自分のささやかな人生とその愛のみに喜びを感じて生きる内向的な男として描かれる。そしてそれは、当たり前のことだが我々と何も変わらない、己の幸せを願いながら生きる男の姿だ。ゲイであろうとヘテロセクシュアルであろうと、幸せの形は変わらない。だからこそ、ゲイであるだけで、差別や暴力が許されることなど決してない、映画は、ラーマチャンドラの生き方を通してそんなことを語りかけるのだ。

インドにおけるセクシャル・マイノリティを描いた映画3作『Aligarh』『Chitrangada』『Fire』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:マノージュ・バージパーイー、ラージクマール・ラーオ (2016/ ヒンディー語/ 118分))

☆この作品の社会派度:850点

■恐怖症 (原題:PHOBIA) / 監督:パワン・クリパラニ 

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●テーマ:広場恐怖症の女を襲う怪異。

《物語》新進アーチストのメヒカはパーティーの夜に乗ったタクシーの運転手に暴行を受ける。それ以来彼女は神経を病み、パニック障害と広場恐怖症を発症してしまう。メヒカの男友達シャーンは彼女を憐れみ、彼のアパートに暫く間借りすることを許す。しかしそのアパートの部屋で、メヒカはありえないものの気配を感じ、そこにいない筈の誰かの姿を目撃してしまう。

物語は主にたった一つのアパート住宅の中だけで展開する。そしてこの映画のキモは、主人公が広場恐怖症であるばかりに、恐怖の漂う部屋から逃げることが出来ない、という部分だ。得体の知れない"何か"が出没する部屋も怖いが、部屋を出たくても出られない主人公が、助けを求めることさえできず、出口のドアの前で、苦悶の形相を浮かべながらパニックに駆られる姿もまたコワイ。

グロテスクさやショッキングさで煽ってゆくホラーではなく、不安と恐怖でじっくりと盛り上げてゆくホラーであり、さらにクライマックスに行きつくまでの伏線とその回収の様が鮮やかなシナリオを成しており、最後に「そういうことだったのか!」と感心してしまった。いわゆるサスペンス構造なのだが、本質はホラーであると言ってしまってもいいだろう。

様々な謎と疑問を配し、そしてそれがサスペンスを生み不安を生むといった構成がいい。ミニマルな舞台設定ではあるが必要最低限の登場人物を効果的に配し、彼らの行動によりさまざまな疑心暗鬼を煽ってゆく様も丁寧だ。インド・ホラー『Phobia』は小振りな作品でもあるけれども、見た目の仰々しさに頼らない確かなサスペンス演出が光る秀作だと感じた。

広場恐怖症の女を襲う怪異〜映画『Phobia』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:ラーディカー・アープテー、サティヤディープ・ミシュラ (2016/ ヒンディー語/ 112分))

☆この作品のおしっこちびり度:999点

■ガッバル再び (原題:GABBAR IS BACK) / 監督:クリッシュ 

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●テーマ:社会の不正は俺が正す!

《物語》10人の税務官が誘拐され、1人が縛り首に遭った。その後「ガッバル」と名乗る謎の男から犯行声明があり、彼ら税務官は汚職を繰り返す社会悪であることをメディアに広めた。一方、大学教授のアディティヤは事故を起こした女性を病院に連れてゆくが、不必要な検査と法外な治療費の請求を目の当たりにしたアディティヤは一計を案じて病院の不正を暴き、それをメディアに公表してしまう。事実を知り怒り狂った市民は病院で暴動を起こすが、その監視ビデオを見ていた大企業CEOパテルは驚愕する。ビデオに映っていたアディティヤは、5年前パテルの違法建築により倒壊したビルで妻を失い、抗議に訪れたところを殺した筈の男だったのだ。

「法が裁かぬ社会の悪を、天に代わって成敗する!」といった物語は数々ありますが、そんな中この作品はより政治的なメッセージを盛り込んだ物語として完成しています。主人公ガッバルが裁く悪はマフィアや連続殺人犯といった犯罪者ではなく、社会のシステムの中で不正を行い甘い汁を吸う役人や病院院長、企業トップなど強力な権力を有するものたちなんです。ですから当然そのメッセージは「社会をよりよいものに変えていこう!」となるんですね。しかし主人公は市井の市民としての登場し、彼の行動の背後には「正義の鉄槌」であるのと同時に個人的な怨念が存在しています。そういった情念の描かれ方があるがゆえに、単なる「正義の男の物語」というだけではない、より感情に訴えかける物語として観ることができました。

社会の不正は俺が正す!〜映画『Gabbar Is Back』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

(出演:アクシャイ・クマール、シュルティ・ハーサン 特別出演:カリーナー・カプール、チトランガダー・シン (2015/ ヒンディー語/ 127分))

☆この作品の大暴れ度:700点

■私が恋した泥棒 (原題:MONCHORA) / 監督:サンディープ・レイ

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●テーマ:改心して働き始めた泥棒。彼の目の前に高価な宝石が。盗る?それとも?

(※この作品は観ていないのでIFFJホームページからのコピペでお茶を濁しておきます)

・あらすじ:泥棒のアビルはある家で盗みに失敗するが、その家に住むナンダーに、改心して祖父のもとで働くことを条件に逃がしてもらう。働き始めたアビル。ナンダーとの恋も芽生えるが、家宝の宝石を見て泥棒の本能がうずき出す。

・見どころ:サタジット・レイの息子サンディープ・レイ監督によるヒット作。軽妙なタッチのロマンチック・スリラー。2015年に日本でも公開された『女神は二度微笑む』で個性的な殺し屋ボブを演じた、シャーシュワト・チャテルジーも出演。

【見どころ要素】

(1) ドラマ

(2) ロマンス

(出演:アビル・チャテルジー、シャーシュワト・チャテルジー、ライマ・セーン (2016/ ベンガル語 / 135分))

☆この作品の泥棒度:??点


20161003(Mon)

[][]IFFJ先行レビュー:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落〜映画『ボンベイ・ベルベット』 IFFJ先行レビュー:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落〜映画『ボンベイ・ベルベット』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク IFFJ先行レビュー:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落〜映画『ボンベイ・ベルベット』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

ボンベイ・ベルベット (原題:Bombay Velvet) (監督:アヌラーグ・カシュヤプ 2015年インド映画)

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一人のチンピラがいた。彼の夢は、大物になることだった。
一人の女がいた。彼女の夢は、歌手になることだった。
そして二人は出会う。頽廃の都ボンベイで、歓楽と陰謀の館ボンベイ・ベルベットで。
運命の歯車が大きく狂いだすまで、二人の愛は完璧だった。

I.

ボンベイは、現在はムンバイと呼び名を変え知られる街だ。映画『ボンベイ・ベルベット』はこの街で出会い、愛し合った二人の男女の、死と銃弾にまみれた血の物語である。出演はランビール・カプールアヌシュカー・シャルマー、ケイ・ケイ・メーノーン、マニーシュ・チョウドゥリー。監督はインド映画界の鬼才、アヌラーグ・カシヤプ。また、インド映画監督として知られるカラン・ジョーハルがほぼ主役級の重要な役回りを演じている。

《物語》60年代ボンベイ。地方から流れ着きここで育ったジョニー(ランビール・カプール)は相棒のチマン(サティヤディープ・ミシュラー)と共にケチなチンピラとしてはした金を稼いでいた。ある日二人は度胸を買われ怪しげな資本家カイザード(カラン・ジョーハル)に雇われることになる。それは殺人、誘拐、脅迫といった薄汚い裏稼業だった。一方、子供の頃から美声を誇るロージー(アヌシュカー・シャルマー)も虐待に耐え兼ねボンベイにやってくる。安酒場の歌姫として糊口をしのいでいた彼女は、クラブ「ボンベイ・ベルベット」のオーナーとなったジョニーと出会い恋に落ちる。しかしそれは、政界大物の脅迫写真を取り戻すためにロージーの愛人が差し向けた罠だったのだ。

II.

アヌラーグ・カシュヤプ監督作品を観て思うのは、彼が「リアリズムの映像作家」であるということだ。出世作『Gangs of Wasseypur』 (2012)やセミドキュメンタリー『Black Friday』 (2007)はまさにそういった作品だが、『Dev.D』(2009)や『Ugly』(2014)では社会の裏側にある醜くおぞましい現実をあえてさらけだし、それを執拗に描こうとする。こういったリアリズムへの執着は、娯楽作品に特化したインド映画作品の中で異色な位置にあるのではないかと思う。逆にそのせいで、自分などは作品に嫌悪感や退屈さを覚えることがあり、カシュヤプ監督作品は決して得意ではない分類に入っていたのだ。

しかしだ。この『ボンベイ・ベルベット』には心底感嘆させられた。個人的にはアヌラーグ・カシュヤプの最高傑作なのではないかとすら思う。インドでは最悪の興行成績で、評価も低いと聞くが、知ったことではない。世界レベルの完成度だと思われるこの作品を貶すのは、単にインド人観客に見る目が無いのだとすら言いたい。

ボンベイ・ベルベット』に感嘆させられたのは、まずその徹底的に作り込まれた美術だ。60年代ボンベイの街並みを完璧に再現したというセットは、逆に夢のような非現実感を伴う。西洋風にあつらわれた屋敷やホテルの内装は徹底的にインド臭を排除され、クラブ「ボンベイ・ベルベット」のレヴューはここが古き良き時代のニューヨークかはたまた租界地であった頃の上海かと思わされるような豪華さと頽廃とを兼ね備える。男たちは誰もが小粋でパリッとしたスーツに身を包み、洒落者ならではの黒いあくどさを醸し出す。これらは全て、当時のボンベイがインド中の富が湯水の如く集中した世界であり街である、ということを如実に顕す。そうして現出するボンベイの姿は、もはや、インドですらない。これには震撼させられた。

III.

インドでありながら、インドではない都市、ボンベイ。それはいったいなんなのか。それを如実に示す台詞が、劇中主人公によって呟かれる。

"ボンベイから出たいだと?お前は馬鹿なのか?ボンベイの外に何があるのか知っているだろう?《インド》だ。飢えと貧しさにまみれた《インド》という土地だ"

当時のムンバイは再開発により相当の資本が集中した時期だったのだろう。そして富の集まるところにはそれを食らおうとする毒虫も現れる。この作品はそういった時代のアンダーワールドを描くものであるが、同時に、従来的なインド映画のストーリーテリングに背を向け、欧米的なメソッドを視野に入れて映画作りをするアヌラーグ・カシュヤプ監督の、脱インド的な箱庭として構築されたのが『ボンベイ・ベルベット』の舞台となる"ボンベイ世界"だったのではないかと思う。そしてその世界の創造に、カシュヤプ監督のリアリズムへのこだわりが微に入り細にわたり生かされた結果がこの素晴らしい美術ということなのだ。

この作品の魅力のもう一つは徹底的に説明を廃したその演出だ。台詞やモノローグに頼ることなく、幾つかのカットの連なりと、更に故意に描かれないシーンによって、カシュヤプは物語の状況を描き出そうとする。そこから現れる効果は、情緒を否定し目の前の実存だけがごろりと転がる寒々とした非情さだ。ここにもカシュヤプのリアリズムが生かされることとなる。これにより物語は透徹した非情さのトーンで描かれることとなり、やがて訪れるであろう逃れようない悲劇を観る者に予感させるのだ。

IV.

とはいえ、劇中に使われる音楽は調子っぱずれなぐらい俗っぽい。しかしそれが逆にこの映画を(カシュヤプがこれまで作ってきたような)単なる陰鬱なノワールではなく、頽廃と歓楽の街ボンベイを舞台とした娯楽作品たらしめている。血に飢え直情的な主人公はハリウッドのマフィア映画の傀儡のごときであり(まるで『スカーフェイス』みたいだったよ!)、内面の一切存在しないヒロインは綺麗な着せ替え人形以上の役割を与えられない。しかしこれらはあえて通俗を狙ったものだと感じる。

そして通俗だからこそ銃撃戦は『ランボー』でも観ているかのようにどこまでも派手であり、痛快だ。インド映画的な歌と踊りはないにしても、クラブ「ボンベイ・ベルベット」で披露されるハイレベルなレヴューがどこまでも楽しませてくれる仕組みになっている。こうしてみると、映画『ボンベイ・ベルベット』は、カシュヤプ監督なりの大衆的な娯楽作を作りだそうとしたその結果であると思えるのだ。ストーリーの弱さを指摘される作品だが、それはもとから通俗を狙ったものだからだ。しかし、この作品の真の主役は作り込まれた"ボンベイ世界"にある。この"ボンベイ世界"で、登場人物たちの命は陽炎のように現れては消えてゆく。彼らの運命に思いを馳せ、今は無き幻影の"ボンベイ世界"を夢想する、これは、そんな物語だと思うのだ。

ちなみにこの作品は「インディアン・フィルム・フェスティバル IFFJ2016」で日本語字幕付きの公開予定である。自分は予定が合わず、観にくことが出来ない為に残念ながらDVDでの視聴となった。しかしその完成度は驚くべきものだった。このブログを読んで関心を持たれた方は是非劇場に足を運んでいただきたい。

D

20160715(Fri)

[][]あるレスラーの愛と栄光、失墜と再生の物語〜映画『Sultan』 あるレスラーの愛と栄光、失墜と再生の物語〜映画『Sultan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク あるレスラーの愛と栄光、失墜と再生の物語〜映画『Sultan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■Sultan (監督:アリー・アッバース・ザファル 2016年インド映画)

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■あるレスラーの栄光と失墜

かつてレスリング・スポーツの世界で栄光の道を歩みながら、今失意と孤独の中に一人取り残された男がいた。彼の名はスルターン。彼の過去にいったい何があったのか、そして彼は甦ることができるのか。先頃インドで公開され大ヒット中の映画『Sultan』は、そんな彼の愛と栄光、失意と再生を描いた物語である。主演にサルマーン・カーン、アヌシュカー・シャルマー。監督に『Mere Brother Ki Dulhan』(2011)、『Gunday』(2014)のアリー・アッバース・ザファル。なおこの作品はインドで公開ほやほやの作品だが、日本でもSpace Boxによる英語字幕付きの上映会があり、そちらで観ることができた。

《物語》総合格闘技リーグを主催するアーカーシュ(アミト・サード)はインド代表選手を求めてハリヤーナー州の小さな町にやってきた。ここに住むスルターン(サルマーン・カーン)はかつて世界選手権の覇者として知られるレスラーだったのだ。だがスルターンはアーカーシュの依頼をすげなく断る。実はスルターンはつらい過去を背負っていた。8年前、地元に住むアールファ(アヌシュカー・シャルマー)という名の女子レスラーに恋をしたスルターンは、彼女の心を射止めるために自らもレスリングの道を志す。過酷な特訓の末、破竹の勢いで選手権を制覇してゆくスルターンは遂にアールファとの結婚に漕ぎ着ける。だが、数々の勝利に慢心したスルターンとアールファとの間に、ある悲しい事件が起こってしまうのだ。

■娯楽映画の王道的作品

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物語は娯楽作品のまさに王道を行くものだ。前半にスルターンとアールファとの出会いを愛おしくもまたコミカルに描き、観客の心を大いに盛り上げる。この前半はロマンス・コメディ・パートだと思っていいだろう。しかしそこに破綻が訪れ、スルターンは自らレスラーの道を閉ざしてしまうのだ。インターミッションを挟んで後半はスルターンの再起を掛けた血の滲むような特訓と、総合格闘技リーグの行方が描かれてゆく。そしてこの戦いのシーンが、とてつもなく熱い!!ここにおける熾烈な戦いの様子は同じく総合格闘技リーグを描く名作インド作品『Brothers』(2015)を思い出さずにはいられないが、『Brothers』が家族の悲痛な断絶を描いていたのに比べ、『Sultan』では愛の再生を願った戦いとなるのだ。

ここには娯楽作品のセオリーが全て詰まっている。それは悪く言えば予測可能の予定調和的な物語ということだが、良く言えばとことん安心して観られる作品ということだ。物語は雄々しく力強く、栄光と失墜があり、そして再生がある。確かな愛と移ろいゆく愛があり、それでも愛は勝利する。笑いがあり涙があり、そしてインド映画ならではの煌びやかな歌と踊りがある。お代の分きっちり楽しませて、上映終了後は晴れやかな顔で満足しながら劇場を出られる。驚きや考えさせられることはないかもしれないが、こと楽しさに関しては格別だ。今回の『Sultan』に関してはそんな映画なのだと思う。そしてオレも十分満足した。しかもこれは天下のサルマーン映画、それを日本でこうして観られる。もうすっかりお祭り気分だ。とても素晴らしいことじゃないか。

■非常にテンポの速い構成と編集

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しかし楽しませるための作りは非常にしっかりしている。まずこの作品、非常にテンポの速い構成と編集で、片時も目を離せない。インド映画にありがちな間延びしたシークエンスがまるで存在しないのだ(インド映画の間延びした部分は実は好きだが)。これは特に後半、格闘メインということもあったが、ロマンス展開の前半ですら無駄を一切省いた演出に感じた。IMDbのユーザーレビューを読むと、インド人ファンが満点を付けつつ「唯一の欠点は、ペースが少し速いこと」と苦言を呈していたのにはちょっと笑ってしまった。とはいえ、こんな高密度の編集をしていつつ2時間50分もの上映時間を全く飽きさせずダルさを感じさせず描き切るというのはある意味驚異的なことなのではないかとすら思った。ここだけ注目しても傑作じゃないか。

全く飽きさせなかったもうひとつの要因は、映画全編に流れる情感豊かで表情溢れるサウンドトラックの扱い方にもあったのではないかと思う。兎に角、殆ど音楽が途切れない。それらは作品のその時々のムードを完璧に演出してみせ、さらに音楽だけがでしゃばることが無い。それにより、登場人物たちの感情の起伏に、ぴったりと寄り添いながら映画を鑑賞することができたのだ。いや、これまで意識してこなかったが、多くのインド映画はこの作品と同じように殆ど音楽を途切れさすことなく製作されているのかもしれない。ただ、今回自分が鑑賞したのは音響設備が完備されたシネコンである。当たり前の話だが、家でDVDを観ているのと全く環境が違うのだ。映画は映画館で観ろ、という言い方があるが、こと音響に関しては、今作では映画館で観ることの醍醐味を十二分に感じさせてくれた。今作の音楽担当はヴィシャル-シェーカル。最近では『Happy New Year』(2014)、『Bang Bang!』(2014)、『Fan』(2016)と目覚ましい活躍を見せており、今後も楽しみだ(次作は『Banjo』(2016)!)

■主演のサルマーン・カーンとアヌシュカー・シャルマー

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主演のサルマーン・カーンがなにしろいい。自分は彼の『ダバング 大胆不敵』(2010)、『Dabangg 2』(2012)以降の数作がどうも好きになれなかったのだが、『Bajrangi Bhaijaan』(2015)、『Prem Ratan Dhan Payo』(2015)と来て、もはや彼の存在感の素晴らしさを認めざるを得なくなってしまった。そして今作においても「ちょっと単純だが気のいいあんちゃん(まあ既におっさんなのだが)」キャラは大全開であり、そのコミカルな演技に大いに笑わされ、同時に不撓不屈の根性にどこまでも胸を熱くさせられた。最近はちょいと太目になったが、太目だからこそ醸し出される頼り甲斐と安定感に安心させられるのだ。そして今作では踊りもいい。さすがにキレはないが、それでもよく音楽に馴染んだ動きをしている。

一方ヒロインとなるアヌシュカー・シャルマーがまたいい。オレがこれまで観た『pk』(2014)をはじめ『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)、『Band Baaja Baaraat』(2010)、『Ladies vs Ricky Bahl』(2011)といったアヌシュカー作品では、前半のツンツンした現代的なヒロインが、後半にはデレデレのロマンス展開を迎えるものが多く、オレは彼女の事を個人的に「ツンデレの女王」と呼んでいるのだが、今作でも初っ端から怒涛の勢いでツンツンぶりを披露し、主人公スルターンを翻弄しまくるのである。そしてそんな彼女が、いったいどの辺で「デレ」の部分を見せてくれるのかが今作の見所の一つともなるだろう。それにしても今作のアヌシュカーは女子プロレスラーという役柄だが、細身の美人女優であるにもかかわらず劇中では実に女子プロレスラーらしく見えるのは彼女の演技力の賜物なのだろう。

■インド映画上映会の楽しさ

さてインド映画上映会の話を。これは一般のロードショー公開と違う在日インド人向けの上映会であり、英語字幕だし、当然インド人観客が多い。この日は映画上映間もなく、席に付いていなかった大勢のインド人観客が暗い劇場内でスマホのライトを瞬かせながら、多分あっちの席だこっちの席だというような事を言いながらバタバタガヤガヤと入場してきて若干面食らったが、何度もこういった上映会に足を運んでいると、なんだかもう慣れっこになってしまった。上映中のスマホライト点灯もお喋りもしょっちゅうなのだが、インドでもこんなもんなんなんだろ、と思うと気にならなくなってくるから不思議なものである。

それよりも会場の盛り上がり方の半端無さを伝えたい。なにしろ映画の画面にサルマーンが登場した瞬間歓声が上がり指笛の音が飛び交う。「いよ!待ってました!」という塩梅だ。その後もレスリングや格闘技試合でサルマーンが善戦するとまたもや指笛の大コーラス(?)、あんなシーンやこんなシーンでも指笛と歓声、しまいにはサウンドトラックで手拍子、そして映画終了後には大きな拍手が鳴り響いた。もうホント、全然ノリが違うのだ。全身全霊で映画を楽しんでいるのだ。こんなに賑やかだったのは初めてかもしれない。こんな周囲の楽しさが伝染して、オレもなんだか大いに盛り上がった。やはりサルマーン・カーン主演だからなんだろうなあ。あと、美人ちゃんなインド女性も結構来てましたですテヘ。

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madaari first day collectionmadaari first day collection 2016/07/18 22:04 <a href="http://www.madaari.totalboxofficecollection.in/">madaari first day collection</a> Provides you all the news about the Earning of New Movies and new upcoming Movies. Here you got all information about the Movies.

SultanSultan 2016/07/20 11:29 Sultan公開後、興業成績の伸びが止まりません。
3日間で100カロールを越え、4日間で142.62カロールと
それまで今年トップだったAirliftをあっさり越えました。
5日目となる日曜日で180にも届きそう。
さらに1週間で200を超えるのはほぼ間違いありません。
このままいけばPKすら追い抜くかも?

globalheadglobalhead 2016/07/20 11:53 コメントありがとうございます。あれだけ王道の作りで誰にでも親しめる作品だったらそのぐらい売れるでしょうねえ。サルマーン映画は本当に強いなあ。

WWE Battleground Result 2016WWE Battleground Result 2016 2016/07/23 14:52 Have interest in WWE? Find everything about its upcoming event WWE battleground 2016(matches, venue, Winner, Result) at <a href="http://gossipworm.com/"> WWE Battleground Result 2016 </a>

Independence Day GreetingsIndependence Day Greetings 2016/07/23 14:54 Find the best Independence Day Greetings here at <a href="http://independencedaygreetings.com/"> Independence Day Greetings </a>

shubhshubh 2016/10/19 16:27 Want to be a part of Bollywood?? Check the questions which are asked in a Bollywood interview. Vist http://bestinterviewquestions.net/

20160706(Wed)

[][]ハリウッド映画『アイ・アム・サム』を翻案したインドのハートフル・コメディ〜映画『神様がくれた娘』 ハリウッド映画『アイ・アム・サム』を翻案したインドのハートフル・コメディ〜映画『神様がくれた娘』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク ハリウッド映画『アイ・アム・サム』を翻案したインドのハートフル・コメディ〜映画『神様がくれた娘』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■神様がくれた娘 (監督:A・L・ビジャイ 2011年インド映画)

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日本で公開されたインド映画DVDをぽつぽつと観ているのだが、2014年日本公開の『神様がくれた娘』は少々食指が動かず放置状態だった。実はこの作品、ジェシー・ネルソン監督、ショーン・ペン主演による2001年公開のアメリカ映画『アイ・アム・サム』のインド版リメイク作なのだ。知的障碍者の親権を巡るというこの物語、オリジナルはお涙頂戴路線に思えて興味が湧かなかった。そのリメイク作である本作も同様である。

そんなことをブツブツ言いながら観始めたのだが、映画が始まってびっくりした。いやなにこれインドはインドでもタミルの映画じゃないの!日本公開のタミル映画にハズレはないぞ!そして主演はヴィクラムさんじゃないの!ヴィクラム主演作といえば大傑作『I』、『Raavanan』オムニバス『David』を観たことがあるけどスッゲエ個性的でいい俳優なんだよなあ!これはもう観なくても傑作じゃん!いや観るけど!と突然興奮しまくり観る気満々になったオレなのであった。しかしインド映画好きと言ってるくせに相変わらず無知だよなあオレ!わはは!(笑ってごまかすしかない)

舞台となるのは避暑地としても有名なインド南部の街ウッティー。この街はずれのチョコレート工場で働く知的障碍者クリシュナ(ヴィクラム)が主人公だ。彼には5歳の娘ニラー(ベイビー・サーラー)がいたが、母親は出産の際に死亡する。だが周囲の暖かな支援と親子の強い情愛により、ニラーは屈託なく育つ。そんな幸せな日々も束の間、死んだ母親の親族が親権を主張しニラーを連れ去ってしまう。嘆き悲しむクリシュナに声を掛けたのは若手弁護士アヌ(アヌシュカー)と彼の同僚ヴィノード(サンダーナム)だ。アヌとヴィノードは裁判を起こすが、相手側は百戦錬磨のベテラン弁護士バーシャム(ナーセル)を立てて徹底抗戦に挑む。果たしてニラーはクリシュナの元に戻るのか。

オープニングこそニラーを奪われたビシュヌの様子が描かれるけれども、その後物語は徹底してコミカルに展開してゆくところがいい。テーマから感じさせるような余計な湿り気が存在しないのだ。むしろ明るく暖かな雰囲気が全編を覆い、豊かな情緒でこれを描いているのは、ロケーションであるインド南部の風光明媚な風土と柔らかな陽光、そこに住む気さくで開放的な人々の賜物だろう。深刻な問題を孕みつつも、決して暗く深刻ぶることなく、それを家族の繋がりとコミュニティーにおける互助精神で解決しようとする。前向きで楽観的なのだ。これはもう、インド映画であることの勝利としか言いようがない。インドには欧米キリスト教圏におけるキリスト教的な「原罪」や「個人主義」が存在しない、そういった部分にこの明るさと楽観性があるのではないかとよく思う。

そしてこれら明るさと軽やかさを可能にしているのは、登場する俳優たちの力量に負う所も大きいだろう。ヴィシュヌを演じるヴィクラムは、障碍を持つ者の痛々しさを感じさせることなく、むしろ優しさと純粋さを持ち、豊かな愛情に満ち溢れたキャラクターを圧倒的な演技で演じ切る。表情もいいが、どこかぬぼっとした大男であるところもどこか安心感と安定感を感じさせる。そしてその娘ニラーを演じるベイビー・サーラーだ。この子の可愛らしさは格別すぎる。観る者は「この子は絶対守ってやらなきゃ」と父ヴィクラムに成り替わって感じてしまうだろうし、この子を奪われたことの喪失感もヴィクラムと同じように感じてしまうだろう。この二人のやりとりを観ているだけで幸福感に満たされてしまうほどだ。さらに弁護士アヌの真摯な正義漢、弁護士ヴィノードの徹底したコミカルさ、弁護士バーシャムの憎々しさ、そして彼らに限らず多くの登場人物の明快にコントラスト分けされた個性が物語を豊かで奥深いものにしている。

確かに、どれほど豊かな心を持っていようと、深い愛情で結ばれていようと、知的障碍者に果たして親権を持たせられるのか、子供を問題なく育てることができるのか、ということを現実的に考えてしまえば、これは楽観的だけで済まされる話ではない。しかしむしろ、これはピュアな心を持ち、それだけで生きざるを得ない者が、現実の厳しさと何を持って対峙するのか、という一つのファンタジーとして観るのが正しいのだろう。そして、時としてファンタジーは、現実逃避の手段ではなく、現実を乗り越えるための方法を、人に教えてくれるものなのだ。そういった部分で、これは決してお涙頂戴の親子物語ではなく、美しい心が現実を乗り越える物語であることが、きっと観る者に伝わってくるはずだ。

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神さまがくれた娘 [DVD]

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20151227(Sun)

[][]オレ的インド映画2015年度作品《暫定》ベストテン!! オレ的インド映画2015年度作品《暫定》ベストテン!! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク オレ的インド映画2015年度作品《暫定》ベストテン!! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

というわけで昨日の『オレ的インド映画2014年度作品ベストテン!!』に引き続き、『オレ的インド映画2015年度作品《暫定》ベストテン!!』をお送りしたいと思います。

タイトルに《暫定》と入れたのは、これも昨日書いた事情と一緒なのですが、インドで今年2015年に公開された作品の全てはまだDVDソフト化されていないために、日本で輸入DVDでしかインド映画を観られない者としては、とりあえず今ん所ソフトで発売されてる2015年度作品だけで《暫定》でベストテン作っちゃえ、ということなんですね。だからなにしろインドで年末公開された話題作、『Dilwale』とか『Bajirao Mastani』とかは当然観てないし入ってません。じゃあ別に全部観てからやりゃあいいじゃん、と誰もが思ってるでしょうが、いや、なんか、年末って、ベストテン!ってやってみたくなるじゃないですか!あ、なりませんか…どうもすいません…。

まあなにしろ《暫定》なので2015年の話題作をあらかた観ることができたら改めてまた記事を作ってみようかと思います。その時は幾つかの作品が別のものと変わっていることでしょう。また、今回も前回と同じく、10作は選びましたが特にランク付けはしていません。ではいってみよう!

■Masaan (監督:ニーラジ・ゲーワーン 2015年インド/フランス映画)

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二人の男女がそれぞれに出遭う、インドの宿弊が引き起こした悲痛な出来事を描く物語です。舞台となる聖地ワラーナシーは悠久のインドを感じさせると同時に、物語のテーマに非常に沿った情景でもありました。

そんな若者たちが古い因習に足をすくわれ、がんじがらめになる。インド映画ではよくテーマにされる事柄だが、映画『Masaan』におけるそのドラマは、より困難であり、身を切る様に切なく、逃げ場すらないように見える。そしてそれにより、新しい価値観と古い価値観との拮抗を、より鮮烈に浮かび上がらせることに成功している。だがこの物語は、ただただ若者たちが因襲の犠牲になるだけの陰々滅々とした物語では決してない。暗く遣り切れない事件がありながらも、古い因習にがんじがらめにされながらも、なんとかそこから飛び立とうとする若者たちの明日についてのドラマでもあるのだ。そこがいい。

新しい価値観と古い因習の狭間で引き裂かれてゆく若者たちの物語〜映画『Masaan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Bangistan (監督:カラン・アンシュマーン 2015年インド映画)

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これ、インドじゃ大コケしたしレビューも散々だったんですが、非常に分かり易いアイロニーとストレートなブラック・ユーモアがヒネクレ者のオレにはピピッときましたね。それと併せ画面つくりのその色彩がとてもヴィヴィッドで楽しいんですよ。リテーシュ・デーシュムクとプルキト・サームラートが主演。

映画『Bangistan』はヒンドゥー/ムスリムの宗教的紛争が絶えない現実のパキスタンとインドを、架空の国南北バンギスタンという形に変え、そこにテロ計画の進行というきな臭い物語を展開した作品です。現実の国際社会でもテロの危機やその恐怖が目の当たりとなっていますが、この作品の製作国であるインドでもテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは先のフランスにおけるテロと同程度の痛ましい被害が出ています。インドではこうしたテロを題材にした映画作品も多く作られていますが、しかしこの作品ではそうした現実から一歩引き、架空の国家同士の宗教対立としてカリカチュアライズすることで、価値観を相対化し、さらにそれをナンセンスなものとして描き出し、そこから黒い笑いに満ちたスラップスティック・ギャグを生み出しているんです。

鏡の国のテロ戦争〜映画『Bangistan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Brothers (監督:カラン・マルホートラ 2015年インド映画)

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アクシャイ・クマールとシッダールト・マルホートラが主演を演じ、兄弟同士の熱くそして悲しい戦いの行方を描く格闘ドラマ。いやあこれには燃えましたね。ハリウッド作品『ウォリアー』のボリウッド・リメイク作品です。

このように、この作品に登場する男たちは皆が皆ボロボロなのだ。それは彼らの人生の中心にあるのが苦痛に満ちた思い出だからだ。その苦痛に父ガリーは成すすべもなく苛まれ、兄ダヴィドは苦痛そのものが存在しなかったと思いこもうとし、ただ弟モンティだけが苦痛と向かい合いそれを乗り越えようとしている。ただどちらにしろ、彼らは、一人ではその苦痛をどうしようもできないでいる。なぜなら、バラバラのままなら相手も自分も赦されず、そして赦さないからなのだ。こうして、どちらが勝とうが負けようが何も解決されない戦いだけが刻一刻と近付いてゆくのである。

兄弟同士の因縁が炸裂する格闘競技ドラマ『Brothers』! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Drishyam (監督:ニシカント・カマト 2015年インド映画)

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家族のために完全犯罪に挑む男の薄氷を踏むような怖い怖いサスペンスです。インド映画でもここまで欧米的な個人主義を描くようになってきたのか、と慄然とさせられた作品でもありました。主演のアジャイ・デーヴガンがはまり役でした。

もはやここには、善も無く、悪も無い。自らの行為を正当化する神の存在すら描かれない。倫理にも、規範にも、宗教にも、何一つ頼ることなく、主人公ヴィジャイはただただ家族を守るために熾烈な戦いを続けることになる。ここには国家、宗教、近隣コミニュティから分断され、それを欺き、"家族"という最小ユニットのみしか信用しない男の姿がある。もはや自らの寄る辺となるものが、自分と家族のみ、という孤独な男の姿がある。しかもこの物語をたったひとつ正当化する"愛する家族の為"という理由すら、"ミーラーの家族を踏みにじる"という行為によって成立するがゆえに、結局は相対化され、無効になってしまうのだ。この冷え冷えとした虚無こそがこの物語であり、そしてそれは現在のインド都市部の住民が抱える心情のひとつの形であると見ることもできるのだ。

善も無く悪も無く神すらもいない世界〜アジャイ・デーヴガン主演のサスペンス作品『Drishyam』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Tanu Weds Manu Returns (監督:アーナンド・L・ラーイ 2015年インド映画)

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離婚を巡る夫婦間の確執をコメディ・タッチで描いた作品です。とはいえ、そこに「妻によく似た新たな恋人」というフィクショナブルなシチュエーションを盛り込み、同時に夫婦れぞれの感情の機微を細やかに描くことで非常に見所のある優れた物語でした。主演のカンガナー・ラーナーウトの一人二役とその演技の素晴らしさには唸らされました。なお続編作品なので1作目から鑑賞することをお勧めします。

物語は、「新しい恋人」と出会うことで人生をもう一度やり直そうとしている男マンヌーが、それを知り逆に夫への愛に気づいてしまったタンヌーとの愁嘆場へとなだれこんでゆきます。まあいわゆる腐れ縁と三角関係・四角関係の物語となるのですが、実のところ映画の流れを見ていても、「新しい恋人」ダットーのほうが全然いいんですよ。オレだったらもうどう考えたってダットー一択ですよ!なにしろねえ、ショートカットのカンガナーがキュート過ぎるんですよ!ぶっちゃけ惚れましたよ!映画ではマンヌーの心に揺らぎがあるのか?ないのか?といった具合に描かれてゆき、結構じれったさを覚えるのですが、意外とこのじれったさがまた物語を面白くしているんです。細かい部分での感情の動きが絶妙なんですね。まあくどいようですがオレだったら揺らがないけどね!こんな具合に最後までハラハラさせられるこの物語、有り得ないような状況の中で愛の不思議さを複雑な妙味で描き出し、2015年前半のインド映画とインド映画主演女優の最大の収穫となっているのは鉄板で間違いないでしょう。

カンガナー・ラーナーウトが一人二役を演じる"軽やかに描かれた泥沼の結婚生活"〜映画『Tanu Weds Manu Returns』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Baahubali: The Beginning (監督:S・S・ラージャマウリ 2015年インド映画)

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『マッキー』のラージャマウリ監督による歴史ファンタジー大作第1部。テルグ映画ですがヒンディー語吹き替えDVDで観ました。前半はちょっとヌルくて退屈だったんですが、後半期待通りの大戦闘シーンを展開して大いに盛り上がりを見せてくれましたね。

そしてここで活躍するアマレンドラ、バッララデーヴァの王子二人の戦いは、もはや人間の能力を超えた鬼神の如き無敵の無双っぷりを見せつけるんです。そうそうこれだよ!この無敵無双こそがインド映画だよ!鬼神なのは当たり前、彼らには破壊の神シヴァがついているんだからね!重力も力学も関係ない!彼らは神の理によって戦っているんだもの!こうして物語はあたかもインド神話の一ページを見せられているかのような光景へとなだれ込み、大いに盛り上がってゆくのですよ!そして!『LOTR』が3部作の映画だったように、この『Baahubali: The Beginning』も前後編2部作の前編だったのですね!シバドゥは見事王になることができるのか!?戦乱のマヒーシュマティ王国がどのようにして暗黒面に落ちたのか!?次回完結編である来年2016年公開予定の『Baahubali: The Conclusion』を待つのですよ!

甲冑大戦!歴史ファンタジー大作『Baahubali: The Beginning』はインドの『ロード・オブ・ザ・リング』だ! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Piku (監督:ショージート・サルカール 2015年インド映画)

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ディーピカー・パードゥコーン、アミターブ・バッチャン、イルファーン・カーン主演による、性格のてんでバラバラな3人組の道中を描いたロードムービー。いつもどうにも喧々諤々としている3人に笑い、しかしいつしか心通わせる3人にほっこりさせられる。素敵な作品でした。

そんな3人だが、いつも一つ車の中に押し込められているせいか、道中少しづつお互いの心に変化が訪れてくる。特にラーナーはバシュコルから微妙ながら信頼され、ピクーとはほのかな思いが芽生え始める。この微妙さ、ほのかさが、この作品の本当に素晴らしいところだ。突然改心したり物分りが良くなったり、炎のように恋が燃え上がったりはしないのだ。少しづつ手探りで、相手と自分との距離を確かめ、自分の心の中に受け入れる余地を見つけてゆく。3人はお互いが変わり者ではあるが、その受け入れる、あるいは受け入れられる中で、それぞれの中にあるバイアスが少しづつ氷解してゆく、この緩やかな心の動き方が観ていて実にリアルに感じるのだ。この物語では取り立てて特別な事件が起こったりとか事態が急変したりなどということは殆どない。だが、移り変わってゆく風景と共に移り変わってゆく3人の感情の行方が心に響くのだ。

不機嫌な娘と偏屈な父、それに巻き込まれた男とのロードムービー〜映画『Piku』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■I (監督:シャンカール 2015年インド映画)

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『ロボット』のシャンカール監督による、美しくて醜くてロマンチックで猟奇的で…というひたすら摩訶不思議な娯楽作品。タミル映画です。今回いろんなインド映画を紹介していますが、この1作だけはインド映画に全く興味が無い方が観られても「なんだこれは!?」と唖然呆然すること請け合い。日本でやらないかなあ。

物語はこうして、リンゲーサンとディヤーの出会いとロマンスがどこまでもひたすら美しく描かれるのと並行して、怪しいせむしの男がディヤーを監禁しさらに惨たらしい方法で人々を傷付けてゆくホラー展開とが描かれてゆきます。そしてこの二つがどのように関わってくるのか?が徐々に描かれてゆき、血を吐く様な残酷な運命と恐ろしい復讐の情念が明らかにされてゆくのです。まあ観ていればこの二つの流れがどういう関わりを持つのかすぐ気付かされますが、とりあえずここは書かないでおくことにしましょう。物語の全体的な印象は、「美女と野獣」「オペラ座の怪人」「ノートルダムのせむし男」などフランスの古典文学を翻案としながら、それをインドならではの美しい歌と踊りのロマンス展開で見せ、さらにその上タミル風味の強烈なアクションと残酷さで味付けしたという作品だということができると思います。さらにその全てが過剰なまでにテンコ盛りになって一丁上り!となっているという安定のタミル映画クオリティとなっているわけなんですね。

『ロボット』の監督シャンカールが描く美と醜の饗宴〜映画『I』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■NH10 (監督:ナヴディープ・シン 2015年インド映画)

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インド都市部在住の男女が出遭うインド辺地の忌まわしい悪風。それは「名誉の殺人」と呼ばれるものだった。これが実際に起こっていることでもある、というのがまた恐ろしいんです。アヌシュカー・シャルマー主演。

物語は前半、主人公らが迂闊に暴漢どもに接近してゆく描写、どことなく愚鈍そうなその暴漢、典型的すぎるスラッシャー・ホラー展開など、このジャンルが好きなすれっからしのホラー・ファンだったら凡庸に感じるかもしれない。実際オレもそうだったが、しかし一般の方ならインド映画らしからぬ異様な雰囲気に固唾を飲んで見守ることになるだろう。そしてどんどんと追い詰められてゆく主人公、警官すら手を出せない治外法権の中にある村落、そしてインドのある種の現実がそもそもの発端であることが明るみになるにつれ、単なるスラッシャー作品にはない重さと凄みが増してくるのだ。クライマックスの凄惨さはホラー映画ファンでも溜飲が下がるだろう。まあホラーではなくサスペンスなのだが、ホラーと言ってしまいたくなるような暗闇がこの物語にはある。

辺境の地を訪れた男女を襲う暴力の恐怖〜映画『NH10』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

■Dum Laga Ke Haisha (監督:シャラト・カタリヤー 2015年インド映画)

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おデブの嫁を貰って不貞腐れるイケてない男、二人の結婚生活はいかに?というちょっと変わったシチュエーションの人間ドラマ。あえて華の無いロマンスを持ち込みながら最後に愛ってなんだろう考えさせるシナリオは結構なワザモノと見ました。

そしてこの物語は【凡庸さ】についての物語でもあります。インドの娯楽映画といえば綺羅星のように輝く絶世の美女や鍛え上げられた筋肉でパンパンになった男優が登場して甘い恋愛や派手なアクションを決め、目も彩なダンスと心の踊る歌を披露しますけれども、でも実際自分を含めたそれを眺める観客の殆どはそんなものとはまるで関わりの無い生活を送る凡庸な一般市民でしかありません。そう、それはこの物語の主人公二人も同じです。不貞腐れ屋の旦那も、おデブの嫁も、さらにその周りにいる人々も、実のところ何が特別という訳でもないどこにでもいるような凡庸な人々です。しかし物語は、そんなどこにでもいるような凡庸な人々のささやかな希望や哀歓を共感を持って描き出そうとしているんです。そして、どんな凡庸であろうとも、しかしそれぞれが個々に抱く愛情は、実はそれぞれの中にしかない特別なものであるということも、この物語は描き出しているんです。そんな凡庸の中の愛にこそ、真の幸福があるのだと。

おデブの嫁なんか絶対嫌だ!〜映画『Dum Laga Ke Haisha』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ