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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20170807(Mon)

[][]シャー・ルク・カーン主演の新作インド映画『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』を観た シャー・ルク・カーン主演の新作インド映画『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』を観た - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク シャー・ルク・カーン主演の新作インド映画『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』を観た - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■ジャブ・ハリー・メット・セジャル (監督:イムティヤーズ・アリー 2017年インド映画)

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久しぶりにSpaceBoxさんのところで主宰しているインド映画上映会に行ってきた。タイトルは『ジャブ・ハリー・メット・セジャル(Jab Harry Met Sejal)』、シャー・ルク・カーン主演のロマンチック・コメディである。原題は「ハリーとセジャルが出会う時」といったような意味だろう。

シャールクの純粋なロマンス映画は久しぶりかもしれない。シャールクはやはりロマンス映画が似合う。最近のクライム風味の作品が自分にはどうも今ひとつだったので今回は期待大だ。そしてヒロインとなるアヌシュカー・シャルマー、彼女がまたいい。日本では『命ある限り』(2012)、『pk』(2014)の公開作がある。人気実力ともにとても優れたインド女優なのでインド映画ファン以外の方も名前を覚えておくといいだろう。彼女はシャールクとの共演作に先程紹介した『命ある限り』の他にも『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)があり、これも非常に名作で、観ておいて損はない。

監督はイムティヤーズ・アリー。これまで『Jab We Met』(2007)、『Rockstar』(2011)、『Highway』(2014)、『Tamasha』(2015)といった作品を観たことがあるがどれも表現力に優れた秀作を作り上げてきた監督だ。特に『Jab We Met』は最も重要なインド映画10作のうちのひとつに数え上げている評者もいるほどだ。個人的にもどれも思い出深い作品ばかりだが、ランビール・カプールディーピカー・パードゥコーン主演による『Tamasha』は特に好きな作品だ。

さて物語はヨーロッパでツアーコンダクターを生業としているハリー(シャールク)が、ツアー中に婚約指輪を失くしたという女セジャル(アヌシュカー)に絡まれる所から始まる。セジャルは大事な指輪を失くし婚約者にも家族からも激怒を買い、一人ヨーロッパに残ってどうしても見つけなければならないので同行しろという。ハリーとしてはそんなものオプション外だからやる義務はないと突っぱねるが、結局は嫌々ながらセジャルに付き添うことになる。だがオランダのアムステルダムで済む筈だった指輪探しは二転三転し、遂にはプラハ、ウィーン、リスボン、ブダペストを巡るヨーロッパ大探索の旅へと発展してしまうのだ。そしてその旅の間に、二人の間に仄かな恋心が目覚め始めるが、片や婚約者のいる女性、その恋は決して成就する筈は無かったのだ。

感想を先に書くと、心を揺さぶられるとても優れたロマンス作品だった。やはりシャールクのロマンス作は鉄板と言わざるを得ない。もちろんヒロインを演じるアヌシュカーの表情豊かな演技にも心ときめかされた。最初は嫌々付き合っていたシャールクと相手の迷惑なんて完璧無視なアヌシュカーとのギクシャクしたやりとりは、前半のコメディ要素となり、大いに笑わせながら観る者の心をほぐしてゆく。しかし旅を通じて心寄せ合うようになってゆく二人の、そのあまりに危うい「道ならぬ恋」の行く末を気になりだした時に、物語は辛く心切ないものへと様変わりしてゆくのだ。

最初は相性の悪そうな男女が旅の中で次第に心を通い合わせてゆく、といった物語はインド・ロマンス映画の十八番なのかもしれない。シャールク映画ではあの『Dilwale Dulhania Le Jayenge』(1995)がそうだし、ディーピカー・パードゥコーンとの共演作『チェンナイ・エクスプレス〜愛と勇気のヒーロー参上〜』(2013)もそんな物語だった。しかしそもそも監督であるイムティヤーズ・アリーの作品というのが、【旅とロマンス】を重要なファクターとするものが多く見られるのだ。先に紹介したイムティヤーズ・アリー監督作品4作はどれも【旅とロマンス】に関わる作品だ。その中で特に『Jab We Met』は、「本来ロマンスが生まれるべきではない二人の男女にロマンスが生まれてしまう」といった物語構成から、この『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』と大きな共通項を持っていると言えるだろう。

そしてこの作品のもう一つの魅力は、「有り得ない出会いの要素を力技でロマンスとして成立させてしまう」といった点だろう。それは「現実的である」事から大きく飛躍してしまうことを全く意に介さない冒険的な演出である事を意味している。まず失くした指輪をツアコンの男と同伴して、あまつさえヨーロッパ中探し回る女性、といった展開はあまりに有り得ない。飛躍し過ぎだ。そしてそんな同伴を強要しながら「でも恋愛はありえないし!」と言ってのけ、にもかかわらず終始ベタベタしてくるセジャルのメンタリティは、あまりに有り得ない。そんな女性など多分いないか、いてもとんでもない少数派だろう。

ではこの物語というのはひたすら飛躍し過ぎで現実味が無くて有り得ない、ご都合主義のシナリオによって書かれた陳腐なものなのかというとそれが全く違うのだ。ここで描かれるシチュエーションそれ自体は確かに非現実的なものかもしれない。しかしこのシチュエーションから導き出される心情の在り方は、全く有り得ないものではないばかりか、どこか酷く心動かすものを含んでいるのだ。逆に「現実的であること」の拘泥から解放され、「有り得ない事」の可笑し味へと飛躍させることで、想像力豊かに物語を膨らませ、同時に普遍的な心情の物語へと帰結さているのである。そんな自由さに富んだシナリオが面白いのだ。

そしてそれこそが、【物語】というものの、現実を軽く蹴り飛ばす楽しみなのだ。多くの人は、なにも別に、「道ならぬ恋」をしたいわけではない。しかし人は時として、「不可能な恋」に出会ってしまうことがある。そして、どこまでも遣る瀬無い悲しみに堕ちてしまうことがある。『ジャブ・ハリー・メット・セジャル』は、そんな物語なのだ。

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20161005(Wed)

[][]開催直前!インド映画祭IFFJ上映作品には見目麗しい女優さんが勢揃いだ! 開催直前!インド映画祭IFFJ上映作品には見目麗しい女優さんが勢揃いだ! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク 開催直前!インド映画祭IFFJ上映作品には見目麗しい女優さんが勢揃いだ! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

インド女優はインド映画の華。というわけで昨日に引き続きお送りする「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン2016」記事は、IFFJ上映作品に出演なさっている華々しいインド女優の皆様を紹介してみたいと思います。なお、殆どの写真は出演作品のものではありませんのでご注意を。

■ソーナム・カプール / 出演作『プレーム兄貴、お城へ行く』『ニールジャー』

『プレーム兄貴、お城へ行く』『ニールジャー』の2作品に出演されているのは「インドの薔薇」ことソーナム・カプール様。ああ、なんとお美しい!

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ソーナム・カプール(Sonam Kapoor)1985年7月9日ムンバイ生まれ (31歳)。『Saawariya』(2008)でデビュー。
主な出演作:『Delhi-6』(2010)、『Raanjhanaa』(2014)、『Khoobsurat』(2015)、『Dolly Ki Doli』(2016)

■サヤーニー・グプター / 出演作『ファン』

映画『ファン』にはこれといったヒロインは登場しないんですが、ここでは秘書役だったサヤーニー・グプター様を紹介。

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サヤーニー・グプター(Sayani Gupta)1985年コルカタ生まれ(31歳)。『Second Marriage Dot Com』(2012)でデビュー。
主な出演作『マルガリータで乾杯を!』(2015)、『Parched』(2015)、『Baar Baar Dekho』(2016)

■アヌシュカー・シャルマー / 出演作『ボンベイ・ベルベット』

ボンベイ・ベルベット』主演女優は映画『pk』の日本上映が待たれるアヌシュカー・シャルマー様です!

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アヌシュカー・シャルマー(Anushka Sharma)1988年5月1日アヨーディヤー生まれ (28歳)。『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)でデビュー。
主な出演作『Band Baaja Baaraat』(2010)、『命ある限り』(2012)、『NH10』(2015)、『Sultan』(2016)

■アーリヤー・バット / 出演作『カプール家の家族写真』

カプール家の家族写真』には今回最年少のとっても初々しいアーリヤー・バット様が出演なされております!

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アーリヤー・バット(Alia Bhatt)1993年3月15日イギリス生まれ(23歳)。『Sangharsh』(1999)でデビュー。
主な出演作『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』(2012)、『Highway』(2014)、『2 States』(2014)、『Humpty Sharma Ki Dulhania』(2014)

■リサ・ヘイドン、ジャクリーン・フェルナンデス、ナルギス・ファクリー / 出演作『ハウスフル 3』 

『ハウスフル 3』にはなんと3人ものヒロインが!?写真は向かって右からリサ・ヘイドン様、ジャクリーン・フェルナンデス様、ナルギス・ファクリー様!いずれ劣らぬ美女揃いで目移りしてしまいますね!

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リサ・ヘイドン(Lisa Haydon)1986年6月17日チェンナイ生まれ (30歳)。『Aisha』(2010)でデビュー。
主な出演作『Rascals』(2011)、『Queen』(2014)、『The Shaukeens』(2014)

ジャクリーン・フェルナンデス(Jacqueline Fernandez)1985年8月11日バーレーン王国生まれ (31歳)。『アラジン 不思議なランプと魔人リングマスター』(2009)でデビュー。主な出演作『Race 2』(2013)、『Kick』(2014)、『Brothers』(2015)、『A Flying Jatt』(2016)

ナルギス・ファクリー(Nargis Fakhri)1979年10月20日生まれ (36歳)。『Rockstar』(2011)でデビュー。
主な出演作『Madras Cafe』(2013)、『Main Tera Hero』(2014)、『Kick』(2014)、『Azhar』(2016)

■ニムラト・カウル / 出演作『エアリフト 〜緊急空輸〜』

『エアリフト 〜緊急空輸〜』には主人公の妻役ということで落ち着いた雰囲気のニムラト・カウル様が出演!

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ニムラト・カウル(Nimrat Kaur)1984年3月13日ピラニ生まれ(32歳)。『One Night with the King』(2006)でデビュー。
主な出演作『Peddlers』(2012)、『めぐり逢わせのお弁当』(2013)

■カリーナー・カプール / 出演作『キ&カ 〜彼女と彼〜』

『キ&カ 〜彼女と彼〜』主演はインド映画界ベテラン中のベテラン女優カリーナー・カプール様。日本公開された作品が最も多いインド女優の一人かもしれません。

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カリーナー・カプール(Kareena Kapoor)1980年9月21日ムンバイ生まれ (36歳)。『Refugee』(2000)でデビュー。
主な出演作『家族の四季 愛すれど遠く離れて』(2001)、『DON(ドン)過去を消された男』(2006)、『きっと、うまくいく』(2009)、『ラ・ワン』(2011)、『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』(2012)

■ラーディカー・アープテー / 出演作『恐怖症』

ホラー映画『恐怖症』に出演なさっているのはアンニュイな雰囲気がたまらないラーディカー・アープテー様。

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ラーディカー・アープテー(Radhika Apte)1985年9月7日プネー生まれ(31歳)。『Vaah! Life Ho Toh Aisi!』(2005)でデビュー。
主な出演作『Dhoni』(2012)、『Lai Bhaari』(2014)、『Badlapur』(2015)、『Manjhi - The Mountain Man』(2015)

■シュルティ・ハーサン / 出演作『ガッバル再び』

『ガッバル再び』の主演女優は主に南インド映画界で活躍し、歌手としても活動しているシュルティ・ハーサン様。

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シュルティ・ハーサン(Shruti Haasan)1986年1月28日チェンナイ生まれ(30歳)。『Luck』(2009)でデビュー。
主な出演作『Gabbar Singh』(2013)、『Race Gurram』(2015)、『Welcome Back』(2015)、『Srimanthudu』(2016)

■ライマ・セーン / 出演作『私が恋した泥棒』

映画『私が恋した泥棒』のヒロインはベンガル語映画で活躍するミステリアスな魅力のライマ・セーン様。

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ライマ・セーン(Raima Sen)1979年11月7日コルカタ生まれ(36歳)。『Godmother』(1999)でデビュー。
主な出演作『Parineeta』(2005)、『Manorama Six Feet Under』(2007)、『Maach Mishti & More』(2013)、『Bollywood Diaries』(2016)

■ラージクマール・ラーオ / 出演作『アリーガルの夜明け』

映画『アリーガルの夜明け』にはヒロイン枠が存在しません。その為とりあえず助演男優のラージクマール・ラーオを載っけておきます。まあいわば、"オチ"ってことで!

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ラージクマール・ラーオ(Rajkummar Rao)グルガーオン生まれ。『Love Sex Aur Dhokha』(2010)でデビュー。
主な出演作『Gangs of Wasseypur - Part 2』(2012)、『Kai Po Che!』(2013)、『Queen』(2014)、『Dolly Ki Doli』(2015)

20160715(Fri)

[][]あるレスラーの愛と栄光、失墜と再生の物語〜映画『Sultan』 あるレスラーの愛と栄光、失墜と再生の物語〜映画『Sultan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク あるレスラーの愛と栄光、失墜と再生の物語〜映画『Sultan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■Sultan (監督:アリー・アッバース・ザファル 2016年インド映画)

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■あるレスラーの栄光と失墜

かつてレスリング・スポーツの世界で栄光の道を歩みながら、今失意と孤独の中に一人取り残された男がいた。彼の名はスルターン。彼の過去にいったい何があったのか、そして彼は甦ることができるのか。先頃インドで公開され大ヒット中の映画『Sultan』は、そんな彼の愛と栄光、失意と再生を描いた物語である。主演にサルマーン・カーン、アヌシュカー・シャルマー。監督に『Mere Brother Ki Dulhan』(2011)、『Gunday』(2014)のアリー・アッバース・ザファル。なおこの作品はインドで公開ほやほやの作品だが、日本でもSpace Boxによる英語字幕付きの上映会があり、そちらで観ることができた。

《物語》総合格闘技リーグを主催するアーカーシュ(アミト・サード)はインド代表選手を求めてハリヤーナー州の小さな町にやってきた。ここに住むスルターン(サルマーン・カーン)はかつて世界選手権の覇者として知られるレスラーだったのだ。だがスルターンはアーカーシュの依頼をすげなく断る。実はスルターンはつらい過去を背負っていた。8年前、地元に住むアールファ(アヌシュカー・シャルマー)という名の女子レスラーに恋をしたスルターンは、彼女の心を射止めるために自らもレスリングの道を志す。過酷な特訓の末、破竹の勢いで選手権を制覇してゆくスルターンは遂にアールファとの結婚に漕ぎ着ける。だが、数々の勝利に慢心したスルターンとアールファとの間に、ある悲しい事件が起こってしまうのだ。

■娯楽映画の王道的作品

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物語は娯楽作品のまさに王道を行くものだ。前半にスルターンとアールファとの出会いを愛おしくもまたコミカルに描き、観客の心を大いに盛り上げる。この前半はロマンス・コメディ・パートだと思っていいだろう。しかしそこに破綻が訪れ、スルターンは自らレスラーの道を閉ざしてしまうのだ。インターミッションを挟んで後半はスルターンの再起を掛けた血の滲むような特訓と、総合格闘技リーグの行方が描かれてゆく。そしてこの戦いのシーンが、とてつもなく熱い!!ここにおける熾烈な戦いの様子は同じく総合格闘技リーグを描く名作インド作品『Brothers』(2015)を思い出さずにはいられないが、『Brothers』が家族の悲痛な断絶を描いていたのに比べ、『Sultan』では愛の再生を願った戦いとなるのだ。

ここには娯楽作品のセオリーが全て詰まっている。それは悪く言えば予測可能の予定調和的な物語ということだが、良く言えばとことん安心して観られる作品ということだ。物語は雄々しく力強く、栄光と失墜があり、そして再生がある。確かな愛と移ろいゆく愛があり、それでも愛は勝利する。笑いがあり涙があり、そしてインド映画ならではの煌びやかな歌と踊りがある。お代の分きっちり楽しませて、上映終了後は晴れやかな顔で満足しながら劇場を出られる。驚きや考えさせられることはないかもしれないが、こと楽しさに関しては格別だ。今回の『Sultan』に関してはそんな映画なのだと思う。そしてオレも十分満足した。しかもこれは天下のサルマーン映画、それを日本でこうして観られる。もうすっかりお祭り気分だ。とても素晴らしいことじゃないか。

■非常にテンポの速い構成と編集

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しかし楽しませるための作りは非常にしっかりしている。まずこの作品、非常にテンポの速い構成と編集で、片時も目を離せない。インド映画にありがちな間延びしたシークエンスがまるで存在しないのだ(インド映画の間延びした部分は実は好きだが)。これは特に後半、格闘メインということもあったが、ロマンス展開の前半ですら無駄を一切省いた演出に感じた。IMDbのユーザーレビューを読むと、インド人ファンが満点を付けつつ「唯一の欠点は、ペースが少し速いこと」と苦言を呈していたのにはちょっと笑ってしまった。とはいえ、こんな高密度の編集をしていつつ2時間50分もの上映時間を全く飽きさせずダルさを感じさせず描き切るというのはある意味驚異的なことなのではないかとすら思った。ここだけ注目しても傑作じゃないか。

全く飽きさせなかったもうひとつの要因は、映画全編に流れる情感豊かで表情溢れるサウンドトラックの扱い方にもあったのではないかと思う。兎に角、殆ど音楽が途切れない。それらは作品のその時々のムードを完璧に演出してみせ、さらに音楽だけがでしゃばることが無い。それにより、登場人物たちの感情の起伏に、ぴったりと寄り添いながら映画を鑑賞することができたのだ。いや、これまで意識してこなかったが、多くのインド映画はこの作品と同じように殆ど音楽を途切れさすことなく製作されているのかもしれない。ただ、今回自分が鑑賞したのは音響設備が完備されたシネコンである。当たり前の話だが、家でDVDを観ているのと全く環境が違うのだ。映画は映画館で観ろ、という言い方があるが、こと音響に関しては、今作では映画館で観ることの醍醐味を十二分に感じさせてくれた。今作の音楽担当はヴィシャル-シェーカル。最近では『Happy New Year』(2014)、『Bang Bang!』(2014)、『Fan』(2016)と目覚ましい活躍を見せており、今後も楽しみだ(次作は『Banjo』(2016)!)

■主演のサルマーン・カーンとアヌシュカー・シャルマー

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主演のサルマーン・カーンがなにしろいい。自分は彼の『ダバング 大胆不敵』(2010)、『Dabangg 2』(2012)以降の数作がどうも好きになれなかったのだが、『Bajrangi Bhaijaan』(2015)、『Prem Ratan Dhan Payo』(2015)と来て、もはや彼の存在感の素晴らしさを認めざるを得なくなってしまった。そして今作においても「ちょっと単純だが気のいいあんちゃん(まあ既におっさんなのだが)」キャラは大全開であり、そのコミカルな演技に大いに笑わされ、同時に不撓不屈の根性にどこまでも胸を熱くさせられた。最近はちょいと太目になったが、太目だからこそ醸し出される頼り甲斐と安定感に安心させられるのだ。そして今作では踊りもいい。さすがにキレはないが、それでもよく音楽に馴染んだ動きをしている。

一方ヒロインとなるアヌシュカー・シャルマーがまたいい。オレがこれまで観た『pk』(2014)をはじめ『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)、『Band Baaja Baaraat』(2010)、『Ladies vs Ricky Bahl』(2011)といったアヌシュカー作品では、前半のツンツンした現代的なヒロインが、後半にはデレデレのロマンス展開を迎えるものが多く、オレは彼女の事を個人的に「ツンデレの女王」と呼んでいるのだが、今作でも初っ端から怒涛の勢いでツンツンぶりを披露し、主人公スルターンを翻弄しまくるのである。そしてそんな彼女が、いったいどの辺で「デレ」の部分を見せてくれるのかが今作の見所の一つともなるだろう。それにしても今作のアヌシュカーは女子プロレスラーという役柄だが、細身の美人女優であるにもかかわらず劇中では実に女子プロレスラーらしく見えるのは彼女の演技力の賜物なのだろう。

■インド映画上映会の楽しさ

さてインド映画上映会の話を。これは一般のロードショー公開と違う在日インド人向けの上映会であり、英語字幕だし、当然インド人観客が多い。この日は映画上映間もなく、席に付いていなかった大勢のインド人観客が暗い劇場内でスマホのライトを瞬かせながら、多分あっちの席だこっちの席だというような事を言いながらバタバタガヤガヤと入場してきて若干面食らったが、何度もこういった上映会に足を運んでいると、なんだかもう慣れっこになってしまった。上映中のスマホライト点灯もお喋りもしょっちゅうなのだが、インドでもこんなもんなんなんだろ、と思うと気にならなくなってくるから不思議なものである。

それよりも会場の盛り上がり方の半端無さを伝えたい。なにしろ映画の画面にサルマーンが登場した瞬間歓声が上がり指笛の音が飛び交う。「いよ!待ってました!」という塩梅だ。その後もレスリングや格闘技試合でサルマーンが善戦するとまたもや指笛の大コーラス(?)、あんなシーンやこんなシーンでも指笛と歓声、しまいにはサウンドトラックで手拍子、そして映画終了後には大きな拍手が鳴り響いた。もうホント、全然ノリが違うのだ。全身全霊で映画を楽しんでいるのだ。こんなに賑やかだったのは初めてかもしれない。こんな周囲の楽しさが伝染して、オレもなんだか大いに盛り上がった。やはりサルマーン・カーン主演だからなんだろうなあ。あと、美人ちゃんなインド女性も結構来てましたですテヘ。

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madaari first day collectionmadaari first day collection 2016/07/18 22:04 <a href="http://www.madaari.totalboxofficecollection.in/">madaari first day collection</a> Provides you all the news about the Earning of New Movies and new upcoming Movies. Here you got all information about the Movies.

SultanSultan 2016/07/20 11:29 Sultan公開後、興業成績の伸びが止まりません。
3日間で100カロールを越え、4日間で142.62カロールと
それまで今年トップだったAirliftをあっさり越えました。
5日目となる日曜日で180にも届きそう。
さらに1週間で200を超えるのはほぼ間違いありません。
このままいけばPKすら追い抜くかも?

globalheadglobalhead 2016/07/20 11:53 コメントありがとうございます。あれだけ王道の作りで誰にでも親しめる作品だったらそのぐらい売れるでしょうねえ。サルマーン映画は本当に強いなあ。

WWE Battleground Result 2016WWE Battleground Result 2016 2016/07/23 14:52 Have interest in WWE? Find everything about its upcoming event WWE battleground 2016(matches, venue, Winner, Result) at <a href="http://gossipworm.com/"> WWE Battleground Result 2016 </a>

Independence Day GreetingsIndependence Day Greetings 2016/07/23 14:54 Find the best Independence Day Greetings here at <a href="http://independencedaygreetings.com/"> Independence Day Greetings </a>

shubhshubh 2016/10/19 16:27 Want to be a part of Bollywood?? Check the questions which are asked in a Bollywood interview. Vist http://bestinterviewquestions.net/

20160610(Fri)

[][]憧れが憎しみに変わるとき〜映画『Fan』 憧れが憎しみに変わるとき〜映画『Fan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク 憧れが憎しみに変わるとき〜映画『Fan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■Fan (監督:マニーシュ・シャルマー 2016年インド映画)

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■狂気に囚われたファン

先頃公開されヒットしたインド映画『Fan』は大スターとその彼にストーカーのようにまとわりつくファンとの間に巻き起こった恐るべき事件を描いたサスペンス・スリラーである。物語の中心となる二人、綺羅星のような大スターと狂気に囚われた大ファンという対称的な二人を、シャー・ルク・カーンが一人二役で演じているところが見所となるだろう。

《物語》デリーに住む青年ゴウラヴにとって大スター、アーリヤン・カンナーは世界の全てだ。夜も日も明けずアーリヤン漬けの生活を送る彼は見た目が似ていることを活かし、アーリヤンの物真似でコンテスト優勝する。ゴウラヴはそのコンテスト優勝を伝えるため、アーリヤンの住む夢の街、ムンバイへとやってくる。だが一般人が大スターと容易く会えるわけがない。アーリヤンの気を引くため脅迫事件を起こし投獄されるゴウラヴ。そこにアーリヤンが面会に来て彼に言う。「君のような男はファンなんかじゃない」。憧れが憎しみへと変わり、ゴウラヴの狂気がゆっくりと頭をもたげ始める。

■インド映画お馴染みのボディ・ダブル・ストーリー

SRKが久々にダークサイドな役を演じ大ヒットした作品ということで結構期待値大で挑んだのだが、観終わってみるとまずまずの面白さかな、という感じだった。憎しみに燃えるファンというから『Ek Villain』(2014)みたいなキレッキレのサイコパス野郎が登場し地獄のような哄笑を響き渡せてくれると思っていたし、物語にしても『Badlapur』(2015)みたいな凄惨極まりない展開を期待していたのだが、やはり大御所シャー・ルクが主演とあっては一般ファンがドン引きしたあげくおしっこ洩らしちゃうような作品にはできなかったのだろう。そもそもこの作品に登場するストーカー青年ゴウラヴはサイコパスというよりも純情さをこじらせた愚か者でしかなく、見ていてイラッとさせられこそすれ恐怖を感じるような存在ではないのだ。

監督のマニーシュ・シャルマーは『Band Baaja Baaraat』(2010)、『Ladies vs Ricky Bahl』(2011)といった作品があるが、基本的にロマンス作品を得意とする監督で、こういったミステリー・サスペンスは苦手なのではないだろうか。サスペンス作品としてシナリオに穴が多く、詰めが甘い。観客を怖がらせよう、徹底的に追い詰めよう、という気概が感じられない。だからストーカー青年が愚か者に見えても理解不能な狂人には見えない、見せられない、ということなのではないか。アクションにおいても見栄えこそすれど、アクション監督に任せてお仕舞いみたいなお仕着せ感を覚えた。

物語構造にしてもインドの娯楽作品においてさんざん使用されるボディ・ダブル・ストーリーだ。しかもシャー・ルクの一人二役映画と言えば『Rab Ne Bana Di Jodi』(2008)があるし、シャー・ルクが本人を髣髴させるスターとして登場する作品には『Billu』(2009) がある。そしてシャー・ルクがストーカーとして登場する作品といえば『地獄曼陀羅 アシュラ』(1994)が挙げられるだろう。これらの要素を換骨奪胎し、さらに大ファンだったジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマンのテイストを加味すれば映画『Fan』になるというわけである。まあ要するに、それほど斬新というわけでもない。

■シャー・ルク一人二役の面白さ

かといって退屈せず楽しめて観られたのはやはり御大シャー・ルク・カーンの主演映画だからであり、そしてそのシャー・ルクが今回一人二役をどう演じ分けるかといった点にあるだろう。本人そのものの大スターを演じるシャー・ルクだが今作では『Billu』におけるふわふわした善人ではなく、あからさまな営業スマイルを浮かべ時に疲れた顔をしスタッフに当り散らす等身大の人間だ。大観衆を前にポーズをとる様はいかにも決まって見えるが、それも「そういう営業中」であることがうっすらと透けて見えてしまう……というメタな演技は流石だなと思わされた。しかも、シャー・ルクのような大スターではあるが決してシャー・ルクではないのだ。

一方ストーカー青年ゴウラヴ、これがスゴイ。シャー・ルクの演じ分けも素晴らしかったが、一人二役とはいえ大スター・アーリヤンとゴウラヴの顏が微妙に違うのだ。最初自分はこのゴウラヴをシャー・ルクによく似た別の俳優を使っていると思っていたぐらいだ(だって鼻の形が全然違う!)。これはゴウラヴの顏を特殊メイクとさらにCGでもって製作しているからであり、さらに体型すらもCG加工されている。ゴウラグはアーリヤンよりもなで肩で小柄なのだ。こうして出来上がった特殊メイク+CGのゴウラヴはシャー・ルクに似て非なるいわば「不気味の谷」ともいえる薄気味悪い造形をしており、この気持ち悪さを眺めているだけでも面白い作品だった。

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20150827(Thu)

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■Band Baaja Baaraat (監督:マニーシュ・シャルマー 2010年インド映画)

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インド映画といえばロマンスと結婚。この『Band Baaja Baaraat』はその結婚の裏方として活躍するウェディング・プランナーを志し、仕事とロマンス両方で悪戦苦闘してゆく男女を描いた物語です。主演は『pk』『NH10』で注目を集めたアヌシュカー・シャルマー、その相方を『Goliyon Ki Rasleela Ram-leela』のランヴィール・スィンが演じております。ちなみにランヴィール・スィン、この作品がデビュー作となったんですね。

《物語》デリー大学を卒業したばかりのビットゥー(ランヴィール・スィン)は実家の農業を継ぐのが嫌だった為、以前知り合った女性シュルティー(アヌシュカー・シャルマー)がウェディング・プランナーを目指していたことを思い出し、農家に連れ戻しに来た父に「僕はウェディング・プランナーを目指しているんだ!」と宣言してしまいます。そしてなし崩しにシュルティーの元に押しかけ、強引にパートナーになってしまうビットゥー。そしてなんと彼らが起業したウェディング・コンサルタント会社「Shaadi Mubarak」は大成功。しかし大きな仕事を終わらせた高揚感から男女の一線を越えてしまった二人は、次第にぎくしゃくしてゆきます。なぜなら二人は「仕事にロマンスは持ち込まない」と誓い合っていたから。そして大喧嘩の末仲違いをした二人は別々の会社を立ち上げますがしかし…。

映画でしか観たことはないのですが、インドの結婚式ってなにしろ派手って印象ですよね。ちょっと調べてみたサイトでは、なんでも結婚式には年収の4倍をつぎ込み、その式は3日から1週間続き、前夜祭と披露宴では大音量のダンス・ミュージックがかけられて来客者みんなが踊り狂い、新郎新婦の自宅から会場まではマーチングバンド付きのエレクトリカル・パレードが練り歩くのだとか*1 *2。ってかこれ、映画で描かれてる以上に派手じゃないですか!?

この『Band Baaja Baaraat』、結婚式がテーマとなった物語ではありますが、物語がどうこうという以前に、登場するインドの結婚式のその物凄いド派手ぶりにとにかく目を奪われる映画になっているんですね。そしてそれが、中流階級のリーズナブルなものから、富裕層による贅を尽くした式まで、幾つも描かれていくんですよ。さらにウェディング・プランナーの物語ということから、結婚式の裏側まで見られて、なんだかもう「インド結婚式博覧会」てな内容の映画になってるんですね。ですから映画の殆ど場面で所狭しと原色が踊りライトがきらめく結婚式の映像を見せられることになり、そのサイケデリックさになんだかもう脳内にヤヴァイ物質が湧きだしてきて、妙な多幸感に襲われるのです。特に後半の、お城の中庭に設けれたダンスステージでレーザー光線が飛び交う中ダンサーたちが踊るシーンなど、もはや結婚式というよりコンサート会場みたいなんです!こういった部分が観ていてとことん楽しいんです。

そんな結婚式のプランナーとして活躍する二人の主人公は、経験が無いのにも関わらず若さと情熱、あとほんのちょっとの強引さでとんとん拍子で仕事を成功させ続けてゆきます。若者の起業を描いたインド映画としてはクリケット店出店を描く『Kai Po Chi !』(2013)という名作を思い出しますが、それと比べてるとなにもかも順風満帆過ぎてリアリティは薄いかもしれません。しかしこの『Band Baaja Baaraat』は仕事それ自体の大変さよりも映画の楽しさを追求するのを主眼としているみたいで、それが全く気になりません。また、この作品では女性が起業し社会進出するということ、そして女性の仕事と思われがちな仕事を男性がすること、そういったインド社会の変化も描かれているような気もします。そんな主人公たちを演じるアヌシュカー・シャルマーは『Rab Ne Bana Di Jodi』に続き気が強くて頑固者の女性を熱演、ランヴィール・スィンはこれがデビュー作とは思えない貫禄と魅力に溢れておりましたね。

けれども、楽しい楽しいだけではやはりドラマとして成り立ちません。ビジネスパートナー同士にロマンスが芽生えてしまうことで、逆に二人の二人三脚の仕事は破綻してしまいます。しかし、いくら「仕事にロマンスは持ち込まない」という最初に誓った不文律を破ったからと言って、それが原因で二人の仲がギクシャクし仲違いする、といった物語展開はどうも理解しにくいものがあります。愛し合ってるなら愛し合っているなりの新しいパートナーシップが築けるはずではないかと思うんですね。ただしこういった不自然な物語運びも、映画の方便だと思えばやはりそれほど気にならないんですよ。なにしろ映画全篇に登場する様々な結婚式のシーンが凄すぎて、細かい部分をあれこれ言う気が起きないんですね。そういった意味でとても楽しめた作品でした。

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20150423(Thu)

[][]シャー・ルク・カーンがダサ男とイケメン二役を演じるラブ・コメディ〜映画『Rab Ne Bana Di Jodi』 【SRK特集その9】 シャー・ルク・カーンがダサ男とイケメン二役を演じるラブ・コメディ〜映画『Rab Ne Bana Di Jodi』 【SRK特集その9】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ を含むブックマーク シャー・ルク・カーンがダサ男とイケメン二役を演じるラブ・コメディ〜映画『Rab Ne Bana Di Jodi』 【SRK特集その9】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ のブックマークコメント

■Rab Ne Bana Di Jodi (監督:アディティヤ・チョープラ 2008年インド映画)

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親の遺言で憧れの女性と結婚できたのはいいけれど、ダサ男だったばっかりに「あなたのことは愛せない」と打ち明けられ、家庭内離婚状態だった主人公が、一念発起してイケメン(?)ダンサーに変装し、妻のハートをゲットしようと近づいちゃう!?というシャー・ルク・カーン主演のラブ・コメディです。監督は伝説の名作『Dilwale Dulhania Le Jayenge』のアディティヤ・チョープラ。タイトルは「夫婦は神によって創られる」といった意味だとか。

主人公の名はスーリー(シャー・ルク・カーン)。真面目だけが取り柄のとことん地味ィ〜なオッサンである彼は、恩師の娘ターニー(アヌーシュカ・シャルマ)に一目惚れ。「でも僕なんて相手にされないだろうなあ…」と思っていた矢先、恩師が「わしの娘を貰ってやってくれ……」と遺言を残し逝ってしまいます。そして目出度く結婚したのも束の間、ターニーに「私、良い妻になることは誓うけど、あなたを愛することはないわ……」と告げられ、家庭内離婚状態へ。落ち込むスーリーでしたが、ある日ターニーがダンス教室に通いたい、と言ってきたことからある計画を思いつきます。それは、ギンギンのイケメン男に変装し、ターニーのダンス・パートナーとなって、彼女のハートを射止めちゃおう!というものでした。

面白かったです。「親に決められた結婚なんかひっくり返して、大好きなあの人を奪っちゃおう!」というパターンのインド映画はよく見かけるんですが、この映画のように「親に決められた結婚で大好きなあの人と結ばれたのに、相手が自分を好きになってくれない!」というパターンのインド映画は初めてだったもんですから、「お、こりゃ新しいな」と思って観ることが出来ましたね。「略奪婚」は「こういうことができたらいいのに」という願望を描いたファンタジーなんでしょうが、この作品のようにせっかく結婚しても家庭内離婚状態であるというのは、「こんなんなっちゃったけどどうしたらいいんだろう……」という部分でもっと切実な問題なのかもしれません。

この作品でまず楽しめるのがSRK演じる「ダサダサ夫スーリー」と、そのスーリーが変装した「イケイケ男ラージ」のルックスでしょう。ペッタリ撫でつけられた七三の髪に黒縁メガネと口髭で、服装も白シャツ+スラックス+運動靴というひたすらおっさん臭い男をインドの国民的大スターSRKが演じる、というのも面白いんですが、その彼の変身した姿である「イケイケ男ラージ」がカッコいいかというと、これが実はそうでもない、というのがまた哀れを誘うんです。ルックスこそヘアサロンをやっている親友に指南され、ファッショナブルに生まれ変わっていることはいるんですが、中身がそもそもおっさんなので、言動や行動が浮付いていて、結局「田舎者の勘違い男」にしか見えないんです。

だからダンス・スクールの奥さんの元に颯爽と現れパートナーになる「イケイケ男ラージ」ですが、そのあまりの素っ頓狂ぶりに妻ターニーは「なんなのこの人……キモッ」という反応を示しちゃうんです。映画だからってカッコいい男に変身していきなり奥さんを魅了しちゃう、なんて都合よくいかないんですよ。しかしそんな中、ターニーがラージに惹かれる瞬間が訪れるんです。それは、「俺ってイケてるだろ?」と演技しまくるラージではなく、そんなラージが無意識に見せた、スーリーへの素の優しさの部分なんです。こうして二人は信頼関係となりますが、それは妻ターニーが、ラージの中にあるスーリーの心に触れたからこその信頼だったのですよ。もう、こういった部分が泣かせるじゃないですか。

そこまで信頼されたなら「実はこれ、僕だよ!」と正体を明かしてしまえばいいじゃないかと思うでしょう。でも、スーリーはそうしません。スーリーにとって、妻ターニーに信頼されているのはあくまでラージなんです。ラージでいる時だけが自分は妻に信頼されている、と思い込んでいるんです。それはスーリーが、妻に拒絶されたことに、実は深く深く傷ついていたことの表れだと思うんです。そしてその傷は、ラージが信頼されたからといってもやっぱり治らないものだったんです。

それともうひとつ、ラージが最も望むこと、それはスーリーに常に幸福でいてもらいたい、ということなんです。スーリーは自分といる時は幸福ではない。でも、ラージといる時になら幸福だ。だったら、自分がしゃしゃり出たりしないで、スーリーはラージといればいいんだ…こう考えたスーリー/ラージはある行動に出てしまいます。決して許されることではないにせよ、それが、ラージにとっての幸福だと思って。例え自分は愛されなくとも、ラージには幸福になって欲しい。なぜならラージは、どんなに傷つけられていようとも、心の底から、ラージを愛しきっていたからなんです。

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USA-PUSA-P 2015/04/23 22:57 それまで私にはピンとこなかった”King Khan”の観方が解ったというか腑に落ちた作品で、鑑賞後に所有してた彼の出演作を観返してしまいました。あとこの映画って日常風景の撮り方の綺麗さとか、Blu-ray版まで買っちゃったくらいにこの映画、私も大好きです。第2回沖縄国際映画祭で外国映画部門グランプリを獲得した時に日本公開して欲しかったなぁ… ただ、EDロールの、あのやっつけ加減だけは!(笑)

globalheadglobalhead 2015/04/24 08:45 逆に自分なんかはインド映画を最近観始めた口なので、シャールクぐらいしか知っている俳優がいなかったものですから(あとラジニとかね)、安心して観ることが出来る部分で好きなんですよ。そして観てみると、確かに名作が多い。インド映画のウェットな情緒の部分をしっかりと体現した俳優じゃないかと思ってます。EDロール…実は自分、映画の感想文って書き溜めるほうで、この映画も1年ぐらい前に観て感想書いた作品だったからすっかり忘れちゃってる…。