生産財営業のプロセスと心技体−青草新吾の惺々著考 このページをアンテナに追加

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2018-07-07 212 戦後日本型から「先進国型の働き方」へ

トランプ政権による「対中制裁発動(知的財産侵害)2018.7.6付」は、戦後世界の秩序を米国第一(America First)で軌道修正をしていくための号砲のようです。 耐久消費財の自動車も、生産財の半導体や電子部品も、大きな構造変化が始まっています。戦後日本型組織に過剰適応した「個を押しつぶした働き方と人生」を払拭し、日本経済の生産性と個人・家族・共同体の幸福度を高めて、継往開来で次世代につないでいきたいものです。

   日経2018.7.5付で「農業はオランダに学べといわれるが、漁業はノルウェーに学ぶべきだ」と訴えていましたが、全く同感です。マーケティングと顧客接点を含めた働き方や仕事の組み立て方が参考になります。オランダは、九州ほどの国土で米国に次ぐ農産物輸出大国です。ノルウェーは、漁船一隻あたりの漁獲量日本の20倍漁業者一人当り生産量が8倍弱で「漁船に水揚げされた時点からオンラインで国内外の顧客と取引が始まるシステムを構築」できているそうです。日本は官僚主導の指導的行政で、官僚が規制に基づく管理の中心にいて、農業や漁業の方々を作業者で動員しているような側面があるのですが、民間の現場の方々の知恵を活かすような環境整備のためのサポート行政に回るべきではないでしょうか。

   今の働き方改革も実際は「上から目線の働かせ方改革」のようで、本来の「多様な一人一人の事情に応じた働き方で、一人一人の生産性を高めていく」という目的からはずれているような気がします。「クリエイティブな仕事ができる人材の層より分厚く」していくには、戦後日本型の「一括採用・年功序列終身雇用」を変えていく必要があります。・・・日米の人事制度に詳しい有賀誠氏(ミスミグループ本社)なるお方が「日本ホワイトカラー年功的色彩が強い。反対に工場や店舗のブルーワーカー能力主義。この点で日米は真逆。」しかも「現在の日本の人事制度では世界に通用するリーダー育てることが難しい。日本では、会社が社員のキャリアパスを決め、社員会社の指示によって働いているように感じます。・・・自分自身のキャリアプランすら作れない人間に、企業戦略など作れるわけがありません。米国では社員がキャリアパスを選択し、社員が自らキャリアを構築することが推奨されます。」と世界に通用するリーダーを育成していく上で米国のやり方がベターと述べておられましたが、このあたりは筆者/青草新吾も同じことを感じています。

   自動車の大変化を最近ではCASE( 接続 Connecting/ 自動運転 Autonomous / 共有貸借 Sharing / Electrification )と表現する方が増えていますが、所有よりもシェアリングでの利用が増えていけば、クルマの販売では、法人の購入比率が高まる一方で、台数はいずれピークアウトして減じていくことになります。・・・自動運転に向けては先進運転支援システム(ADAS)で、ミリ波レーダーや、レーザーレーダー(LIDAR)、高精細カメラ人口知能(AI)の開発が進んでいますが、電子回路基板では高周波対応基板の開発が活発です。フッ素樹脂LCP(液晶ポリマ)などの機能性樹脂が採用されています。村田製作所はLCPベースのメトロサークなる画期的な基板の量産を開始しています。自動車に先行してアップルのスマホで採用されたようです。・・・電動化では、電力変換のパワーモジュールインバータが日進月歩です。電子基板では放熱基板が使われます。日本電産は、モーターとギアボックスとインバータを含めたトラクションもたーシステムを開発中と発表しています。自動車の大変化では材料やデバイスも連動して大変化が進みます。・・・車載用リチウムイオン電池では、2011年創業のCATL( 寧徳時代新能源科技 ning2 de2 shi2 dai4 xin1 neng2 yuan2 ke1 ji4 )が17年の出荷量で首位に立ち、3位のBYD( 比亜迪 bi3 ya4 di2 )など中国勢で世界シェア6割だそうです。米テスラと組んで世界首位だったパナソニックは2位に後退したそうです。

   日本のお家芸だった二次電池でも、165[ 2008.9,6 高性能2次電池 ]の頃からは様変わりしてきています。TDKは、2005年に買収した香港ATLでリチウムイオン電池を製造し、iPhoneなどに供給しているようですが、これからは電動二輪車向けへの供給も開始する準備に入っているようです。またセラミック全固体電池の量産開始も発表済みです。高周波部品の王者ともいえる村田製作所も電池に参入しました。リチウムイオン電池を世界最初に市場投入したソニーは同事業を村田製作所に託し、2017.9に譲渡しました。村田もTDK同様に全固体電池を市場投入(2019予定)すると発表しています。村田は電子基板にも参入しました。上述のメトロサークは、12層多層樹脂基板でありながらFPC並の屈曲性を持つそうです。詳しくはウエブサイト「iPhoneX 分解して理解する」 *1で見れます。

日本はものづくりが強いといわれてきましたが環境激変で、必ずしもそうはいえなくなってきています。藤原敬之なるお方が「日本が強いのは目に見えるモノの連続的な変化。象徴が自動車やゲームなどの世界的競争力の強さ。一方で、苦手で弱いのが不連続な製品をゼロから作り出すこと。象徴的なのが90年代以降のグローバリゼーションの波に乗れなかったこと。」と述べておられましたが筆者/青草新吾も全くの同感です。・・・歴史的に蓄積されてきた強みと弱みですが、敗戦後のGHQ統治(例えばWGP War Guilt Information Program など)と日教組教育で増幅されてしまったのが「戦後日本型の悪平等や序列優先組織」です。

    東大初の女性教授で現名誉教授の中根千枝さん(今年87才だとか)が半世紀前の1967(昭和42)に上梓した名著「タテ社会の人間関係 単一社会の理論」*2は今でも輝きを放っています。日本社会には元々から、1.その人の属性よりも所属する場を重視する偏り。(例えば自己紹介では「営業です。今はこの会社でやってます。」ではなくて「○△一流会社に勤務してます」と答えてしまうなど。)・・・ 2.横の関係が希薄なままの閉鎖的なタテ社会での序列を偏重する嫌い。(西欧の階層社会のような、各階層の横のつながりはあまりない。)・・・ 3.能力差や個人差を認めたがらない悪平等信仰。(高度成長時代の年功序列や職能人事制度がこれを助長した。)・・・4.論理性と国際性の欠如。感情を優先した議論が許されてしまう土壌。・・・これら元々から日本社会にあって、戦後に助長されてしまった悪弊が「会社依存」や「戦後日本型組織のごちゃごちゃ責任分担や悪平等」です。筆者/青草新吾は、先々週の北大阪地震(2018.6)の「高槻市の塀倒壊・女児死亡」で重なって見えました。

    この高槻市・寿永(じゅえい)小学校のブロック塀については、2015.11に専門家が危険性を指摘していたそうです。ところが高槻市教育委員会の対応はといえば、無資格の素人職員に簡易点検をさせて「安全性に問題はない」と結論づけていたそうです。ここに戦後日本の増幅された「悪平等=専門家軽視」と、誰が責任者で、誰が専門家なのか、ぐちゃぐちゃなままで色んな人が色んな口を出す「戦後日本型組織ぐちゃぐちゃ責任分担」が見てとれます。最後は素人が専門家の意見を軽く無視したという点では、戦後日本型の働き方の典型事例ではないでしょうか。ウエブサイトから「戦後日本型の働き方を止めて、先進国型の働き方働き方改革しよう。日本サラリーマンの奴隷化は責任分担の明確化で改めよ」*3と、「戦後の働き方 いつからおかしくなった? 勝負できる人材になろう」*4をピックアップしてみました。参考になれば幸甚です。

    日本の生産性は先進国最低レベルです。工場での生産性は高いのに、オフィスの生産性が低いのです。何でこんなことになっているかといえば、工場の働き方をそのままオフィスに持ち込んでしまったからです。戦後日本型の働き方を改革して一人一人の生産性を高めていかねばなりません。「働き甲斐がある会社」の上位人気会社/半導体ウエハー精密切断と精密研磨で世界ナンバーワンのディスコ http://www.nikkei.com/video/5668429900001/ の関家一馬社長が日経ビジネス2018.6.11で「世の流れは、”内発的動機をエンジンにした自由主義型経営”の時代。命令と統制の統制経済型経営は時代遅れ。”命令と恫喝で人を動かそう”とする人は、官僚的なやり方で上がってきた人に多い。当社ではポジションの高い人はほぼやめました。」と述べておられましたがその通りだと感じ入ります。・・・「おおたとしまさ」さんといわれるお方が「多様な人々が同じビジョンに向かって少しずつ主体的に変わっていくことで、結果的に社会もじわじわと変わるそのような変化のモデルをイメージして、これからの時代においては、社会の変え方も変えなければいけないのかもしれない」と投稿しておられましたが、その通りだと思います。人生80年から100年時代と言われます。健康寿命、職業寿命、資産寿命を延ばしていく上でも「先進国型の働き方」へと皆で変えていくことで、幸福度が高い世の中を目指していきましょう。 

*1: 「iPhoneX 分解して理解する」http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1712/11/news037.html

*2: 「タテ社会の人間関係」 ISBN:9784061155053

*3: 「先進国型の働き方へ改めよう」 http://agora-web.jp/archives/1565803.html

*4: 「戦後日本型働き方を改めて、勝負できる人材になろう」 https://shuchi.php.co.jp/the21/detail/4990

2018-05-02 211 会社の役目は営利とイノベーション

会社は公正な稼ぎを従業員や社会に分配し、公正な競争を通してイノベーションを育む社会の公器であり制度です。勤労者の幸福度と民主主義を支えます。日本電産やユニクロのように「創業社長が身に着けている事業家としての製品と市場への深い知見に基づく決断とリーダーシップ」こそが発展のプラットフォームです。経営危機から復活したシャープも「台湾の鴻海(Hon Hai)が買収してくれてハッピーだった。事業家よりも管理者に偏った日本人経営者に弄(いじ)り回されるだけだったら今の復活はなかった」とみている方も少なからずおられるようです。

  日本電産の永守重信創業者は「日本の経営者には管理職が多い。」と感想を述べたことが多々あるようですが、経営者の仕事未来を切り開いていく継往開来です。そのための仕組づくり販路調達ソース獲得」です。トップは付加価値を生み続けるのが仕事です。付加価値を生み続けるトップの仕事を補佐する有能なお方が、トップに登り詰めて、やることなすことが管理職そのままでは、トップの機能不全ですからうまくありません。

  ビジネスマンが職業人生をより豊かにしていく上で、会社に自分の人生を委ねてしまわない創造的なプロフェッショナルな職業人として生きていく上では、前頁(210)で触れた日本社会や日本的組織の弱点を理解しておくのが役にたちます。曰く、堺屋太一*1の「日本的組織を死に至らせる三つの病」や、小城武彦氏の*2の「環境変化で衰退が始まる会社の共通点は、日本型組織が持つ衰退惹起サイクルへの歯止めを持たないままの、政治的な風土の会社」、野中郁次郎氏など*3の「(日本型組織の)失敗の本質は、学習能力や自己革新能力に乏しく合理的な判断よりも空気に支配される政治的な風土」等は、とても参考になります。イノベーションを貴ぶ価値観が日本社会に広まれば、これらの「日本型組織の弱点」も改善されやすくなると期待します。・・・ イノベーションは、経済発展の原動力となり、国民経済を豊かにしていく主要なエンジンです。

  日本的なものづくりとイノベーションについて「日本人にはディズニーランドは作れない。だが米国人には旭山動物園は作れない。天才経営者の発想を具現化する力は米国が上だが、旭山動物園は個々の動物をいかに生き生きと見せるかという現場の実践知の積み重ねで成功した。日本の製造業に必要なのは日本型ものづくりのアップグレード。」と遠藤功なる経営コンサルタントのお方がNewsweek 2017.12.19に寄稿しておられましたが、大賛成です。・・・・米国でMRIコイル製造QED社起業した藤田浩之氏は、大統領の一般教書演説賓客として招かれた初めての日本人イノベーターですが「ベンチャー在籍時に驚いたことは、同じ製品を販売しているのに、東芝メディカル向けだけは数年後には品質がダントツに良くなった。これは東芝メディカルからベンチャーの品質部門や技術部門に毎週フォローをかけて改善していったからで、このような頻度で製品の品質を追求するのは日本メーカーだけ。一方で、独連邦や米合衆国のメーカーが優れているのは”従来の固定観念に縛られないThink outside the box ”という自由で柔軟な考え方がより根付いていること。日本企業はリスクを取って失敗したらもう昇進できないような空気を取り除かなければいけない。早く失敗し、そこから学び、教訓をみんなと共有することがイノベーションを育む環境を作っていく。」とWedge 2018.1月号に寄稿しておられました。

  産業集積レベルでのイノベーションということでは、シリコンバレーの後を追って深センがトップランナーに飛び出てきました。ここに至るまでの20数年の流れを簡単に振り返ってみます。新しいビジネスモデルとしてのEMS(電子機器受託製造 Electronics manufacturing Service)の登場から始まるプロセスイノベーションの歴史でもあります。・・・・シリコンバレーと深センで起こったものづくりのイノベーションをみると、多くの日本企業の競争力が劣後していった理由がよく分ります。「新しい価値を創造するプロセス」が欠落するか弱かったということです。日本の会社も個人も「新しい価値を創造するプロセス」を強化していく活動を強化する必要があります。それでは振り返ってみましょう。

  EMSは、日系人のニシムラさんなるお方が、IBMの製造部門からソレクトロン(Solectron)なる会社に移り、1990年代にIBMからの受託製造を開始したことから始まります。ここで「構築した仕組みとプロセス」が新しいビジネスモデルとして拡散し、台湾で発展し、設計も行うODM(Original Design Manufacturing)が生まれ、大陸に進出したことで更に発展しました。・・・携帯電話の時代に、台湾の半導体メーカーのメディアテックが推奨設計書とソフトをつけてのレファレンス付販売を開始したことで、深センでは、山賊会社と呼ばれた政府の管轄から逃れた業者が作る携帯電話の電子基板の設計を担うIDH(設計専門会社 Independent Design House )が数多く生まれました。筆者/青草新吾が89[ 2007.5.7 テレビで中国]で、華南の広州や深センに出張した際にあれこれ思索に触れていた頃のことです。・・・・携帯に続くスマホの時代は米クアルコムSoC(System on Chip 一個の半導体チップに殆どあるいはすべての機能を実装してしまった製品)が中心になったことから、物凄い淘汰が起こり、生き残ったパワフルなIDHが、販売台数を増やし続けるスマホメーカーとの地場産業としての好循環を形成するに至った、というものです。・・・Yahooへの寄稿で高口康太なるお方(BUSINESS INSIDER 2018.4.30)によると「ZTE(中興通訊 Zhong Xing Telecommunication Equipment )からのスピンアウト組みが台頭」したそうです。・・・・シリコンバレーや深センでは、産業のプロセスイノベーションで、「発明や商品化」と「量産のモノづくり」が「完全に分離」され、しかもスタートアップ起業インフラでも、従来からのベンチャーキャピタル(Venture Capital)やインキュベータ(起業支援 incubator)に加えて、アクセラレータ(成長加速短期支援会社 Accelarator)なる役目を引き受ける機能が充実したようです。今や、「ブランド力販売手法・サービス競争力がある」とみなされたスタートアップの会社が、物凄いスピードで起業から事業化を進めてしまう仕組みとプロセスができているそうです。Wedge 2018.2ではハードウエアスタートアップの会社が、製品の製造に漕ぎつけるまでの量産化プロセスを支援して加速させるアクセラレータと呼ばれる事業者や、長期間関わりプロダクトマーケットフィットを支援するインキュベータを紹介していました。「新しい価値を生む才能あふれた人材とそのチーム」を前面に押し出して経済全体を底上げしていく仕組みが強化される一方です。・・・・NEWSWEEK 2017.12.19は「日本を置き去りにする(米中の)作らない製造業」という特集を組んでいましたが、今や、世界のスマホ市場のトップ10は、アップル韓国2社(サムスン・LG電子)を除く7社が中国勢になりました。香港に隣接する深センを中心に発展した珠江デルタは、1%未満の領土、5%未満の人口で、GDPの1割以上、輸出の25%を生み出すまでになっています。・・・・中国共産党は「Made in China 2025」に向かって「Designed in California からDesigned in China」の標榜を始めました。米国シリコンバレーが開発する商品の製造部門を深セン・華南が分業で引き受けることで大きく経済発展した中国ですが、その中国が今度は、Designed in Chinaで商品開発と設計もできるようになろうとしています。

  ソフトブレーンを起業した宋文洲氏が「日本政府の働き方改革・法案失礼千万だ」とメルマガで批判していました。曰く「先日深センの飲食業で社員が楽になって顧客が満足する風景を見ました。 二次元バーコードを携帯でスキャンして写真付きのメニューから食事を注文し、 食事後にそのまま携帯で支払うのです。注文取りなし、レジなしです。 社員がやることはクレーム処理や老人や子供の手伝いです。・・・今の中国役所も銀行も土日営業。勤労者は仕事時間外の土日行政サービス金融サービスを受けるのが当たり前の社会になっている。・・・規制緩和を通じて金融改革をした上、経営者が 技術投資と経営改革を敢行しない限り、上述のようなサービスは出現しません。・・・与党と経営者団体がやるべきは「社員が働き方を決める権利を尊重すること。自由な労働市場に基づきより良いサービス規制緩和経営改革を通じて 実現すること」ではないのか?と政治家や経営者が自分がまずやるべきことをやるべきでないか、上から目線で押しつけがましいのではないか?と批判していました。もっともです。・・・・日本の勤労者7割が非上場企業で働いています。ですから非上場企業の改革も必要です。

  会社私物化の極端な例として、韓進グループと大韓航空創業家世襲ファミリー経営者として会社を私物化する様が報道されています。世襲3代目の事件ですが、2014年に「激高して離陸する飛行機をリターンさせた長女のナッツ姫」が、今年2018年には、先週あたりから「激高して取引先の男に水をかけた次女の水かけ姫」の報道を時々見聞きします。凶暴な面が目立つのでメディアも報道しやすいのでしょうが・・・。凶暴さを除けば、日本でも、同様のことが、さすがに上場会社では少ないようですが、非上場会社では少なからずみられるようです。・・・・日本の場合には、非上場会社については会社法の整備の遅れや、税制の歪みが大きいからか、私物化事例も多いようです。

>http://www.eurekapu.com/difference-shop-company 「個人商店」と「株式会社」は、なにが違い、会計処理がどう変わるのか? > 個人商店の資産はすべて商店主のものです。株式会社の資産はすべて法人である会社のものです。会社は、株主が持株比率に応じて支配権を持ちます。よく人材は会社の財産といいますが誤りです。人材は奴隷ではありませんから、会社の財産などということはあり得ません。法的人格においては「法人と対等な個人」です。

  企業とは「営利を目的とする経済主体」のことですから個人商店と会社の両方を含みます。企業の内訳で会社とは「営利を目的とする社団法人」のことです。日本の場合、株式会社持分会社(合名会社など)があります。株式会社の場合には、株式の持株比率に応じた支配権を持ちます。

  会社を私物のままにしておきたければ、そのまま個人企業の個人商店でやればよいだけのことです。個人商店の資産はすべて商店主のものなのですから。・・・・個人事業からあえて株式会社に移行したということは、法人として「社会の公器になることを約束して様々な特典を手にした」ということです。社会の公器である株式会社にしたからには社会の公器としてのルールに従うべきです。・・・株式会社の支配権は持株比率に応じてですから、他の株主への配慮も必要です。大きな会社になるほど従業員の貢献度も高くなりますから、従業員への配慮も必要です。

  日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの理事長で弁護士の牛島信氏*4が「会社とは、雇用を維持・発展させるための優れた仕組み。会社法の不備や、少数株主や従業員を犠牲にしてのやりたい放題(私物化)は許されない。だからコーポレートガバナンスに取り組む。」と述べていますが当然です。・・・・「我が国の生産性は、殆どの分野で米国の半分以下(日経2018.4.20)」だそうですが、日本の勤労者の7割が働く非上場企業より創造的よりイノベーティブな職場にして会社の生産性従業員の幸福度を高めていく方向での活動を活性化していくべしです。・・・・与えられた枠の中課題をつつがなくこなすだけの「会社に寄生するような生き方」は廃れていく一方です。板前のように身に付けた能力やスキルの付加価値世を渡ることを迫られる時代です。日本人が世界で、あるいは世界に結びついた事業を持つ会社を舞台にして働くためには「自分の頭で考え判断できるように働き方や教育変えていく」ことが必要です。

 世の中の流れは基本は分権化の流れです。日本は明治維新以降の中央集権化の歪があちこちに出ています。・・・中央集権はリスクが高すぎます。江戸時代は、各々の法律と徴税権・軍事権を持った3百諸藩独立行政国家として殖産治水を競い、巨大な徳川将軍家の徳川幕府がリードする連合国家でしたが、決して独裁ではなく「地方の小大名を幕閣にして合議制で決定する民主的な運営」でした。・・・世界の流れも分権化なのですが、EUの例をみても、広域経済圏などでは統合化や中央集権化への反発が、米合衆国でも同様の理由で「広域経済圏の集権的な取り決めよりも米国第一の個別交渉だ」と半分くらいの米国民がトランプ大統領を支持する理由になっています。

  繰り返しになりますが、これからは板前のように身に付けた能力やスキルの付加価値で世を渡ることを迫られる時代です。与えられた枠の中で課題をつつがなくこなすだけの会社に寄生するような生き方は廃れていく一方です。子供のころから自分で考え抜く習慣を身に着けていくことで、世の中も会社もよりイノベーティブになり、国も国民もある程度までの豊かさを誰もが享受し、子供の貧困問題などという切ない事態が減り、民主主義もよりベターな状態になっていきます。一人一人の微力を尽くしましょう。

*1ISBN:9784569539416「組織の盛衰」

*2ISBN:9784492533901「衰退の法則」

*3ISBN:9784122018334「失敗の本質」

*4ISBN:9784344032149「少数株主」

2018-04-13 210 会社員もフリーランスも稼ぐ力で乗り切る大変化の時代

バブル崩壊以降、自動車産業が大きく伸びて日本経済を支えてくれました。その自動車産業もピークアウトに向かっています。環境規制への対応と電動化(Electrification)・インターネット常時接続化(Connected)・自動運転化(Autonomous)の流れで「非連続的イノベーション」が加速します。大企業の正社員であることが安定を意味しない、個人が稼ぐ力をつけて家族と地域、世の中を盛り上げていく時代への大変化です。

今の日本の足元の景気の良さも、外需の自動車産業への依存が高いという側面があります。電子デバイス産業新聞2018.4.5付が「国際ロボット連盟(IFR)が産業ロボットの需要が強い、16年対比で17年は118%の347千台、20年は177%の521千台と発表している。中国で19年から開始されるNEV規制EVへの補助で、中国では工場建設設備調達が活発。日本の産業ロボット各社では、減速機や直動部品のロボットメーカーどうしの取り合いが激しくなっている。」と伝えていました。

また世界のエコカー販売動向について、電子デバイス新聞2018.3.29付は「IHSマークイットの予測では、20年の約13百万台が29年に約53百万台。20年以降は、トヨタプリウスのようなフルHVよりも、より簡素で低価格のスズキハスラーのようなマイルドHV(エンジン中心でモーターがアシスト)が急増してエコカーの過半を超える。・・・EVはフル充電に10時間もかかり、もし30年に日本の新車販売の半分がEVになると原発3基分2.7ギガワット(2.7百万KW)分の電力が新規に要るから簡単ではない。・・・中国はそれでもエコカーはEV優先でいく。20年までにエコカー1台に充電設備1台を普及させ、太陽光などの再生可能エネルギーと原子力発電を大幅に増やしていく政策をとっている。世界の自動車市場の3分の1を占める中国のインパクトは大きい。」と、エコカーは欧米日の主流がマイルドHV、中国の主流がEVというトレンドを報道していました。・・・今後の自動車需要の拡大地域であるアフリカを含む新興国では、既存のガソリン車やディーゼル車がさらに進化したモデルの販売拡大が続くでしょうから、グローバルでは自動車需要が増え続け、既存技術が一挙に消滅するわけではないでしょうが、米欧日と中国で起こる非連続イノベーションがもたらす大変化は避けられません。

本日2018.4.13の朝刊で、トヨタ系の日野自動車とトヨタとつばぜり合いの独VW商用車部門での提携が報道されています。「自動運転などでは商用車の方が変化が速い。先頭を走るダイムラーの後は中国勢がひしめく。トヨタグループの中だけでは対応できない。トヨタと独VWは乗車車ではライバルだが、商用車だとこれまた別の話」ということのようです。

米GMの幹部が「自動車産業は、過去50年で経験した変化を、これからの5年くらいで経験していくことになる」と覚悟を示していたそうですが、産業社会で最大規模の産業である自動車産業の変化は社会変動へのインパクトも大きいでしょう。・・・日本の組織の多くが持続的(sustainable)な連続的イノベーションで強みを発揮してGDP世界3位の経済大国を作ってきました。その典型事例が自動車産業です。その自動車産業がこれから立ち向かうのはビッグバン的(disruptive)な非連続的イノベーションです。内燃機関がモーターへ、独立空間のキャビンがインターネットに常時接続するコネクテッドカーへ、所有から利用のシェアリング・・等々。

日本社会は、底から這いあがる力連続的イノベーションは世界有数ですが、大変化に対応する力非連続的イノベーションは必ずしも強くありません。どちらかというと日本は弱い。日本社会が弱い分野では、社会や組織に頼りたくとも頼れませんから、個人が力量と付加価値を高めていく必要があります。・・・個人が価値を高めていこうとすれば、会社で働く場合であれ、フリーランスで会社を取引先として働く場合であれ、環境変化に弱い会社と強い会社、環境変化に負けて衰退する会社と、環境変化を乗り越えて発展が続く会社、の違いを知っておくのがベターです。

産業再生機構でカネボウ丸善の社長を務め、今は都市部から地方に経営人材を送り込むのが仕事の日本人材機構の社長の小城武彦(おぎたけひこ)氏は、ご自身の調査研究を上梓*1されました。内容は経験的に言われてきたこと膨大な調査データで立証したことに意義があります。・・・環境変化に適応できずに衰退が始まる会社とは、日本型組織の弱点(衰退惹起サイクル=サイレントキラー)に歯止めがかからない会社です。・・・そのまま引用しますと「破綻企業における経営幹部の最大の特徴は、社内政治力がとても強いことです。役職・立場・人間関係をてこに仕事をします。そこにロジックはありません、経営リテラシー実務能力低いのも特徴です。議論の大半が経験談と持論であり、ロジック・理論・データは存在しません。事実に基づく戦略論が苦手で勉強してません、だからスタッフへの丸投げが多いです。彼らの指示に特徴があって手続きに偏重します。調整しろ、頑張れ、とは言いますが、どうすればいいかは言えません、数字も後講釈で「営業利益がなぜこれだけ」とは言いますがどうしたらいいかは言えません。」ということです。環境変化で衰退が始まる会社とは、「極めて政治的な企業風土」で「社員の話題も人事の噂など内向きなことが中心だった」というのは頷(うなづ)けます。・・・反対に環境変化を乗り越えて発展が続く会社とは、サイレントキラーの日本型組織の弱点に歯止めがかかっている会社です。そのまま引用しますと「優良企業も意外と破綻企業と似ていることに驚きましたが、決定的な差異が見つかりました。”事実をベースにした議論尊重する規範の存在”と”人事において公正な登用プロセスが機能していること”の二点です。」ということです。事実に基づく判断、知的で公正な仕事の進め方が規範として確立されているような会社風土は、歴代のリーダーの真摯な姿勢によって醸成されていくものです。・・・ミスミグループの元会長の三枝匡(さえぐさただし)氏*2は「熱き心と論理性こそがリーダーの条件」といい、一方では多くの日本企業の宿痾(しゅくあ、持病)は「日本企業にはびこる政治性」と指摘をしてきています。・・・・日本的組織の弱点については、堺屋太一氏の著書の組織の盛衰で訴えた「日本的組織死に至らせる三つの病](環境への過剰適応・成功体験埋没・機能組織の共同体化))*3などがとても参考になりました。野中郁次郎氏などの共著「失敗の本質」*4も含め、日本型組織の弱点を知っておくことは、経営や働き方改革の上でも役に立ちます。

日本社会は未だに敗戦後の高度成長時代の右肩上がりの時代に定着した「均一な効率性に偏った社会」です。画一的で外れ者を排除する社会ですから独創的で図抜けたエリートが育ちにくい社会です。学校教育を変えていく必要があります。・・・他の先進国に比べて日本は産業の新陳代謝が緩やかです。規制やしがらみが多いからです。政治と行政イノベーションを阻害しているような面があります。今の国会をみていると、政局の政争ばかりで、日本が世界の変化のスピードについていけてない状態は残念です。高齢貧困者や、貧困層の子供が増えている状態に危機感を覚えないのでしょうか。残念ながら日本社会の教育・行政・会社組織の多くは頼りになりません。日本社会は時代についていけてない面が多いのですが、時代の流れ世の中の変化どのように変わってきたのか、そしてどのように変わっていくのかを知っておく必要があります。

明治以降のキャッチアップアップ型社会と右肩上がりの社会が終わってパラダイムシフトして世の中は、成熟社会とか脱工業化社会と言われます。筆者/青草新吾は堺屋太一氏の知価社会という表現がイメージし易いと感じてます。堺屋太一氏が著書の知価革命で訴えた規格型大量生産社会から知価社会*5への移行のイメージはとても参考になりました。

1985年のプラザ合意、89年のベルリンの壁崩壊、その後のバブル崩壊と20年デフレを経てもなお、明治維新以降の欧米に追い付き追い越せのキャッチアップ型・規格大量生産型の制度が、あまりにも深く日本社会の各分野に沁(し)み込んでしまっており、一番時代遅れなのが、政治・教育・行政などの世界ではないでしょうか。

メディア報道や国会があまりにも偏っているので、国民主権の立場からも「働いて納税する国民である私どもは、事実に基づいてバランスよく公平に判断することが必要」です。・・・ギリシャ並みの公務員天国と言われてきた大阪市ですが、この2018.4.1付で大阪メトロが誕生しました。市営地下鉄が民営化されてました。関市長や大阪維新の功績です。・・・加計学園は、52年ぶりの獣医学部新設です。地元の愛媛県は農業畜産県です。文部省官僚や既設大学の利権を突き破って新設されたことに意義があります。これは安倍政権の功績です。加計学園が競争相手よりも利益誘導された事実があるとすれば問題ですが、競争相手もなかったのならば何が問題なのでしょうか? TPP11(環太平洋経済連携協定)を放置してまで優先審議するようなこと?なのでしょうか。どちらが国民にとって重要なのでしょうか。自国民が北朝鮮に拉致されたままでよいのでしょうか。立憲民主党社会民主党日本を規制だらけで貧しくするようなことばかり言ってないで、もっと国民生活を豊かにするような日本国の付加価値を高めていくような仕事をすべきではないでしょうか。

立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏は、生保勤務時代には、トップと考えが合わず子会社への異動を発令されて出向。58才でライフネット生命保険起業し、東証マザーズで上場と売上1百億円の会社を実現。社長退任で「若い世代を前面に立て、後陣から支える役割に回る」と挨拶し会長に就任、さらに2017.11に立命館アジア太平洋大の次期学長に選出されて、最後はライフネット生命の全役職を退任されたお方です。ご本人は「「ガバナンスの点からは最高顧問は良くないし、社長と会長を10年やって、10年ってきれいなのでライフネットの全役職からの退任を決めた。」と述べておられます。・・・その出口治明氏は日経新聞2018.3.5付で”自分が働く会社への信頼度”に関し「米エデルマン社の調査では、日本の勤労者の自分が働く会社への信頼度は主要28カ国中では韓国と並んで最低。理由は企業が高度成長の成功体験から脱却できず、時代の変化に対応できていない肌感覚で知っているからではないか。一方で、社会や組織の未来よりも、自分の立場を守り、逃げ切ることを重視する。日本を覆う閉塞感の正体は、様々な立場で日々繰り返される不作為の累積であるような気がしてならない。」として、日本人勤労者への提言として「世界に目を向け、次世代のためにできることを考えよう。不作為をやめ、今の職場で、家庭で、地域で、できることから行動してみよう。」と寄稿しておられました。まったく同感です。

*1ISBN:9784492533901「衰退の法則」

*2ISBN:9784532191450「戦略プロフェッショナル」

*3ISBN:9784569539416)「組織の盛衰」

*4ISBN:9784122018334 「失敗の本質」 

*5ISBN:9784770014429「知価革命」