人生ブレまくり
2009-10-02
■[life]うちの子供が医療ミスで殺されそうになった(4)
夕刻になった。
家内と落ち合って、子供に副作用を生じさせた件の耳鼻科を尋ねる。
事前に家内とは打ち合わせはしてあり、質問の切り出し方もある程度考えていた。
相手の善意をなんら期待できない最悪のシナリオも想定していた。主役は家内とも決めていた。
ICレコーダの電源をいれて持ち物にしのばせ、なおかつ通常の診察に来たような顔をして受付・待合で順番をまつ。
しばらくして名前が呼ばれ、親子3人で診察室に行く。いつもどおりに診察を開始しようとする医師を制止。
「今日は診察に来たのではありません。もう別な所で受けてきましたから」
佳境にいきなり入る。
医師は手を止め、椅子を勧めた。事前に出来事は伝えている。何を言いに来たのかはおおよそ察しは着いているだろうけれど。
最初医師の口から出てきた言葉はある程度予想していた。
「原因はわかっています。コールタイジンの血管収縮成分です。これでこの副作用を経験したのは二例目ですが・・・」
しかしその後に続くのは全く意外な言葉だった。
「最初の例は私の子供でした。」
一瞬言葉を失った。
しかし予定通りの質問をやめるつもりはない。
家内「あなたはこの子の年齢を覚えていますか」
医師「カルテをみながら診断しているので、個別には覚えてはいません」
家内「あなたは私がこの子に点鼻薬をどうやって適用しているかご存知ですか」
医師「それはこう、頭を押さえて上から2〜3滴ポタポタと」
家内「こんな小さい子供で、しかも嫌がるものをどうやっておとなしく2〜3滴ポタポタなんてできると思いますか」
医師「だからご主人に押さえてもらって・・・」
家内「旦那は仕事で帰宅は毎度遅いのですよ。早くてもこの子の眠る時間までに帰れない。だから必然的に私が点鼻することになります。お話したはずです」
医師「・・・・」
家内「それを相談したときに先生なんと仰いました?『薄めてあるからジュッと沢山適用しても大丈夫』ですよ。お忘れですか?そしてそれを守ったらこういうことになりました」
処方された薬剤の添付文書を出す。禁忌と適用上の注意、適用方法について見せる。
私「こういう重大な副作用を隠しているのですか?乳幼児には処方するな、あるいは安全性が確立されていないと書かれていますよね」
医師「そんなことを言い始めたら子どもに出せる薬は無くなってしまう・・・」
家内「かといってなぜ安全性を保障できない薬をしかもこういう幼い子に、何の注意も情報も与えずに出すんですか?まして、あなた自分の子供で経験していたのでしょう?なぜそんな無配慮にこんな薬を出すんですか?」
私「添付文書を見ると、点鼻しろとは書いてないです。噴霧するように適用法に書いてあります。ぜんぜん違うではないですか」
医師はそれから自分の治療法について語り始めた。
この治療法を始めて35年になる。昔、嗅覚異常の治療を研究していたときに、これらの薬剤を噴霧ではなく点鼻すれば短期間で効果が現れることを発見した。単なる風邪だけではなくアレルギー性の炎症にも効果があった。それから自分で研究し、実践してきた。かれこれ延べ10万人はこの治療法でやってきている。
鼻腔に噴霧する場合はもっと薬剤を濃くする。しかし、これは良くないとフランスの医学の教科書に書かれてあり、自分も院内処方以外ではやらない。それとて自分の医院では薄めてある。
西洋薬を使わず、漢方薬の処方を併用し、この点鼻治療を行うことでほとんどの患者は短期間で直る。
よその耳鼻科では院外処方は飲み薬だけのところが多いのも知っている。しかし、その治療では治らない。結局ずっと耳鼻科に通院しなければならなくなる。私は患者が自分で治療ができ、病院から早く縁が切れるように考えてこの治療法を続けてきた。
また飲み薬であれたとえばムコダインはStevens-Johnson症候群などを引き起こすリスクがある。飲み薬に切り替えたところでリスクはなくならない。リスクのある薬を長期間のみ続けてしかも直らないよりは、私の治療のほうが良いと考えていた・・・・。
私は眩暈がするような思いだった。この耳鼻科以外に、今日別な耳鼻科で診察していた。他の耳鼻科も中耳炎のかかりはじめに行っている。休日診療で遠方の別な耳鼻科にも行っている。処方は大体同じだった。だけど、それらの処方を行った医師のすべてはそれでは治らないことを知っていて薬を出しているのだ、ということになる。
私「ではなぜ医者はどこもそうした薬のリスクについてちゃんと患者に説明しないのですか。添付文書に書かれている重大な注意をなぜ患者に伝えないのですか」
医師「そんなことを説明したら誰も怖がって薬を使おうと思わなくなる・・・」
医師は困った顔をした。そしてまた、自分の治療法の説明を繰り返した。もう説明の手ごまがないらしい。
家内「あなたは自分の治療法の利点ばかり説明している。だけど、確実に私達の子供はこの副作用で酷い目にあったのですよ。他に同じ症状が出た人はないのですか?」
医師「子供の親から『最近良く眠るようになりました』といわれると、その後薬の濃度を薄めます」
家内「薬の副作用について知らされなかったら、親は単に『よく寝る』としか理解できないこともあるでしょ?寝る前に適用して、夜中に眠っている間に子供が副作用に襲われたら誰も気がつきませんよ?その間に取り返しのつかないことが起こったらどうするんですか?だいたい、『よく眠る』と仰った方のお子さんも、実際にはこの副作用を発現していたかも知れないじゃないですか!あなたは子供と親の生活を知らなさ過ぎる」
この調子でずっとやり取りが続いた。1時間は話し込んでいただろう。ようやく終盤になって、医師はこう言った。
今まで、こういう例に出会わなかったからといって、私も慢心していたんでしょうな・・・・
いや、そうじゃないだろう・・・と私は思った。
私「なぜ私達患者に、医者も薬剤師もこういった副作用を説明しないのですか?どんな治療にだってリスクは伴います。医師だけがそのリスクを引き受けなくてはいけないということはないし、患者のことを慮ったつもりで、結局は誰も責任が取れない致命的な状況を招く危険性がありますよ。なぜあなたは患者とコミュニケーションをとらないのですか」
「あなた」「私たち」で語っていたが、私の頭の中ではその構図はずっと広がっていた。医師全般と患者の間の溝について考え始めていた。
どちらにも問題があるのではないのか。
医者と患者の狭間で被害を被るのは、この構図だと病人や怪我人や乳幼児といった弱者だ。
そして取り返しのつかない医療事故で命を落としたところで「救済」は常に後手であり、何の役にすら立たないこともある。親しい人・愛する人の喪失は、そうした後手の救済ではどうしようもない。
事前にリスクを回避し、あるいは軽減するための対策を医師と患者が共同で採る以外に方法はないではないか。
私は子供を抱いたまま医師とこうした議論をしながら、診察室の傍らに張られている障害者施設から発行されているカレンダーが気になっていた。このカレンダーはおそらく障害者施設に親族を預けている人を中心に頒布されるものだろう。この医師の「子ども」が何らかの原因で重い障害を背負っているのではないかとすら思ってしまった。しかし、それは憶測に過ぎない。
子供は口調の激しいやり取りの間に泣いてしまった。中待合に出て子供をあやしながら、そのカレンダーに書かれている言葉を読んだ。
私達は目に見えるものより、目に見えないものを大切にします。
なぜなら、目に見えるものはいつかは消え去りますが、目に見えないものはいつまでも続くからです。
私達は目に見える病気とそこからの回復という命題の前に、目に見えずずっと続く何かを見てしまったような気がする。
やがて医師は何度も同じ話しか繰り返さなくなり、私達も疲弊し、子供も泣きつかれてしまった。
診察室に二人立っていた看護士も、いつの間にか一人になっていた。受付で白衣を着て事務を片付けていた初老の女性はこの医師の夫人だろうか。この場の周辺のいろんなことが気になりはじめた。そろそろ潮時なのだろう。
「今日はこの辺で一旦引き上げます。また来るかもしれません」
そういい残して私達は診察室を出た。
勤め帰りらしい男性の患者が一人だけ、待合に居た。受付は彼の名を呼び、診察室の医師は私達と入れ替わりに招き入れる。彼は1時間以上待っていたのかもしれない。
受付の初老の女性は立ち去る私達の背中に何か言葉を投げかけたような気がする。でも私の耳には入らなかった。
私達は無言で耳鼻科を出た。
- 27 http://search.yahoo.co.jp/search?p=コールタイジン+副作用+子供&aq=-1&ei=UTF-8&pstart=1&fr=top_ga1_sa&b=21
- 24 http://ezsch.ezweb.ne.jp/search/?sr=0002&query=コールタイジン副作用
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- 8 http://search.yahoo.co.jp/search?p=医療ミスで子供を失った&search.x=1&fr=top_ga1_sa&tid=top_ga1_sa&ei=UTF-8&aq=0&oq=
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