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をちこち犬の吠ゆるころ - 松葉佐優 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-07-06

[]THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 - マルコム・グラッドウェル

レビュープラス様から発売前のゲラ("はじめに" 〜 第3章)を頂きました。ありがとうございます。

マルコム・グラッドウェル著『マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想” (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選)』(訳者は今や飛ぶ鳥を落とす勢いの勝間和代氏)。

本書はアメリカの『The New Yorker』誌に掲載された記事を1冊の本にまとめたもの。

読ませて頂いたゲラの中で一番おもしろかったのは、第3章「ブローイング・アップ(吹っ飛び)の経済学」だった。

これは、『ブラックスワン』で有名なナシーム・タレブ氏と、ファンドマネージャーヴィクター・ニーダーホッファー氏の2人を中心に据えた記事だ。今ほどタレブ氏が有名になる前に取材されているのでそのぶん余計に興味をそそる。

まず、この章を味わうためにオプション取引の理解が前提となる。オプションとは、「一定の期間内、あるいは期日に、あらかじめ定めた価格で債券株式を売買する権利」を指す。過去の値動きを元に「リスクを定量化」することで価格設定がなされている(「GM株の過去の値動きを見ることによって、同社の株がこの三ヵ月間に四五ドルに下落する具体的な可能性が見極められ、オプションを一ドルで売買するのが適切な投資かどうかがわかる」)。そして、そのリスク計算は正規分布(ベル型曲線)をモデルにしている。ところが、市場での実際の値動きはモデルとは異なる「ファットテール」になる。つまり、正規分布における「平均値」からかなり乖離した値の出現が、決して奇蹟ではないのだ。

このことを理解した上でこの章を読むと次のことがわかる。


結果は推して知るべしで、タレブ氏は、待ち望んでいる値の出現までは負け続けるが、最後には大勝ちする。かたやニーダーホッファー氏は、日々順調に勝ち続けるが、「平均値からかなり乖離した値の出現」により破産に追い込まれる。

つまりこういうことだ。ある日、証券価額が暴落する。このとき、オプションの買い手(タレブ氏)は、オプションの権利行使をすることで、暴落の安い証券を暴落の高い価額で売ることができる。反対に、オプションの売り手(ニーダーホッファー氏)は、暴落の安い証券を暴落の高い価額で買い取らなくてはならない(この「行使レートが市場レートよりも不利な状態」のオプションを「アウト・オブ・ザ・マネー」オプションと呼ぶ)。

要するに「アウト・オブ・ザ・マネー」オプションによりタレブ氏が生き残り、ニーダーホッファー氏が破産する。そして、いつ来るとも知れないその日までタレブ氏が負け続ける理由は、権利行使されずに終わるオプションを買い続けるからだ。

この2人を対比させることで今の経済の裏側が驚くほど鮮明に浮き彫りになる。ここにグラッドウェル氏の凄さがあると感じた。



目次

はじめに
第1章 TVショッピングの王様

アメリカのキッチンを征服した男

第2章 ケチャップの謎

マスタードは十種類以上、なのにケチャップは、なぜ同じ味?

第3章 ブローイング・アップ(吹っ飛び)の経済学

ナシーム・タレブが壊滅的損失の不可避性(ブラックスワン)を投資戦略に転換させるまで

第4章 本当の髪の色

ヘアカラーと戦後アメリカの隠れた歴史

第5章 ジョン・ロックの誤解

避妊薬(ピル)の開発者が女性の健康について知らなかったこと

第6章 犬は何を見たのか?

カリスマ調教師 シーザーミランの“神業”

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