ニーチェ名言
女優の北川景子が、自身のブログで、ニーチェの名言に言及していたので、原文を確認してみた。
人間は行動を約束することはできるが、感情は約束できない。
思うに、感情は気まぐれだからである。
Man kann Handlungen versprechen, aber keine Empfindungen; denn diese sind unwillkürlich.
この文章は、1878年に刊行された『人間的、あまりに人間的』(Menschliches, Allzumenschliches)の 58章にある。
てっきり、彼女は『超訳 ニーチェの言葉』をお読みなのかと思ったら、ちょっと違ったようだ。念のため、『超訳』からも引用する。
ずっと愛せるか行為は約束できるものだ。しかし、感覚は約束できない。なぜなら、感覚は意思の力では動かないものだからだ。
よって、永遠に愛するということは約束できないように見える。しかし、感覚だけではない。愛の本質は、愛するという行為そのものであるからだ。
小生にとって『超訳』の訳文はどこかしっくりとこない。白取氏は "Empfindungen" に「感覚」の訳をあてており、この点がひっかかるのだ。"Empfindungen" の英訳は一般的に "feeling" である。日本語に訳すと「気持ち」が適当ではないだろうか。 「Empfindungen を versprechen する」とは、つまり、誰かに対する「気持ち」を持ち続けることの約束だ、と解釈できる。ところが、それはできない相談だ、とニーチェは言うのだ。つまり、恋人なり配偶者なりに対する愛を約束する場合、それは内面的な「気持ち」の問題ではなく、外に表れる「行為」の問題だ、ということらしいのだ。
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