誕生日に

ここ数日はずっと30度そこそこで、猛暑日でないことは確かだ。熱中症に備えて2台つけた仮設休憩所のクーラーも効きすぎて寒い。最強にしてある冷蔵庫のドリンクも凍り始めた。台風が近づく中、昨晩から昼夜連続勤務である。たいへんだ。僕が作業するわけじゃないけど。
▼ジョンジョロジョロジョロ…15年間毎朝耳にしてきた我が家の朝の音である。下の子の朝一番のオシッコは、異様に長く音が大きい。小さい頃からそうで、今も全く変わらない。これは彼が夜トイレに行くのが恐いので、オシッコをガマンして朝一気に出すうちに膀胱が大きくなったことと、こぼしてはいけないという強迫観念から、常に真ん中を狙ってすることからきていると思う。
▼下の子は比較的元気のいい子なのに、朝は全く口をきかない。黙って朝からアイスクリームを食べている。いわゆるオメザである。本能的に甘いものを食べて血糖値をあげようとしている。目はあいているが身体はまだ起きていないのだ。それから姿が見えなくなったと思うと、カラカラカラといいう音が聴こえてくる。大便だ。妻はこの音に回転車を回すコマネズミを思い出すらしい。いずれにしろ小動物のようなものだ。
▼上の子は、している時間が短すぎて大小の区別がつかないどころか、そもそも彼がトイレに入っているところを見たことがない。当然トイレで新聞を読んだりゲームをする習慣もない。ついでに僕と下の子は風呂場でオシッコをするけど上の子はしない。こういうことは教えてどうこうというものではない。生まれつきである。
▼上の方が口ぎれいで下の方が食い意地が張っているが、食べ方は下の方がきちんとしている。上は頭を食べ物の方に持っていく。いわゆる犬食いだ。何度注意しても直らない。これはお義父さんに似たのだろう。下の子がかき氷を食べる時の格好は、僕の父に生き写しである。俗に「顔かたち」と言うが、顔だけでなく食べる姿勢まで恐ろしく似ているのだ。
▼お風呂は下の方がきれい好きで、帰宅後すぐに入る。上の子はダラダラしていつまでも入ろうとしない。2回に1度は翌朝になる。二度焚きでガスももったいなければ、お湯を立ったままバシャバシャかけて大量に使う水ももったいない。たぶん八割方は身体にうまくかかっていないだろう。彼が出た後はほとんど足湯である。彼にはおそらく「もったいない」という感覚がないと思われる。
▼全然違うように見える兄弟だが、不思議なことに寝相は同じである。夏休みは二人で仲良く居間にダブルを敷いて寝ているが、トイレに起きた時見ると、いつも同じ方向を向いている。朝、僕と妻が先に起きて、居間の布団をあげるために、僕らが寝ていた寝室のシングルの方に移動させると、またそこでも同じ形で眠っている。
▼とはいえ寝相にも違いはある。身体が軟らかく手足の長い長男は、うつぶせで膝を折った形で眠る。あおむけで膝を立てるのではない。これは妻の寝相だ。下の子には見られないポーズである。あと長い手を頭の上に巻くようにして寝ている。これも下の子にはムリ。頭の上まで手が回らない。
▼片手を肩越しに、片手を腰から回して背中で両手を組むのも長男と妻はできるが、手が短くて身体が硬い僕と下の子はできない。こうした身体的特徴やちょっとした仕草や癖などは、どちらかというと夏に気がつくことが多い。着ぐるみを脱ぎ捨て、人間がより本来の姿に近くなる季節だからかもしれない。
▼我々がグランドでプレーする子供たちを見て、うまい下手と感じるのもこの延長にあり、たいていは感じた通りである。ふと横を見ると、とてもスポーツなんかやりそうにない、その子に瓜二つの親御さんが応援に来ている。グランドの彼が、それ以上の選手になることはまずない。
▼同様に、先祖代々英語を話した人が一人もいない家系に、突然英語を話す人が出るということもない。脳ミソのしわのどこを探しても、そんな記憶は見つからないからだ。脳ミソも我々の身体の一部である。いわゆる頭の良し悪しや性格に関することも、身体的特徴のひとつであり、身体的記憶=遺伝のなせる業なのである。
▼細胞にストレスを与えることで初期化する(万能性を獲得する)というSTAP細胞の理論は、人間レベルでいえば、後天的に(ストレスフルではあるが)訓練を積むことで、遺伝という生来の軛から自由になる(なんでも望む道で才能を開花させる)試みである。その意味では人類の永遠の夢ではあるが、主要メンバーの自殺という残念な結果になった。
▼難病の人やその家族には申し訳ないが、よく育った子供たちを見るにつけ、初期化する必要なんてあるのか?と思うのだ。僕らができることは追記であり、せいぜいのところ上書きだろう。そう思えるだけ、僕はきっと幸せな方なんだろう。

火曜は得意のガパオライス。

水曜は煮込みハンバーグ。

木曜はおろし炒め。

そして今日誕生日のディナーは、昨日の夜勤で食べなかったハヤシライスがスライドしそうになったが、かろうじてチキンとアスパラのレモンクリームパスタにケーキ。