茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(346)いろいろ外される

加藤匡通
八月×日(水)
 最高気温の予想が三十七度ともなると天気予報の中で「なるべく外出は控えてください」とか言われる。控えたいのは山々だが、そんなことをすれば収入は激減、熱中症とは違った形で生存の危機をむかえる可能性が高まる。それにきっと市役所も黙ってない。「熱中症を避けるために仕事を休んだ?それで滞納した税金を払えるんですか?死なない程度に働いて下さい。」一億総活躍社会とはこういう社会であろう。活躍出来ない、生産に役立たない者は排除される。相模原の事件は一億総活躍社会の当然の帰結なのだ。働けようが働けなかろうが生きていていいのは当たり前のことだ。それが通用しないのは、一億総活躍社会がおかしい。て言うか、熱中症の危険が高いんなら現場止めろよ。
  都内西部、小さなビルの新築現場に来ている。盆休み前の片付け清掃と聞いていたが現場で言われたのは躯体外周のはつりだった。地下一階と地上一階の足下がコン打ちしてあるだけ、地下はまだ型枠を外し終わっていないし上階への柱の配筋が始まったばかりで外周の型枠も外れきってはいない。地下水が出た現場で躯体の周りの土にはゴムのような止水帯がぐるっと取り付けられている。型枠と止水帯の間にコンクリが入り込んでいて、そのコンクリをはつってからでないと型枠が外せない、だからコンクリをはつってから型枠を外してくれ、と。躯体の打設時に溢れた分だから厚みはせいぜい十センチ、大した量ではない。しかし幅も最大で十センチ、五センチ程度のところが大部分である。木の型枠とゴムの間にコンクリがあって、ゴムは傷付けてはいけない。はつりに使うピックは太さが二センチ程度、だいたい指一本分である。指一本分の刃で指二本分のスペースをはつる訳だ。これは相当面倒臭い。止水帯のゴムを傷付けないようにしていてもどうしてもゴムに食い込んでしまい、食い込むとなかなか外れない。型枠はコンクリでしっかりと押さえられていてはつらない限り外れそうにない。しかも渡されている道具ははつり用の電動ピックと大バールだけ。せめてバールが何種類かないとどうにもならん。十時前から始めて型枠二枚分の終わる目処が昼になってもたたない。監督に型枠届く範囲でサンダーで切った方がよくないかと聞いてみた。既に切ってあって、残りを撤去したいのだ、今はつってるあたりは狭いのでサンダー危険だから駄目と答えられてしまった。バールはそれしかない、とにかく一日出来るところまでやってくれ、とも。・・・それは作業方法の変更は認めない、ずっとその作業してろってことか。うお。心が折れた。結局一日同じ作業をだらだらと続けた。やる気なんか出ない。なんか、現場初めて君見たいなスピードでしか作業は進まず、泣きたくなった。
  そもそも朝から外され続けている。駅改札を出ると巨大な古本屋の看板が目に入った。「百万冊」なんて書いてある。おお、こりゃ楽しみだ。公共料金後回しにするか?とか駄目なこと考えながら、会社から渡された地図を見て歩き出す。現場の近くで件の古本屋を発見した!しかしシャッターに張り紙がしてある。悪い予感しかしない。盆休みとあった。うお!やられた〜。ダメージを受けながらも現場を探すがらしい場所が出てこない。いや、住所がややずれている。なんだこれは?ややあって思い当った。この地図、現場事務所のだ。途中でコンビニに寄ったので時間は既に七時五十分。まずい。仕方なく普段は近づかない交番に飛び込む。すると現場は駅前だった。がちょーん。ぎりぎりで八時前に現場に飛び込んだ。危ない危ない。
  そして、作業をそれでも四時過ぎには終え、確かこの辺には銭湯があったはずと携帯で検索した。汗だく埃まみれ、今日は時間もあるし、近くにあるんだから風呂につかりたいよ。するとすぐ近くに一軒、やっぱり以前入った銭湯を発見した。他は隣の駅まで行かないとない。よし、と詳しく見ると、水曜定休だった。・・・今日は罰ゲームか何かですか?