北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『三国志英傑伝 関羽』の感想


馬が赤くないよ・・・・・・


 ドニー イェン主演作が新年早々から公開です。いやぁ、めでたいです。「ドニー イェンならとりあえず公開しとけ」みたいな流れ、大変ありがたいです。今年もどーぞよろしく。
 そんなドニー イェン。ワタクシは『イップマン』でハマったにわかなんですが。本作がワタクシを引き付けるもう1つの要素、それが三国志でして。三国志も好きなんですよ。まぁ、横山光輝のマンガしか読んだことないんで、詳しくもないんですが。
 ドニー イェン主演の三国志映画、しかも関羽ですよ、観るっきゃないでしょう。

 原題である中国語のタイトルは『関雲長』。まぁ、関羽の別の呼び方ですよ。そして、日本だと『三国志英傑伝 関羽』。明確に三国志であることを強調してるあたり、三国志知名度が中国に劣るのがわかる。そして、英語タイトルが『THE LOST BLADESMAN』。もう関羽三国志も関係なくなっちゃった。アメリカにおける、英語圏における三国志知名度がどの程度のものなのかはわからないんですが、多分マイナーなのでしょう。
 三国志を知らない人が本作を観たらどうなるのか。ワタクシはファンなんでわからないのですが。イントロでざっとした説明はあるとはいえ、所々で「孔明って御存知でしょう?」みたいなノリがチラホラしてました。あと、物語上特別な意味のないキャラクターにもしっかり名前があったりして。映画で必要以上に人名が羅列されると退屈に感じてしまうと思うんですが、本作でもそうなった人がいるんじゃないかなぁと思いました。

 めんどくさいんで、ここでは三国志の固有名詞の説明はしません。無駄に人物名も使います。すいませんね。


↑貼らずにはいられなかった

 あらすじ
曹操関羽・・・・・好きだ 付き合って(配下になって)くれ」
劉備嫁「関羽・・・・・好きです 付き合って下さい」
関羽「なりませぬ 私には劉備という心に決めた人が・・・・・」

 三国志で好きな要素として、人取り合戦な部分がありまして。三国のお偉いさんが如何にして優秀な武将を配下にするかって駆け引きが楽しいんです。武将側からしても、認められたいから頑張るっていう両想いな感じが楽しいんですよ。
 そんな人取り合戦としての魅力が詰まったエピソードが本作で扱われる「関羽の千里行」。

 また、本作のおもしろい部分として、本作の物語は曹操の回想という形で語られるんですね。曹操っていったら大抵は悪役ですよ。曹操視点だけならまだしも、曹操視点なのに関羽の物語というのが捻ってあっておもしろい。
 結果として、曹操関羽への片想いというところに焦点が当たっていて楽しかったです。
 関羽に仲間になってほしいからプレゼントとかあげちゃったりして、かといって偉ぶらないように農作業してるトコを見せつけたりして。が、それもすべてが空振り。関羽劉備への思いは揺るがない。そして出てっちゃう。「会ったらサヨナラを言われるのわかってるから会いたくない」とか言って家に引きこもる曹操が超かわいかったです。

 また、劉備嫁と関羽との禁断の恋なんていう洒落臭い物語も本作にはあって。正直コレは不安視してたんだけど、意外と楽しめた。というのも、関羽がとことんストイック。色欲なんかにゃ決してブレない。好きなのに「なりませぬ」の一点張り。本作の関羽は童貞の香りがしました。

 そんな劉備嫁とのロマンス描写ってのが既視感あって。同じ村で暮らしてるんだけど、関羽は遠くから彼女を見てるだけ。ずっと見てる。とある夜、たまたまあのコの家の前を歩いていたら(←たまたまですよ)、あのコの家に強盗が入るトコを目撃。すかさず強盗たちをフルボッコにして立ち去る。
 『ブラックジャック』で見たことある。ブラックジャックが如月恵に恋をして半ばストーカー状態になるというロマンス展開があるんだけど、関羽はこれと一緒。どの世界でもストイックな男のロマンス描写っていうのは似てしまうものなんですね。

 関羽曹操劉備嫁。男2女1の配置で、関羽×曹操がメインの物語となれば、ブロマンスの匂いがしてくるワケで。
 ブロマンス、ブラザーロマンスの定石として、男2人が仲良くなって、その2人の関係を壊すような女が現れ、男の子として男友達を取るか、男として女を取るかっていう葛藤に揺れるものなんですが。本作はちょっと違う。「関羽×曹操」と「関羽×劉備嫁」は決して対立する関係じゃない。
 そこで、劉備を交えて考えてみる。すると、「関羽×曹操」と「関羽×劉備」、「関羽×劉備嫁」と「関羽×劉備」はそれぞれ対立する構造になる。つまり、通常のブロマンス的三角形が2つ成立する変則的なブロマンス映画として見ることが出来る。出来るったら出来る。
 しかし、本作には劉備はほとんど出てこないので、描かれるのは関羽曹操劉備嫁の3人。そして、三国志映画という大前提がある時点で「関羽×劉備」の組み合わせは絶対。つまり、「関羽×曹操」も「関羽×劉備嫁」も報われない最後を迎えるのは自明の理。そうすると、どちらのカップリングも刹那的ですぐ先に終わりが見えているという物悲しさの付きまとう味わいでした。こういう変化球が楽しかったです。しかも、ラストにそのカップリングを直接破壊しようとする真犯人みたいな人が出てくる展開もとても楽しかったです。「絶対に乗り越えられない障害」として結構究極レベルでしたね。

 ・・・・・まぁ、そんなこたぁどーでもよくて。アクションですよね。ドニー イェン映画ですからねぇ。駄文失礼しました。
 アクションはもちろん素晴らしかったですよ。関羽ということで、青龍偃月刀を用いた殺陣がいちいち決まってました。また青龍偃月刀がカッコイイんだ。見せ方もうまくて。見得を切るシーンでのドニー イェンと青龍偃月刀のカッコよさったらなかったですよ。
 そんな青龍偃月刀アクション。個人的に一番おもしろかったのが、最初の関所での戦い。狭い路地での戦いだから巨大な青龍偃月刀が邪魔なんだよね。だから最初は関羽が実力を発揮しきれなくて、苦戦しつつも狭い路地での動きに修正していく様というのが感じられて楽しかった。「考えながら戦ってる」感がこんなに感じられる殺陣というのは新鮮でした。
 殺陣ではないんだけど、青龍偃月刀の使い方として。鳥居での戦いで、敵が青龍偃月刀で自殺するトコもよかったですね。戦意のない関羽と敵側の考えがすれ違い自殺してしまうんだけど、美しさすら感じてしまう程に見栄えがありました。

 んで、あまり良くなかった点もありまして。三国志ファンとしては、赤兎馬が出てこなかったのが残念で残念で。千里行を扱うんだったら物語上も重要なはずなんですけどねぇ。あと、ラストに時間軸すっ飛ばすんだから赤壁の戦いの時に関羽曹操に恩を返すってエピソードは見たかったです。あそこは関羽劉備曹操を天秤にかけて曹操を選ぶシーンだからね。
 それと、ラストに向かうと見せ場が減っちゃって尻すぼみになっちゃった印象です。物語的な盛り上がりと見せ場(アクション)的盛り上がりがずれちゃってましたね。


 とはいうものの、概ね満足です。まぁ、目当てはドニー イェンと三国志ですからね。青龍偃月刀アクションと、曹操視点の千里行という2点でお腹いっぱいです。
 65点。