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2008ねん12がつ03にち

過去と現在のミスター競馬〜野平祐二と武豊について〜

f:id:goldhead:20081203142217j:image(嘘みてえな馬名と勝負服鞍上だな)

 昨夜NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、武豊騎手が取りあげられていました。国内での活躍に焦点を絞ったものではなく、海外での苦戦に注目した内容でした。それを見ながら、つい最近読んだ、野平祐二(聞き手:赤木邦夫)の『馬の背で口笛吹いて』を思い浮かべていました。野平さんの本を引用しつつ、昔と今のミスター競馬についてつらつらとメモしようと思います。

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 ミスター競馬野平祐二競馬ファンとしては、調教師生活の晩年しか知りません。シンボリルドルフ調教師であったこと、日本に海外競馬をとりあげたこと、知識のみで知っている程度でした。しかし、いつだったかNHKのドキュメンタリを見て、すばらしいホースマンだったと思ったものでした。また、ディープインパクト凱旋門賞に挑むと聞いて思い浮かべたのも、故野平師だったのでした(「ああロンシャン」)。

馬の背で口笛ふいて

ぼくは、リチャーズ自己紹介を聞いて、鼻の奥がチーンとしました。「四八七〇勝したリチャーズです」とは名乗らず、「ピンザで英国ダービーを制覇したリチャーズです」と口にしたからです。そのリチャーズ言葉に、英国ダービーの重みと個人の名誉勝ち馬名誉、言い換えれば、英国競馬伝統と輝きに、心身ともに魅せられたのです。

 冒頭、こんな話から始まります。思わず鼻の奥がチーンします。リチャーズwikipedia:ゴードン・リチャーズ。このような海外競馬伝統と輝きに憧れ、挑み、それを日本競馬に取り入れていったのが野平祐二だったのです。もしこの人がいなかったら、もっと日本競馬は赤ペンと一家離散とお馬で人生アウトばかりのものだったかもしれません(……まあ、それでも構いませんが)。

 むろん、馬券が売られ、賭けの対象になっていることは否定できませんが、それは馬券を買われる側の問題で、競馬そのものとは違います。騎手の立場からすれば、同じ勝つにしてもフェアに、格好よく、いかに目立って勝つかに気を遣おう。そうすることで、ファンにも納得してもらえるだろう、と考えました。まさに父親が言っていたように「ジェントルマンでなければならない」のです。

 ぼくは、そのことをずっと心掛けてきました。ですから、ファンから罵声を浴びせられたことはありませんし、負けても叱られたことはありません。負けたときも納得してくれたようです。中には逆に「あの野郎、勝つときは気取りやがって……」と言われたこともありますが、男の生き方として、この気取りは大切だと思っています。

 この「ジェントルマンでなければならない」というのが野平祐二哲学というか、かならず守るべきところである。ようです。

勝つために手段を選ばずというケースもままあり、そういう浅ましさに心を痛めました。ぼくは乗り役として勝てないときから、なぜ人間はああいう行動をとるのかと、規則を乱す人々を不思議に思っていました。ぼく自身、この点についてはただの一度も恥ずべきことはしていません。

騎手としての人生は、ぼくにとって悔いのないものでした。だから、「もう一度、生まれ変わったら何になりたいか」と聞かれれば、ちゅうちょなく「また騎手になりたい」と答えるでしょう。そして今度こそは、完璧騎手、鬼の勝負師になり、英国ダービーで優勝したいものです。

 というわけで、虫明亜呂無のように、競馬を「真・善・美」という視点を通して見た場合、野平さんは「善」と「美」に生きたといっていいでしょう。「真」たる勝利を追求する鬼にはなれなかった。米長邦雄が大山康晴と升田幸三を評して「勝負の鬼と将棋の鬼が戦ったら、最終的に勝負の鬼が勝つ」と述べたそうですが、この場合野平さんは競馬の(善と美)の鬼であって、勝負の鬼ではなかった、といえるでしょう。

 しかし、野平さんも欧州滞在で少し意識が変わったといいます。だから、今度は「鬼の勝負師」と言うわけです。このあたり、昨夜の武豊のドキュメンタリを見ていても感じた話でもあります。今朝、競馬をあまり知らない人の感想を聞いたのですが、「武さんでは優しすぎて駄目なんじゃない? ガンガンいかないと」と。そういう意味で、見た目通りに武豊もジェントルマンである、のかもしれません。もちろん、あんなに負けず嫌いな人はいない、といわれるトップジョッキーではありますが、まあそう見えてしまうことはしょうがない。メイショウサムソンは二度カットされ、一般戦ではフランス馬券親父に野次られる。

 こうなると、やはり武豊が君臨できるJRA競馬の性質というものにも思い至る。ひょっとすると、皆お行儀がよすぎて、ひどくぬるい競馬をしているのではないか。だから、ペリエやらルメールやらデムーロやらの外国人騎手や、安藤勝巳や岩田康誠内田博幸などの地方出身騎手に牛耳られているんじゃねえのかと。もちろん、あまりに単純すぎる見方ではありますが、さんざん指摘されていることでもありますし、やはりいくらかの真実を含んでいると、そのように思えてきます。凱旋門に向かう道に車線などないのです。

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 さて、野平さんのジェントルさ、優しさの対象はもちろんサラブレッドにも向かいます。代表的な騎乗馬、スピードシンボリについては思い入れたっぷりです。

 激しく走る馬に対して、ぼくは「労る」という気持ちになります。とくにスピードシンボリとの出会いが、そうさせました。なにしろ五年間もの間、スーちゃんと一緒でした。普段厩舎の中では物音一つたてず、いるかいないかわからない馬が、いざとなると、どこにそのエネルギーが隠されているのかと思うほど、頑張ってしまう。

 欧州の過酷な馬場では、優勝こそできなかったものの、ビリにはならなかったし、途中までは快走を見せていました。その偉大さはもう涙でした。自分に置きかえてみて「オレなら、とてもやっていられない」とサジを投げたでしょうに、スーちゃんは頑張ったのです。「馬は人によって育てられ、人は馬によって育てられる」というのは、まさにぼくの実感でした。

 「スーちゃん」というのは、アメリカ遠征のさいに世話になった現地の通訳役の婦人が呼び始め、やがて関係者もそう呼ぶようになったとのことです。野平祐二スピードシンボリの馬上で泣いたことは一度や二度でない、とのことです。

 一方で、調教師になり巡り会ったのが、母父スピードシンボリ、日本競馬史上最強馬との呼び声もいまだなお強いシンボリルドルフ。「善」と「美」のホースマンのもとに、「真」の象徴みたいなサラブレッドが現れるのだから面白いものです。

 シンボリルドルフは、とにかく強かった。理屈抜きに強かった。強い馬とはこういうものかと思いました。精神的にも肉体的にも強靱さを持ち合わせていました。不必要なものをすべて取り去った、ハガネのような筋肉の持ち主でした。

 スーちゃんがシンの強さを持ちながら、気立ては優しいのに比べ、ルドルフは「オレは天才だ」とばかり気位の高い馬です。スーちゃんは引っ込み思案で、遠慮がちであるのに対し、ルドルフは反発のしっ放しで、「お前ら、余計なことをするな」という態度です。馬房にいるときも、「ここはオレの場所」という顔をします。

 いわゆる競馬ファン一般に浸透している“皇帝シンボリルドルフの姿そのものといっていいでしょう。ちなみに、去年テレビでシンボリルドルフを見たメモがありましたので、日記から引用します。

でさ、その皇帝陛下にさ、佐藤藍子がさ、あの佐藤藍子がさ、ニンジンふりふりして、「ルドルフ〜! おいで〜!」とか言ってやがってさ、おい、ふざけんな、あそこにおわすは人より偉いサラブレッドだぞ、皇帝だぞって憤慨したんだけどさ、憤慨するまでもなくさ、ルドルフ完全に佐藤藍子黙殺、黙々と草をはむわけよ。さすが皇帝

2007-11-19 - ○内○外日記ブログ

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 スピードシンボリ皇帝シンボリルドルフをしても、またディープインパクトメイショウサムソンでも通用しなかったヨーロッパ最高峰(……いや、タイキシャトルとかシーキングザパールとかアグネスワールド、あと、エルコンドルパサーも惜しい……、ノン、ノン、それは外国産馬だ、ということで。ええと、ドバイ香港シンガポールオーストラリアもおいといて、武豊自身の海外G1も置いといてとりあえず凱旋門賞あたり、ということで……といろいろ注釈をつけなくてはならないのは、嬉しい話ではあるが)。それについても語ります。

 ぼくが初めて海外遠征した豪州、あるいは米国で体験したときは、「これなら、日本産馬でも勝てるかも……」という、自惚れがありました。しかし、その後英国フランスに滞在し、向こうの世界に実際に入ってみると、まったく彼我の実力差が大きいことを痛感したのでした。

 向こうの馬場は、日本に比べてかなりきついので、前半は馬をためておき、最後の直線に入って、一気に矢のように走らせます。それを外から見ていると、前半のスローペースに惑わされ、「なんとか彼らと太刀打ちできる」と思い込んでしまうのですが、いざ競走してみると、圧倒されるのです。

 つまり、馬をためることの難しさ、それを最後に爆発させるテクニック、そしてなにより、それをやってのける馬の実力―それが揃っていないといけないのです。とかく駆け引きに目が奪われがちですが、競馬の神髓はタイムを競うことでなく、いかに人馬一体で走るかです。

 この、人馬一体。無論、武豊とて、彼自身述べるようにそんな風になることもある。そして、日本の競馬では誰にも負けないという自負もある。しかし、欧州でそれができるかどうか。馬が欧州馬場と一体になり、騎手欧州レースと一体になる。そのあたりなんでしょう。スピードシンボリも、欧州調教するうちに、走り方が変わったという。そんなこともある(こないだのジャパンカップサムソンは、血統が目覚めて欧州仕様になっていたとかいうことがあったりして)。ディープですら、ではないく、ともかく挑み続けることでしょう。日本の馬場ヨーロッパ馬場オールマイティで最強級なんて馬はなかなかいない。そのあたりの、腰の据え方、それが問題になってくるでしょう。

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競走馬人間が作った最高の芸術品といっていいでしょう。とすれば、それにふさわしい乗り方、レース運び、すべてが優雅でなければならないと信じます。

 長くなりましたが、最後も野平さんの言葉で。今後日本中央競馬が、ヨーロッパや地方騎手の影響を受け、もっとガリガリ、ガンガンやりあうようなものになるかもしれない。ファンとしてはそれも見たい。しかし、一方で、このくらいのこと、サラリと言ってのける、そんなかっこいい騎手にも出てきてほしい、そう願ってやみません。また、武豊に続いてこの手の番組に出演できる、そんな騎手に出てきてほしいと、そう願います。

関連______________________

フロストジャイアントは本命にしていい馬か?

ロドルフォ ロドリゲス攻馬手の話

馬なりで走らせたが、動きが良すぎたので、途中は抑え通しとなり、最後だけさっと追った。やればもっと時計が出るはずです。このままうまく阪神競馬場への輸送を乗り切り、レースに向けてベストの調整をしてあげたい。調教後の疲れもなさそうだ。明日以降は調教師の指示次第になりますが、阪神金曜日にもう一本速いところをやる予定になっています。」

http://www.jra.go.jp/news/200812/120106.html

 と、12月1日コメント

ロドルフォ ロドリゲス攻馬手の話

「新しい環境でキョロキョロしていたが慣れていくと思う。アメリカダートと比べてサラサラして深いが、乗った感じでは大丈夫。明日は、今日より早めの調教(キャンター)をするつもり。調教師の判断によるが、レースまでに強く追い切る予定はない。騎手は今日到着するが、レースまで騎乗しない見込み。」

http://www.jra.go.jp/news/200812/120302.html

 と、今日のコメント阪神金曜日にもう一本速いところって話はどうなった。明日の早めでいいのか? もう仕上がっていて十分ということ? というか、調教師は? ああ、大物だから来てないということ? 

 ……などと考えていくと、ニューヨーク地方馬(都会なのに地方馬、「大井の地方馬」みてえなニュアンス)っぽいティンカップチャリス、調教師(=生産者馬主)もつきっきりだし、こっちのがいいんじゃねえのとか、ちょっと思えてきたり。先に乗り込んでるし、鞍上にエドガー・プラードってのは、この馬にテン乗りって点はマイナスとしても、単純に強化と見ていいような気もするし、時計も出してるし、名前もかっこいいし。だって、tin cupは辞書によると<(乞食が)物乞い用に使うブリキのカップ>というし、chalice聖杯という意味。なんというか、ニューヨーカーっぽいじゃないですか。というか、なんか有名な曲でもあるのか(wikipedia:ジミー・バフェット)? まあいいや。

 でも、でもですよ、人気になりそうなのがつまらない。もちろん、ヴァーミリアンだのサクセスブロッケンだのカジノドライヴだのに比べれば無いだろう。でも、その次の穴人気しそうな、そんな雰囲気はある。レベルどうこう言われるものの、俺もニューヨーク産馬限定のレベルはわからん(九州産限定戦みたいなもの?)し、最後のG2普通G2クラスの馬に勝ってるんでしょ? だとすれば、カジノドライヴくらいの評価は必要かもしらん。ともかく、馬柱にずらーっと1着が並んで、[8.1.0.0]などという表記を見たら、そりゃあちょっと穴人気すんだろう、と。

 あれ、そういえばニューヨーク? 馬?

現役引退後、97年から米国種牡馬入り。05年ゴーサムS(米G3)2着のGalloping Grocerなどを出し、同年のニューヨーク州リーディングサイアーに輝いている。

2008-02-04 - ○内○外日記ブログ

 そうだ、こんな話があった。さて、このニューヨークリーディングサイアーは誰でしょう? 答え:エーピーインディ……ではなく、エーピージェット(上の記事読んでください)。エーピージェットリーディングサイアーになれるニューヨーク。さて、まったく想像がつかない。検索したら、最近のこんな記事を見つけた。

金融危機原油高でNY競馬売り上げ減少

http://www.nikkansports.com/race/news/f-rc-tp0-20081122-432279.html

 まあ、世界中一緒だろうけれどもな。うーん、どうかねティンカップチャリス? 見え見えなのを承知で、ちょっと買いたくなってはこないだろうか。

“I guess it is always a worry when you start changing training, like going in the wrong direction,” LeCesse said. “But this may be a once-in-a-lifetime chance for us. I have never been overseas; I’ve been to Canada and the Bahamas, but nothing like going to Japan. This horse has been doing well, and we’re hoping he can do well over there.

“He has already done enough to make us proud.”

http://www.nyra.com/aqueduct/stories/Nov152008.shtml#

 なんかあれだ、どちらかというと、極東の未熟ダート物見遊山に行く、という雰囲気ではない。一生に一度の機会、$2.8 millionのビッグレースに挑むという感じではなかろうか。たとえばフェートノーザン海外遠征計画だとか、そういう雰囲気ではないのか。自分英語力ではよくわからん。わからんが、そうじゃあないだろうか。そうだとすれば、応援したいような気すらするのだが。それで、コスモバルクシンガポールで勝ったようなことになりはしないか、などと思うのだ。タクシー運転手調教師の馬だって、この国のスプリントG1かっさらうことくらいできたんだぜ? (←なんかもう完全にフロストジャイアントから乗り換えてるじゃん)。

未曽有卯の栽培員候補になりました

 裁判員候補者になられた方のプライバシーや生活の平穏を守るため,裁判員候補者名簿に登録されたことを公にすること(インターネット等で公表するなど,裁判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることができるような状態にすること)は,法律上禁止されていますので,ご注意ください。

404 Not Found

 制度と関係ない話から始める。自分は「裁判員」という発音がうまくできていないのではないか。いや、発音、滑舌というより「裁判員」を「さいばんいん」と読めていない可能性がある。いや、あらためて考えれば「裁判」に「員」だ、間違いようがない。しかし、こうしてタイピングしようとして、まず打ってしまったのが「栽培員」であって、なんとなく脳内でも「さいばいいん」なのであって、打ち直してもまた「さいばいん」などとなってしまって、まったく麻生首相馬鹿にすることはできない。

 麻生首相ついでに話が逸れるが、「未曽有」である。麻生首相は「みぞゆう」と読んで馬鹿にされた。自分もちょっと馬鹿にした。が、馬鹿と言うものが馬鹿なのではないか。自分は「未曽有」を「みぞうう」と読んでいた。これをゆっくり発音したならば「み・ぞう・う」である。しかし、ATOKなども「未曽有卯」などと「卯」が付いてくる。なんと、「み・ぞ・う」だったの? と。……と、思ったら、一応辞書で調べたら、「みぞうう」も併記されていた。よかった、これで平気だ。しかし、いったいどこで一般的な「みぞう」から逸れて「みぞうう」で固定されていたのか、よくわからない。ひょっとしたら栽培員が正しいという可能性もある。

 ところで、歳場員候補の話であるが、これに選ばれたことをブログなどに記すのは禁止という話である。では、「選ばれなかった」というのは問題ないのか。毎日毎日「選ばれなかった」と記し、ある日突然それを記さないのは、公表にあたるのかどうか。そんな下らないことを言ってお茶を濁す。ところで、選ばれたら、たとえばブログとかやってたら、書かないのは生殺しというところだよな、たぶん。