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関内関外日記(跡地) このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2010ねん08がつ07にち

『インセプション』〜植え付けられたのは誰か?〜

ネタバレあるかも。でも、もう公開から日が経ってるからいい。いや、そういう問題ではないか。などといってる間に、もう猶予はおしまいだ。

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 俺はもう一度『インセプション』を観るだろう。そして俺がもう一度『インセプション』を観るとき意識するのは、「妻がコブにインセプションしたのではないか?」ということだ。無理筋は承知。しかし、俺はこの作品にそのくらいの回転の可能性を抱きたい。抱きたくなる映画だ。

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 観る前は、ウィリアム・ギブスン想像していた。観終えた感想は、フィリップ・K・ディックだった。サイバーパンク過ぎるわけではない。SFギミック、小道具は最小限に抑えられている。眠りに没入する機械など、テルモ低周波治療器にしか見えない。決してオノ・センダイではない。そう、『インセプション世界には、電脳グリッドもなければ、ニューロントンネルもない。出てくるのは、いつはじまったかわからない、現実と見まごうばかりの夢。明晰な夢。

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 明晰さ、明解さ。三階建て、四階建ての世界を、よくぞここまで明晰に構築してのけた。説明的な説明に依らず、また漠然とした投げっぱなしでもない。驚くばかりだ。逆に、一階建ての平屋なのに、グダグダになって意味のわからぬような映画ドラマ小説というのは、いったいなんなのかと思うくらいだ。

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 とはいえ、明晰なだけに恐ろしい。明晰な世界を疑わなくてはならないということが恐ろしい。『マルホランド・ドライブ』のなにが恐ろしかったか。

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 世界だ、世界全部だ。観ていると思ってる自分脳味噌も信じられようか?

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 回り続けるトーテム。転ぶか、転ばぬか。遠大ななぞかけ。無限に繰り返される円環。……しかし、俺はやはりこの映画の結末をポジティブなものだと思う。コブは家に帰ろうとして帰った。意思のはたらきがあって、そこに至った。思えば、PKDの主人公たちも、現実と非現実宇宙世界とを行き来して、その目的は別れた女に過ぎなかった。しかし、それに過ぎないものが人間全部だ。

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 だから、あざむかれ、危険に付き合わされた仲間たちも、あえてコブを責めない。きっと、夢を共有したら、夢も融け合う。たとえ、コブと妻ほど永いときを過ごさずとも。

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 だからコブは帰った、それでよかった。たとえ、最後に出てきたあの子供たちが、あまりにも記憶の中のそれと同じであったとしても……。

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 それでもおかしい。なにか、おかしいんじゃないのか? 俺はそう思う。俺はキックがほしい。だから、もう一度『インセプション』を観る。それはきっと妻に「ここは現実ではない」とインセプションされ、現実を失ったコブの見る夢であって、それを観た俺はまた「これはコブが妻にインセプションしたのではないか」と思うのだ。

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