SLと登山鉄道を乗り継いで中空重力式ダムを見に行く(その3)

SLと登山鉄道を乗り継いで中空重力式ダムを見に行く(その1) - 関内関外日記(跡地)
SLと登山鉄道を乗り継いで中空重力式ダムを見に行く(その2) - 関内関外日記(跡地)

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大井川鐵道井川線


 朝、寸又峡を出てバスに乗る。バスの本数、大井川鐵道の本数少ないので、事前に調べておくといい。調べていなくても、仲居さんが教えてくれる。「奥泉駅のまわりは本当になにもないですから!」。バス乗り場兼土産物屋で目的地の井川までの切符を買う。SLとか乗って感覚麻痺してたが、クソ高い。

 奥泉の住民(犬の顔)。

 正直、井川線のことはよく知らないで来てた。SLとバスで温泉まで行って、タイミングが合えばこれ乗ってダムまで行こう、くらいの。


 そんなわけで、「南アルプスあぷとライン」の愛称にも使われてるアプト式ラックレールとやらもよくわかんねえわけで。

 でもまあ、いいじゃねえか登山鉄道。昔はダム建設のために走ってた実用路線。古い客車は観光用途はじまってからのものだが、よくわからん往時を感じたりしてさ。

 ダムとか出てきたりして。これは長島ダム。わりと新しい感じ。

 こっちは奥泉ダム。wikipediaによると「この奥泉ダムは接岨峡の深い谷に建設されており、道路からは遥か下にある為道路からは僅かに堤体が見えるだけであり、一般人立入禁止のため車ではダムを至近距離から見る事は出来ない。唯一、大井川鐵道井川線の車窓からダム全体を見る事が出来る」だそうで。

 奥泉ダムは帰り道の写真か。まあもうどうでもいいや。ああそうだ、車両内の座席だけれども、四人がけボックスシートと、対面の二人がけシートに分かれていて、眺めがいいのは文句なしに四人がけの方。二人がけの方だとだいたい崖とか見てることになる。行きがそうだった。帰りは始発なので四人がけの方に座れた。まあ、帰りはガラガラだったが。

 けどまあ、音とか雰囲気とかね。

駅周辺に民家はなく、その上駅に通じる車道も全くない。このため、後述のルート等を経て徒歩で到達する方法を除いては、鉄道でしかこの駅へ来ることはできない。そのため、一部の鉄道ファンには日本で最も理想的な秘境駅といわれている[要出典]。2008年度の年間乗降客数は574人である。
井川線の車内放送によると、かつてはダム建設関係者のために周辺に宿舎多数や小学校もあり、医師も常駐していた。また南アルプス南部の雄峰や大無間山から前無間山、風不入(かぜいらず)などを通り、尾栗峠を経由してこの駅に降りるルートもある。現在はもちろん廃道だが、今もこのルートを通る通な登山者もいるようだ。

 これはあとから読んだんだけど、帰りの電車でこの尾盛駅から乗ったおっさんがいた! ちょっとぞっとする。バックパック背負った普通のおっさんだったけど、かなり通な秘境系乗り鉄だったのだろうか。でも、年間で574人乗り降りしてんなら、1日に1回くらいは見られる光景かもしれない。つーか、どっかから現れたのではなく、前の電車に乗って下車したのかもしれない。それで、一時間近く無人秘境駅を独り占め。悪くない。ちなみに、そのおっさんは車掌さんに「切符持ってない」と言ってたが。

 ともかく終点の井川。

 おつかれさん。

井川ダム


 井川駅の横に用水路みたいのが流れてたんだけど、先の方でこんな風になってて度肝を抜かれた。恐るべし。


 というわけで、昭和テイストのセクシーがお出迎え。横山剣とかかなり先取りしてるし。

 はい、それじゃともかくダム。井川ダム。日本初の中空重力式コンクリートダム

 中空重力式コンクリートダムの方に間抜けなはてなブックマークをしてるやつがいるけど、ともかく響きがいい。とはいえ、見たところ普通のダムだ。そうだ、中空なのは中身なのだから。

 ダムのPR施設にあったこの立体模型がわかりやすいか。しかし、コンクリート代が高いからこうやってたのが、今度はこれのための労力、人件費が高くなったって逆転があれだな、コンクリートから人へ、だな。違うか。

 神奈川県民として、宮ヶ瀬ダムやその周辺の園地みたいなのを想像してたけど、まあちょっと別物だな。山奥度が違う。

 でも、大井川鉄道でのこのこ登ってきたいくらかの人間(接阻峡とか長島ダム駅とかであんがい降りていった)に、あとは自動車でくる人、でかいバイクの人とちらほら。それに、ここでも輪行の人がいた。スポルディングのマウンテンバイク組み立ててた。スポルディングのマウンテンバイクがどのようなものかよくわからないが。しかし、こっからガーっと下って下ってという道があるのならば、それはそれで楽しそうではあるが。ただ、車のほうがえらく飛ばしてるし、自転車なんて意識してないだろうから、そのあたりは怖そうだ。

 晴れてもいないし。

 この落差がダムな。

 なにかの作業をしていた。あと、渡し船みたいなのもあるみたいだけど、水位が低すぎて運行中止だった。まあ、ダム、そんなところ。ダムマニアでもないので、正直、ナーダムを見てるのとかわらん。いや、テンションは高くなったけれども。

井川大仏を求めて

 次なる目的は井川大仏。これは事前に調べてた。この人。

 うーん、どうだろうか。なんというか、こう言っては悪いが、昭和55年生まれで俺より一学年下の大仏、ちょっとがっかり感を期待させずにはおられないというような。でも、鎌倉大仏と同じデカさというのはけっこうなもんだし、せっかくだからこれを見に行こうと。というか、ほかになにも見るものがないというか。
 それで、ダムのそばの土産物屋さんでソフトクリーム買うついでに、道を聞いてみた。このあたり、パンフやなんかの地図がよくわからんので。
 「すみません、井川大仏ってどうやって行くんですか?」
 「……ええ? 大仏、ですか? それは……、歩き、ですか?」
 「はい。どのくらいかかります?」
 「結構遠いですよ。……20分くらいです」
 というわけで、歩いて行くことにした。つーか、歩いて20分が遠いなんて、やっぱりこのあたりの人は車生活だから徒歩の感覚がこっちとは違うのかな、などと。

 などと、15分、20分、30分歩いても大仏出てこねえし。つーか、ソフトバンクの電波入らないから、現在位置もわかんねえし。けど、道は山道とかでなく、二車線道路でたまに車も通るし。

 したら、筑波大学の演習林みたいなのがあって、その先に集落が出てきた。マジ山あいの集落。

 電波も入るので調べてみたら、大仏まではまだ半分以上ある。もう50分くらい歩いたんじゃねえのか? これはあれか、どこかの地方では、あえて「近くです」と言うのが礼儀みたいなやつか? あるいは、単に井川大仏に興味がないから知らなかったか! でも、まあてくてく行くか、と思いきや、同行者から「行くなら一人で行け」的なダメ出しが。

 まあ、いいか。車があればすぐのところだろうし、べつに珍しくもねえよ。

 かわりにこれ拝んどこう。

 谷垣さん、拝んどこう。

 シャツ、拝んどこう(この写真、今回撮った中で一番好きなんだけど、もっとうまく撮れたんじゃないかと後悔してる)。

 帰路、行きにはいなかった釣り人がいた。こんなせせこましいところで! 俺が行くうらさみしいところには必ず釣り人がいるというのは恒例だが、あんたがチャンピオンだ。

さて、帰るか


 井川駅に戻って、土産物屋兼食堂みたいなところで「しいたけ弁当」を買う。肉要素なしでしいたけ盛りだくさん。これ、美味しい。

 しかしなんだ、井川駅の窓口で帰りの切符買うとき、「金谷まででふたり分6,030円です」とか言われて完全にフリーズした。いや、なんかわかんないけど、「え?」みたいになった。いや、この道のりが京浜東北線のように安いわけでもないが、なんというか実感できてないというか。

 まあ、正直、行きとは逆の展望の良い方に座ったとはいえ、この列車にも慣れたもので。こう、余裕が出てくるね。というか、疲れからウトウトしたね。でも、それもまた電車の楽しみでないのかね。

 あの道はどこにつづいているのかね?


 最後は連結しまくって、10両編成くらいになってた。なかなか壮観。
 と、こんな写真撮ってたら、乗換ぎりぎりに。千頭から金谷へ、ちょうどよい便はまたSLで、特急券買ったりトイレ行ったりしてたら時間がなくなったのだ。

 いや、正直、帰りもSLという気はなかった。むしろ、俺の知らない関西の鉄道の古い車両に乗りたい、みたいな気持ちがあった。それで、サクっと帰ろうと。が、あれだ、乗換のタイミングというのもあるが、だいたいSLじゃない方が鈍行であって、いろんな駅すっとばすSLの方が早いんじゃないかとか。

 というわけで、なんというか実に実用的にSLに乗った。なんか井川から乗ってきたワンダーフォーゲルみたいな大学生? たちもそんな感じだった。そんなんもいいだろう。写真は田んぼに映ったSLの影を撮ろうとしたが撮れなかったもの。

 写真はシャッターに映ったSLの影を撮ろうとしたもの。

おしまい


 そしてSLは金谷駅についた。旅はおわった。これから日常に帰るのだ。そして、こんな一泊二日の旅行をすることももうないだろう。忙しい毎日が始まるからか? むしろ逆だ。俺の予感では、会社が年を越せるかどうかあやしい。おそらく来年度を迎えられないだろう。まったく、やっぱり井川大仏を拝んでおくべきだったのかな?

 井川大仏を!