俺がこんなにオタクなわけがない

 俺がこんなにオタクなわけがないわけでもないような気がしないでもない。俺は俺がオタのフリをしているオタでない人間だと書くとき、俺は俺がオタでない人間のフリをしているオタのような気になるし、逆に俺は俺がオタでない人間のフリをしているオタだと書くとき、俺は俺がオタのフリをしているオタでない人間のような気になるのである。絶対矛盾的自己同一である。めでたくもあり、めでたくもなし。いずれにせよ、しっくりこない。俺は世界に対して居心地が悪いし、世界は俺に対して居心地が悪い。
 と、言いながらも、だんだん涼しくなってくる自転車向きの季節になってきた昨今、俺はといえば非常に何かそちら方面に意識が向いているのである。ひとつには自転車のパンクからの復旧に、前輪に一週間、後輪に一週間、後輪はまだ外しっぱなしという状況にあって、要するに「自転車はタイヤがめんどくさい」意識が強まって、ぜんぜん気乗りしなくなっているのだ。写真についてはまあそれなりに、なんとか埃を被らせないようにしている。

 そんなわけで、先々の予約などもしてしまっている。これがおかしい。時限爆弾みたいな気持ち。なんかわかんないけど、数ヶ月後、もう失業とかしてて、金という金がなくなって、食うものとか、家賃の心配で心が不安のどん底に陥ってるとき、ピンポーンってお届けものが届いて、開けてみたらストライクウィッチーズのゲームだったり、CDだったり、先行予約してたエロゲーだったりするんだぜ。なんかそのときの、その心境。そのために生きている、といってもいい。

Ever get the feeling you've been cheated? - 関内関外日記(跡地)

 そんな中にあって、とりあえず失業もしていない中にあって、スッと入り込んできたのが、アニメ、ゲーム、そのあたりである。このあたりの機序はよくわからない。ただ、気がつけばバルドスカイのファンディスクでバルド地獄に陥り(リンク先18禁)、ストライクウィッチーズのおまけ盛りだくさんのDSソフトが届き、ローソンであまり好きでない午後の紅茶を買ったりしているという具合だ。それがなんだ、全く悪くない。
 そうだ、ローソンだ。しばらく前の話だ。俺の行くローソンというのは石川町店になるわけだが、実質的に寿町御用達的といっていい。松影町、道の向かいにはやくざの事務所。店内においては、ワンカップ大関の品揃えには定評がある。新聞のたぐいは店内に見当たらず、レジの内側にあって、店員に告げると東スポが出てくる仕組みである。
 ある晩、そんな店内に「Utauyo!! MIRACLE」が流れてきたのである。あらゆる意味で似つかわしくない雰囲気。ドヤ顔のドヤではないドヤ系空気の中に、「ほんとに大好きっ!! テンション上昇 ルララ Powerful Gig Timeハートって ハートって ワクワク探す天才」である。「ハッピーはいつだってね "今"感じるもの 生きろ乙女 本能で、裸の」である。
 俺はもう、なにか涙が流れてきそうになった。近い未来か遠い未来か寿町の住人になった俺が聴いている、そんな気持ちになった。失われる美しいものがあると思った。俺は帰ってすぐにネットで安いフィギュアを注文した。それは涼宮ハルヒのものだった。べつになんでもよかったのだ。俺は俺を証すものがほしいと思ったのだ。
 12本のアニメの連ドラ予約、バルクホルンとエーリカのポスター、デスクトップには初音ミクの壁紙、枕元には『それ町』の単行本。今の俺の生活はこのようなものであって、ほかの何かではない。俺はしばらく先の失業して路頭に迷う俺に向かって、またなにか贈りつけてやろうかと思っている。

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→まだゲームを開けていない。ボストンバッグは思いのほか大きかった。こんなに大きいとは思わなかった。これで会社に通うことになるとは思わなかった。まだ通っていないが。

→ピルケースに手や顔を詰め込もうとしたが、顔は入らない。