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関内関外日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014ねん04がつ20にち

ブローティガン『ビッグ・サーの南軍将軍』を読む

……〈伝道の書〉の第一章には五七の句読点があって、その内訳はニニ句点、八個のセミコロン、八個のコロン、二個の疑問符、そして一七個のピリオドである

伝道の書〉の第ニ章には一〇三の句読点があって、その内訳は四五の句点、一ニ個のセミコロン、一五個のコロン、六個の疑問符、そしてニ五個のピリオド

伝道の書〉の第三章には七七の句読点があって、その内訳は三三の句点、ニ一個のセミコロン、八個のコロン、三個の疑問符、そして一ニ個のピリオドである

伝道の書〉の第四章には五八の句読点があって、その内訳はニの句点、九個のセミコロン、五個のコロン、二個の疑問符、そして一七個のピリオドである

伝道の書〉の第五章には六七の句読点があって、その内訳はニ五の句点、七個のセミコロン、一五個のコロン、三個の疑問符、そして一七個のピリオドである

 これが、ビッグ・サーのランタンの明りの下でわたしがしていたことである。わたしはこういうことをして、悦びとまたひとつの評価を得たのである。『聖書』はランタンの明りで読んだほうが良さが増すと、わたしは考える。『聖書はいまだ電気に完全に順応していないと思う。

 第四章の数字が少しおかしいように思う。ランタンの明りが暗すぎるか、誤植か、わざとかのいずれかおれにはわからない。ちなみおれが読んだのは1979年河出書房新社初版である。『聖書』はおそらくインターネットに順応しようとしているのだろうから、だれかあらためて数えてもいいだろう。

 タイトルの「ビッグ・サー」は地名だ。おれはなんとなく「南軍将軍」というえらそうな言葉からBig Sir」のようなもの想像していたが、大違いだ。「Big Sur」だった。

 こういうところだ。こういうところでヒッピーだかビートニクだかの風来坊みたいなのがだらだらと暮らすのだ、本書の半分くらいは。とくに印象に残るのは、うるさい蛙どもを黙らせるためにペットショップから買ってきた鰐を放つシーン、ガソリンを盗みに来たガキども脅すシーン、まあいろいろある。

 何事も比べりゃいいってもんじゃないが、『アメリカの鱒釣り』に比べると、『鱒釣り』の方がいいな、という気にはなる。なるけれども、あらためてWikipedia先生で「ビッグ・サー」がどんなところか知った上で、

 はじめてビッグ・サーのことを耳にしたとき、わたしはそれがアメリカ連邦南部同盟諸州のひとつだったことを知らなかった。

 という書き出しから読み始めると、また違った感じがするかもしれない。もう少し南北戦争に詳しければ、さらに。

 けど、そんなこと知らなくても十分、いや、八分はおもしれえ小説だろう、これは。なんて繊細で、優しいのか。都市から離れたアメリカの……、あれはなんだっけ。ケルアック? ケルアックの『ザ・ダルマ・バムズ』とかな。とはいえ、ケルアックのあれよりは、ずっとなんというか、飄々としている感じがある。突き放したところがあるし、小説ってもんを風狂に茶化してるところがある。そして、なんか哀しいところがある。そこが好きだ。

 ひょっとしたら『鱒釣り』が最高傑作なの? という予感もあるが、ブローティガンをしばらく読もうかとは思う。おしまい

>゜))彡>゜))彡>゜))彡(←鱒?)

『毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者』を読む

 まず、これを読んでもらいたい。

 わりと読み応えある。空中窒素固定法を確立させて人類食糧問題に大きな役割果たしてノーベル賞を受賞する一方で、「毒ガス開発の父」とも呼ばれ、それに批判的だった妻に自殺され(一年半後には再婚し)、皮肉にも第二次世界大戦中には自ら生み出したチクロンBで同じユダヤ人たちが虐殺される。その出自ゆえに祖国のために尽くそうとして、裏切られた、そういう男であるWikipediaに書かれていないことといえば、日本の星一との関係(結局星の援助によって後のマンハッタン計画従事者を生み出しているから、これも皮肉な話だ)、そして日本への毒ガス知識の伝達の話、そして第一次世界大戦後に海水からの金抽出に失敗したことくらいであろうか。

 まあ、そんなわけで、Wikipediaでも十分読み応えある人間の伝記である。本書も読み応えあるかどうかというと、まああるんじゃないかというくらいだろうか。なにせ題材の本人がでかすぎて取り扱い大変なのだ。あとはなんだろうか、理系不得手のおれがすらすら読めてしまったのだから、さまざまの科学的業績について記述が不十分という可能性もある。

 とはいえ、科学者というもの戦争という局面でどう振る舞うべきかというあたりについては、考えさせられる。ハーバーが言ったとされる言葉

科学者平和時には世界に属するが、戦争時には祖国所属する」

 あるいはパスツール普仏戦争時に言ったとされる言葉

科学国境はないが、科学者には祖国がある」

 そしてアインシュタインハーバーに言ったというエピソード

「君は傑出した科学的才能を大量殺戮のために使っている」

 などなど。

 とはいえ、毒ガス開発も戦争の早期終結のため、より犠牲者を少なくするためという発想で生み出されたものではある。あるが、それはたとえば空爆の父ジュリオ・ドゥーエが「長期的に見れば流血をすくなくするので、このような未来戦ははるかに人道的だ」と空爆について述べた(『空爆の歴史―終わらない大量虐殺』を読む - 関内関外日記)のと似ているだろう。結局は、早期終結にもなりはしないし、やられたらやりかえされるだけだ。それが兵器というものだ。よくしらないが、アメリカの無人兵器だってそのうちしっぺ返しを食らうだろう。それに、武器は使用されるためにあるのだ。抑止にもならない。そこんところなんだ、たぶん。わかんねーけどさ。

>゜))彡>゜))彡>゜))彡

↑この本で本書がちらっと紹介されていたので手にとった。