4期・74冊目 『惑星CB-8越冬隊』

谷甲州の初期のハードSF長編であり、執筆時はまだネパール在勤中であったことが影響してか、極めて過酷な環境で生死を賭けて闘いを挑む男たちの冒険アクションとしての色合いが強いですね。
惑星CB-8で標地任務に従事する汎銀河人パルパティ。そこは氷に閉ざされ地吹雪が吹き荒れる極寒の大地であり、ハイテク装備を所持していてもちょっとしたアクシデントで生命の危険に晒されることが冒頭から描かれます。
現場での仲間同士の絆が書かれる反面、自分たちの体面ばかり気にする役人や研究者との対立も深刻。どのような場所においても、様々な人間の立場が集まって組織を作る以上は軋轢があるのは変わらないものか。*1


そんな中、特殊な楕円軌道により大掛かりな地殻変動が起こり、極点基地周辺の気圧が劇的に低下(簡単に言えば海抜0から1万mの上空レベルに)。リスク分散のためにパルパティらが前進基地に移動(実質的には対立するメンバーにより追放)後、気候改造のために用意された人口太陽の機能が狂って、極点基地の壊滅をはじめ環境激変の恐れがあることが判明。
そのあたりの詳細な説明を兼ねた会話シーンが著者ならではなんですが、読む方の理解がついていけないのが悔しいもの。
ともかく、実はパルパティらより前からCB-8に植民していた流浪の地球人*2たちと力を合わせ、人口太陽を止めるために迂回路を取って極点基地*3をめざす苦難の旅がメインとなります。


とにかく人間が暮らすには厳しすぎる自然環境の中での冒険行が見もの。地球上で言えば南極北極ヒマラヤ並みと言っていいでしょうか(実際、最後の難関といっていい氷壁のクライミングシーンは自身の経験が活かされているのでしょうね)。
そんな中でも生き残りがかかっているため、休みもロクに取れない過密スケジュールで極点を目指すパルパティらの困難はすさまじきもの。何度も行程を阻む氷河が半端ない険しさと神々しい美しさ見せる中、精神体力の限界を超えながらもひたすら前に進む。
苦難とともにする仲間たちの人間像も含めて。SF冒険アクションとして非常に読みがいがある傑作でした。

*1:きっと著者自身も経験したのだろうなぁ

*2:遥か昔に衰退した地球文明の末裔として、そして極地に関するエキスパートとして描かれる

*3:基地にいたメンバーはアクシデントがあって通信途絶