11期・6冊目 『四畳半神話大系』

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。

主人公は京都の大学に通う3回生でプライドばかり高い割には非活動的で社交性も低い地味な青年の「私」。
「黒髪の乙女」とともにバラ色のキャンパスライフを過ごすことを夢見ていたが、現実は厳しく、悪友の小津を始めとする変人たちに振り回され無為に過ごした2年間。
今日もボロアパート下鴨幽水荘の四畳半部屋で悶々と過ごす。


新入生時の決断と細部こそ違えど、第1話から第3話まで各イベント(小津との交友や水槽の水漏れ事件、占い婆、蛾の大量発生など)や結末は同じとなっている、並行世界が描かれているのですね。

  • 第1話:四畳半恋ノ邪魔者 - 映画サークル「みそぎ」に入った場合
  • 第2話:四畳半自虐的代理代理戦争 - 樋口に弟子入りした場合
  • 第3話:四畳半の甘い生活 - ソフトボールサークル「ほんわか」に入った場合
  • 第4話:八十日間四畳半一周 - 秘密組織「福猫飯店」に入った場合

いずれも主人公視点ではサークルに馴染めず飛び出したり、苦労させられているのに対し、偏食のせいで顔色悪く妖怪の如き容貌(主人公曰く)の割には小津は意外と要領良く立ち回って楽しんでいる様を見て苦々しく思っている。
そして最終話だけは変わっていて、ドアを開けても窓から出ても自身の四畳半の部屋が延々と続く世界に閉じ込められた主人公が八十日間の四畳半一周(?)の旅に出るという話。


第1話を読んだ時点では、空回りばかりの鬱屈した主人公に学生時代の自分を思い浮かべたせいか憎めなくて、貧乏臭くても様々な出会いに溢れて楽しかった大学生活を懐かしく思いながら、それなりに面白さを感じたものです。
第2、3話はそのドタバタぶりはまぁ面白いとは言え、同じ状況説明や台詞の使い回しが気になって読み飛ばしたくなりましたね。
第4話で急変。延々と続く四畳半世界に閉じ込められて一体どうなることやらと思いつつ、それが第1〜3話を含む並行世界を横断するという展開に驚きでした。
最後に同じ結末に持って行ったのはちょっと強引な気がしましたけどね。
全編を通じて主人公や巡る人間関係や四畳半の雰囲気は好きです。九龍城の如き下鴨幽水荘を覗いてみたくなりました。