降る雪や恋の終りを見届ける


「シエルブールの雨傘」見る。女学生の時から何度も見た。ドヌーブ演じる16歳のジュヌビエーブが兵役に行ったギイの子供を身籠りながら、裕福な紳士に嫁いでいく。2年も待てないなんてあんまりだと、少女たち(私たち)は、当時憤ったものであった。

しかし今見ると別の印象。
ギイが旅立っていく駅頭のシーン、去っていく列車を見送って立ち尽くす、ってのが普通だと思うけど、彼女はまだ列車がホームから姿を消す前に、後ろを向いて去っていく。今までそれに気づかなかったので、あっ、と思った。これは愛の話じゃないのだ。

ミシェルルグランの素晴らしい音楽、場面場面のうっとりするようなコスチュームとインテリアの色彩設計。雨に始まり雪に終わる、どこを取っても美しいメロドラマ。
リアリティーが薄い登場人物は文楽の人形のように完璧に動いている。愛の物語という類型パターンにはまり、観るものを酔わす。
わっ、宝塚だったのだ。


「うまくいってる?」って別れ際にジュヌビエーブがギイに聞く。



「もっちろん」とギイが答える。