(071)鴨とアヒルのコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

椎名という大学生の現在の物語と琴美という女性の2年前の物語が同時に描かれる、カットバック形式の小説。椎名は引っ越し先のアパートの隣人・河崎に「本屋で広辞苑を盗まないか」と誘われる。断りきれなかった椎名は本屋から広辞苑を奪う手伝いをさせられてしまう。その計画の後、河崎やペットショップの店長をしている麗子から2年前の話を聞かされることになる。2年前の物語は琴美、その恋人であるキンレィ・ドルジ(ブータン人)、河崎、麗子を中心に展開する。世間で多発しているペット惨殺事件の犯人たちに出会ったことにより、琴美が目を付けられてしまう。琴美は何度も襲われるが、ドルジや河崎に助けられ、逆に犯人たちを捕まえようとする。2年前の事件と現在の本屋襲撃が次第につながっていく。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%92%E3%83%AB%E3%81%A8%E9%B4%A8%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC

久々の伊坂幸太郎作品。冒頭の序文が憎い。改めて上手い作家だと思った。自分の場合大抵の叙述トリックは騙されたことに納得出来ずにアラ探しをするのが常なのだけど、本作に関してはスンナリと受け入れるほど巧みに騙された。(ていうか叙述トリックは大抵騙されるので最近普通に自分がバカなんじゃないかと思ってきた...)ただ、以前にも思ったことだけどこの作家にはいまいち芯からハマれない。それを本作を読んでみて再認識した。理由はいくつかあるのだけど、その一つに状況などを説明するときに「たとえ」をすることが多いのだけどこれが漫才でいうところのインテリツッコミに近いものがある。インテリツッコミ自体は嫌いではないけどあれスベるときはとことんスベるのでそういう文章を見るとたまにキツイ時がある。というより作者の上手くたとえてやろうという思惑が透けて見えるのが嫌なのかもしれない。(少し話しを変わるけど笑いのセンスが合わないともう読めない。その作家の代表は個人的には奥田英朗だったりする。「最悪」は面白かったけど。)あと「神様を閉じ込める」とかのセンチメンタルな描写とか思想も少し苦手だと思った。個人的にはそういうのは読み手が感じることであって作中で書くのは蛇足だなと思う。何か非常に貶めているような説明になっているけど、本作はミステリとして良作だし、人に勧めるなら間違い無い作家だと思う。