(081)ラットマン

ラットマン

ラットマン

姫川はアマチュアバンドのギタリストだ。高校時代に同級生3人とともに結成、デビューを目指すでもなく、解散するでもなく、細々と続けて14年になり、メンバーのほとんどは30歳を超え、姫川の恋人・ひかりが叩いていたドラムだけが、彼女の妹・桂に交代した。そこには僅かな軋みが存在していた。姫川は父と姉を幼い頃に亡くしており、二人が亡くなったときの奇妙な経緯は、心に暗い影を落としていた。
ある冬の日曜日、練習中にスタジオで起こった事件が、姫川の過去の記憶を呼び覚ます。――事件が解決したとき、彼らの前にはどんな風景が待っているのか。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334925932

面白かった!冒頭の下りから一気に引き込まれた。普通にホワイダニットかと思いきや最終章で目まぐるしく変わる世界。結末も上手くタイトルに結び付けて見事。仕掛け的にはそれほど目新しいわけではないけどそこまで執拗にやるのかという感じ。一応自分はバンド写真を撮っているからところどころに出てくる楽器用語は一般の人より入りやすかったのかと思ったりもした。少し気になったのは最初の下りでお姉さんが医者の先生に見せて驚かせようと思ってランプを飾ってたけど冬とはいえ15時だったらそこまで暗くならないだろうから全然驚かないんじゃないかと思ったのだけど。むしろそこが複線だと思ってた...。とはいえ、全体的には綺麗に収まっている。むしろ綺麗過ぎて後々内容を忘れることがありそうな予感もする。同じことは東野圭吾作品にもいえて、やはり多少の不整合や不完全であってもトラウマを残すぐらいの歪さがあったほうが記憶に残ることが多いのは事実。ちなみにこれは読んだ後に同作者の「カササギの四季」を読むとニヤリとするのでオススメ。