(129)クドリャフカの順番

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

シリーズ第3弾。単行本の副題は『「十文字」事件』。これまで物語は主人公である奉太郎の一人称で語られていたが、今作では場面ごとに奉太郎を含む古典部部員4人の視点が入れ替わり、ひとつの物語が複数の主観の語り部で進行する。
神山高校の年間最大イベントである文化祭が始まった。しかし古典部は、出品する文集「氷菓」を手違いで大量に作りすぎてしまった。文集を売るため方々に向けて奔走するえる、文化祭を思う存分楽しみながら文集を宣伝する里志、大量発注に責任を感じながらも漫画研究会のギスギスした雰囲気に苛まれる摩耶花、静かに店番をする奉太郎。古典部員は大量の在庫に頭を抱えつつも、文化祭は進んでいく。
そんな中、校内では「十文字」と称する何者か犯行声明を残して各部活から物品を盗んでいく、奇妙な連続盗難事件が起きていた。古典部は、知名度を上げて文集を完売させることを目指し、「十文字事件」解決に取り組む。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%80%88%E5%8F%A4%E5%85%B8%E9%83%A8%E3%80%89%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

青春ミステリの傑作。といって過言ではない作品ではないでしょうか。内容的にもボリューム的にも大満足。これはアニメを見る前に読みたかったとすら思ったりした。まぁアニメを見たからの面白さもあるのかもしれないが。今回では奉太郎視点だけでなく多視点での語りで進行されていたがこれは米澤作品では珍しいような。少なくてもヒロイン視点での語り、ヒロインの内面描写は殆ど無い気が。個人的にはこれに関しては作者の普段の文体との違和感があってそれほど成功しているようには思えなかった(特にえると里志)とはいえ本筋の構成としては問題は無いのだけど。ワイルドファイアの下りはアニメでも笑ったけど原作の言い回しも笑えた。ノリノリで書いとる。何気に「愚者の〜」では行けなかった打ち上げでは本作でしっかり行けているのが良かった。ただ完全無欠な大団円でないところも相変わらず(笑)既刊の2作も早く読まねば。