(134)顔のない肖像画

顔のない肖像画

顔のない肖像画

『顔のない肖像画』―それを描いたのは、戦後画壇に彗星のごとく現われ、10年間の精力的な活動の後に死した孤高の画家、荻生仙太郎だった。その絵が個展から忽然と消えた後、彼の作品のオークションが開催されるが、競売は奇妙な展開を見せてゆく…。美術品をめぐる人間心理の綾を描く表題作をはじめ、緻密な構成と巧妙な筆致で男女の微妙に揺れ動く感情を綴る短編7編を収録。

連城作品の面白いところはトリックもさることながらそのトリックを生かされる背景作りや人間関係、動機も絶妙であるところだと思う。本作ではそのバランスが丁度良い内容となっていた。まぁ若干今読むと感覚として古い感じを受けるものがあるが。「潰された目」は「百光」のプロトモデルともいえる内容か。個人的には「孤独な関係」の結末が面白かった。なんかアンジャッシュのすれ違いコントに通ずるものがあるような。とはいえ今まで読んだ中では一段落ちる気が。まぁそれは名作が多いだけということで十分レベルの高い作品。