(141)蒲生邸事件

蒲生邸事件 (文春文庫)

蒲生邸事件 (文春文庫)

主人公・尾崎孝史は、大学受験に失敗し予備校受験のため上京したホテルで火災に遭遇、不気味な暗い雰囲気を漂わす同宿の中年男・平田に助けられる。しかし平田に連れられて避難した先は、二・二六事件真っ只中の戦前の東京であった。
ホテルが立っていた場所に当時あった蒲生憲之陸軍予備役大将の館に身を寄せた彼は、蒲生予備役大将の自決に遭遇する。第二次世界大戦へと走り始める当時の日本の将来を予言するかのように、「この国はいちど滅びるのだ」と遺書を残して自決したことで知られる蒲生予備役大将。現代に戻ることに失敗した孝史は、その場の状況から事件性を感じて犯人探しをはじめる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%B2%E7%94%9F%E9%82%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6

新規開拓の一環としてド定番の宮部みゆき作品。これまで時代物の短編は読んだことはあってそれなりに面白かったけどそれほど印象に残っておらず、有名作品は大抵が長編だったのでこれで面白くなかったら辛いなぁと足踏みしていたのだけど全くそんなことなく。非常に面白かった。ジャンルとしてはSFになるのかな。そして広義な意味ではミステリといえなくもないかと。とはいえバリバリのミステリトリックが用いられるわけでなくすごいミスリードとか気にしていたけど全て無意味だった。でもそれが肩すかしにならないところがこの作品の強さ。最初のタイムトラベルを告白する下りまではトンデモ展開かと少し危惧したのだけどそこから最後まで読みやすいけど硬質な作品。結末が大団円気味で甘いという人もいるかもしれないけど最近辛い作品ばかり読んでいたので自分としては気分的によかった。最終章のタイトルで主人公の名前に込められた意味を初めて知らされるのはよいと思いました。個人的にはふきより珠子のほうが可愛いくないかと思ったけど。次は「理由」か「火車」あたりを。「模倣犯」は長すぎるから最後かな...。
あと今回から★採点を。自分で書いてて「面白い」「それなりに面白い」ぐらいの感想が多すぎて本当に面白い作品がいまいち良く分からなくなってきそうなのでもう少し数値化してみようかと。とりあえず10星満点で。ただ最初から面白い作品だったので採点基準がこれはこれで難しい。

【採点】
★★★★★★★★☆☆(8)