(143)Yの悲劇

Yの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Yの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

家族皆が変人奇人で有名なハッター家で起こった毒殺未遂事件。しかし、それはその後の殺人劇の前奏曲に過ぎなかった。元舞台俳優の名探偵ドルリー・レーンが、この謎に挑む。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Y%E3%81%AE%E6%82%B2%E5%8A%87

名作の看板に偽り無しの一作。本格物としては割りとオーソドックスな仕掛けかもしれないが結末がとにかく秀逸。正直解答編まではそれほど面白いとは思わなかった。終盤までレーンの煮え切らない推理が少し苛々させるものすらある。前作に該当する「Xの悲劇」を読んでないためレーンへの愛着がないせいもあると思うけど段々糸がほどけていくような気持ちよさはそれほど無いので読んでて少し不安があった。ただそれも解答編を読めばすべて納得出来る。犯人はたしかに意外なのだけどそれ以上にその先の結末が本作品の肝といえる。ネタバレ的な感想としては人を殺す人間を"犯人"とするなら本作の完全な犯人当てはほぼ不可能だろう。その結末はかなり好悪が分かれのかもしれないけど自分は大好きです。「ハサミ男」を読んだときにも感じた黒い美しさ。ただ完全にネタバレな突っ込みをするならば5感のうち3感が無い人間は残りの感覚が鋭敏になるという前置きがあったのに夏場に数日経っている牛乳を混入されて全く気付かないのはどうかしてるぜ。まぁ別にいいけど(笑)
【採点】

★★★★★★★★☆☆(8)