続・脱力日記

描いたり作ったりしてる人のダラダラ日記

 367_花束



とうとう、というか、ようやく、というか。
なんとか個展開催にたどりつきました。
いろいろとお手伝い下さった方々には心より感謝です!
そして本日は、いろいろな方がお越し下さり、
これも心より感謝!
花束を差し入れて下さる方もあり、
それをギャラリーでスケッチしてみました。
人が出たり入ったりの合間を見て描いたので
ちょっと落ち着きのない絵だな…。


そういえばギャラリーの様子を撮って
アップしようと思っていたのに
デジカメを忘れるあいかわらずの間抜けぶりでした。

法廷内スケッチ…最終回

三日前
二日前
昨日からの続きです。


随分長く引っ張ってしまったこの話題ですけれども。
今まで書いてきた一連の出来事はどれもこれも
ドタバタとした大騒ぎで面白いことこの上ありませんでした。


私が地裁に着いた時にすれ違った三々五々と散って来る若者たち。
その嬉しそうな高揚した顔つき。
傍聴券の抽選にはずれたとしても懐になにがしか入ったでしょうし
何よりこの大騒ぎの一端に参加したことの満足感が伝わります。


地裁前の道路際に沢山たまっていたおばちゃんたちは何だったんでしょうか。
やはり傍聴券の抽選バイトに参加した人たちだったのか、
いずれも物見高く地裁の玄関方向を見つめていました。
秋田始まって以来の見物を見逃すまいと思っていたのかしらん。


2500人並んだ人たちの、かなり少なく見積もっても
2000人はマスコミが雇った人たちだったでしょう。
バイト料が1人2000円だとすれば
それだけで4000000円。よんひゃくまんえんです。
25席に400万。1席16万。なんたるプラチナチケット!


地裁内でそこかしこに陣取り、落ち着かずあちらこちらと
移動しては打ち合わせをしたりメモを見たり。
白いYシャツ姿の彼らは総じて聡明そうで顎が細くて
鼻が高くて目もと涼しく見目麗しいのでした。
ああ、偏差値高い大学を出て、大マスコミに就職し
今ここで自分の働きを見せようと法廷に入る前に
いそいそと革靴をランニングシューズに履き替えるのですね。
ちょいと年上の記者が
ああ、飛び出し用だな?なんて声かけて。
そうです!なんて答える声は力に満ちて。


開かれるラップトップ。繋がれる回線。
法廷の扉前にむらがる若い人群。
扉が開く度に飛び出してくる若者。
次に傍聴券を渡すべき人を探して、
あるいは傍聴券を受け取りたくて手を伸ばして、
激しいバトンタッチと度々開閉される扉。


そんなことのどれもこれもがただ物珍しく。
喧噪、高揚、緊張…
地裁の三階の数十の傍聴席を擁する小さな法廷を中心に
ありえないような熱気が渦巻いているのが面白く。


でも。


今回のこの一連の出来事の中で、
一番心を打ったのは、
こんなことどもではありません。


三社前の記者の大チョンボが原因で
私はたまたま見るはずのなかった休廷直前の
午前の法廷を見ることになりました。
被告は休廷を宣言され、席を立ち腰縄と手錠を受けて
退廷していったのですが。


その直前。


時間にすればほんの数秒だったか、十数秒あったのか。
傍聴席に背をむけて看守の指示を待っていた彼女は、
さあドアにと促された刹那、
ドアと反対方向の傍聴席の方に身体を向けたのです。
そして一歩、あるいは半歩だったかもしれないけれど
身をこちらに進めるようにして
彼女の後ろ姿をスケッチしていた私の方を見た。
いや、私の後方にいるはずの被害者の遺族を見た。


その時の、顔つき。
今まで方向的に見えなかった右頬は
随分と荒れて吹き出物が赤く見えた。
目は何かを必死に探していた。
口元は何かを伝えようと開きかけていた。


ああ、遺族の姿を探しているのだ。
何かを伝えたいのだ…と思う間もなく
いきなり私の胸の中に激しく大きな悲しみが流れ込んできた。
それは自分でもびっくりするほどの感情で、
その場で涙が溢れて来そうだった。


すでに遺族はその場にいなかったのでしょう、
被告は目を宙に泳がすと看守に即されるままに
こちらに背を向け、ドアのむこうに消えていきました。


あの時彼女は何を言いたかったのだろう。
もしまだ遺族があそこにいたら、何を伝えたかったのだろう。
必死にすがるように何かを求める真剣なあの眼差し。


私は押し寄せる悲しみをなんとか押し殺して
仕事に戻ったのですけれど、
全てを終えて自宅に帰りほっと落ち着いてみたら
とにかく泣けて泣けて仕方なかった。大泣きした。


その感情をなんと言っていいかわからない。
あえていうなら「かわいそう」。


かわいそうなのは殺された無抵抗の子どもたちであり
その遺族であるのはわかっている。
やったことに弁護の余地がないのもわかっている。
それでもなお、「かわいそう」なのでした。


あのありえない熱狂のど真ん中の
すでに傍聴人のかなりがいなくなった静かな法廷で
一人の女性被告が見せたあの刹那の表情。
それが何よりも私を打ったし、
何よりも私にとって真実でした。


こんなことは、あたりまえながら
あの大狂騒を作り出していた新聞もテレビも雑誌も
決して決して伝えることはないだろうから、
どうしてもここに書き残しておきたいと思いました。


以上、おしまい。