「ボランティアの義務化」に賛成しないでもらう

安倍氏の教育政策のうち、どうも「ボランティアの義務化」が一番注目を浴びそうな雰囲気ではありますまいか。「教員免許の更新」や歴史教育の問題は、それほど「世間の誰もが」する話題にはならなさそうな気がします。

で、さっきテレビで「太田光の私が総理大臣になったら」をチラ見しました。「若者に老人ホームでのボランティアを義務づける」みたいな提案をして、最終的に賛成票19、反対票13。番組的には「可決」。途中の議論はほとんど見てなかったんですけど、さもありあん、という感想。「良い事」を義務づけるのは良い事だ、と思われるんだろうな。こういうのには「良い人」が賛成する。善意なのだと思います。だから反対するのはとても困難。反対する理屈は並べられるかもしれないけど、それで納得してもらうのは困難だ。


あなたが「ボランティアの義務化」に反対してるとして、もしあなたの親や兄弟が賛成だったら、どう説得しますか?たとえばもし賛否を投票することになったときに、その親や兄弟が反対票を投じてくれるようにするにはどう説明すればいいんだろうという話。つまりここでは、議論で負かすことには何の意味もないわけです。意見を変えてもらわないといけない。もちろん自民党員じゃなけりゃ総裁選には直接関係ないんだけど、思考実験として。


難しくて僕にはあんまり思いつきませんが。

まず「ボランティアの義務化」とはすなわち「無賃労働の義務づけ」であることを納得してもらいますかね。タダ働きを義務として課すことだと。ここで「強制労働だ!」とか「徴兵につながる!」とか「軍靴のお(ry」とか言うと「そんな大げさな」と相手にされなくなると思います。まず、キレイな言葉こそ使ってるけど、それは要するに「無賃労働」「タダ働き」なんだよと。

つぎに「タダ働き」であることは、「何をやるか」に関係なく「タダ働き」には違いないんだよと。老人介護だろうがゴミ拾いだろうが農業だろうが、職業としてやれば賃金が出るはずのことを、政府の都合でタダでやらされるって話なんだと。

さらに「それって大学の学問と関係ないじゃん」という所も納得してもらいます。勉強のために大学に行かせるんでしょう?

それから「タダ働き」させれば「道徳心」が育つ、と本当に思う?と問います。中学高校の体育会系の部活みたいなイメージ持ってるかもしれないけど、あれだって「自分の好きな」スポーツを通じてこそなんじゃない?「野球部入部を義務づけ」とかしたってハンカチ王子には絶対ならないと思わない?*1


そして「日本社会から道徳心が失われている」から「義務にしてでもボランティア活動が必要」と本当に心から思うなら、若者に押しつけないで大人が率先してやるべきじゃない?我々大人が何もしないで、どうして若者にばっかり押しつけるわけ?ていうかむしろ、そういう事を言ってる政治家こそ一番に3ヶ月なり半年なりタダ働きするべきじゃない?僕たちだって「近ごろの若者は」ってずっと言われてきたじゃないですか。などと言って、なんとか「まあそりゃそうかも」と思ってもらいたい。


というか、政治家が自分たちの思うように「若い労働力」を使えちゃうような社会は僕は絶対に嫌だね…と続けてみましょうか。政治家が若者使って自分らの好きなことさせちゃうんだぜ。いくらその目的が、どんなに「良い事」「正しい事」であっても、政治家が若者を意のままに動員するなんてゾッとするよ。それも法律まで変えてさ。そりゃ僕だって若者には気にくわないのもいるけどさ、だからって、あいつらを政治家に好き勝手にさせるのは間違ってるよ。それは政治がやっちゃいけないことなんだよ。政治が若者を好きに使うようになったらオシマイだよ…。と、政治が若者なんかよりずっと危険なものになりうるってことを思い出させたい。


うーん、考えてはみたものの脳内問答なので効果がわからない。自分の周囲にそういう人いないからなー。でもムツカシそうだよねー。まあ「あなたと僕はある面で問題意識を共有している」「だけどアレは解決法として全然間違ってる」という線でいくんでしょうね、いずれにしても。


あなたならどう説得しますか?

*1:いや、ここ横滑りしてるのはわかってます