雨宮処凛さんの新著

生きさせろ! 難民化する若者たち

生きさせろ! 難民化する若者たち

読みました。フリーターや野宿者問題、心の病、そして過労死というきわめて現代的なルポをもとにした雨宮さんの主張は、以下に凝縮されている。

闘いのテーマは、ただたんに「生存」である。生きさせろ、ということである。生きていけるだけの金をよこせ。メシを食わせろ。人を馬鹿にした働かせ方をするな。俺は人間だ。(p.10)

生命倫理学では、「生命の神聖性」(Sanctity of Life)と「生命の質」(Quality of Life)という先鋭的な対立があるとされる。しかし、雨宮さんが「生きさせろ!」という可能性に賭けて声を大にするとき、もちろん「ただ生きているだけを達成させること」を主張しているのではない。「人を馬鹿にした働かせ方をするな」と言うぐらいだから、「当たり前に認められてよい」*1レベルの個人の生を社会は無条件に肯定せよ!ということなのか。だとすれば、SOLとQOLは対立しない、むしろ個人のQOL(「生活」の質)を社会が高めるという視点で、SOLと両立し得るのではないか、そんなふうに感じた。
雨宮さんのブログ「すごい生き方」
http://www.sanctuarybooks.jp/sugoi/blog/
<参考>

生命の神聖性説批判

生命の神聖性説批判

不平等の再検討―潜在能力と自由

不平等の再検討―潜在能力と自由

*1:私自身はと言えば、アマルティア・センの言う「基本的ケイパビリティ」の水準を想定しているが、これは当然に議論があってよいところ。