女性が安楽死させられる国アメリカ

噂には聞いていたが、そのことを書いた文献を読む機会があった。これは、日本ではほとんど話題になっていないのではないだろうか。以下、下記の書物『女性とジェンダーの心理学ハンドブック』から引用。

女性とジェンダーの心理学ハンドブック

女性とジェンダーの心理学ハンドブック

自発的ではない不本意な(医師や家族によって実行される)安楽死のケースでは、女性はオランダやオーストラリアでは約半数、合衆国では3分の2を占める。(235頁)

合衆国でメディアによって公表された安楽死のほとんどは、女性のケースである。・・・1970年代後半に、ジーン・ハンフリーの幇助自殺は『ジーン・ハンフリーのやり方:ある愛の物語』として上梓された。・・・(中略)・・・同じ年(1993年)、ヘムロック協会(安楽死権利擁護団体)の地方支部長が自著The Struggle for Death with Dignityを7人の女性(カレン・アン・クィンラン、ナンシー・クルーザン、パティ・ロジャーズ、ディアン・トゥランバル、ジャネット・アドルキンズ、シェリー・ミラー、マージョリー・ウォンツ)に献呈している。彼女たちは、支部長が安楽死を推進した重要なケースとして考えていた女性たちである。・・・(中略)・・・要約すると、延命と死を早めることについての方針や実行は、高齢女性に特に関連が深い。アメリカでは、高齢女性は罹患期間が長いこととさまざまな資源が不十分であるために、病気が深刻な場合、死んだほうがよいと自分でも考え、他者からもそう見られる傾向がある。死ぬ権利が、女性にとっては死ぬ義務となってしまっているのかもしれない。(235〜236頁)

アメリカでは非自発的安楽死(慈悲殺)の3分の2が女性だというのは、もしその数字が正しいのだとしたら、驚くべきことである。オランダやオーストラリアでは約半数というわけだから、アメリカの特異性が浮かび上がる。

さらに、アメリカのメディアで大きく取り上げられてきた安楽死事件の被害者のほとんどが女性だというのはどういうことだろうか。カレン・アン・クィンラン、ナンシー・クルーザンは、日本でも知られた名前である。本書公刊後に起きた、テリー・シャイボ事件もまた女性の安楽死であった。

上記をもしまともに受け取るのなら、アメリカにおいては、安楽死は、
・女性の慈悲殺の被害者が、男性をはるかに上回っている
・女性の安楽死がマスメディアによって利用されている
という意味で、<安楽死は女性問題である>ということになる。