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2007-06-27

[][][]フリーターズフリー

 アマゾンから届いたので、少しづつ読んでいる。とりあえず、冒頭の対談、ビッグイシューの発行者へのインタビュー、栗田さん、野崎さんの文章に目を通す。

 対談では、フリーターズフリー(FF)のコアメンバーの自己紹介がなされ、本書が刊行に至ったいきさつや、目下の問題意識がざっくばらんに語られている。

 FFは「有限責任事業組合」という組織形態を取っている。世にある営利企業、同人誌的な私的サークル、学会とは異なり、志をもった人が出資金を持ち寄り、協同で事業を営む。本書の出版は、働くひとがつながり支え合う新しい方法を提案する、という意図もあるようだ。

 FFのウェブサイト。

http://www.freetersfree.org/

 はてなにブログが開設されている。

http://d.hatena.ne.jp/FreetersFree/

 ビッグイシューの発行者の佐野さんのインタビュー。ビッグイシューとは、都市の路上で野宿者が販売する雑誌である。一般の書店では売っていない。定価200円の雑誌を一冊売ると、売り手に110円が支払われる。仕事と収入を提供し、野宿者の自立を支援しようというわけだ。

 ビジネスの手法を用いて、社会問題の解決に貢献しようとする「社会的企業」は、日本ではまだ少ない。ビッグイッシューはその貴重な試みのひとつ。佐野さんが雑誌を販売しようと思いついたいきさつ、ビッグイシューを立ち上げるまでの苦労話が興味深い。

 ウェブサイトがある。

http://www.bigissue.jp/tachiyomi/saishin.htm

 実は、私はまだ読んだことがない。今度購入してみたい(販売スポットは、上記のウェブサイトで公開されている)。

 「”ないものとされたもの”これくしょん」と題された栗田隆子さんの「観察ノート」。ユニークな視点と、簡素だが思考の奥行きがじんわり伝わってくる一連の文章が印象に残った。その出だし。

 やりたいことは書評やエッセイではない。強いていえば、「観察ノート」といえるだろうか。「見えてきたもの」を書くこと、それに尽きる。

 「世間様が見せたくないと思っているもの」を見たい。「自分が見たくないと思っているもの」も見たい。見たいという願いにとりつかれた「観察」とそれに基づく「報告」を集めた「これくしょん」、それが私の書きたいものだ。見たくないものを見ようとすると、痛みを感じる。その場合、痛みを覆い隠さないように努めた。痛みは痛みとして言葉にしなければならない。ただ、その痛みに淫してもいけない。痛みの中に己の実感を求めることは何より危険だから。最も無意識かつ強烈な自己中心となるから。「世界の中心で」私は生きているわけではない。とはいえ、世界の一部を占めている。見たいと願い、祈れば、見えてくるものがあると信じること。そこからこの「これくしょん」は生まれた。……(150ページ)

 栗田さんは学生の頃にシモーヌ・ヴェイユを研究されていたそうだ。このような視点はヴェイユ(彼女も自身の観察にもとづくノートを書いた)との繋がりを感じさせられる。「これくしょん」では、女性フリーター、秋葉原サウンドデモ、雑務(家事労働)についての考察に、はっとさせられる論点がいくつもあった。今後の号で、続きを読みたい。

 野崎泰伸さんの「生活保護とベーシック・インカム」。日本の格差社会化の進行にともない、社会保障政策としての「ベーシック・インカム論」の紹介や、導入についての呼びかけが、ちらほら聞こえるようになってきた。

 野崎さんは「人間の生存維持に必要な最低限の財」を再分配するベーシック・インカムの理念に一定の評価を与えつつも、それが貧困者・低所得者に貼り付けられた「スティグマ」(=貧困者・低所得者は社会の落伍者だという偏見)をなくし「生の無条件の肯定」を目指す政策としては不十分で、福祉受給者の個々のニーズを顧慮しない問題をはらむと指摘する。

 ベーシック・インカムの対案として野崎さんが提案するのは、現行の生活保護制度の改良である。

生活保護法」

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO144.html

 ベーシック・インカム法を新たに制定するより、生活保護法を改良し、福祉受給者の個々のニーズに対応する方が望ましいとする。生活保護を受給する者は社会の落伍者であるという考え方は、ベーシック・インカムの導入によって「回避」するのではなく、「人々の価値意識を規定する私的所有の論理」を批判することで「解消」されねばならない。

 「貧困者・低所得者は社会の落伍者」「生活保護を受けるような人間は無価値な存在」という人間観を内面化している人、また、そうした見方を内面化させる社会のあり方に、一石を投じる内容だ。

 すべてに目を通すまで時間が掛かりそうだが、この充実した内容で1500円は安いと思う。生田さんのフリーター論は、それだけで新書一冊分ぐらいの字数がありそうです。

kanjinaikanjinai 2007/06/27 21:41 面白そうですね。私も購入して読もうと思います。新たなうねりになっていってほしい。

eireneeirene 2007/06/27 23:58 他の方の文章も読み進めていますが、面白い。オススメです。

くりくりくりくり 2007/06/28 20:15 はじめてかきこみしました。フリーターズフリー販売係の栗田隆子です・・・。
kanjinaiさん、もしよろしければウェブでの直販も承っておりますので、どうぞお立ち寄りくださいませ。といいますか宣伝しにきてしまって失礼しました。
eireneさん、ご感想ありがとうございます。ヴェイユの思想の根に食い込みながらなお「生き延びること」を考えることが今の私の焦点となっています。なにせヴェイユは「死」を受け入れることが「真理」を受け入れることと語り(それこそ十字架上のイエスですね)私の年で亡くなってしまったので・・・。私自身カトリックの信徒ではあるものの、十字架上の死を受け入れることと生きることを肯定するという間のギクシャクとした関係をまずは注視しているところです。

eireneeirene 2007/06/28 22:44 栗田さん、こんにちは。働くことについての考察を通して、人間と社会のあり方を問い直すという、今までにないコンセプトの雑誌で、面白いです。今後の発刊を、ささやかながら応援したいです。

栗田さんの文章は、初めて読ませていただきました。栗田さんとは面識もないのに、以前から知っている友人の声をじかに聴いたような読後感が残り、不思議な気分になりました。私は学生、院生の時にカトリックの神学を学ぶ機会がありました。聖書やイエスの生き方、またキリスト教の伝統には、人間と社会のあり方を考えるうえで貴重な問いかけが沢山ある……と気づかされました。ヴェイユは彼女なりのやり方で、その問いかけに真摯に答えた人という印象があり、尊敬しています。栗田さんの観察ノート、楽しみにしています。

sugitasyunsukesugitasyunsuke 2007/06/29 17:52 ちなみに生田武志さんの群像新人賞第一作もヴェイユ論です。
http://www1.odn.ne.jp/~cex38710/s.weil.htm
大澤&杉田が大阪の生田さんに連絡を取るきっかけとなったのが、野宿者問題とフリーター問題を結び付けようとするこの論文でした。
その意味ではヴェイユはなぜかFFの中核にある女性である、と言えます。

eireneeirene 2007/06/29 20:59 杉田さん、こんにちは。生田さんのサイトの紹介ありがとうございます。メンバーのみなさんがヴェイユでつながっておられたとは、不思議な縁ですね。杉田さん、生田さん、大澤さんの文章は、これから読ませていただきます。

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