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2007-08-07

[][][]オバサンの性的欲望は少年へと向かう

論座』2007年9月号で、信田さよ子が「ホントはこわい?王子ブーム」というエッセイを書いている。

まず、ペ・ヨンジュンファンの一部が、斎藤佑樹(ハンカチ王子)に流れたが、信田自身がその典型だと告白する。まずは斎藤が、安定した愛情溢れる家族によって麗しく育てられてきたことが魅力であると言う。「すくすく育ち、イケメンでクレバー、ピッチャーとして豪腕」の斎藤は「無垢で光に満ちて」おり、彼を見ることで(自己)肯定への渇望を満たされるという。

と同時に、斎藤を追っかける男性カメラマンたちが、斎藤への同性愛的視線によって撮影していることに注意をうながす。そのホモセクシャルな視線をとおして、オバサン(信田の用語)は斎藤に性的欲望をかぶせているというのである。

さらに、甲子園での斎藤と田中奨大(元駒大苫小牧高投手)のカップルに、腐女子とオバサンは「ホモセクシュアルな性幻想を見て「萌えた」」だろうと指摘する。

信田は書く。

[オバサンは]男から見られ、性的欲望の対象たれという強迫から解放されるので、今度は見る主体になれる。どうせオバサンだからと開き直ることもできる。

 とはいえ、子育てを終え、生活時間の余裕と体力を持った彼女たちは、いつまでもなまなましくセクシュアルでもある。これらが相まって、−−男性がそうであるように−−若くみずみずしい異性に性的欲望が向かうことに何の不思議もない。ただそれは、侵襲的で支配的な男には向かわない。抑圧的な男らしさにはもう辟易しているのだ。

 安心して見下ろしたい、支配されることなく相手を享受したい、そんな立ち位置をとるのに絶好の対象がペ・ヨンジュンであった。そこを突破口としたオバサンたちの欲望の回路は、社会現象といわれるまでに韓流ブームを盛り立て、そして王子ブームに至る。(122頁)

いつの日か王子ブームも終わるときが来るだろうが、性的主体となった彼女たちの欲望の回路は、それを満たすべく新たな表象を求め続けるだろう。(123頁)

というわけである。非常に納得できる論旨であった。思うのは、これもまた、「女・エロス」を合い言葉とした70年代リブのひとつの帰結であり、勝利であるということである。またこれは既婚婦人や後家が美少年のイメージを求めた江戸のエロスへの回帰でもあるのだろう。

これからの時代、性的主体となったオバサンと腐女子の数はますます増大するばかりである。それに比して、麗しき男子の数は相対的に減るばかりであろう。ちょうど企業におけるオジサンの群れと、希少未婚女子、という図の、まったく逆転した光景が、社会のあちこちで形成されていくのだろう。その結果として、男子は中学・高校に入ったと同時に、母親くらいの年齢の女性も含むあらゆる年齢の女性たちから、シャワーのように性的欲望の視線を浴びるという状況に直面しながら、自我を形成しないといけなくなるであろう。つまり、いまの10代女子が置かれているのと類似したような環境に、男子もまた置かれるようになっていくということだ。もちろん現在でもこのような側面はあるが、今後はこれがさらに一般化し、顕在化し、露骨化していくようになるだろう。人間である前に、性的男であるということを外部からの性的視線によって自覚せざるを得ない、という時代を生きなければならない将来の男子たちは、いったいどのような性的主体形成をしていくことになるのだろうか。彼らもまた自分の性的身体を自傷し、援助交際への渇望を見せるのであろうか。

font-dafont-da 2007/08/07 00:30 今月のananのセックス特集では、ダルビッシュ君のフルヌードでした。私はこの手のポルノに全く欲情しないので、ちょうど今日開いてみて、興味を失って買わなかったところです。
正直、よくわからない世界なので、信田さんの話は興味を持ちました。私も若い王子が良いと思うようになるのかなあ…。

newarrownewarrow 2007/08/07 08:42 知り合いの36歳の未婚女性はジャニーズのKAT-TUNというグループの大ファンで、「亀梨君(メンバーの一人)かわいい〜」などと言ってます。このエントリは彼女のことですね。
kanjinaiさんはいつも男のロリや萌えに厳しいですが、女性には肯定的ですね。これがもてるコツでしょうか?

通りすがり通りすがり 2007/08/07 12:51 個人的経験として、同様に見られた経験があります。
その年代でオバサンにそういった目線で見られる事は、私にとっては母親からのそれと同義であり、気持ちの悪いものでした。10代女子の「オヤジがキモイ」と感覚的に大差はないはずです。
一部のニーズへの供給という意味で、現在でもオバサンへの援助はありますが、それがより顕在化するという事は十分に考えられると思います。

kanjinaikanjinai 2007/08/07 13:20 >newarrowさん たしかに私の言説は女性の少年萌えには肯定的に見えますね。貴重なご指摘、ちょっと考えてみます。モテるこつではないと思うけど。

それとブックマークコメントにマジレスしておくと、私はこういうことがいま始まったなどとは書いてません。すでにあったことがますます露骨化していくだろうということです。江戸時代にもあったしね。ヨーロッパ文学はご存じのとおり。でもこれの大衆化は、きっと別の質的変動を呼び起こすだろうと思います。

>通りすがりさん 「感じない男」にも書きましたが、実は、若いときの私が、この視線の被害者だったのですね。あの気持ち悪さは、身の毛がよだつよね(>私に欲情したオバサンたちよ)。なので私はセクハラにあう若い女性には実感として同情的です。(もっともいまの私は年齢的にはセクハラする側ですけどね)

kanjinaikanjinai 2007/08/07 14:00 >ブックマークコメント 「性的」身体を自傷し、援助交際を「渇望」する事例があれば、コメント欄で教えてください(単に身体を自傷したり、援助交際をしているのではなくて)。とても興味ありますので。

code-hscode-hs 2007/08/07 15:56 話はずれますが、ダルビッシュの件は同年代の男として本当にショックでした。
ニーズがあるから供給がある―
この件から帰納的にkanjinaiさんの記事を証明できると思いますが、母たる立場にある人間が【自己願望の表象物をあらわに追い求める】といった行為を行っても良いのだろうか??
それらの概念を助長する雑誌等の制作側(ダルビッシュの事務所はエイベックスらしい)の倫理観も問われることになると思います。
『個人の自由だ』と言ってしまえばそれまでなのですが…
いやはや、荒れた世の中ですね。

spectre_55spectre_55 2007/08/07 17:18 お邪魔いたします。
>「性的」身体を自傷し、援助交際を「渇望」する事例
横レスになりますが…20代初めの、まだ性的アイデンティティが確立していない「男子」が、年上の女性から身体接触を伴うセクハラを受けて以後、自分の身体的・社会的性別に対する嫌悪を強め、ODや自傷行為(性器に対する自傷も含め)を繰り返している…というケースは知っています。
この人はいわゆる「援助交際」的なことはしていないようですが、「復讐心や怒りの表現、あるいは自傷行為として異性と寝る」という心理は理解できる、とは言っていました。そういえば、女性からでなく男性から性暴力を受けた男性が、同性とのカジュアルセックスに走るケースは沖縄タイムズのサイトにありますね。何かご参考になれば>kanjinaiさん

kanjinaikanjinai 2007/08/07 19:18 >spectre_55さん コメントありがとうございます。なるほど、そのケースはたいへん興味深いです。症例などがそろそろ専門誌に出始めるころなのかもしれませんね。私としては性器に対する自傷というのはきっとあるだろうと直観します。あとは筋肉部とか喉仏とかへの自傷。自傷行為として異性と寝るとなると、これは援助交際女子の心理と言われるものとまったく同じですね。でも、慎重に考えていかなければ。

こんなに多数のブックマークコメントが付き、訪問者があるとは予想してませんでした。きっと、何かのツボに触れてしまったんでしょうか。このこと自体興味深いです。

freehandfreehand 2007/08/08 00:18 オバサンの潜在的なニーズはあったと思いますが、王子ブームはマスコミによる供給がかなりニーズをつくっているのではないでしょうか。

マスコミが政治家の不祥事や問題発言、強行採決などから目を逸らすために王子の報道しているのか、と思ったこともあります。

sorewakaru〜sorewakaru〜 2007/08/11 21:18 それ、わかります、つか、昔も今も、そういう事例を身近に見ています。その昔、まだ社会人になりたての頃、30台後半の女性上司が妙に新入社員の男性を可愛がっていたり、というのを見て、ああはなりたくない、と思ったモンです。あと30過ぎてもジャニヲタを抜けられない女友達とか。それまでオープンにできなかった女の性的な欲望というものが、重圧がなくなってオープンになってきた、という感じなんでしょうね、きっと。まあ、若い異性を自分のオナペットとしてさんざんもてあそぶという文化形態がオヤジ的文化として脈々と受けつがれてきているその反動もあるんでしょうが、にしてもそこでまたそれをそっくり真似たおばはんたちの、オナペットと言うか犠牲者を必要とする構造というのは、哀れとしか言いようがありません。二次にでもいけばいいのに。

awaiumiawaiumi 2007/08/21 10:13 王子さまブームのなか、心ない中年女性の行為によって精神的肉体的に傷つく少年がいることは、痛ましいことです。ただ、このような事例があまりにもクローズアップされると、例えば中年女性が男性アイドルのファンであるというだけで危険視されてしまう。熱狂的なファンであればあるほど危険度も高いというような発想は、少し短絡的すぎるし本質を見落としているのではないかという気がします。
王子さまブームを先導するマスコミ。確かに女性の性的暴走とマスコミは密接な関係にあると思いますが、一般に言われる「あおりあおられている」関係とはむしろ逆で、マスコミが話題にしない部分の方に原因があるように感じます。メディアは王子さまの美しさや格好良さを余すことなく伝えます。その一方で、王子さまだって笑ったり泣いたりする人間なんだよということを敢えて言いはしません。そんなの当たり前のことだから言わなくたっていいと、情報の送り手は考えます。でも、情報の受け手の中には、言われなければわからない人だっています。言われないのをいいことに、わからないふりをする人もいます。そういう人たちは、王子さまが人間だと認識しないまま「メッチャ好き!」という気持ちだけを膨らませます。つまり、その人たちにとって王子さまはモノであり、人形と同じなのです。それが加速すれば、身近にいる自分好みの男の子も、人形に見えてきてしまい、心ない暴走行為へと発展してしまうのです。
さらに、人形に関しては、中年女性から幼い女の子にいたるまで、ある共通の体験を持っています。リカちゃん人形です。リカちゃん人形という、大好きな人形を、お姫さまのように可愛い人形を着せ替えるということは、愛すべき対象を脱がせるという行為を含んでいます。もっと可愛い自分好みの服装にするために、裸にしてもいいのです。この経験は、愛すべき対象を脱がせるのは当然の行為だという考えを、幼い頃から自然に植え付けてしまっていると考えます。だから、成人すれば、目の前にいる自分好みの男性を脱がせようとする。もしくは、頭の中で、ブラウン管の向こうの王子さまを脱がせてしまう。ひとり脱がせるだけでは物足りないから2人脱がせてからませる。それが「やおい」なのだと思います。
いずれにせよ、これらは「オバサンと王子さま」という範疇で語り尽くせるものではありません。小学生がインターネットを使いこなす時代、マスコミの情報とは比べものにならないほど偏ったマニアックな情報に固執する、着せ替え人形よりも何倍も刺激的なゲームに没頭する少年少女が増えていると思います。「オバサンと王子さま」というフレームが、いつ「フツーの女の子とフツーの男の子」に変わってもおかしくないのです。
王子さまブームは、オバサンたちがこれまでの人生で情報や文化といかに向き合いどう生きてきたのかをはかるリトマス試験紙のようなものかもしれません。そして一方で、娘を加害者にしないため、息子を被害者にしないための母親の知恵も試されているのです。私自身もひとりの中年女性として、また小学校高学年の娘を持つ母親として、この問題と向き合ってゆきたいと思います。長々と失礼しました。

kanjinaikanjinai 2007/08/21 11:57 awaiumiさん、書き込みありがとうございました。非常に参考になる意見でした。これからもよろしくお願いします。

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